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『ビートルズ・フォー・セール』Beatles Mono LPを聴く―その4 [BEATLES]

もと『フォー・セール』大好き人間としては(いまはそれほどでもない…笑)、従来のこのアルバムに対する評価には、ちょっと異議申し立てをしておきたい。

いわく、4人は忙しすぎて疲れもピークに来ていた…
前作『ア・ハード・デイズ・ナイト』が全曲オリジナルだったのに対し、カヴァーが6曲もあり、あきらかにやっつけ仕事…
ジャケットの憂鬱そうな4人の表情にも疲れがありあり…

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(左からオリジナル、81年のリイシュー・モノ、リマスター盤)

そうだろうか。

『フォー・セール』の前にリリースされた「アイ・フィール・ファイン c/w シーズ・ア・ウーマン」は、創造性あふれるロックン・ロール。
そこに疲労感ややっつけ感は微塵もない。

まえに「B面の「Honey Don't」と「みんないい子」 の代わりに、当時のシングル「アイ・フィール・ファイン」「シーズ・ア・ウーマン」の2曲が入っていたら すごいアルバムになっていたと思う」と書いたことがあるけれど(メイン・サイトの『BEATLESのアナログ盤』の「FOR SALE」のページ)、完成度を高めることよりも、シングル盤を外してファンのためにラジオでおなじみのカヴァー曲を入れるところには、かれらのこだわりが依然としてあったわけだ。

ジャケットだってクリスマス・シーズンにレコード店に並ぶことを考えれば、ずいぶん異色なアルバム・カヴァーだったはず。
撮影のロバート・フリーマンとの次のような会話を想像してしまうのはぼくだけ?

RF「おいおい、どうしちゃったんだよ。笑って笑って!」
F4「ねえ、ボブ、ぼくらはもうニコニコ写真やおどけたポーズでアイドルみたいな写真はイヤなんだ」
RF「何言ってんだよ、きみたちは今やイギリスだけじゃなく、全米のアイドルでもあるんだぜ!」
F4「ぼくらが何を目指しているかはきみも知ってるだろう?ボブ。
  アイドルじゃないんだ、ディランみたいなアーティストなんだ」
RF「そりゃわかるけど、そんな不機嫌そうな表情のポートレート撮って帰ったんじゃ、ぼくが怒られちゃうよ」
F4「お偉方にはジョージ(マーティン)から説得してもらうからさ、ニコニコ写真じゃなくて、ディランみたいにクールな写真撮ってよ」
RF「うーん、いちおう撮ってみるけど、EMIの重役を説得できるかなあ…」


そして極めつけは「BEATLES FOR SALE」というタイトル。
以前の国内盤解説には「ビートルズ売出し中」みたいな表現もあったと思うが、ぼくがこのタイトルから感じるのは、ジャズのスタンダードとしても有名なコール・ポーターの「Love for Sale」なんかにも通じるような、もっとシニカルでアイロニカルな感じ。
日本語に訳すとありきたりの感じになっちゃうけど、「ビートルズ売ってます」、もっというと「ビートルズ 売り物」って感じだろうか。
いかにもジョンが考えそうなタイトルだ。

はい、勝手な妄想はこれくらいにして(笑)、今回はレーベルをちょっと見ておきましょう。

まずオリジナル盤。

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おなじみのブラック・アンド・イエローのPARLOPHONEレーベルで、リムのコピーは「THE PARLOPHONE」で始まるタイプ、スピンドル・ホールの上に「SOLD IN U.K.~」という再販価格に関するリマークがある。

つづいて81年のリイシュー盤。

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リム・コピーが「ALL RIGHTS」になって、セントラル・リマークはなくなっている。
PARLOPHONEの大きなロゴの右上に、オリジナルにはなかった「MONO」の表示がある。

今回のリマスター盤。

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気分だけオリジナルに近づけてみましたという感じだが、「PMC 1240」というカタログナンバーが復活しているのは微笑ましい。

マトリクスも見ておこう。

オリジナル盤。

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以前の記事にも書いたとおり、ファースト・プレスの「-3N」は未入手で、セカンド・プレスの「-4N」盤だ。

81年のリイシュー・モノ。

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枝番がひとつ進んで「5」になっている。

リマスター盤。

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まずレーベルの6時の位置に手書きで「BD 13966-01」、そのやや右に「A1」

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3時ぐらいの位置にたぶんカッティング・エンジニアの「N.S.」のイニシャルと「E」の文字。
NSというとノーマン・スミスを自然に思い浮かべるが、まさかね(笑。

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逆に9時ぐらいのところに「6338011」という数字がある。
この数字は、今回のリマスター盤の品番「5099963380118」となんらかの関連があるのだろう。

このあたりの解読をぜひどなたかにお願いしたいものだ(←人頼み~~~)。

それでは音のインプレッションだが、4作目になってもどうもパッとしない。
A-1「No Reply」は、聴き比べなくても音の抜けが悪いのがわかる。
A-2「I'm a Looser」ではジョンのヴォーカルにリアルさが足りない。ギターもベースもちゃんと入ってるんだけど、解像度の低い音だ。
A-3「Baby's in Black」になってやっと、ハイハットを叩くスティックの音に芯が出てきた。でもスネアやギターは薄いベールの向こうで鳴ってる感じだ。

という感じで、4Nと比べても鮮度の低い音。
ちょっと残念な試聴になってしまった。

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コメント 5

やまちゃん

兄が持ってたfor saleのLPは東芝EMIのステレオでした
私が人生で初めて聴いたビートルズがフォーセールでした
私自身は当時はオリジナルがほとんど聞いてなかったので、よけいに新鮮でやっつけ感は感じず楽しめました
初回CDは言うまでも無く4作品モノだったので、Mr.Moonlightの早いフェイドアウトが不満でしたが、2009リマスターが出ると改めてモノの味わいがわかるようになりました
まあ次作Help!も完全オリジナルじゃないので、これもこれでカヴァー作品が初期好みのファンにはたまらなく好きになれるのはビートルズマジックというか、カヴァーもオリジナルと勘違いするほどに、出来上がってたバンドと言えるのでは

>まえに「B面の「Honey Don't」と「みんないい子」 の代わりに、当時のシングル「アイ・フィール・ファイン」「シーズ・ア・ウーマン」の2曲が入っていたら すごいアルバムになっていたと思う」と書いたことがあるけれど(メイン・サイトの『BEATLESのアナログ盤』の「FOR SALE」のページ)、完成度を高めることよりも、シングル盤を外して、ファンのためにラジオでおなじみのカヴァー曲を入れるところには、かれらのこだわりが依然としてあったわけだ。

私もそう思います。シングルを入れないのがメンバーのポリシーでしたし
by やまちゃん (2014-10-11 22:18) 

タコ星人

遼さん、どうも。
僕はホワイトから遡って聴いていて、やっとリボルバーまできましたが、インプレを拝見したところだんだん落ち込んできましたw
諸般の事情によりモノラルカートリッジで聴けていないのですが、初期の作品より後期のものの方が出来が良いみたいですね。
まぁ、いつでもオリジナルに帰ればよいと思えば気楽に聴けるでしょうかねw
by タコ星人 (2014-10-11 23:28) 

parlophone

やまちゃんさん、こんばんは~。

>私が人生で初めて聴いたビートルズがフォーセールでした
>私自身は当時はオリジナルがほとんど聞いてなかったので、よけいに新鮮でやっつけ感は感じず
>楽しめました

おお、なんということでしょう!
かなり地味なアルバムからビートルズ体験が始まるというのも、不思議な縁ですね。
ぼくは高校1年のときにシングル盤で「ミスター・ムーンライト」を友人から聴かせてもらったのが、『フォー・セール』との出会いでしたね。
友だちは「どや、かっこええやろ」と自慢そうでしたw

>カヴァー作品が初期好みのファンにはたまらなく好きになれる

ほんとそうですね。
カヴァーもオリジナルと同じように自家薬籠中のものにしてしまうビートルズならではのマジックですね~。
by parlophone (2014-10-13 18:04) 

parlophone

タコ星人さん、こんばんはー。

>インプレを拝見したところだんだん落ち込んできましたw

いやあ、なんか申し訳ないですねー。
ぼくも期待していただけに、オリジナルとの差がはっきり出てしまう初期作品にはちょっとショックでした。

>初期の作品より後期のものの方が出来が良いみたいですね

そう思います。
『ラバーソウル』から俄然よくなると思います。

>まぁ、いつでもオリジナルに帰ればよいと思えば気楽に聴けるでしょうかねw

けっきょくそういうことですよね。
残念ながらやはりオリジナルには叶わないので、気楽な気持ちで聴くときはリマスターという感じですよね。
by parlophone (2014-10-13 18:10) 

토토사이트

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