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イエスのアルバム――part 2 [紙ジャケ]

1971年11月にリリースされた『こわれもの FRAGILE』と翌72年9月の『危機 Close to the Edge』をイエスの最高傑作にあげる人は多いだろう。
ぼくもこの2作品は大好きだ。

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最初に聴いた曲が「ラウンドアバウト」(アンダーソン/ハウ)だったことは前回の記事に書いたけれど、『こわれもの』のころの5人のコンビネーションは今聴いてもほんとうに高い、超絶といってもいいぐらいのレベルでまとまっていると思う。
とくにA-1「ラウンドアバウト」のイントロ、アコギと唸るベース、タイトなドラムスの絡みは最高だ。


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そのほかでぼくが好きなのはA-4「South Side of the Sky」(アンダーソン/スクワイア)、B-2「The Fish」(スクワイア)、B-4「Mood for a Day」(ハウのアコースティック・ギター・ソロ)あたり。
11分半に及ぶ大曲で代表作の一つとされるB-5「Heart of the Sunrise」(アンダーソン/スクワイア/ブラッフォード)は前半がちょっと大げさかなーとは思うけれど、後半のアコースティックなピアノ・ソロあたりからはもう大好きだ。
ただぼくはロック・バンドがクラシックの曲をアレンジして演奏するのにも興味がないので、ここに収められたリック・ウェイクマンのブラームスをおもしろいとは思わない。
おそらくすごいテクニックなんだろうけど…。
ELPの『展覧会の絵』なんかも当時はよく深夜放送でかかっていたりしたが、どこがいいのかさっぱりわからない。
ラヴェルが編曲したオーケストラ版のほうがよっぽどいいと思いますがね。

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さて話を『こわれもの』に戻すと、このアルバムは全英7位、全米では4位まで上昇し、ダブル・プラチナ・アルバムに輝いた。

ボーナス・トラックはサイモン&ガーファンクルの「アメリカ」(なんと10分半)と「ラウンドアバウト」のアーリー・ラフ・ミックスだ(これもおもしろい)。
これだけでも買いなおす価値があると思う。

紙ジャケはコーティングのないE式のゲイトフォールド・ジャケット。
内側にはざらっとした手触りの紙に歌詞が印刷されていて、さらにメンバーの写真などが載った8ページのカラー・ブックレットが綴じ込まれている。

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ライノ・マスター時の16ページのカラー・ブックレットもついているので、両方でこのオリジナル・ブックレットの中身を見ることができる。

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レーベルはレッド/マルーン、インナーは注意書きのあるタイプだ。

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ところでぼくは2001年の紙ジャケももっているので、ちょっと比較してみよう。

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2001年盤はUSオリジナル盤に準拠しているので紙ジャケはA式のゲイトフォールドだ。
内側の歌詞が印刷されたページは色味は少し違うものの、やはりざらっとした紙質のものだ。
16ページのカラー・ブックレットは綴じ込みではなく封入されている。

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はっきりとした表記はないが、おそらく1998年のデジタル・リマスターでHDCD仕様。
音はそんなに悪くないと思う。
レーベルは米アトランティックのオレンジ/グリーン・タイプだ。

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(ちょうど版権がエレクトラに移動していた時期で、オビにだけその表記がある)

さて、72年の『危機』は今回は購入しなかった。
したがってここでご紹介するのは2001年のUS盤準拠の紙ジャケだ。

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当時アナログのA面に1曲、B面に2曲というのはプログレのバンドのなかでもけっこう目立っていたような気がする。
とくにA-1の「Close to the Edgi」(アンダーソン/ハウ)は4部形式の組曲という形をとっているが、つぎつぎに曲想が変化していくのではなくて、いくつかのテーマがあってそれが有機的に繋がりながら変奏されていくという、クラシカルな手法が使われている。
イントロ、中間部、エンディングに効果的に入るSE、ロックの手法を大胆に逸脱したようなギター、まるでポップコーンがはじけるような軽快なシンセや壮大なハモンド・オルガン、疾走するベースとドラムス、一転して緩やかで広がりのあるコーラス等々、その構成はほんとうに緻密に組み立てられていて18分半があっという間に終わってしまい、なんど繰り返し聴いても飽きなかったものだ。

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B-1「And You and I」(アンダーソン)も4部構成の約10分に及ぶ曲だが、こちらはゆったりとした穏やかな安らぎの世界。
そしてB-2の「Siberian Khatru」(アンダーソン)もほぼ9分に及ぶ大作で、こちらは印象的なリフ(ハウ/ウェイクマン)が楽曲を引っ張りながらカラフルに変化してゆく、傑作の名に恥じない名曲だ。
そういう意味では『こわれもの』よりも完成度が高いと思っている。
もちろん欧米でも人気は高く、全英4位、全米3位を記録し、プラチナ・アルバムに認定されている。

紙ジャケは厚紙A式のゲイトフォールドだ。
オビや日本語解説に「紙の質感から添付物にいたる細部にまでこだわって」と書いてあるのでこれがオリジナルかと思っていたが、pinkislandさんによると、米盤もオリジナルはテクスチャー仕様だったようだ。
当時のイースト・ウエスト・ジャパンのリサーチ不足だろう。
それにしてもジャケットの内側に描かれたロジャー・ディーンの絵のなんと魅力的なことだろう。
現実には絶対にありえない、でもすごく心惹かれる風景。

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実際にボートで漕ぎ出して"close to the edge"というとこまで行ったらおそらくぜったいに帰って来れなさそうな、すごく恐いけれどどうしても行ってみたいような…いやあ天才です^^
で、ちょっと画像検索していたら「Chris Brennan さんのコメントボード」というところでこんな画像を見つけてしまいました(たぶんあのクリス・ブレナンとは違う人だと思うけど)。

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これマジ?
たぶんCGだよねー^^;

UK盤ではインナーバッグと兼用だった歌詞カードは、紙ジャケでは添付カードのかたちになっている。

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HDCDってけっきょくあんまり普及しなかったけれど、対応したプレイヤーで聴くとかなりアナログっぽい音で聴くことができてぼくはけっこう好きだ。
タグ:イエス
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tetsupc2

遼さんこんばんは\(。・o・。)/コンバンワ!
さすがは遼さん詳しい記事ですね。
私は「こわれもの」の続編が「危機」のように思えてこのアルバムは2枚でひとつのように思えます。
共にコンセプトがありストーリーがあるそんな2枚だと思います。
ロジャーディーンのアートもこの2枚が一番しっくりくるように思えます。
いや~先週からi-podでYesばかり聴いていますが何度聴いても名盤ですね。
by tetsupc2 (2009-08-05 23:22) 

tsukikumo

「こわれもの」の初盤LP帯には「豪華カラーブックレット付」の上に3文字分マジックで消した跡が有ったはずなんですが、流石にそこまではリアルに復刻されていないみたいですね。
いや、キャロル・キングの「つづれ織り」の初盤帯が「つずれおり」と誤植され、復刻帯もそれをリアルにマネていたのでちょっと期待していたのですが・・・
by tsukikumo (2009-08-06 00:15) 

路傍の石

ロジャー・ディーンのイラストは、日本の浮世絵からの影響をすごく感じさせる画風ですよね
(これまで言及されてきたことですが)。
特にディーンが初期の頃描いた風景ほど北斎に酷似しているように感じます。
北斎には『諸国名橋奇覧』という全11図からなる傑作がありますが、
これを西洋の風景で描くと見事にディーンのイラストそのものになるんじゃないでしょうか(笑)。

http://www.takahashi-kobo.com/hokusai-meikyo.html
by 路傍の石 (2009-08-06 13:00) 

Cold Sun

遼さん、こんにちは
「こわれもの」には荒削りなハード・ロック色が残っていますが、「危機」はイエスと言わずプログレ界シンフォニック・ロック系一の大傑作だと思いますよ。中だるみ無し、全曲一気に聴けるアルバムは滅多に無いです。昔、世界中のイエスもどき(笑)を聴いてみましたが、やっぱり本家本元ですね。
「危機」の英国オリジナル初回盤は見開きの内面もテクスチャー仕様です。「こわれもの」の英盤ジャケに飛行船のイラストが無い物があるとか、最近知りました。
by Cold Sun (2009-08-06 16:54) 

parlophone

tetsupc2さん、こんばんはー。
nice!&comment ありがとうございます。

>共にコンセプトがありストーリーがあるそんな2枚だと思います

なるほど、そうなんですか。
ぼくはイエスの歌詞を真剣に読んだことがないので、あまり感じないんですが、ファンの方は、やっぱり詞も非常に重要だとおっしゃいますね。
タイトルだけを考えても『こわれもの』であり『危機』なわけですから、現代の若者?あるいは人類に対する?警鐘という意味があるんだろうな、とは思いますが。

>ロジャーディーンのアートもこの2枚が一番しっくりくるように思えます

そうですね。
この2枚は描かれた情景も非常に具体的でわかりやすいと思います。

>先週からi-podでYesばかり聴いていますが何度聴いても名盤ですね

ぼくもブログを書くために久しぶりに何度も聴き返しましたが、40年経ってもちっとも古くならないのはさすがですね!
by parlophone (2009-08-06 20:17) 

parlophone

tsukikumoさん、こんばんは~。

>「こわれもの」の初盤LP帯には「豪華カラーブックレット付」の上に3文字分
>マジックで消した跡が有ったはずなんですが

そうなんですか!
ぼくは当時国内盤をリアル・タイムで買ったと思うんですが、マジックの修正には気づきませんでしたね~。
それともぼくが買ったのは、もうセカンド・プレスになっていたのかなあ…。

>キャロル・キングの「つづれ織り」の初盤帯が「つずれおり」と誤植され、
>復刻帯もそれをリアルにマネていた

そうでしたねー。
ただ今回の解説ブックレットには当時の誤植もそのまま掲載されています、みたいなことが書いてありましたけどね~。
by parlophone (2009-08-06 20:43) 

parlophone

路傍さん、こんばんはー。

>ロジャー・ディーンのイラストは、日本の浮世絵からの影響をすごく感じさせる
>画風ですよね

ああ、いわれてみればほんとそうですねー。
でもぼくは全然気がつきませんでした。
子どものころに父が買った『世界名画全集』のような本があって、切手を集めてたぼくは「切手趣味週間」の広重や北斎に興味をもって、よく眺めてたんですけどねー。

さすが路傍さん、貴重な示唆とリンクの紹介、どうもありがとうございました^^
by parlophone (2009-08-06 20:49) 

parlophone

Cold Sunさん、こんばんは!

>「危機」はイエスと言わずプログレ界シンフォニック・ロック系一の大傑作だと
>思いますよ

ああ、やっぱりそうなんですねー。
ところでぼくは「シンフォニック・ロック」という概念がイマイチよくわかってないんですが、これはどういうものなんでしょう?
(あ、もちろん説明するのが面倒ならばパスされて全然かまいませんが^^)

記事にも書いたように「いくつかのテーマがあってそれが有機的に繋がりながら変奏されていくという、クラシカルな手法」はあると思うんですが、これはクラシックなら(たとえば器楽曲なんかでも)ふつうにあることで「シンフォニー」の特徴ではないんですよね…。

>中だるみ無し、全曲一気に聴けるアルバムは滅多に無いです

たしかにそうですよね。
アルバム全3曲、最後まで一気に聴かせてしまうパワーをこのアルバムはもってますよね。

>「危機」の英国オリジナル初回盤は見開きの内面もテクスチャー仕様です

あ、これは今回のUK盤仕様の紙ジャケではきちんと再現されてます^^

>「こわれもの」の英盤ジャケに飛行船のイラストが無い物があるとか

どっひゃ~、そりゃまたすごいですね!
でもなんでまた、飛行船のイラストがないなんてことが…!!
by parlophone (2009-08-06 20:59) 

Cold Sun

遼さん、どうも~
イタロの「NEW TROLLS / Concerto Grosso Per I New Trolls(1971年)」のようにシンフォニア・交響曲(3楽章~4楽章)の形式で作られたアルバムも有ります。が、「シンフォニック・ロック」とは米国黒人音楽の影響よりも、欧州クラシック音楽の影響を強く受けたロックの総称でしょうか。クラシック音楽から影響を受けたと言う「シンフォニック・ジャズ」となんか似てますね。

80年代英国以外のプログレバンド発掘時、各国のイエスやジェネシスのフォロワーはシンフォニック・ロック、クリムゾン系(実際はユーライア・ヒープやヴァニラ・ファッジぽい)はヘヴィー・シンフォと大雑把に呼んでいました。その筋では(笑)
オーケストラは無くても、バンド演奏だけで音に厚みと広がりが有れば良く、メロトロンが有ればなお良かったです。
by Cold Sun (2009-08-07 17:11) 

Cold Sun

遼さん、訂正です。
「NEW TROLLS / Concerto Grosso Per I New Trolls(1971年)」は題名とおりの独奏楽器群(ワイルドなバンドの演奏)とオーケストラの対比ですね。バロック音楽の合奏協奏曲です。
by Cold Sun (2009-08-07 20:37) 

parlophone

Cold Sunさん、こんばんはー。
わがままなぼくの質問に丁寧に答えてくださり、感謝感謝です^^

>「シンフォニック・ロック」とは米国黒人音楽の影響よりも、
>欧州クラシック音楽の影響を強く受けたロックの総称でしょうか

なるほど、そういうことですね。
シンフォニーというのは要するにクラシカル・ミュージックを代表させてるということなんですね。
わかりました^^

>「NEW TROLLS / Concerto Grosso Per I New Trolls(1971年)」
>バロック音楽の合奏協奏曲です

コンチェルト・グロッソかー。
これ、なんとなくおもしろそうですね。
今度ちょっと探してみようかなあ。
あー、どんどんビートルズが高い壁になってゆく~(笑。
by parlophone (2009-08-09 00:27) 

Cold Sun

遼さん、追加工事です。
壁を、武者返しの石垣にしま~す(笑)。
先述のコンチェルト・グロッソと下記の2作品は、作曲家ルイス・エンリケ・バカロフが3つのイタロ・バンドと共作してます。ちゃんと弦楽あるいは管弦楽として作曲と編曲を行い、ロックバンドとオーケストラの融合実験をやっていますね。協奏曲、変奏曲、交響曲と徐々に完成度が上がっています。
「OSANNA / Milano Calibro 9(1972年)」
「IL ROVESCIO DELLA MEDAGLIA / Contaminazione(1973年)」

あと、水谷公生さんが作・編曲とバンドで参加している。
「山本道則 / 微笑(1975年)」
テリー・ヘンドリックス(笑)寺内先生の文芸プログレ!
「寺内タケシ&ブルージーンズ / 羅生門(1973年)」
なども、国産シンフォニック・ロックの好サンプルで、かなりの傑作だと思いますよ。

長年、外堀でそんな音盤やこんな音盤を・・・
私も、本丸のビートルズまで、たどり着けません。
by Cold Sun (2009-08-09 16:48) 

parlophone

Cold Sunさん、どうもです。

>追加工事です。壁を、武者返しの石垣にしま~す(笑)

げげっ、そ、そんなー。
もう乗り越えられないじゃないですか~~^^;

>作曲家ルイス・エンリケ・バカロフが3つのイタロ・バンドと共作してます

おお、じつはぼくはイタリアのバンドって聴いたことないんですが、オペラの本場ですからねー。
クラシックとの融合はイタリアのバンドだったら当然めざす部分があるんでしょうね。
DNAあたりに刷り込まれてるかもしれません(笑。

>協奏曲、変奏曲、交響曲と徐々に完成度が上がっています

おー、すごいですね。

>「山本道則 / 微笑(1975年)」

初めて聞きました(XoX)

>「寺内タケシ&ブルージーンズ / 羅生門(1973年)」

「運命」と「津軽じょんがら」しか知りません…(恥。

>長年、外堀でそんな音盤やこんな音盤を・・・

いや~、こういうのがササッと出てくるところがすごいですね。
ぜひ聴いてみたいと思います。
もちろん09/09以降になると思いますが…(笑。
by parlophone (2009-08-09 18:28) 

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