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ニルソンの『空中バレー』 [紙ジャケ]

ぼくはニルソンって、あんまりシンガー・ソング・ライターっていうイメージがないのよね。
いちばん最初に聴いたのはやっぱりあれだね、「うわさの男」…、グラミー賞獲った。
あれってフレッド・ニールでしょ。
つぎが「ウィズアウト・ユー」で、これはバッド・フィンガー。
『シングス・ランディ・ニューマン』なんてのもあるしさ。
唄のうまい実力派シンガーって感じなんだよね。

   

でもやっぱり「うわさの男」だよなあ、ニルソンっていえば。
『真夜中のカーボーイ』の最後にあの唄が流れてきたときは強烈だったよ。
ちょっと気取っていえば「鮮烈」って感じね。

見た? 『真夜中のカーボーイ』
見てないのか~。
ぼくは高校生だったんだけど、ショックだったなあ。
なんであんな映画を見たのかっていうとね、また長くなるよ(笑。
いい? 時間は。

あのね、中学2年か1年のときだったかもしれないけど、初めてデートをしたわけよ。
ダブル・デートっていうの? 男子2人、女子2人で映画を見に行ったの。
いちお、男子にとっては本命の女子だったから、のどもカラカラに渇くぐらいに緊張して申し込んだら、あっさりOKでね。
で、何を見に行こうかってなったときに男子2人が見たかったのが『卒業』だったわけ(笑。

今から考えると中坊が女の子と『卒業』っていうのはマセてたなあと思うんだけど、当時洋楽を聴いてる男子はもうみんなサイモンとガーファンクルが大好きだったのね。
「サウンド・オヴ・サイレンス」「スカボロー・フェア」「早く家に帰りたい」「冬の散歩道」って、もう次から次にシングルが出て、それがみんないい曲なわけよ。
もう当時はビートルズと並ぶくらいの大人気。
そのサイモンとガーファンクルが映画音楽を担当して、新曲「ミセス・ロビンソン」はその映画の挿入歌だと聞くとさ、これはもう見るしかない、みたいなね(笑。
アン・バンクロフト演じるロビンソン夫人がストッキングを履くためだか脱ぐためだかに、脚をニョキっと出している、あのセンセーショナルなポスターはもうあちこちで目にしてたから、ちょっとどうかな?という気持ちもあったんだけどね。
ひょっとしたら中学生なりの下心みたいなものもあったかもしれないね。
うまくいけば手ぐらいは握れるかもしれない、みたいな(笑。

        

で、彼女たちが映画を見てどう思ったかはまったく覚えてないんだけど、ぼくにとってはもうど真ん中の映画だったわけよ。
なんか切なくて胸が苦しくなる感じ?
サイモンとガーファンクルの音楽もサイコーで、ゴールデンゲイト・ブリッジを真っ赤なスポーツカーで疾走するところを俯瞰で捉えたショットとかさぁ、そこに流れる「スカボロー・フェア」なんかもう綺麗でもの悲しくて、いま思い出しても涙が流れそうだよ、マジで(笑。

なんの話だっけ?
あ、そうそう、それで映画館出るときにはもう、いちばん好きなハリウッド・スターはダスティン・ホフマンとキャサリン・ロスになってたわけね(笑。

で、ダスティン・ホフマンの出てる映画はなるべく見ようと思ったのよ。
たしかすぐ次が『リトル・ジャイアント』だったかな――『小さな巨人』。
これは残念ながら見にいけなかったんだけど、ネイティヴ・アメリカンの青年役で、ミーハーだからすぐ、すごいなあ、すごい俳優さんだなあ…と感心しちゃうわけ。
次に来たのがミア・ファーローとやった『ジョンとメリー』で、これはまあふつうの青春映画だったかな。
そのつぎが『真夜中のカーボーイ』だったのね。

      

これはびっくりしたなあ。
かれはリッツォというイタリア系移民の役なんだけど、みんなからはラッツォ(ねずみ)って呼ばれてるのね。
汚くってすばしっこいちゃっちいヤツなのよ(笑。
『卒業』のハーヴァード出のおぼっちゃんとは180度、まったく違う役でさ、もうびっくり。
今から思えば『卒業』のベンもいわゆるWASPではなくてユダヤ系だろうから、150度ぐらいかも知れないけど(笑。
でもほんと、うす汚いコート着て肺病病みかなんかで、人間的にも汚いぜったいに信用なんかできそうにないヤツの役なのね。
テキサスかどっかの田舎から出てきた青年役のジョン・ボイドも、自分のセックス・アピールだけでニューヨークでビッグになろうという、チョーおまぬけなノー天気野郎でさ、そのふたりがフロリダめざして長距離バスに乗る、エンディング近くのシーンなんかほんとに泣けてくるね。
『卒業』とは別の意味で切ない映画だったなあ。

「うわさの男」の入ったアルバム、『空中バレー』だっけ、あれ聴くと「うわさの男」以外は全部オリジナルなんだね。
ぼくなんかはあの曲が聴きたくてアルバム買ったわけだけど、うまく溶け込んでるよね。
ニルソンの曲はすごくセンシティヴなんだけど、アレンジに統一感があるのかな。
とくに管の使いかたがうまいと思うなあ、ホルンとかトロンボーンとかトランペットとかね。

   

紙ジャケはごくふつうのA式シングル・ジャケで、今どきの復刻とは思えないほど何にもついてないの。
レーベルもRCAじゃないし。

   

でも音はいいと思うよ。
どこにも書いてないんだけど、いちおう2007年の最新マスタリングらしいし、鮮度があってとてもいいと思ったな。


タグ:ニルソン
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MORE

ニルソン(ホントはニルスンね)と言えばデヴュー当事ビートルズが絶賛した元銀行員のアーティストってことで騒がれましたね。
掴みどころの無い「旧き良きアメリカン」な曲を書くSSWというのが個人的な印象でした。
大ヒット曲が他人のペンになる楽曲、というところもある意味とボケていると言うかニルスンらしいというか・・・

>ダブル・デートっていうの? 男子2人、女子2人で映画を見に行ったの。

やりましたねー、私も(爆)
私の場合はリンゴとピーセラの「マジック・クリスチャン」でした。
「卒業」は当時あまりにもヒットしていたので、見ませんでした。(ヒット作って敬遠してしまうのでした・・・)
後になってもちろん見ましたが、私はこの映画、キャサリン・ロスがベンと母親の情事を知ってしまうまでが見所で、そのあとはフツーの青春映画と大して変わり映えしない作品だというのが私見です。
S&Gのサントラは秀逸です。マイク・ニコルズとP.サイモンの波長が合っているんでしょうね。

それにしても、「真夜中のカウボーイ」と表記すべきところを「真夜中のカーボーイ」としてしまった配給会社の宣伝担当って誰なんでしょうね?
私にとっての「うわさの男」でした。(爆)
by MORE (2007-08-25 22:35) 

tetsupc2

こんばんは~
毎日暑い日が続きますね~
ところで私はニルソンといえばジョン・レノンと共同で製作された「プシー・キャッツ」を思い出すのですがこのニルソンなのでしょうか・・・
私はこの「プシー・キャッツ」のUKオリジを持っておりますがこの時のニルソンは声から歌い方までジョンそっくりに歌っているんですよね・・・
なんというかジョン節みたいにです。今月号のストレンジ・ディズに特集で載っておりましたよ。。。
私は「プシー・キャッツ」以外は聴いていないのですが何か聴いてみたくなってきました。
ところで、Anne Briggs「森の妖精」遼さんの記事見て欲しくなって買ってしまいました。すごく美しいボーカルで和みますね・・・買ってよかったです。
ハード・ロックもいいですがフォークもいいですね。はまりそう・・・(ヤバ!)
by tetsupc2 (2007-08-25 23:05) 

parlophone

MOREさん、どうもです。

>私の場合はリンゴとピーセラの「マジック・クリスチャン」でした

うわあ、それもなかなか女の子と見る映画としてはキツそうですね(笑。

>そのあとはフツーの青春映画と大して変わり映えしない作品

ぼくにとって『卒業』はBEST3に入る映画なんですよ。
マイク・ニコルズの演出、ブルース・サーティーズの撮影、デイヴ・グルーシンとS&Gの音楽、そして3人の演技。
カメラがプールとベッドを行き来するシーンなんかは映画的愉悦に溢れてます^^

>「真夜中のカーボーイ」としてしまった配給会社の宣伝担当

あれは水野晴男らしいですよ。
「カウボーイ」では都会的な感じがしないので、先進的なイメージのある車(カー)と組み合わせたらしいです。
でも今の感覚からするとやっぱり「カーボーイってなんだかなあ~」って感じですよね^^;
by parlophone (2007-08-25 23:21) 

parlophone

tetsuさん、どうもです。
tetsuさんのほうはいかがですか?
今回は饒舌体で書いてみましたが、やっぱり違和感ありました?(笑

>ジョン・レノンと共同で製作された「プシー・キャッツ」…のニルソンなのでしょうか・・・

そうなんです、そのニルソンです。
初期のころと『プシー・キャッツ』のころとを比べると、とても同じ人とは思えません^^
来月の紙ジャケリリースが楽しみですね~。

>Anne Briggs「森の妖精」遼さんの記事見て欲しくなって買ってしまいました

おお、気に入っていただけてよかったです^^
ブリティッシュ・フォークもオリジナル盤はめちゃめちゃプレミアがついてるみたいなので気をつけてくださいね^^
by parlophone (2007-08-25 23:27) 

DEBDYLAN

こんばんは。

今回の文章読んでて、あれ、遼さん?
って感じでした(笑)

さりげなく、ニルソンも紙ジャケCD出てるんですね。
僕は『レココレ』誌の広告ページで知りました。

予算の都合上、『プッシー・キャッツ』の1点狙いでいきたいと思ってます。

ダスティン・ホフマンは、目尻と口元だけで表現する笑顔が印象的です。
by DEBDYLAN (2007-08-25 23:36) 

MORE

>カメラがプールとベッドを行き来するシーンなんかは映画的愉悦に溢れてます^^

そうなんですよ。
あの前半部分は商業映画(?)とは思えないアートっぽい編集テクニックなどもあって好きなんですが、後半はダイアローグにもキレがなくなってきて、ひょっとしたらスタジオ(制作会社)の方から「もっと判りやすくしろ」なあんて言われてプログラム・ピクチャーっぽいノリになtgたのかなあと勘ぐったりしているのでした。
アン・バンクロフトとホフマンのやりとりは演出も演技も何度見ても飽きませんよね。
ベッド・シーンで真っ暗の中での会話のところも大好きなシーンの一つです。
あのホテルの支配人役の(SNLでもお馴染み、「それいけスマート!」の脚本家でもある)バック・ヘンリーも完璧にハマり役ですしね。
歯ブラシだけ持ってチェック・インする演出も笑わせてくれます。

ニルソンと言えばBS&TがカヴァーしているWithout Herも良い曲ですよね。  
by MORE (2007-08-25 23:54) 

parlophone

DEBDYLANさん、どうもです。
今回は喫茶店でマスター相手に饒舌にしゃべる男、という設定にしてみましたが、どうでしたか?
ウザイ?(笑

>予算の都合上、『プッシー・キャッツ』の1点狙いでいきたいと思ってます

もし音源をお持ちでなければ『空中バレー』『ニルソンの肖像』『ニルソン・シュミルソン』あたりはオススメです。
余裕ができたときにぜひ^^

>ダスティン・ホフマンは、目尻と口元だけで表現する笑顔が印象的です

ああ、言い得て妙ですね!
座布団3枚!^^
by parlophone (2007-08-26 00:41) 

parlophone

>「それいけスマート!」の脚本家でもある)バック・ヘンリー

いいですね~。
バック・ヘンリーは本作でも脚本に関わってますよね。

>歯ブラシだけ持ってチェック・イン

あと、せっぱつまったみたにキスするので、煙が吐き出せなくて困ってるときのアン・バンクロフトのいかにも大人の女的表情も抜群ですよね。
『奇跡の人』のサリヴァン先生との落差がすごい(笑。
by parlophone (2007-08-26 00:48) 

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