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サイモン&ガーファンクル 『ライヴ 1969』 [アメリカン・ロック]

一昨年リリースが告知されていながら発売中止になっていた、サイモン&ガーファンクルの『ライヴ 1969』がついにリリースされた。
国内盤は6月24日にSony Music から発売予定だが、輸入盤なら1,600円台で買えるものをこの時期に2,520円出すのはいかにもつらい。
と、いうことでUS 盤をご紹介しよう(笑。

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      (上の画像をクリックすると"HIGH-HOPES"の特集ページに跳びます)

今回のライヴ・アルバムはタイトルにもあるとおり、彼らが解散してしまう前年の1969年10月から11月に行われた全米ツアーから6か所のコンサートの模様が収録されている。
ミシガン州デトロイト(10月31日)、オハイオ州トレド(11月1日)、イリノイ州カーボンデイル(11月8日)、ミズーリ州セントルイス(11月?日)、カリフォルニア州ロング・ビーチ・アリーナ(11月15日)、そして11月27日のニューヨーク、カーネギー・ホールの6か所だ。
あの『明日にかける橋』が完成した直後のライヴということで、収録曲も魅力だし、内容に対する期待も高まる一方で、アルバム制作中にはギクシャクしたという二人のパフォーマンスも気になるところだ。


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収められた曲はこれまで完全未発表のライヴ全17曲。
1966年のアルバム『サウンド・オヴ・サイレンス』から4曲、同じく66年の『パセリ・セイジ・ローズマリー・アンド・タイム』から4曲、68年の『ブックエンド』から3曲、そしてこの時点ではまだ未発表だった『明日に架ける橋』(1970年)から5曲。
さらにジーン・オートリーのカヴァー「ザット・シルヴァー・ヘアード・ダディ・オヴ・マイン」という内容だ。

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アルバムはサイモンのギターだけをバックにした「早く家に帰りたい」から始まる。
66年に全米5位にまで上ったこの曲を、二人はじつに丁寧にそしてすこぶるグルーヴィに歌い上げる。
M-2「動物園にて」では繊細かつ大胆なポールのギター・ワークと、完璧な二人のハーモニーを聴くことができる。
4曲めには「ニュー・アルバムからの曲をご紹介します」というMC とともに「ソング・フォー・ジ・アスキング」が登場し、M-5「エミリー・エミリー」でのアートのほんとうに美しく魂のこもった歌唱、そしてM-6「スカボロー・フェア/詠唱」で最初のクライマックスが訪れる。
サイモン&ガーファンクルのライヴといえば、これまでは81年のセントラル・パークでの(再結成)コンサートがポピュラーだったわけだが、あのときは二人のデュオで聴かせるタイプの曲でもアートのヴォーカルが中心だった。
今回のライヴはまだ現役だったときのものだから、ちょっとしたフレーズでも二人の情感を込めたほんとうのデュオを聴くことができる。

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(アルバム『明日に架ける橋』リリース40周年を誇らかに謳う金色のステッカーつき)

つづくM-7「ミセス・ロビンソン」からはエレクトリック・セットだ。
(この曲だけキーキーというノイズっぽい音が入るのだが、これは効果音なのだろうか?)
バックを務めるのはフレッド・カーター・ジュニア(g)、ラリー・ネクテル(key)、ジョー・オズボーン(b)、そしてハル・ブレイン(ds)という腕利きの超大物スタジオ・ミュージシャンで、いずれもアルバム『明日に架ける橋』に参加をしていたミュージシャンだ。
ここでは先行シングルとして全米7位を記録したM-8「ボクサー」や、M-9「手紙が欲しい」、M-10「フランク・ロイド・ライトに捧げる歌」などの『明日に架ける橋』収録曲がメインだ。
「ボクサー」ではスタジオ・ヴァージョンにはない歌詞も聴けるし、アルバムではどうしても感傷的に響いてしまってこころがシクシクした「フランク・ロイド・ライトに捧げる歌」も、ここではボサ・ノヴァ調でクールに響く。
そしてM-12「明日に架ける橋」はラリー・ネクテルのピアノをバックに美しい声で歌い上げるアートの熱唱が感動的だ。
カーネギー・ホールに詰めかけた聴衆は初めてこの曲を耳にしたわけだが、会場が割れんばかりの歓声に包まれるようすがこのアルバムからわかる。

M-13「サウンド・オヴ・サイレンス」から再びポールのギターだけをバックにしたアコースティック・セットになる。
全米3位を記録した大ヒット曲、M-14「アイ・アム・ア・ロック」、静謐な名曲M-15「オールド・フレンズ/ブックエンドのテーマ」をはさんで、懐かしいM-16「木の葉は緑」、イギリス時代のポールのメランコリックな名曲M-17「キャシーの歌」でアルバムは終わる。

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これまではベスト盤などで「エミリー・エミリー」と「キャシーの歌」の69年のライヴ・ヴァージョンが登場していたが、いずれも本アルバムのライヴとは異なるテイクが使われていた。
また、97年にリリースされた3枚組ボックス・セット『オールド・フレンズ』にも「ザット・シルヴァー・ヘアード・ダディ・オヴ・マイン」のライヴ・ヴァージョンが収録されていたが、そちらは11月28日のカーネギー・ホールでのライヴ、今回のヴァージョンはロング・ビーチでのライヴである。

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(バド・スコッパのライナーが載った12ページのブックレット)

最後に疑問をひとつだけ。
その『オールド・フレンズ』のブックレットによると「明日にかける橋」のアルバム・ヴァージョンのレコーディングは1969年11月9日になっている。
とすると、イリノイ州からミズーリ州にかけての全米ツアー中に録音したということになるのだが、そうなのだろうか?
オリジナル・ブックレットに載せられたバド・スコッパのライナーによるとアルバムを完成させたあとツアーに出たことになっている(そっちのほうが常識的だ)。
"They embarked on the tour soon after completing Bridge Over Troubled Water..."
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Jun-Chan

久しぶりにカキコさせていただきます。

ほんとはビートルズが一番好きなんだけど、サイモンとガーファンクルもやっぱり外せません。
彼らは来月、東京、大阪、名古屋、札幌と公演をしてくれますが、1990年代の福岡ドームを見てから、ドームで彼らを聞くのはちょっと?
今回福岡にも来たなら行ったでしょうけどね。

さてご紹介のアルバムは聞いてみたかったですね。
1969年のライブは彼らのハーモニーが一番ベストな時期だったんじゃないでしょうか?天神まで出ますので、タワーレコードを覗いてこようかな。
発売されていたのを知りませんでしたので、アップしていただき、ありがとうございました。
 
by Jun-Chan (2009-06-05 08:48) 

ニブ

こんばんは

CD BOX等のデータでは「明日にかける橋」のレコーディングは、このツアー中にも行われていますね。

ちなみに、(黄色犬印の)CD、11月11日のオハイオでのライヴの中で、アートが「ニュー・アルバムは98%できてる」とMCで語っておりますので、まだ完成とまではいってなかったんでしょうかね。
by ニブ (2009-06-05 21:49) 

MORE

この音源、素晴らしいですよね。
なんで今まで出さなかったの?
アーティーが結構しゃべっているのが楽しいですね。
二人の声もハーモニーも素晴らしいの一言。
「ブックエンズ」で人気も評価も頂点に向っていた頃でしょうから
自信に満ち溢れたステージ、ということなんでしょうね。
新曲であった「明日に架ける橋」への拍手喝采を聞くと、この名曲を初めて「生」で聴いた人達がうらやましくなりました・・・

これが聴ければ今回のコンサートは行かなくてもいいような気分です。(謎爆)
by MORE (2009-06-05 23:48) 

parlophone

Jun-Chanさん、こんばんはー。

>ほんとはビートルズが一番好きなんだけど、サイモンとガーファンクルもやっぱり
>外せません

おっしゃるとおりでございます(笑。
アメリカでは一時期サイモン&ガーファンクルに対して「ビートルズのモノマネだ」などという中傷の言葉が浴びせられたそうですが、とんでもない話ですね。

>1990年代の福岡ドームを見て

おお、それはうらやましい。
ぼくの周りにも福岡ドームで彼らを見た人たちが何人かいます。

>今回福岡にも来たなら行ったでしょうけどね

ぼくも行きたかったですねえ。
最近の大物アーティストはなかなか福岡まで来てくれなくなりましたね。
クラプトンにしてもベックにしても…。

>天神まで出ますので、タワーレコードを覗いてこようかな

ぜひ覗いてみてください。
タワレコは1,690円です(←おまえは回し者か…笑)。
by parlophone (2009-06-06 00:14) 

parlophone

ニブさん、こんばんはー。

>CD BOX等のデータでは「明日にかける橋」のレコーディングは、このツアー中にも
>行われていますね

あ、やっぱりそうなんですか。
じゃあ、ボックス・セットの表記は間違いじゃないんですね?

>ちなみに、(黄色犬印の)CD、11月11日のオハイオでのライヴの中で
>アートが「ニュー・アルバムは98%できてる」とMCで語っております

おお、そうですか!
ありがとうございます。

黄色犬印はS&Gもちゃんと出してたんですね。
聴いてみたい!(笑
by parlophone (2009-06-06 00:26) 

parlophone

MOREさん、どうもです。

>なんで今まで出さなかったの?

ほんとそうですよね。
70年代の、S&Gに対するファンの熱が熱かったころだったらすごいベスト・セラーになったでしょうに。
権利関係でうまくいかなかったのかな?

一昨年の9月にリリースされる予定だったのが2年近く延びたのも、なにかあったんでしょうね。

>新曲であった「明日に架ける橋」への拍手喝采を聞くと、この名曲を初めて「生」で聴いた
>人達がうらやましくなりました・・・

ほんとですねー。
この曲と「天国への階段」は、リリース前に生で聴いてみたかった(笑。
by parlophone (2009-06-06 00:31) 

黒ちゃん

毎回、お久しぶりです^^;
興味深い内容ながら無知なもんでコメントできないでいます(T T)

基本的に情報収集してないので、このアルバムは偶然見つけ入手したんですけど、最初はブートかと思ってしまいました。
黄色犬印のブートはしっかり持っているんで「まさか同じじゃないだろうね?」と疑いながら裏ジャケをチェックして「オフィシャルじゃ~!」と喜び購入いたしました。


ちなみにブートCDですが、
'68年のハリウッド・ボウル、'69年のオハイオ、'70年のアムステルダムとスタジオ・アウトテイク集を所有しております。


by 黒ちゃん (2009-06-10 22:26) 

parlophone

黒ちゃんさん、こんばんはー。
お久しぶりです。

>最初はブートかと思ってしまいました

最近はオフィシャルみたいなブートとか、ハーフ・オフィシャルとか、ブートみたいなオフィシャルとか訳わかんねってやつが多いですよね。

>'68年のハリウッド・ボウル、'69年のオハイオ、'70年のアムステルダムと
>スタジオ・アウトテイク集を所有しております

わあ、欲っすぃ~。
考えてみたらブートってビートルズとゼップとCSNYしか持ってないですね…。

今度ちょっと探してみま~す(←ってもうないか^^;)
by parlophone (2009-06-11 00:28) 

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