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「獣の宝石」 三代目魚武濱田成夫 [にぎやかな夜、その他の夜]

ただ漠然とそういう気がするだけなのだが、このブログに遊びに来てくださっている常連の方々は日ごろ輸入盤のCDを購入されることが多いのではないだろうか。
その理由としては、
①輸入盤のほうが音がいいものが多い(…ような気がする―気がするだけ?)
②国内盤は価格が高い
③リリースされるのが遅い
④日本語の解説なんかいらない
といったところだろうか。

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ところがぼくのばあいは国内盤を買うことのほうが圧倒的に多い。
紙ジャケが好きということもあるし、歌詞・対訳が知りたいということもある。
日本語の解説ははっきりいってつまらないものも多いと思うが、ときどき「読めてよかった」と思う解説に巡り合うこともある。

ということで、きょうはストーンズの『STRIPPED』を輸入盤で聴いていらっしゃる方々がご存じない、つまり国内盤(東芝EMI VJCP-25202だけ?)にしか記載されていないおもしろいものをご紹介しようと思う。
それは三代目魚武濱田成夫というひとの「獣の宝石」という詩である。


(原文は縦書き)

獣の宝石               三代目魚武濱田成夫

 みちばたで
 いきなり
 この俺に
 からんできた奴等と
 どつきあいのケンカしとる最中に
 見物人の中にいた女に
 俺は一目惚れしてしもた
 しゃーないから
 どつきあいの最中ではあるが
 見物しとるその女に
 俺は声をかけたんや
 なあ もしよかったら
 このケンカ終わり次第
 俺と茶でも
 飲んでくれへんか
 それまで待っててくれや
 そしたら女は
 あんたいったい
 どういう育ち方したのよと
 俺に言うたんで
 俺はこう言うた
 ストーンズ聴いて
 育っただけじゃ
 ブラウン・シュガーとかな。

ぼくが大学時代に日本文学を専攻していたことはさきほどいった常連の方々でもほとんどはご存知ないだろう。
専門は『万葉集』だった。
そういったこともあって、現在でも詩歌(詩や短歌や俳句)はけっこう読むことが多い。
とくに現代詩は一般的にはかなりとっつきにくいと思うのだが、そうしたなかで三代目魚武濱田成夫の詩は、現代詩の読者層を広げるのにかなり寄与していると思う。

13.jpg

ぼくはみちばたでいきなりケンカをしたこともないし、女に一目惚れしたこともないし、見知らぬ女性に「茶でも飲んでくれへんか」と声をかけたこともない。
しかしストーンズを聴いて育ってきた。
だから『STRIPPED』の国内盤を買ってきて、ディスクをプレイヤーにセットしながら日本語解説書を開き、「なんじゃこりゃ。」と思いながら初めてこの詩を読んだときに、いたく感動してしまったのである。

日本の箴言に「恋は思案の外(こいはしあんのほか)」ということばがある。
いいも悪いもない、恋はまるでつむじ風のようにいきなりやってきて、あっという間にふたりを激情のなかに閉じ込めてしまう。
素敵じゃありませんか。

(著作権法に抵触するかもしれません。そのばあいはすみやかに削除します)

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MASA

三代目魚武濱田成夫、最近あんまりマスコミに露出しなくなりましたが、いつぞやテレビで「オレ、天才やから」と堂々と言い放っていたのが印象的です^^。
大塚寧々と結婚したときは「くそぉ」と思いました。数年後に離婚したけど(笑)。

私も昔からの輸入盤派ですけど、こういうライナーがあったりすると国内盤も捨てたもんではないですね^^。
by MASA (2010-02-24 00:44) 

DEBDYLAN

遼さん、おはようございます。

僕も国内盤派ですw
理由は同じです。

『STRIPPED』は遼さんがお持ちなのと同じヤツでした。
久しぶりに手に取ったアルバム。
今日は出勤時にコレ聴いていきます^^。

by DEBDYLAN (2010-02-24 07:07) 

Naru

私はSTRIPPEDはいつもアナログで聴いてますが(すんごい音です!)そうかあ・・・解説かあ・・・
中学時代、それこそ穴の空くまでライナーを読み込んで、いかにも昔から知ってたかのように友達に吹聴していたのを昨日のことのように思い出します。
CDもほとんどの場合本国盤が音が良いとは思いますが、解説有りってのも確かにアリですね!!

PS. マスターテープ、おかげさまで見ることができました。
そうかあ、すでに付き合っていたのかあ〜(笑)
なんか曲の解釈も変わりそうです。
それにしてもさすがNHK!!
とても素敵な情報、ありがとうございます。
by Naru (2010-02-24 16:34) 

ryo

俺もこの盤持ってて、この詩は良いなと思ってました。
この三代目魚武濱田成夫って人は全然知らないんですけど、日本盤ライナーノーツも時々良いモノがありますね。

このアルバム自体大好きで、Shine A Lightのリメイクは涙モノでした。
I'm Freeのミスってないバージョンも聴けるし。
by ryo (2010-02-24 23:43) 

parlophone

MASAさん、こんばんはー。

>三代目魚武濱田成夫、最近あんまりマスコミに露出しなくなりましたが

そういえばこの国内盤が出たころがかれの最盛期だったかもしれませんね。
いまちょっとパッケージを見たら95年のリリースです。
もう15年も経ったのかあ…。
なんか唖然としますね。

>大塚寧々と結婚したときは「くそぉ」と思いました。数年後に離婚したけど(笑)

ああ、大塚寧々、ぼくも以前は好きでした(笑。
最近はちょっとキャラが固定してるみたいで、以前ほどいいとは思わなくなっちゃいました(スミマセン…)。

>こういうライナーがあったりすると国内盤も捨てたもんではないですね^^

そうなんですよ。
ごくたまにですけどね(笑。

by parlophone (2010-02-25 00:56) 

parlophone

DEBDYLANさん、こんばんは!
いつもnice!&comment、ありがとうございます。

>僕も国内盤派ですw 理由は同じです

DEBさんが国内盤派というのは知ってましたが、ぼくとはちがって英語に堪能だし、ご自分でも訳されたりするじゃないですか。
少なくとも歌詞の対訳は必要ありませんよねー。
うらやましい^^

このアルバム、ときどき聴きたくなりますよね♪

by parlophone (2010-02-25 00:59) 

parlophone

Naruさん、こんばんはー。

>私はSTRIPPEDはいつもアナログで聴いてますが(すんごい音です!)

おお、アナログはそんなに音がいいんですか!
DDA(ということになるのかな?)も捨てたもんじゃないですね。

>中学時代、それこそ穴の空くまでライナーを読み込んで、いかにも昔から知って
>かのように友達に吹聴していた

多かれ少なかれみんなそんな経験があるんじゃないでしょうか。
「えー、おまえ知らなかったの??」みたいな(笑。
とくにぼくの子どものころは『ミュージック・ライフ』とか『音楽専科』、もう少し後になると『新譜ジャーナル』とか『GUTS』とかのギター雑誌、それから『ニュー・ミュージック・マガジン』ぐらいしか情報がありませんでしたからねー。
日本語解説はそれはそれは貴重なものでした^^

>PS. マスターテープ、おかげさまで見ることができました

そうですか、よかったです。
企画自体はパクリでも、さすがNHK、ぜひシリーズ化してほしいと思いますよね^^

by parlophone (2010-02-25 01:10) 

parlophone

ryoさん、こんばんはー。

>日本盤ライナーノーツも時々良いモノがありますね。

ときどきはありますねー。
ぼくは大鷹俊一や長門芳郎の書いたものはだいたい好きですね。
あと、以前記事にしたことがありますが、ジャニスの『パール』レガシー・エディションの解説はほんとうに素晴らしいと思います。

>このアルバム自体大好きで、Shine A Lightのリメイクは涙モノでした

1曲めの「ライク・ア・ローリング・ストーン」からいきなり持ってかれますよね。
ぼくもときどき無性に聴きたくなるアルバムです^^

by parlophone (2010-02-25 01:22) 

yukky_z

こんばんは~♪
私は輸入盤派です^^「英語はネイティヴでペラペラなので、
ライナーなんて必要ありません!」・・・なんて格好良く言う
のが夢なんですけどね^^;すみません、ジョークでした!!
でも遼さんの言う、①~④まで全て満たしてますので、
「生粋の輸入盤派」になります!
by yukky_z (2010-02-25 20:38) 

parlophone

yukky_zさん、こんばんはー。

>「英語はネイティヴでペラペラなので、ライナーなんて必要ありません!」

いいですねー。
ぼくも一度でいいから言ってみたいです。
まあ「ネイティヴで…」はちょっとムリなので、せめて「英国暮らしが長かったので」とかね(笑。

by parlophone (2010-02-26 00:52) 

Backstreets

こちらにもお邪魔します。
私もアーティストのメッセージを少しでも理解できるようにと、解説・対訳が付いた国内盤を購入することが多いのが現状です。しかし、ローリング・ストーンズであれボブ・ディランであれ、彼らの発する言葉をどれだけ真に受け止められるのかは疑問です。もちろん言葉の理解力のみならず、文化、社会背景、アーティストを取り巻く環境を把握しておかねばどれだけ英語力があろうと、例えネイティヴであろうと真のメッセージを受け取ることが出来ないのかもしれません。
三代目魚武濱田成夫先生のストーンズに対する解釈はこの方なりの解釈であり、私の認識とは異なるものがあります。国内盤の解説と言えば、『Voodoo Lounge』にも山川健一先生の小説が付いていましたが、これにも違和感を覚えました。20代前半に山川先生の書かれた作品に共感していたことがあるだけに残念な思いをしたものです。
また、対訳にしても例えばボブ・ディランを片桐ユズル先生、三浦久先生、中川五郎さんらがこれまでに担当されていますが、あくまでも詩人・片桐ユズルの世界であり、元大学教授・三浦久の世界であり、シンガー・ソング・ライター・中川五郎の世界であります。リスナー個々の感覚とは多少なりとも隔たりがあるでしょう。と言っても、英語読解能力のない自分は対訳を頼りにせざるを得ません。
長々と駄文を綴り失礼致しました。
by Backstreets (2010-02-26 19:35) 

MORE

私は『原盤主義』です。
理由は・・・
①日本語解説なんかいらない
②聞き取りの歌詞に間違いが多い
③日本盤の方が音質が良いというのは半ば迷信だと思っている
④値段が高い
⑤なんたってオリジナル

アーティストに関する情報は海外の音楽雑誌の記事の方が数倍「まとも」です。なんと言っても、批評家が直接インタヴューとかしていますから・・・
日本の音楽雑誌の方が優れている点は「データ」関係だけですね。
ディスコグラフィーとかは丹念な作業をしていると思います。
それ以外は「よいしょ記事」が殆どなので読む気になりません。
(ましてやCDの解説は120%よいしょですからね、しょうがないですけど」
日本盤CDの良い点はボーナストラックのおまけくらいかなあ・・・

by MORE (2010-02-27 09:36) 

parlophone

Backstreetsさん、こんばんはー。

>ローリング・ストーンズであれボブ・ディランであれ、彼らの発する言葉を
>どれだけ真に受け止められるのかは疑問です
>文化、社会背景、アーティストを取り巻く環境を把握しておかねば

これはおっしゃるとおりですね。
文学の世界でも、とくに外国文学にかんしてはつねにこうした問題は付きまとうと思います。
それを超えたところで理解し鑑賞していくということが求められるわけですね。
それは音楽でもそうだと思います。

>ストーンズに対する解釈は…私の認識とは異なるものがあります

それはとうぜんそうだろうと思います。
純粋にことばで成り立つ文学と違って音楽の世界ではもっと許容される世界が大きいわけで、まあ極端にいえば1000人いれば1000通りの解釈が成り立つと思いますね。

>対訳にしても例えばボブ・ディランを片桐ユズル先生、三浦久先生、中川五郎さんら

ここからさきは好き好きになっちゃうんじゃないでしょうか。
『PLEASE PLEASE ME』の記事のなかで書きましたが、ジョンの単純な歌詞でもあれだけのヴァリエーションが生まれる余地があるわけですから、ディランのような歌の世界はそれこそ訳者の個性の出るところでしょうね。
ただ聴く分にはリスナーは自分の好みで訳者を選べばいいと思いますが、これがたとえば音楽批評となると、その許容を認めながらも普遍的な意味を探っていくということが求められるのではないかと思いますねー。

by parlophone (2010-02-27 22:28) 

parlophone

MOREさん、こんばんはー。

>③日本盤の方が音質が良いというのは半ば迷信だと思っている

これはそうでしょう。
あきらかにUKやUSのオリジナルのほうが音はいいと思いますね。
ただ、レコードのころ、盤質はUS盤と比べると国内盤のほうがよかったと思いますね。
US盤はたとえばヴィニールの成型のときにできたと思われる粒状の突起があったり、包装のとき?についたと思われるスレが盤面に見られたり、そういうレコードは実際に聴いてみると、やはりけっこうノイジーでしたからね。

>アーティストに関する情報は海外の音楽雑誌の記事の方が数倍「まとも」です

そうなんですかー。
なにしろ英文の記事をほとんどまともに読んだことがないので、そのあたりはぼくには分かりません。
でもたしかに「よいしょ記事」が多いのは気になりますね^^;

by parlophone (2010-02-27 22:37) 

幻燈さんですよ

僕は紙ジャケ好きなので(特にジャズは)国内盤中心ですが、外盤でしか買えないもののみ外盤で買ってます。

例えばヘルダーリンは1st(ドイツのプログレです。なんかスイマセン汗)以降のアルバムは国内盤で出てないし・・。
by 幻燈さんですよ (2010-02-28 21:07) 

Cold Sun

遼さん、こんばんは
ここ10年は国内盤派、主に近場で買える、今そこにあるCDです。

①輸入盤店が近所にない。
②輸入盤をたまにネットで注文すると、2ヶ月たっても来ない。(例:1stと未発表の2ndがカップリングされた幻の英国女性SSW、『MANDY MORE』のCD。Philipsから72年リリースの1stはストーンズの『山羊の頭のスープ』でストリングスを担当したニック・ハリソンによる贅沢なオーケストラ・アレ ンジにポップなメロディが際立つバロック風ソフトロックです。)
③価格が異常に安い蔦屋のレンタル落(稀にストーンズやキンクスやフーが200円、ジャズやソウルが100~200円である)
④価格が非常に安いベスト電器の在庫落(最近の洋楽の国内盤やJ-POP、例:ゆらゆら帝国が100円)
⑤芸が細かい国産紙ジャケは好きです。(紙ジャケ再発されてる日本のニューロックも、同時代のVERTIGO英国原盤のジャケに負けず劣らず、凝っているのが判りました。)
ストーンズは『サタニック』が昔から大好きで、紙ジャケを見つけたら購入しています。現在2枚目、他のアルバムも購入しないといけないんですが~
⑥日本語の解説・対訳はあったほうが良いですね。
by Cold Sun (2010-03-01 19:56) 

parlophone

幻燈遮断機さん、こんばんは~。

>僕は紙ジャケ好きなので(特にジャズは)国内盤中心ですが

最近はブルー・ノートにしてもプレスティッジ、ヴァーヴあたりが軒並み1000円~1100円ぐらいで出てるので、紙ジャケ好きとしては複雑な心境ですよねー。
紙ジャケもっと安くなれ!!

>例えばヘルダーリンは1st…以降のアルバムは国内盤で出てないし・・。

そうなんですかー。
最近ずーっとプログレの特集を組んでる『ストレンジ・デイズ』なんかを読んでると、けっこうプログレは国内盤でてるみたいですけどね~。
まだまだなんですね。

by parlophone (2010-03-02 20:18) 

parlophone

Cold Sunさん、こんばんはー。

>今そこにあるCD

たしかにそうですよね。
聴きたいときに聴けない、これほどもどかしいものはありませんからね。

>輸入盤をたまにネットで注文すると、2ヶ月たっても来ない

うおおぉっ! レアな輸入盤のばあい、さんざん待たされた挙句に在庫切れ、入荷未定→廃盤…みたいなこともあるらしいですね。
おそろしい。

>稀にストーンズやキンクスやフーが200円、ジャズやソウルが100~200円である

おー、これはおいしい。

>価格が非常に安いベスト電器の在庫落

ぼくもベスト電器の廉価販売は記事にしたことがありますが、うれしいですよねー^^

>ストーンズは『サタニック』が昔から大好きで、紙ジャケを見つけたら購入しています

あはは、いいですねー。
ぼくも『サタニック』は大好きなので、ぜひUK盤仕様で出しなおしてほしいですね!!

by parlophone (2010-03-02 20:26) 

鈴木健太郎

この魚武さんのポエムのようにカッコよく生きて行きたいですね。ケンカはイヤですけどね。
by 鈴木健太郎 (2021-05-03 08:19) 

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