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ジョニ・ミッチェルのアルバム part1 [紙ジャケ]

だれに訊いても同じような答えが返ってくると思うけれど、ぼくにとって女性のシンガー・ソングライターといえばキャロル・キング、ローラ・ニーロ、そしてジョニ・ミッチェルだ。
そのジョニの作品がワーナー・ミュージックから紙ジャケでリリースされたのは4月だった。
ぼくは1stアルバムを除く9タイトルを買った。
1枚2,500円だから全部で22,500円だけど、ジョニの作品はそれくらいのお金を出してもそろえる価値がある。
とはいうもののやっぱりちょっとお小遣い的にはキツイです(笑。

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さて、ぼくにとってのジョニはまずソングライターだった。
映画『青春の光と影』('69)でジュディ・コリンズが歌った同名の主題歌が、初めてラジオから流れてきたときの鮮烈な感動は今でも忘れることができない。
そしてバフィー・セント・メリーが歌った映画『いちご白書』('70)の主題歌「サークル・ゲーム」も素晴らしい曲だった。
ぼくがクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの『デジャ・ヴ』を買ったのは1970年の6月27日だが、そのきっかけになった「ウッドストック」の作者がジョニだと聞いたときはその多才ぶりにびっくりした。

次にぼくのまえにあらわれたジョニは、キャロル・キングが作りジェイムズ・テイラーが歌った「きみの友だち」で透明感あふれるコーラスを添えるシンガーだった。
発売と同時に買ったジェイムズのアルバム『マッド・スライド・スリム』('71)(レコードにぼくが書き込んだ日付は1971年7月13日になっている)のなかのB-4「遠い昔 Long Ago and Far Away」の彼女のコーラスを聴いたときにはその美しさに胸が苦しくなるくらいだった。
当時の国内盤アルバムの解説を担当している麻田浩はB-2「目を閉じてごらん You Can Close Your Eyes」について「ジョニ・ミッチェルのために書いたといわれる子守唄」と書いているから、てっきりジェイムズの恋人だと思っていたら、『デジャ・ヴ』に収められていたB-2「僕達の家 Our House」はグレアムがジョニとの生活を歌った歌だというのをあとから知ってびっくりした。
ジョニは恋多き女とよくいわれるけれど、逆にいえばそれくらい多くの男たちを夢中にしてしまう、女性としてもすごく魅力的なひとだったわけだ。

シンガー・ソングライターとしてのジョニを初めて知ったのは同じ71年にリリースされた『ブルー』だが、実際に聴いたのはかなりあとになってからだ。
これほど「もっと早く知っていればよかった」と後悔したアーティストもいない。

前置きが長くなったので駆け足でアルバムを紹介していこう。

2ndアルバム『青春の光と影 Clouds』は1969年の作品。
ほとんどがギターの弾き語りで歌われていて、けっしてとっつき易い作品ではないが、オープン・チューニングを多用した独特なギターのサウンドと、浮遊感あふれるヴォーカルはゆいいつ無二の個性を特徴づけている。
彼女の代表作のひとつであるM-2「チェルシーの朝 Chelsea Morning」、ギター、ヴォーカル、コーラスが一体となって曲の美しさを際立たせているM-6「ギャラリー the Gallery」、M-10「青春の光と影 Both Sides Now」など全10曲が収められている。

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紙ジャケはコーティングのないA式のゲイトフォールド・ジャケット。
わずかに光沢を抑えた和紙のような手触りの紙質で、毅然と前を見つめる自画像が印象的だ。
内側には歌詞が印刷されている。

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3rdアルバム『レディズ・オヴ・ザ・キャニオン Ladies of the Canyon』は70年の作品。
ギターの弾き語りで始まるオープニング「モーニング・モーガンタウン Morning Mogantown」は前作からの流れを感じさせるが、途中からピアノが入ってきて曲想に変化が表れ、M-2「フォー・フリー For Free」ではチェロやベース、クラリネットなどが色彩感豊かな世界を描く。
グレアムのことを歌ったというM-5「ウィリー Willy」はピアノの弾き語りで次回作『ブルー』の世界を彷彿とさせる。
ギターとコーラスが美しい表題曲M-4、自身としては初のシングル・ヒットM-10「ビッグ・イエロー・タクシー Big Yellow Taxi」(全米67位)、M-11「ウッドストック Woodstock」などを収めるが、極めつけはやはりM-12「サークル・ゲーム the Circle Game」だろう。
時の流れをメリーゴーラウンドに喩え、過ぎ去った場所を振り返りながら時の輪のなかを巡っているだけ、と歌うはかなくて美しい歌を、クロスビー・スティルズ・ナッシュ&ヤングのコーラスがさらに美しく彩っている。

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紙ジャケはこちらもコーティングのないA式のゲイトフォールド・ジャケット。
やはり光沢をわずかに抑えた紙質で、前作とは趣きのちがうシンプルな絵が描かれている。
内側には手書きの歌詞がプリントされている。

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タイトルは透明なフィルムに印刷されてそれがジャケットに貼られるという凝った作りのもの。
さすがにこんなのはプラケじゃ味わえません^^

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以上の2作はオレンジ&イエローのツートン・カラーのリプリーズ・レーベルが採用されている。

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4thアルバム『ブルー BLUE』('71)はジョニの最高傑作というだけでなく、70年代を代表するアルバムの1枚といっていいだろう。

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基本的にはギターまたはピアノの弾き語りで、数曲にジェイムズ・テイラー(g)、スティーヴン・スティルス(g,b)、スニーキー・ピート(steel-g)、ラス・カンケル(ds)が参加している。
ジョニの弾くアパラチアン・ダルシマーとジェイムズのアコースティック・ギターによるM-1「オール・アイ・ウォント All I Want」、ピアノの弾き語りによるM-2「マイ・オールド・マン My Old Man」、アコースティック・ギターのアルペジオをバックに幼い女の子を歌ったM-3「リトル・グリーン Little Green」と、出だしの3曲の美しさは筆舌に尽くしがたい。
グレアムのことを歌ったというM-4「ケアリー Carey」はシングル・カットされて全米93位とたいしたヒットにはならなかったが、アルバムは全米15位、全英3位を記録し、2003年にローリング・ストーン誌が選んだ「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」では30位に選出されている。

じつはこのアルバムだけ、数年前にライノからリリースされた紙ジャケをもっていて、2枚めの紙ジャケだ。

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色調などはよく似ているが、今回の国内盤紙ジャケは書籍の装丁でいえばクロス装と呼ばれる、縦糸と横糸が布地のように入ったテクスチャー・カヴァーを復刻していてさすがと思わせる。

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2種類の紙ジャケを並べたところ。

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右が今回の国内盤だ。

コーティングのないA式のゲイトフォールド・カヴァーで、やはり内側には歌詞がプリントされている。
レーベルは単色のリプリーズ・レーベルになっている。

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国内盤の紙ジャケはインナーもミニチュアで復刻されていて、2thと3rdはカンパニー・スリーヴが、『ブルー』にはジャケットと同系色のインナー・スリーヴがついている。

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日本語ブックレットは歌詞対訳付で16ページ、解説は前2作が天辰保文、4thは大鷹俊一だ。

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帯は当時のワーナー・パイオニアからリリースされたときのものをイメージしていて、『ブルー』にはいわゆる「ロック・エイジ帯」がついているが、これがちょっとしたフェイクになっていて笑ってしまった。

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左はストーンズの紙ジャケの帯できちんと切り欠きを再現しているが、ジョニの帯はいわゆるキャップ形式で左の部分が印刷になっている。

かんじんの音だが97年のデジタル・リマスターということで疑問をお持ちの方もいらっしゃるだろう。
個人的にはまったく問題ないと思っている。
ザクザクしたアコースティック・ギターの音色も、独特のヴィブラートと透明感のある歌声もきちんと再現されているのではないだろうか。

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Hitoshi Okajima

ジョニ・ミッチェルの紙ジャケCDの紹介、待っていました。
Warner Music JapanのHP「紙ジャケ匠の技」には、ジョニ・ミッチェルの紙ジャケCDのことが掲載されていないんですよね。DISC UNIONでも、他のアーティストでよくやっている「特典ボックス」付き販売をやらなかったですし。
紙ジャケがどんな出来なのか、わからないので、購入をためらっていました。part2も期待しています。
by Hitoshi Okajima (2011-06-22 06:46) 

MORE

Joni, Carole, Lauraの3人はそれぞれ異なるバックグラウンドから出発して、それまでになかった女性SSWというジャンルを確立しました。
Joniはこの3人の中では最も他の(男の)アーティストとの交流が多く、影響を直接与えたと思います。また、彼女がこの3人の中では変化することを恐れなかった、というかチャレンジし続けたところはアーティストとして素晴らしいですね。
"A Case Of You"は私のフェイヴァリット・ソングズの10傑に入ります。カナダ出身でアメリカで活動する、というところに何かしらの「見えない力」があるような気もします。視点の違い、ということでしょうか・・・
ジョニはまだ未発表曲とか満載のボックス・セットとか出ていませんよね。出てくる日を待っているのですが・・・
by MORE (2011-06-22 10:19) 

parlophone

Hitoshi Okajimaさん、こんばんはー。
はじめまして、でよかったでしょうか。
よろしくお願いします。

最近のワーナー・ミュージックはJTにしてもイーグルスにしても以前の紙ジャケをSHM-CD化して出したりして、今買っとかなきゃ二度と手に入らない!という切迫感はなくなりましたね。
音源が97年のデジリマということで、そこさえ気にならなければ(ぼくは気に入ってますが)、紙ジャケとしては完璧な出来栄えではないかと思います。

by parlophone (2011-06-23 22:29) 

parlophone

MOREさん、こんばんはー。

>Joniはこの3人の中では最も…影響を直接与えたと思います

たしかにおっしゃるとおりですね。
ただ、キャロルはブリルビルディング系のソングライターとして、ロックの初期の、いってみれば大地を肥沃化するのに大きな功績があったといえるんじゃないでしょうかね。

>また、彼女がこの3人の中では変化することを恐れなかった、というか
>チャレンジし続けたところはアーティストとして素晴らしいですね

ほんとですね。
いちばん変わらなかったのがキャロルでしょうか。
ジョニの変化はあまりにも刺激的すぎてファンとしてはついていけない人も多かったかもしれませんね。

>ジョニはまだ未発表曲とか満載のボックス・セットとか出ていませんよね

おお!!
もしそんなものが出されたら、またどこから費用を捻出するか頭をひねらなきゃいけませんね…^^;

by parlophone (2011-06-23 22:38) 

pinkisland

 こんにちは。

今回のjoniの紙ジャケは、夏草とコートのみ買いました。というのも、以前プラケで米盤が出た時に、だいたい買っちゃったものですから。HDCDもあったりなかったりです。

BLUEは悲しそうでちょっと苦手です。
by pinkisland (2011-06-25 07:39) 

parlophone

pinkislandさん、こんばんはー。

>以前プラケで米盤が出た時に、だいたい買っちゃったものですから

ぼくもプラケと紙ジャケで4~5枚持ってるんですが、けっきょく買い直しちゃいました。
音源は以前のままなので、今回もHDCDであったりなかったりです。
以前使ってたmaranzのCDプレイヤーはHDCDだといい音で聴けたんですが、いまのはHDCDは関係ないのでちょっと残念です^^;

>BLUEは悲しそうでちょっと苦手です

ああ、そうなんですかー。
たしかにちょっとブルーで悲しげですもんね…。
by parlophone (2011-06-25 23:47) 

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