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マウンテンのアルバム――part 2 「ロックの総合格闘技?」の巻 [紙ジャケ]

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今回は1971年にリリースされた2枚のアルバムをご紹介しよう。

マウンテンとしての2nd アルバム(レズリー名義のファースト・ソロをカウントすれば3枚め)『ナンタケット・スレイライド NANTUCKET SLEIGHRIDE』は1971年1月のリリース。

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レズリー・ウェストとフェリックス・パパラルディの才能と力量が拮抗した代表的アルバムだ。
マウンテンのアルバムのなかでどれか1枚を選べといわれたらやっぱりコレかなあ。
レズリーはM-1、4、6、9の4曲、フェリックスはM-4と6を除く7曲にかかわっている。

アルバムはマイナー・モードの印象的なオルガンのうえにレズリーの豪快なヴォーカルとギターが爆発するM-1Don't Look Around」で幕を開ける。

つづいてピアノの淋しげな序曲M-2Taunta(Sammy's Tune)」を挟んでタイトル・チューンM-3Nantucket Sleighride(To Owen Coffin)」がゆるやかに始まる。
メルヴィルの有名な小説『白鯨』の舞台にもなったナンタケット島は、当時パパラルディ夫妻が住んでいた場所だそうだが、その島に伝わる伝承をモティーフに書き上げたこの曲が、マウンテンの代表曲となった。
パパラルディの妻ゲイル・コリンズは、クリームのころから作詞家としても活動してきたが、ここでは作詞、ジャケットのイラスト、ブックレットや挿画のアート・ディレクターとしてアルバム全体のイメージを作るのに重要な役割を果たしている。

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クラシカルで幻想的な様式美を備えた「ナンタケ」が終わると、シンプルでキャッチーなM-4You Can't Get Away!」というように、このアルバムは曲調の異なる楽曲をうまく配置してダイナミックな流れを作り出すのに成功している。

ジミ・ヘンドリクスにささげたM-5Tired Angels(To J.M.H.)」、パパラルディが亡き母を偲んで書いたM-8Travellin' in the Dark(To E.M.P.)」、パパラルディをアニマル・トレーナーに、自分をヒキガエルに喩えたレズリー作のユーモラスなM-6Animal Trainer and the Toad」など、とにかくギター、ベース、ドラムス、キーボードが有機的に結合して間然するところがない。

レズリーのブルーズを基調としたロック、パパラルディのクラシックの素養とプログレ的な展開、ゲイル・コリンズのアート・ディレクションと詞の世界、『白鯨』の世界をモティーフにした文芸趣向…といったように、マウンテンはさまざまな側面をもった、まさに一筋縄ではいかないバンドだったのだ。

紙ジャケは光沢のない厚紙A 式のゲイトフォールド・スリーヴ。
16ページにわたるオリジナル・リリックス・ブック、国内初盤LP についていた8ページの解説書を復刻しているほか、2枚のポートレイトも封入されている。

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   (これだけのものがついて1,890円。大丈夫??)

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   (上が国内盤解説書、下がリリックス・シートの復刻版だ)

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   (モノクロのポートレイト)

インナーバッグは白のプレーンなもの。
レーベルもオリジナルのwindfall をイメージしたものだ。

3rd アルバム『悪の華 FLOWERS OF EVIL』は同じ1971年の11月にリリースされた。

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こちらはA 面がスタジオ録音、B 面がライヴ・レコーディングで、クリームの『WHEEL OF FIRE』のような構成になっている。
タイトルにはボードレールの有名な詩集『悪の華』を借用して、ここでも文学的な香りを音楽の世界にもち込んでいる。

スタジオ録音はドラッグ禍とベトナム戦争を結びつけて描いた反戦的なタイトル・チューンM-1Flowers of Evil」に始まり、前作を踏襲するかのように序曲的なM-2King's Chorale」を挟んでM-3One Last Cold Kiss」が展開されるという流れ。
クリームを髣髴させるブルーズ・ロックM-4Crossroader」、7分を超えるプログレ的な展開のM-5Pride and Passion」と充実している。

B 面はレズリーのギターとヴォーカルに焦点を当てた構成で、シングル1発のレス・ポール・ジュニアから多彩なサウンドを引き出すレズリーのギターが堪能できる。
ピッキング・ハーモニクスやヴァイオリン奏法など、いまでは高校生でも弾けるような一般的なテクニックだが、当時は目新しい奏法だったのだろう、客席はどよめきに満ちている。
マウンテンがレズリー・ウェストあってこそのバンドであることをあらためて証明するのがこのB 面(M-6M-7)だ。

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紙ジャケはコーティングのないE 式のシングル・スリーヴ。
なんと16ページにも及ぶ国内初盤LP の解説が復刻されている。

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コメント 4

tetsupc2

遼さんこんばんは!
私もマウンテン無事買いました・・・
今回は迷った挙句BOX欲しさに全買いしてしまいました。
改めてマウンテンを聴くとハードロック魂が蘇る感じですね。
レズリー・ウェストとフェリックス・パパラルディの才能に完全にのめり込んでいます!
まだ全ては聴いていないのですが新リマスターの出来も良さそうですね。。。時たま歪むところなんかは音の迫力を感じます。
とこで
>『ベスト』も悪くないかもしれません。
今回はありですよ~なんといっても「ロールオーバーベートーベン」のスタジオ版が聴けますし~確か今回の紙ジャケスタジオ録音のオリジナルには入っていなかったような??だったと思います。
ジョージとはかなり違い別の曲みたいですね。。。
それと今回マウンテンと一緒に購入したSpooky Toothの紙ジャケお勧めですよ。。。私は再結成前の4枚購入しましたがお勧めは特に【It's All About】【Spooky Two】は最高です。さらに【Last Puff】の1曲目に収録されているジョンの曲『アイ・アム・ザ・ウォルラス』はハードブルースロック風でスゴイかっこいいです。機会がありましたらぜひ聴いてみて下さい。

by tetsupc2 (2008-06-30 22:00) 

parlophone

tetsupc2さん、こんばんは~。
nice!&commentありがとうございます。

全買いおめでとうございます(笑。
ぼくはデュエインのアンソロジーや、ビクターの1500円の再発紙ジャケ、デニスのレガシー、ビリジョーの30周年記念盤などなど、死にそうなくらいのリリース・ラッシュで頭を痛めてるところで、とても全買いはできそうにありません。

>なんといっても「ロールオーバーベートーベン」のスタジオ版が聴けますし~

ああ、そうか!
そんな目玉があったんですね!
完全に見逃してました…。

>まだ全ては聴いていないのですが新リマスターの出来も良さそうですね

やっぱり最新DSD マスタリングの威力はすごいですね。

>Spooky Toothの紙ジャケお勧めですよ

ああ、これタワレコの店頭で見てきました。
ブリティッシュ・ロック好きとしては気になる存在なんですが、同時にリリースされたアージェントも気になるんですよね。
スプーキーのほうがどちらかというとプログレ寄りですかね?

>【Last Puff】の1曲目に収録されているジョンの曲『アイ・アム・ザ・ウォルラス』は
>ハードブルースロック風でスゴイかっこいいです

それは聴いてみたいですね~。
by parlophone (2008-06-30 23:26) 

POPOSUKE

遼さん こんばんは

このシリーズは1,890円なのですか!?
それなら私にも買えそうです(笑)

私の家にも『NANTUCKET SLEIGHRIDE』のCDはあったような気がしますが、それ以降のアルバムは未聴です。
でも、記事を拝見していると良さそうな感じがしますね♪
遼さんの文章もレズリー・ウェストばりに熱いですね!

ところで、もし差し支えなければ私のブログとリンクさせて頂いても宜しいでしょうか?
このブログの幅広い記事はレコードやCD購入の際にいつも参考にしております♪

どうぞ宜しくお願い致します。



by POPOSUKE (2008-07-01 01:07) 

parlophone

POPOSUKEさん、こんばんは~。

>このシリーズは1,890円なのですか!?

そうなんですよ、Sony の紙ジャケはよっぽどの事情がないかぎり1,890円なので、気軽に買えるのがいいですね(←翌月の請求が怖いけど…^^;)

>遼さんの文章もレズリー・ウェストばりに熱いですね!

いえいえ、久しぶりにまとめてマウンテン聴きましたが、やっぱりスゴイです(笑。

>もし差し支えなければ私のブログとリンクさせて頂いても宜しいでしょうか?

もちろんOKですよ。
さっそく「読んでるブログ」に入れさせていただきました。
よろしくです^^
by parlophone (2008-07-01 22:09) 

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