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イエスのアルバム――part 3 [紙ジャケ]

今回はライヴ・アルバム『イエス・ソングス』と、83年の再結成後にリリースされた『ロンリー・ハート 90125』をご紹介しよう。

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『イエス・ソングス』は1973年にリリースされた3枚組のライヴ・アルバム。
ご存知のように『危機』リリース直後にビル・ブラッフォードが脱退しキング・クリムゾンに参加したため、B-1「Perpetual Change」、D-2「Long Distance Runaround /The Fish」を除いて新加入のアラン・ホワイトがドラムスを叩いているヴァージョンが収められている。
アラン・ホワイトはビートルズ・ファンならよくご存知だと思うが、「インスタント・カーマ!」や「コールド・ターキー」など、プラスティック・オノ・バンドのメンバーとして、さらに『イマジン』でもドラムを叩いていた、あのアラン・ホワイトである。

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内容的には全盛期のイエスのライヴをあますところなく捉えた名盤といっていいと思う。
ジョンの声もよく出ているし、ハウ、ウェイクマン、スクワイアもヴィルティオーソぶりを見せつける。
ホワイトのドラムスがブラッフォードほどの迫力がないのは残念だが、コーラスもきっちりハモっていて、まさにスタジオ録音をライヴで再現しているのはほんとうにすごい。
アルバムは3枚組ながら全英7位、全米でも12位を記録し、アメリカではプラチナ・アルバムを獲得している。

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(バック・スリーヴ)

音源は今回のリイシューのうち唯一?ライノ・マスターではないので音が特段によくなったわけではないし、ボートラもない。
ただ今回の紙ジャケの最大の特徴はUKオリジナル盤のジャケットを再現していることである。
今までの紙ジャケはUS盤を復刻していて、解説などには「蛇腹」と書いてあったが、上から見るとアルファベットの"W"の形をしていた。
要するに開くと長い1枚のジャケットになるわけだ。
今回はオリジナルのUK盤に準じてそれぞれの収納部が綴じられたブック・タイプになっている。

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4つの収納部には3枚のディスクとカラー・ブックレットが入っていたのだろう。
今回の紙ジャケでは2枚のディスクとブックレット、そして日本語解説書が収められている。
そしてそこに描かれたロジャー・ディーンのイラストは壮大でイマジネイティヴなすばらしいものだ。

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インナーはイエスのロゴが入ったカスタム・インナーで、レーベルもUSアトランティックに比べるとかなり色の薄い、UK独特のレッド・グリーン・タイプだ。

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1980年のイエスの解散とその後の再結成についてはファンの方ならよくご存知だと思うが、いちおう簡単に書いておくと、1978年の『トーマト』リリース後、ジョン・アンダーソンとリック・ウェイクマンが脱退してしまう。
残ったメンバーは、隣のスタジオでセカンド・アルバムを録音していたバグルス(「ラジオ・スターの悲劇」の大ヒットで知られるユニット)をセッションに呼び寄せ、そのままバンドのメンバーにしてしまう。
こうしてトレヴァー・ホーンとジェフ・ダウンズをヴォーカルとキーボードに据えた新生イエスはアルバム『ドラマ』(1980)をリリースするが、オリジナル・メンバーで創作面のリーダーであり、ヴォーカリストとしてバンドの顔であったジョン・アンダーソンの不在は、やはりファンには受け入れがたかったのだろう、ヨーロッパ・ツアーのあと、イエスはついに解散してしまう。
このあとスティーヴ・ハウとジェフ・ダウンズは元キング・クリムゾンのジョン・ウェットン、元ELPのカール・パーマーとエイジアを結成し大ヒットを飛ばすのはみなさんもよくご存知でしょう。
残ったクリス・スクワイアとアラン・ホワイトは南アフリカ出身のギタリスト、トレヴァー・ラビンをバンドに入れ、さらにイエスの初代キーボーディストであったトニー・ケイを呼び寄せ"シネマ"というニュー・グループを発足させる。
さらにプロデューサーとしてトレヴァー・ホーンが招かれることになり、バンドは非常にイエス色の強いものになっていく。
こうしてシネマの作品が出来上がっていく過程でヴォーカルとギターを兼任するラビンの負担が非常に大きくなってゆき、スクワイアはジョン・アンダーソンにヴォーカルを要請することになり、こうして1983年イエスが再結成されることになったのである。

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完成されたアルバムは往年のプログレッシヴ・ロック・ファンにはどう受け止められたかわからないが、80年代らしいロック・アルバムになっていた。
もちろんぼくも最初からアルバムを聴いたわけではなくて、当時盛んにTVで流れていた「ロンリー・ハート」のPVを見てぶっ飛んだのだった。
とくにトレバー・ラビンのギターにシンクロしてチロチロと舌を動かす蛇の映像に衝撃を受けたのだ。
そして「そっかー、イエスってまだいたんだ」
「それにしても新しい時代のロックってこういう風に発展していくんだ」
と感慨にふけったものだ。
シタールを使って60年代サイケ風のアレンジでポップに仕上げたM-3「It Can Happen」(スクワイア/アンダーソン/ラビン)や、前身のバンドに敬意を表したインストゥルメンタルのM-5「Cinema」(スクワイア/ラビン/ホワイト/ケイ)、シングル・カットされたM-6「リーヴ・イット」(スクワイア/ラビン/ホーン)、70年代のイエスを髣髴とさせるM-9「Hearts」(アンダーソン/スクワイア/ラビン/ホワイト/ケイ)など、非常に充実したアルバムだ。
結果的にUKではアルバム・チャート最高16位と、思ったほどのセールスには結びつかなかったが、全米では新しいファン層を開拓したのだろう、最高5位まで上りトリプル・プラチナを獲得している。

2003年のライノ・マスターを使用し、「ロンリー・ハート」のエクステンデッド・ミックスや「リーヴ・イット」のシングル・ヴァージョンなど6曲のボーナス・トラックを収めている。

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紙ジャケはマット仕上げのような光沢のないE式のシングル・スリーヴ。
Yをモチーフにしたイラストにレコード番号をそのままタイトルにした『90125』という素っ気ないともいえるジャケットは逆にインパクトがあったと思う。
レーベルはアトコで、歌詞の印刷されたインナーが復刻されている。

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tetsupc2

遼さんおはようございますp(-o-)q …└(^0^)┘
『イエス・ソングス』いいですよね~私は今年の紙ジャケベスト5に入りますね。造りはワーナーさんらしく丁寧な出来ですし・・・金額も良心的です。
ただひとつ残念なのが前回の3CD→2CDになった事ぐらいです。でもCDを3回も入れ替える手間を考えれば効率的にこちらの方がいいかも?です。
音の方はもともとアナログ盤でも音がいいというほどではなかったので今回の音源は合格だと私は思います(*^ー゜)v
『ロンリー・ハート 90125』はアルバムとしては私は全て聴いていませんがシングル盤を買ってロンリー・ハートは80年代リアルタイムに聴いていました・・・当時はこわれもの、危機をよく聴いていましたのでロンリー・ハートの曲はビックリしました。
輸入盤では『90125』のみの表示だったとおもいますが当時はYESとは別物のバンドと言われて賛否両論でしたが今ロンリー・ハートだけ聴いてみるとこれも紛れも無くYESの名曲だなぁ・・・なんて懐かしく聴いてしまいました。(今はシングル盤も無いのでYouTubeで聴きました。それにしても私は今回『ロンリー・ハート 90125』は購入予定が全く無かったのですが今見ればあるときに買っておけば良かったと悔やんでいます(~∧~)
ナイス・タイミングで私も【イエスソングス】【海洋地形学の物語】をアップしましたので宜しかったらご覧下さい(相変わらず文書力無しですが・・・)(;^_^A
それと今回もトラバさせて頂きましたどうぞ宜しくお願い致しま~す(^_^)v

by tetsupc2 (2009-08-09 08:41) 

路傍の石

今回イエスの紙ジャケが大評判だそうで、改めて日本での彼らの人気の高さを実感させられました。拙はすでにアナログのアルバムでほぼすべて所有していて、2回目の紙ジャケ化のときにも主要なものは買ってしまっているので今回はパスしましたが。

さて、80年代の新生イエスについては拙は結構思い入れがありまして、『90125』は輸入盤で店頭に並んですぐに買って、相当聴き込みましたね。当時の産業ロックと言われたアメリカ市場にターゲットを絞ったエイジアの二番煎じになる危惧もあり、遼さんも触れられているとおりアメリカでもかなりヒットしましたが、それでありながら往年のイエスらしさもそこかしこに残っていて、これは傑作の1枚と捉えていいと思います。

ジャズの影響を大きく受けたブラッフォードと異なりソリッドでタイトなスタイルを身上とするホワイトの力量が最も発揮された1枚だと思いますし、ハウとは正反対のタイプでありながらもハウ以上にヴァーサタイルかつテクニカルなラヴィンの参加が、80年代においてもイエスを特別な存在たらしめたことが成功の要因だったと思います。

ところで遼さんは紙ジャケでは買われなかったようですが、87年リリースの次作『BIG GENERATER』もさらにモダンでイマジネイティヴな魅力満載の名盤でしたね。それでありながらもイエスのテイストがいささかも損なわれていないのは見事のひと言です!!もし未聴でしたらぜひお薦めいたします。

88年にはこのメンバーで日本の土を踏み、拙は代々木オリンピックプールで観ましたが、15年ぶりの来日にイエス当人たちの演奏以上に熱狂の渦だった会場の様子が今もまざまざと瞼の裏に蘇ってきます。肝心のメンバーのパフォーマンスは、アンサンブルのコンビネーションがイマイチで(ラヴィンが往年のハウのパートを完全に消化して自分のキャラで弾き切っていたのには驚きましたが)、拙にはあまりしっくり来なかったのが残念でした。
by 路傍の石 (2009-08-09 13:04) 

parlophone

tetsupc2さん、こんにちはー。
nice!&comment ありがとうござます。
トラバも了解いたしました^^
こちらからもよろしくお願いいたします。

>ただひとつ残念なのが前回の3CD→2CDになった事ぐらいです

ぼくはあんまりそのあたりのこだわりはありませんね。
安い方がいいかな(笑。
アナログに親しんでたわけではないので「おいおい、次の曲に行くのかよ!!」というような感覚がないからでしょうね^^;

>音の方はもともとアナログ盤でも音がいいというほどではなかった

ぼくはこのころの米アトランティックのロックの音がよくわからないのですが、少なくともジャズではあまりいい録音にはお目にかかりませんね。
今回の最新リマスターでもあんまり感心はしませんでした。

>輸入盤では『90125』のみの表示だったとおもいますが…
>今ロンリー・ハートだけ聴いてみるとこれも紛れも無くYESの名曲だなぁ・・・

もともとのタイトルはレコード番号の『90125』で、『ロンリー・ハート』というのは邦題ですね。
前にも書きましたが、このアルバムはいわゆるイエス流プログレッシヴ・ロックではありませんが、紛れもなく80年代の名盤だと思いますよ。
今回買えなくてもまたしばらくしたら再発があるのではないでしょうか^^

>相変わらず文書力無しですが・・・(;^_^A

とんでもないです!
楽しめましたよ~。
あとでコメントしにもう一度伺いますね♪
by parlophone (2009-08-09 17:58) 

parlophone

路傍さん、こんにちは~^^

>今回イエスの紙ジャケが大評判だそうで、改めて日本での彼らの人気の高さを
>実感させられました

そうみたいですねー。
ショップでずらりとディスプレイされているのを見たときは、あ、そうそうイエスの紙ジャケが出たんだ…ぐらいだったのですが、オンライン・ショップが軒並み品切れになったので、「うひゃ~、やっぱりイエスの人気はすげえなあ」と思って、とりあえず押さえるべきところを押さえました。
ほんとをいうと『こわれもの』は買う予定になかったのですが、ボートラとUK盤準拠ということで気がついたらレジに…(とほほ)。

>80年代の新生イエスについては拙は結構思い入れがありまして
>88年に…拙は代々木オリンピックプールで観ました

そうだったんですか。
ぼくは記事にも書いたように「ロンリー・ハート」のPVを見て、「へえ、イエスってまだ活動してたんだ~」と思う程度のファンだったので、ギタリストがトレヴァー・ラビンに交代していたことも知らなかったんですが、アルバムを聴いて「やっぱりスゲエわ、こいつら」と思いましたねー。

>当人たちの演奏以上に熱狂の渦だった会場の様子

思うんですけど、メロディーあたりはどちらかというと米国向けじゃなく日本人なんかに好まれるものがあるんじゃないでしょうかね。
メンバーの力量がすごいので、世界的にファンはたくさんいるんだと思いますが、「く~~、この曲沁みるなあ~」と思ってるのは意外に日本のファンがいちばん多かったりして…(笑。

>87年リリースの次作『BIG GENERATER』

うっ、このあたりはまったくノーマークです。
とりあえず今は買えないので中古ショップに出たらゲットしたいと思います^^;
ありがとうございました♪
by parlophone (2009-08-09 18:13) 

ryo

とりあえず「ロンリー・ハート」だけは購入しました。
・・・が・・・
「こわれもの」や「危機」が大好きな僕からすると、これはYesではありませんね。書いてらっしゃる通り、違和感を感じてしまいました。
なので「ドラマ」も購入予定でしたがスルーすることにしました。
プログレバンドとしてのピークは「リレイヤー」、もしくは「究極」あたりだったのでしょうかね???
とりあえずあと1~3回聴いてますが、とても同じバンドとは思えません。
ちなみに「イエス・ソングス」は売り切れだそうで、とほほ。
by ryo (2009-08-09 18:38) 

parlophone

ryoさん、こんにちはー。
夏休みで倉敷に帰省していたのでレスが遅くなって申し訳ありませんでした。

>「こわれもの」や「危機」が大好きな僕からすると、これはYesではありませんね

あ、やっぱりそう感じてしまいましたか。
70年代のプログレ・バンドとしてのYesとはまったく違う80年代のロック・バンドとしてのYesですね。
ぼくはこれはこれとして楽しめたんですけどね^^

>プログレバンドとしてのピークは「リレイヤー」、もしくは「究極」あたり
>だったのでしょうかね???

ぼくは両方とも聴いたことがないので、機会があれば聴いてみたいと思ってます。
両方ともまだ紙ジャケが残っているみたいですが、経済的にまったく余裕がありません…TT
by parlophone (2009-08-14 14:39) 

Zamora

こんにちは。

私もイエスは好きですが、とりあえず置いといて(え゛ぇぇぇ!)

明日(15日)NHK教育で、16:30佐野元春のザ・ソングライターズ「松本隆Part1」、23:25「松本隆Part2]が放送されます。

先週たまたまテレビをつけたら、Part1をやってて(明日のは再放送)面白かった。「松本さんの提供した詞を細野さんと大瀧さんが取り換えたりして曲を付けてた」なんてハナシとか、「風をあつめて」のこととか初耳も色々あって。放送の半分位からしか観てないので私ももう一度観ます。

放送をご存じ無かったらと思って、急ぎお知らせします。既にご存じだったら申し訳ありません。お許しを。
by Zamora (2009-08-14 15:07) 

parlophone

Zamoraさん、ありがとうございます!

サノモトのソングライダーズは何回か見たことがありますが、松本隆編は見逃せませんね!!
(←って、見逃してました^^;)

さっそくHDDに予約をしておきたいと思います。
ありがとうございましたーーー^^
by parlophone (2009-08-14 18:55) 

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