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シカゴのアルバム―― part3 [紙ジャケ]

今回の紙ジャケシリーズはすべて2002年のRHINOリマスター&エクスパンデッド音源を採用し、SHM-CD仕様にしたものだ。
同じ日にリリースされたビートルズのリマスター音源に比べると7年も古いわけで、たしかに高域の伸びた印象に比べると中低域はやや弱く、とくにベースが軽めでモコモコしていて音程のあまりはっきりしない感じなのは残念だ。
ただ目の覚める思いだったのは「サタデイ・イン・ザ・パーク」の鮮やかなピアノのイントロを聴いたときだ。
いつもiPodで聴いている圧縮音源の印象とは異なって、ロバート・ラムの弾くグルーヴィなピアノが部屋全体の空気を震わせながら広がっていく快感。
とても37、8年前とは思えない音である。

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『シカゴⅢ』は前作同様23曲を収めたダブル・アルバムで1971年1月にリリースされた。
「長い夜」の大ヒットを受けて登場したこともあってか、全米アルバム・チャート2位を記録している。

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(穴が開いた星条旗のような布は戦乱の果てをイメージさせるようだ)

キャスのギターとブラスの掛け合いが異様なテンションを孕む「Sing a Mean Tune Kid」で始まり、ピーター・セテラの牧歌的な「What Else Can I Say」、キャスとラムの共作でヘヴィーで圧倒的な迫力の「I Don't Want Your Money」などを挟んで、最初の組曲"Travel Suite"が始まる。
その名のとおり旅をテーマにした6曲からなる組曲で、シングル・カットされ全米20位を記録した「自由になりたい Free」を含んでいる。
ロバート・ラムの「Flight 602」は、まるでグレアム・ナッシュが作ったCSNの曲みたいでなんだか微笑ましいけれど、そのラムがパラゼイダー、キャスと共作したインスト「Free Country」はジャジーで先鋭的なメロディとともに、演奏能力の高さでもハッとさせられる。

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(ジャケットの内側)

セテラとダニエル・セラフィンの共作で全米35位の「ロウダウン」などを挟んで、今度はキャスのペンになる5曲の"An Hour in the Shower"という組曲になる。
比較的コンパクトな曲がメドレーで流れていくが、なかなか力作ぞろいだ。

最後はジェイムズ・パンコウが中心になった6曲からなる"Elegy"という組曲(1曲を除いてインストゥルメンタル)でアルバムがしめくくられる。
こちらのほうはまるでティム・ハーディンを思わせるような朗読で始まり、道路工事と警笛のSEが入って現代音楽っぽくなったり、フルートやトロンボーンをメインにしたバラードなど、ヴァラエティに富んだ構成になっている。

紙ジャケは光沢のないA式のゲイトフォールド・ジャケット。

例によってUSオリジナル盤に貼られていた2種類のステッカーと、当時のCBSソニーのキャップも復刻されている。

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兵士姿のメンバーの背後に限りなく並ぶ墓石が描かれた、強烈なメッセージを含む大型のポスターもミニチュアで復刻されている。

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レーベルは周囲にCOLUMBIAの文字が配置された当時のレーベルをイメージしたものだ。

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(歌詞の印刷されたカスタム・スリーヴも復刻されている)

LP4枚組という前代未聞のライヴ・アルバム『アット・カーネーギー・ホール』を挟んで、翌72年7月にリリースされた『シカゴⅤ』はついに全米1位を獲得する。

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(木の板にシカゴのロゴが彫られている)

その原動力になったのは紛れもなく全米4位の大ヒット・シングル「サタデイ・イン・ザ・パーク」なのだろうが、10曲に絞ってシングル・アルバムになったということも大きいだろう。
全10曲中キャスが1曲、パンコウが1曲、残りの8曲はラムのペンになるもので、ふたたびロバートの創作力が大きくなったことを示している。
2つのパートからなり、キャスとセテラの対話という形で曲が進んでいく「ダイアローグ」(短くまとめたエディット・ヴァージョンがシングル・カットされ全米24位を記録した)や、フランスの現代音楽家エドガー・ヴァーレーズに触発された「A Hit by Varese」、複雑な陰影をもつパンコウ作の「Now That You've Gone」、キャスが切々と歌い上げる「Alma Mater」など、やはり名曲が揃っている。

ボーナス・トラックはシングル・ヴァージョンの「ダイアローグ」のほかに『カーネギー』に収められた2曲の未発表スタジオ・ヴァージョンが収められている。

今回買ったアルバムのなかでは録音がいちばん新しいせいか、軽やかに駆けめぐるセテラのベースもよく表現されているし、トランペットやサックスなどもリアルに捉えられている。

紙ジャケは木目の質感を表したテクスチャー仕様で厚紙A式のゲイトフォールド・ジャケット。

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(ジャケットとおなじデザインのカスタム・レーベルが採用されている)

2種類の大型ポスターがミニチュアで復刻されたほか、おなじみのステッカー、インナーも封入されている。

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(ジャケットと比べるとポスターの巨大さがわかる)
タグ:シカゴ CHICAGO
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ryo

こんばんは。
「Ⅴ」と1stしか持ってなくて、2ndに興味を持ったんですが、3rdもなかなかの傑作のようですね。
ホント、後追いなのでシカゴについて全然詳しくないのですが、テリー・キャスって凄いギタリストだったんですね。
ちょっとフリーキーで、時にメロディアスなフレーズも弾くし、ファンキーにもなれる...早くに亡くなってしまって残念過ぎます。
声も良いんですよね♪

遼さんの記事を見るとプラケがしょぼく見えます(笑)。
受験が終わってお金が出来たら買っちゃおうかな。

それにしてもデカいポスター・・・よくパッケージできましたね。
by ryo (2009-11-14 00:47) 

parlophone

ryoさん、こんばんはー。

>2ndに興味を持ったんですが、3rdもなかなかの傑作のようですね

そうですね、やっぱりこのころのシカゴはみんな力作というか、曲のパワーがすごいですね。
ギターのキャス、ピアノのラム、ボーンとアレンジのパンコウの3人が切磋琢磨しながらバンドを牽引している、そのいい面が表れていると思います。

>テリー・キャスって凄いギタリストだったんですね

ですねー。
やっぱりジミが一目置いていたというんですから、並みのギタリストじゃなかったと思います。
おっしゃるとおり声もいいですね^^

>遼さんの記事を見るとプラケがしょぼく見えます(笑)

でも音源はいっしょだし、ブックレットはばっさり省略されてますからね。
ジャケットのこだわりとポスター類の復刻はやはり伊藤秀世を監修に選んでるから間違いはないと思いますけれど…。

>それにしてもデカいポスター・・・よくパッケージできましたね

画像はちょっと遠近法が狂ってるかな(笑。
by parlophone (2009-11-15 00:13) 

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