ブリティッシュ・フォークのミューズたち-その3 スパイロジャイラ [ブリティッシュ・フォーク]
ライナーノウツの冒頭に立川芳雄はつぎのように書いている。
「いかにも英国的な陰翳、抒情的なメロディ、ドラマティックな曲展開、そして天使のような女性ヴォーカル……。(中略)スパイロジャイラの『ベルズ・ブーツ・アンド・シャンブルズ』はこれらの要素をすべて兼ね備えた傑作だ」
スパイロジャイラといえば『モーニング・ダンス』という大ヒットを飛ばしたフュージョンのバンドしか知らなかったぼくが、この作品を聴いてみたいと思ったのは、『レココレ』の2004年9月号(ブリティッシュ・フォーク/トラッド特集)を読んだからだが、上の立川の記述は大げさでもなんでもない。
ほんとうにすばらしいアルバムである。
スパイロジャイラはソング・ライターでギタリスト、ヴォーカリストでもあるマーティン・コッカハムが、同じケント大学に在籍していたバーバラ・ガスキンという女性と組んだバンドで、デビュー・アルバム(このときは4人組)は1971年にリリースされている。
本作は73年にリリースされた3rd アルバムで、マーティンとバーバラのほかはサポート・ミュージシャンとしてオリジナル・メンバーだったスティーヴ・ボリル(b)、ジュリアン・キューザック(vn,p)、それにフェアポート・コンヴェンションのデイヴ・マタックス(ds)などが参加している。
ブリティッシュ・フォークのミューズたち-その2 ペンタングルとフェアポート・コンヴェンション [ブリティッシュ・フォーク]
(シリーズのタイトルを変更させていただきました)
1967~68年にデビューしたペンタングルとフェアポート・コンヴェンションという2つのグループは、いずれも女性ヴォーカルをフロントに立てたブリティッシュ・フォーク・グループだが、そのアイディアはアメリカのジェファースン・エアプレインのようなサイキディリックなロック・グループにあったらしい。
67~8年というと、ぼくのなかでは『サージェント・ペパーズ』から『マジカル・ミステリー・ツアー』の時期であり、それは同時にサンフランシスコのヘイト・アシュベリーを中心にしたサマー・オヴ・ラヴの季節でもあった訳だ。
ポップス~ロックの大きな潮流の中心には『サージェント』と『MMT』があり、それを取り巻く周辺にはサイキディリック、サマー・オヴ・ラヴ、ヒッピー・ムーヴメント、ヴェトナム反戦、ラヴ・アンド・ピースなどのいくつもの渦。
スコット・マッケンジーが「サンフランシスコに行くのなら髪に花を飾って」と歌った西海岸にはグレース・スリックを擁したジェファースン・エアプレインやジャニスのいたビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーのようなロック・バンドがあり、そして英国にはペンタングルとフェアポート・コンヴェンションがいてブリティッシュ・フォーク、エレクトリック・トラッドの新しい波が生まれ始めていた。
(グレースとジャニス)
今考えるとすごい時代だったわけだ。
今回はそのペンタングルとフェアポートの代表作といわれている『Basket of Light バスケット・オヴ・ライト』 と 『UNHALFBRICKING アンハーフブリッキング』という2枚のアルバムを紙ジャケで紹介しよう。
ペンタングルは女性ヴォーカルのジャッキー・マクシーに、バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーンという2人の超絶ギタリスト(ほかにシタールやバンジョーも)、ダニー・トンプスンのベースにテリー・コックスのドラムスという5人組。
『Basket of Light』は69年リリースの第3作で、プロデュースはザ・フーでも名高い(悪名高き?)シェル・タルミーという、最高傑作に挙げる人も多い1枚だ。
ブリティッシュ・フォークのミューズたち-その1 トレイダー・ホーン [ブリティッシュ・フォーク]
トレイシー・ウルマンの『夢みるトレイシー』にはかつてないほどたくさんのコメントをいただいたが、みなさんのオススメも多種多様、ヴァラエティーに富んでいて、とても追いつけない^^;
そのなかでまず最初に、
幻燈遮断機さん、大安洋行さん、nicodemaroさん、白熊店長さん
のご推薦をいただいた
トレイダー・ホーン 『モーニング・ウェイ』
カテリーナ・カセッリ 『組曲「春」』
アリーチェ 『夢の中の少女』
の3枚を探してみたが、後者2枚は見つからず…。
今回はトレイダー・ホーン『モーニング・ウェイ』を買ってみた。
幻燈さんがコメントを寄せてくださったように、フェアポート・コンヴェンションの初代女性ヴォーカリスト、ジュディ・ダイブルとゼムのジャッキー・マクォーリーが結成したフォーク・ロック・デュオで、アルバムは70年にリリースされたこの1枚だけらしい。
ヘロン よく聴いたCD-part 1 [ブリティッシュ・フォーク]
今年前半を振り返ってみていちばん聴いたCDはなんだろう……
と考えたときにまず出てくるのがこれ。
ヘロンの『HERON』と『TWICE AS NICE & HALF THE PRICE』という2枚のアルバムだ。
じつは紙ジャケCDが出るまでヘロンなんて名前を聞いたこともなかった。
馴染みのCDショップの紙ジャケ・コーナーを見ていて「ヘロン」というグループを初めて目にしたときに思ったのは、「あ、山下達郎の「ヘロン」はここから取ったのかもしれないな」ということだった。
ご存知かもしれないが、山下達郎が最初に結成したグループ、シュガー・ベイブというのはジェシ・コリン・ヤングのヤング・ブラッズというグループの曲のタイトルから取られている。
山下達郎はお気に入りの曲のタイトルをグループ名にしたのだから、その逆もありかな…と思ったのだ。
ただしヘロンというのは鳥の名前だから、まったく関係ないかもしれないが。
帯を見ると「田園ソング」とか「木漏れ日フォーク」とか書いてある。
1stアルバムのお値段は8センチCDつきで3,360円とちと高い。
そのときは買わずに帰ってしまったのだが、ちょっと調べてみると70年ごろの英国のフォーク・ロック・グループで、マイナーだがかなり評価は高いみたいだ。
値段も気になったのだが、インスピレイションを尊重して思い切って買ってみたのが昨年の10月ごろのことだ。