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ビーチ・ボーイズのアルバム――part 1 [紙ジャケ]

6月25日にビーチ・ボーイズの紙ジャケが21枚リリースされた。
そのうちの17枚はキャピトル時代の再発(1962年のデビュー・アルバム『サーフィン・サファリ』から70年のライヴ『'69』まで)だが、残りの4枚は待望のブラザー・レコード時代の作品だ。

…などとエラそうに書いてるけれど、ぼくのビーチ・ボーイズに対する興味関心はほとんどMASA さんの影響なので、ほんとうはMASA さんにじっくり解説してほしいところなんだけど(笑。

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さて、6月から8月にかけてリリースされる11枚の紙ジャケのうち、今回ぼくが購入したのはブラザー・レコード(リプリーズ)移籍第1弾の『サンフラワー』(1970.8.)と、つづく第2弾『サーフズ・アップ』(1971.8.)だ。

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『サンフラワー』は当時としては最新の16チャンネルのレコーダーを駆使したアルバムで、かれらの美しいコーラス・ワークが満喫できる。

66年の『ペット・サウンズ』を頂点に、ドラッグと精神的な昏迷に陥っていたブライアンが久々にジャケットの表と中で元気な顔を見せているが、アナログではB 面のラストに収められていたM-12Cool,Cool Water」を聴けば、この当時のブライアンが依然として天才的なミュージシャンだったことがわかるだろう。
出だしの4小節を聞いただけで、そのすばらしさに鳥肌が立つ。

ブライアンはそのほか M-3Add Some Music to Your Day」、M-5Deirdre」、M-8All I Wanna Do」、M-10Our Sweet Love」、M-11at My Window」の5曲にソングライターとして名を連ねているが、そのいずれもがすばらしい出来だ。
「日曜の朝のゴスペルは魂に沁み入る」(宮治ひろみ訳)と歌い出される音楽に対する愛が溢れる「Add Some Music~」や、愛することの幸福感に満ちた「Our Sweet Love」の美しさも筆舌に尽くしがたいものだ。

もうひとつ特筆すべきなのがブルース・ジョンストンのソング・ライター、シンガーとしてのすばらしさ。
ブライアンとの共作「Deirdre」、単独のペンになる M-7Tears in the Morning」のいずれもがブルースらしい美しいメロディに彩られた傑作で、とくに後者はアコーディオンやピアノにストリングスといったアレンジもすばらしい。
この曲から始まるアナログ盤のB 面はとちゅうにデニス・ウイルスンの美しいバラード M-9Forever」を挟んで、まったくの隙もない完璧な作品だ。

紙ジャケはコーティングのない厚紙A 式のゲイトフォールド・スリーヴ。

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ちゃんとブラザー・レコードのトレードマークも再現されている。

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明るい光に満ちたジャケットの『サンフラワー』とは対照的に異様に暗いのが『サーフズ・アップ』のジャケットだ。

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アルバムはアル・ジャーディンとマイク・ラヴの共作になる M-1Don't Go Near the Water」で幕を開ける。
エフェクターを使ったエレクトリック・ギターとピアノの不協和音的な奇妙なイントロで始まるこの曲は、ビーチ・ボーイズらしくないタイトルと、「歯磨き粉やら石鹸やらで僕らの海はバブル・バスになっちまう」(宮治ひろみ訳)という歌詞によっていち早く環境問題について提起しているのだが、こりゃやっぱりCapitol では発売できなかっただろうなあ(笑。

このアルバムもカール・ウイルスンの M-2Long Promised Road」、ブルースの永遠の名作 M-4Disney Girls (1957)」、リーバー=ストラーの「第9監房の反乱」にマイク・ラヴが新しく手を加えた M-5Student Demonstration Time」、映画『あの頃ペニー・レインと』にも使われたカール作 M-6Feel Flows」など名曲ぞろいだと思うが、やはり最大の聴きものは『SMILE』時代にブライアンがヴァン・ダイク・パークスと作ったタイトル・ソング M-10Surf's Up」だろう。
わずか4分少々という短さのなかに美しいメロディとコーラスが複雑な構成で展開されてゆく同曲は、まぼろしのアルバム『SMILE』(1966)のために書かれた1曲で、ブライアンの新曲 M-9'Till I Die」のあとに置かれることでさらに深みを増したといえるだろう。

紙ジャケはニス塗りのような光沢のある厚紙A 式のシングル・スリーヴ。

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ひび割れた大地の写真、裏には歌詞とメンバーのスナップが載せられた2つ折のインサートが復刻されている。

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それにしても、インナーもつかないごくふつうの紙ジャケが2,600円とはねえ…。
これが1,890円だったらもっと多くの人がブラザー時代のビーチ・ボーイズのすばらしさに触れられるのに…と残念に思ってしまう。
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コメント 15

MASA

おーっ!ゲットしたんですね。
大ファンの私がいちばん買わなきゃならないとこなんですけど、ほかに欲しいものがありすぎて、アナログあるからいいや、ということで結局スルーしてしまいそうです(泣)。

この2枚は内容が陰と陽で対照的ですが、両方ともやはり名作ですね。
ちなみにUK盤や東芝時代の国内盤の「SUNFLOWER」には1曲目に当時最新シングルだった「コットンフィールズ」が収録されてます。
そのうち私のサイトで取り上げますね。

「オランダ」もオススメなんですけどねー。
出来ればそちらも是非^^。
by MASA (2008-07-09 01:07) 

POPOSUKE

遼さん こんばんは

この紙ジャケは2600円ですか・・・

この値段だとオリジナル盤を買ってもお釣りがきますね。
私は2枚ともUSオリジナル盤を持っておりますが、2枚合わせて3000円ちょっとくらいだったと思います。

>これが1,890円だったらもっと多くの人がブラザー時代のビーチ・ボーイズのすばらしさに触れられるのに…と残念に思ってしまう。

同感ですね!
もう少し良心的な価格設定にしてもらいたいですね。
せっかくの良いアルバムなのですから!
by POPOSUKE (2008-07-09 02:43) 

MASA

えーっ、POPOSUKEさん、2枚で3,000円ちょっとなんて安すぎですよ(笑)。逆にいい買い物しましたね。
もちろんコンディションにもよりますが、今だと大体1枚が3,000円前後だと思います。

いずれにせよReprise時代のオリジナルは比較的安くて入手しやすいですね。
by MASA (2008-07-09 16:11) 

parlophone

MASAさん、どうもです。

買っちゃったんですよー^^

>ほかに欲しいものがありすぎて

林檎とか、Perfume とか、デニス・ウイルソンとか、いろいろありますもんねー。

ぼくもニック・ドレイクのBOX とか、『ストレンジャー』の30th アニヴァーサリーとか、ゼップのBOX とか、ほしいものはいろいろあるんですけどね~。
果たして買えるんでしょうか(笑。

>UK盤や東芝時代の国内盤の「SUNFLOWER」には1曲目に
>当時最新シングルだった「コットンフィールズ」が収録されてます

えーーーっ!そうだったんですか。
あのCCR とかで有名な「コットンフィールズ」ですか?
おもしろいですね~。

MASAさんの特集、楽しみにしてますね^^

>「オランダ」もオススメなんですけどねー

そうですよね~。
探検隊の掲示板拝見して、ああ『オランダ』も聴かなくちゃ~と思ったんですけど、とりあえず紙ジャケでなくてもいいかなあ…と思ってます^^;
by parlophone (2008-07-09 21:49) 

parlophone

POPOSUKEさん、こんばんはー。

>この値段だとオリジナル盤を買ってもお釣りがきますね

えーーっ、マジですか?
MASAさんの書き込みがあったので、少し落ち着きましたが(笑)、ブラザー時代のオリジナル盤ってそんなに安いのか!と椅子から転げ落ちそうになりましたよ~。

それにしても音楽的な内容からすると信じられないくらいの低評価・低人気だったんですよねー。
全米チャート・アクションは150位ぐらいが最高ですよね。
信じられん!!

ぼくも今度オリジナル盤探してみよっと^^
by parlophone (2008-07-09 21:59) 

MORE

お久です…やっと参加できるネタが出てきました。(笑)

>UK盤や東芝時代の国内盤の「SUNFLOWER」には1曲目に
>当時最新シングルだった「コットンフィールズ」が収録されてます

そうなんです。それで私もわざわざUK盤を買いました。
レーベルがStatesideだったかな?
Sunflowerはご指摘の通り(タイトル通り?)明るいアルバム、Surf's Upは暗い(BB5にしては、ですが)アルバムです。
個人的にはSurf's Up(特にB面)の方が好きです。

それにしても2600円って・・・

by MORE (2008-07-09 23:36) 

parlophone

おやー、MOREさん、お久しぶりじゃないですか!
お元気でしたか?

>それで私もわざわざUK盤を買いました。レーベルがStatesideだったかな?

へえ~、Statesideって英国ではワーナー系なんですか。
レーベルからいってもUK盤おもしろそうですね。
ぼくも探してみようかなあ。

>個人的にはSurf's Up(特にB面)の方が好きです

なるほどなるほど^^
アナログでいうとB面の3、4、5にならないとブライアンが出てこないという、そういう仕掛けもおもしろいですよね。
B-3は「A Day in the Life」というタイトルがドキッとさせますが、やっぱりB-4~5の流れは最高ですねーー^^
by parlophone (2008-07-10 00:32) 

ouichi

遼さん、こんばんは。
『サンフラワー』僕も好きです。
爽やかってだけでなく完成度が高いですよね。
当時は大ヒットしたわけではないと思いますが
時代を超えた名作だと思います。
『サーフズアップ』のジャケは驚きましたね~。
数年前にHMVか何かのネットで知ったのですが、
画像の貼り違いだろう、と思いました。
ビーチボーイズのイメージに合わなくて、
いまだ聞いていない作品です...。
by ouichi (2008-07-10 00:45) 

MASA

三たびどうもです^^。
「SUNFLOWER」からUSではRepriseに移籍しましたが、なぜか日本やUKなどほかの国ではこの2枚に限りCapitol時代から引き続きEMI系列からStatesideレーベルで発売されたんですよねー。
それで日本では東芝から出てましたし、UKでもEMIから出てました。
「コットンフィールズ」はCCRなどでもおなじみのトラディショナル・ソングですが、この曲はCapitolから出たシングルですしね。
なぜこうなったのかは私もよく知りません。
by MASA (2008-07-10 04:17) 

parlophone

ouichiさん、こんばんはー。

>爽やかってだけでなく完成度が高いですよね

ほんとそう思います。
70年というとまだロックを聴いていた年代なんですが、ギターがラウドに鳴るハードなバンドばかり追いかけてたので(それこそマウンテンとか)、当時はビーチ・ボーイズを聴こうなんて思ってもみませんでした。
いまから考えるとまったくもったいないことをしたととても残念です。

>『サーフズアップ』のジャケは驚きましたね~
>画像の貼り違いだろう、と思いました

たしかに異様に暗くて、しかも意味のわからないジャケですよね。
でも内容的にはかなりいいと思います。
『サンフラワー』とはペアで陰と陽みたいに感じますが、暗いばっかりのアルバムではありません。
ぜひ一度聴いてみてください^^
by parlophone (2008-07-10 23:11) 

parlophone

MASAさん、どうもです。

>日本やUKなどほかの国ではこの2枚に限りCapitol時代から引き続き
>EMI系列からStatesideレーベルで発売されたんですよねー

ああ、そうだったんですか。
Capitolとの契約終了に伴っていくつかのレコード会社からオファーを受けたそうですが、海外ではEMI系のStatesaide との配給契約を結んだのかもしれませんね。

>「コットンフィールズ」…はCapitolから出たシングルですしね

ええっ、そうだったんですか~。
アルバムの契約は終了してもシングルの契約が残っていたのでトラディショナルでお茶を濁したのかもしれませんね~。

まったく関係ありませんが今朝のめざまし、リンゴがインタヴューを受けてましたね。
ご覧になりましたか?
意外の親バカぶりでおもしろかったです^^
by parlophone (2008-07-10 23:18) 

PETTY

遼さん、こんにちは。
ご無沙汰しております。
「Surf's Up」のジャケについて少しお話させてください。
このデザインのモチーフは「End of the Trail」という彫刻が元なんです。西部開拓により、排除さてて行ったネイティブ・アメリカンの悲しい歴史を忘れない為に造られた大きな彫刻です。

この彫刻はオクラホマの
「National Cowboy and Western Heritage Museum」
にあります。

http://www.mitzenmacher.net/blog/?p=960

「Surf's Up」の難解な歌詞でも解るように、ブライアンやヴァンダイクには共通の原風景があり、その原風景は、そうしたネイティブ・アメリカンの迫害以降の情景。その情景の裏にある悲しい歴史を忘れないアメリカ人も多いはずです。
「Surf's Up」のイラストのそんな行き場を失いながらも、安息の地を求めてさすらう運命の重さや悲しみで溢れています。だから印象が暗く重いものになっていますね。

遼さんが以前買われたAmerikaの「Home Coming」のジャケにもこの「End of the Trail」のシルエットが出てきます。

Amerikaもそうですが、アメリカのミュージシャンやアーティストはこの「End of the Trail」をモチーフにしたデザインが好きですね。ただカッコイイだけじゃない、国の歴史の中で忘れてはいけない「残虐な過去」として心に刻んでいるんでしょう。

同じような意図で使っているのだと思えるのが
「ブラザー・レコード」のマーク。
これもある種、平和の祈りですね。

確かに「Surf's Up」のジャケットは暗い。
前作と比べたら内容も重い。
「Surf's Up」のジャケットには、混沌とした時代の中で苦しむメンバーの心と「End of the Trail」、そしてブライアンの原風景ななどがリンクしてるんじゃないですかねぇ〜

勝手な妄想&憶測長文・・・失礼いたしました。

by PETTY (2008-07-11 10:59) 

parlophone

PETTYさん、こんばんは~。
コメントありがとうございました。

PETTYさんの詳しい解説を読んで、やっと『サーフズ・アップ』の暗いジャケットの意味がわかりました。

>「Surf's Up」のイラストはそんな行き場を失いながらも、安息の地を求めてさすらう
>運命の重さや悲しみで溢れています

ほんとうにおっしゃるとおり、重たくて悲しい、しかし忘れることなく大切にしていかなければならない思いに満ちたイラストだったのですね。

>遼さんが以前買われたAmericaの「Home Coming」のジャケ

ほんとうですね。
目立たない、しかしジャケットを広げたときに厭でも目に飛び込んでくる位置にしっかりと描かれていますね。

それにしてもネイティヴ・アメリカンの人々の悲しい歴史をしっかりと刻み込んでおく、こういう施設やそれを描く音楽がこうしてちゃんと存在しているのがすばらしいですね。

>「Surf's Up」のジャケットには、混沌とした時代の中で苦しむメンバーの心と「End of
>the Trail」、そしてブライアンの原風景ななどがリンクしてるんじゃないですかねぇ~

PETTYさんのこのコメント、忘れないようにこころに刻んでおきたいと思います。
by parlophone (2008-07-12 22:56) 

MASA

PETTYさん、サスガです。
ジャケやBrotherレーベルのデザインにネイティヴ・アメリカンの歴史が背景にあるのは知ってましたが、ここまで詳しくはさすがに知りませんでした。
私も勉強になります^^;

そうなんですよね、このジャケは当時アメリカ本国では半ば忘れ去られようとしていたブライアンはじめビーチ・ボーイズのメンバーみんなの行き詰まりや焦燥感のようなものをこのデザインで象徴したとしか思えないんです。

それでも地道にコンサート活動だけは休むことなく続け観客動員数だけはものすごい数をキープしていたんですが、これにより結束が緩むこともなく解散の危機を迎えずにグループを続けてこられた要因ですねー。
by MASA (2008-07-13 00:54) 

parlophone

MASAさん、どうもです。

>このジャケは当時アメリカ本国では半ば忘れ去られようとしていたブライアンはじめ
>ビーチ・ボーイズのメンバーみんなの行き詰まりや焦燥感のようなものを
>このデザインで象徴したとしか思えないんです

そうかあ、ブライアンだけじゃなくビーチ・ボーイズにとっても冬の時代だったわけですね。

>地道にコンサート活動だけは休むことなく続け

当時の観客が求めていたのは「サーフィン・アンド・ホットロッドのビーチ・ボーイズ」だったでしょうから、そんなコンサートと並行してこれだけの作品を作っていくという、やっぱりかれらはビートルズと並び称されるべきすごいバンドだったわけですね。
by parlophone (2008-07-13 01:29) 

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