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9月27日の紙ジャケなど― その2  『カインド・オヴ・ブルー』 3度目の正直か?マイルズの紙ジャケ・コロンビア・エラ [モダン・ジャズ・ジャイアンツ]

やっぱり27日にはUPできなかった…。
でもね、これには訳があるんです。
マイルズの『カインド・オヴ・ブルー』をあれこれ聴いてるうちに、じつはとんでもない思い違いをしていたことに気がついたのだ。

その思い違いの内容についてはあとで触れることにして、とりあえずマイルズ・コロンビア・エラの紙ジャケについて簡単にまとめておこう。

 
 (初期のころのものを画面に入るだけ並べてみた…^^;)

最初のシリーズは1996年9月21日、『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』から『ユア・アンダー・アレスト』まで30タイトルがリリースされた。

SBM(スーパー・ビット・マッピング)やハイビット・マスタリングを採用した「マスター・サウンド・ジャズ」と銘打ったシリーズで、ジャケットや解説書にはリマスタリング・エンジニアなどの表記はない。
赤い帯がついていたので「赤帯」シリーズなどと呼ばれている。
待ちに待ったマイルズのコロンビア・エラの紙ジャケということで、あっという間に店頭から消えたような気がする。
  
2度目の紙ジャケは2000年5月と6月、そして2001年の1月から8月にかけてあわせて50タイトルがリリースされている。
同じく「マスター・サウンド」シリーズだが、オリジナルのアナログ・マスターをDSDマスタリングしたSACD用のデジタル・マスターを使用している。
解説書にDSDマスタリングのエンジニア名が記載されていて、黒い帯がついていたので「黒帯」シリーズなどと呼ばれる。
紙ジャケはすでにブームになっていて、資料によると発売日前日には品切れになった店もあったようだ(シャレにならんなあ…笑)。

そして今回が3度目の紙ジャケだ。
DSDマスタリングやSBMに加えて銀蒸着ディスクを採用したHQD(ハイ・クォリティ・ディスク)シリーズで、ジャケやインナー・バッグ、レーベル面も可能な限り復刻されている。
解説書にリマスタリング・エンジニアの記載があり、帯はSonyの初回盤を再現しているという。

  

上左側赤い帯が1度め、右側黒い帯が2度め、下のかぶせ帯が今回の紙ジャケだ。
帯とは逆に、レーベルは1度めが黒盤で2度めが赤盤、今回は米コロンビアの初回盤をイメージしたものになっている。
下の白いのは復刻されたインナー・スリーヴである。

ぼくは1度めの紙ジャケで欲しいものをだいたい買い揃えたので、2度めは補填として買ったのだが、音的には気に入ったので、何枚かは買い換えた。
そのときに赤帯のものは中古ショップやインターネット・オークションで処分してしまったので、重複して所有しているタイトルはほとんどない。

ただ『セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン』だけは2度めを買うタイミングが遅かったので、1度めを処分し損ねて?これだけは両方持っている。
今回でとうとう3枚になってしまった…^^;
ただ『セヴン・ステップス~』は国内では長いあいだ『天国への七つの階段』という邦題がついていた。
今回のかぶせ帯は『セヴン~』表記である。
日本コロンビアからCBS SONYへ権利が移っても最初は『天国への~』で出た気がするのだがどうだろう。

もうひとつ、今回の紙ジャケでいちばん気になったのがこれ。

   

左が前回の黒帯盤、右が今回のかぶせ帯盤である。
ジャケットがモノラル仕様からステレオ仕様に変わっている。
たしかにディスクがステレオなのにジャケだけモノラル仕様というのは整合性がとれないかもしれない。
しかしデザインのバランスからいうとぜったいモノラル仕様だと思うんだけど…。

バック・スリーヴもオリジナルに近づいていそうなだけに残念だ。

  
  (左下のSMEのロゴが外れて、右上に目玉マークがついた)

閑話休題、今日のテーマは『カインド・オヴ・ブルー』である。

じつはぼくはこのタイトル、2度めの紙ジャケを買わなかった。

 

ぬわにを~~?

 


買わなかった~? ? ? ? ? ? 

 


というみなさんのブーイングが聞こえてきそうである。

これには深い理由がある^^

1度めの紙ジャケの翌年、1997年に米コロンビアからリリースされたプラケの『カインド・オヴ・ブルー』にノックアウトされたからである。

  

USプラケを買った理由は単純だ。
まずボーナス・トラックとして「Flamenco Sketches」の別テイクが入っていたこと、そして米コロンビアのロゴが入っているジャケットが欲しかったからだ。

  
  (プラケのジャケットにははっきりとCOLUMBIAの文字…)

ところが音を聴いてブッ飛んだ!
たとえばM-1So What」。
まずイントロ、右ch.のシンバルに芯があり、カチン、カチンと小気味よく決まる。
テーマに入ってベースと管のコール&レスポンスが始まると、すぐに左右のサックスがあまりにリアルでぞくぞくしてしまう。
マイルズのトランペットはブリリアントというわけではないが冷たく美しく、左ch.のトレインも実に瑞々しくてリアルだ。
ch.のキャノンボールもきらびやかではないが、吹き手の姿が見えるような実在感が感じられるのだ。
ふと気がつくと右ch.のスネアもまるで最近の録音のようにクリアではないか。

96年の紙ジャケはこれと比較すると、シンバルは芯がないし、ハイハットもつぶれ気味。
ベースは音像がぼやけ、マイルズは少しくすんで(よくいえば)哀愁を帯びて聞こえる(笑。
トレインは線が細く、キャノンボールはキャノンボールというよりソニー・クリスのようにハスキーだ。

その違いはあまりに衝撃的だった。
赤帯と黒帯をほかのタイトルで比べてみるとたしかに違うが、ここまでの違いはない。
『カインド・オヴ・ブルー』にかんしては97年のプラケで決まりだな!
と思って2001年の黒帯はまったく買う気が起きなかった。

  
  (プラケは2 Eyes、今回の紙ジャケは 6 Eyesを復刻している)

さて、2006年の最新リマスタリング+銀蒸着ディスクはどうだろう。
はやる胸を押さえてディスクをトレイに載せる。

出てきた音は…。

あれ?

96年の紙ジャケと97年のプラケの中間のような音だ。

思わずマスタリング・エンジニアの名前を確認する。

と、ここで大きな勘違いに気がついた。

今回のクレジット。

Remastering Engineers: Mark Wilder, Maria Triana, Woody Pompakoski

97年のプラケのクレジット。
Remix Engineer: Mark Wilder

リ、リミックス??

そうだったんだ~。

そのあまりにリアルで瑞々しい音像は一度体験してしまうと、なかなか元には戻れない。
しかしリミックスはリミックス、やはりオリジナルではない。

ということで結論…

 


やはり3度めの正直でした。


ありきたり~~~~


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コメント 16

bassclef

遼さん、こんにちわ。
カインド・オブ・ブルーの3つのCD比較~興味深い内容で参考になります。
遼さんのレポートを読んでいると・・・1997年の米CDを聴いてみたくなりますね。(remixだったということですが)シンバルやサックスの鮮度感というのは、パッと聴いて、もう理屈じゃなく違うことありますものね。
remixであっても「いい音。鮮度感が高い音」であれば、なかなか抵抗しがたいものありそうですね(笑)
ところで・・・remaster と remix というのは、技術上(というか、音を調整する上で、そんなに「質」が違うものなのでしょうか?
by bassclef (2006-09-29 08:55) 

lonehawk

遼さん、こんばんは~。
当ブログにコメント&TB頂きまして、ありがとうございました。
こちらからもTBさせて頂きますね。

ワタシはまだ音源の聴き比べはしていないのですが、我が家にある99年に発売された米盤紙ジャケも恐らく97年マスターと同じ(でもボートラは未収録でした)だと思うので、遼さんの比較記事を参考に聴き比べてみることにします。
今回発売の10タイトルからは、紙ジャケで所有していない作品や、これまで未所有だった作品をあと2タイトルくらい購入する予定です。

次はジョージのアルバムのレビューが読みたいですね(笑)。
by lonehawk (2006-09-29 19:10) 

parlophone

bassclefさん、どうもです。

>1997年の米CDを聴いてみたくなりますね

たぶん1,500円ぐらいで買えると思いますので、ぜひ聴いてみてください。
US COLUMBIA、LEGACYシリーズの1枚で、バック・スリーヴにはSBMのロゴもあります。
カタログ・ナンバーはCK 64935。
耳からうろこ!のCDです。

>remaster と remix というのは…そんなに「質」が違うものなのでしょうか?

リマスタリングは、ミックス・ダウンを終えた後に曲順はもちろん、曲間や楽曲ごとの音量のバランスなども整えたりして、あとはレコードに刻むだけのラッカー・マスター(CDでいえばCDカッティング・マスター)を再度マスタリングすることで、全体のバランスを整えたり、ばあいによっては古くなって減衰してしまった帯域の一部を持ち上げたり…というような作業ですよね。

リミックスになると、本当のマスター・テープ(といっても2ndや3rdジェネレーションのセーフティ・マスターですが)からミックス・ダウンをやり直すわけですから、極端なことをいえば左右のチャンネルを入れ替えたりとか、特定の楽器を消したり追加したりすることもできます。

まあ、それは論外としても、このCDのばあい、トラックごとにデジタル・リマスタリングして丹念にノイズを消した音源をバランスを取りながらミックスし直したんじゃないかと思われ、ベールを2、3枚剥ぎ取ったようなリアルな音像は驚異的ですらありしたね!!
by parlophone (2006-09-29 22:15) 

parlophone

lonehawkさん、どうもです!

>99年に発売された米盤紙ジャケも恐らく97年マスターと同じ…だと思うので、
>遼さんの比較記事を参考に聴き比べてみることにします。

ぜひ比べてみてください。
99年のほうがリアルなんじゃないかな~。
なんかもう、あと戻りできない!って感じです(笑。

>次はジョージのアルバムのレビューが読みたいですね

了解です。
ご期待に沿えるようがんばってみます!!
by parlophone (2006-09-29 22:19) 

chitlin

遼さん、こんばんは。
興味深く拝読しました。

>1997年に米コロンビアからリリースされたプラケ
初めて聴いたのがこのCDなんです。
そのうえリミックスですか、これまた初めて気が付かされました。参考になりますです。

いずれにせよ、紙ジャケットCDが届くのは来月中ですので楽しみに待つことにします。
by chitlin (2006-09-30 23:34) 

pink island

 遼さん、こんにちは。

米盤プラケは発売された時、私も買いました。ボートラが付いていたからです。
音が良かったですね。未発表写真も興味深かったし。

その後、2000年に紙ジャケ黒帯が発売された時、同じボートラが付いていたので、米プラケを売ってしまいました。

2000年の黒帯と米プは同じ内容ではないでしょうか。
by pink island (2006-10-01 00:15) 

parlophone

chitlinさん、こんばんは。

>紙ジャケットCDが届くのは来月中ですので楽しみに待つことにします

リミックスではなく、オリジナルからのリマスターなので感じが違うかもしれませんね。
いずれにしても楽しみですね。
chitlinさんの感想も楽しみにしています^^
by parlophone (2006-10-01 00:28) 

parlophone

pink islandさん、こんばんは~。

>2000年の黒帯と米プは同じ内容ではないでしょうか

同じボートラ付なのでそうかもしれませんね。
解説書にはリミックス(あるいはリマスター)のクレジットがありませんか?

ちなみに現在廉価盤で発売中の国内盤プラケは97年のリミックスのようです。
by parlophone (2006-10-01 00:31) 

Sugar

『カインド・オブ・ブルー』のマスターの音を聴いたことがありますか?
実は、僕はあるんです。当時SJ編集長を辞め、フォノで発掘をされていた児山さんが当時、55年から61年までのコロムビア時代のマスターを再チェックされておられて、その時のカセット・コピーを聴かせていただいたことがあります。
3chマルチなんです。オリジナルは。で、そのマスターから2chに落としたセカンド・マスターからのダイレクト・コピーだったわけですが、これがその、物凄い音で。チェンバースのベースが全く別物でした。もちろんスタジオ内のトーク・バックもあるものです。その時の音を100とするとCDは70程度にしかなりません。マイルスも、コルトレーンも、エバンスも、生々しい音でした。というわけで、この続きはまた。
by Sugar (2006-10-01 22:31) 

parlophone

>『カインド・オブ・ブルー』のマスターの音を聴いたことがありますか?
>実は、僕はあるんです

ゲッ~~!!
すごい話ですね~。
Sugerさんって何者?(笑。
いやー、カセット・コピーとはいえ、ものすごい音だったみたいですね。
97年のUSプラケにも3ch.のオリジナル・マスターから2ch.にリミックスしたとはっきり書いてあります。

>チェンバースのベースが全く別物
>マイルスも、コルトレーンも、エバンスも、生々しい音
>スタジオ内のトーク・バックも

は~、聴いてみたい!!
つづきを楽しみにしております^^!!
by parlophone (2006-10-01 22:43) 

pink island

 遼さん、コメントがエラーになってしまいます。

黒帯紙ジャケの日本語解説書に、スペシャルサンクスでマークワイルダーが載っているくらいで、詳しいクレジットはないです。
by pink island (2006-10-02 06:32) 

parlophone

pink islandさん、曽根風呂あいかわらずで申し訳ありません。

>スペシャルサンクスでマークワイルダーが載っているくらいで、
>詳しいクレジットはないです

あれえ、そうなんですか…。
どうしたことでしょうねえ。

でもたぶん音源的には同じものではないかと思われ…。
by parlophone (2006-10-02 22:36) 

chitlin

遼さん、こんばんは。

やっと聴くことが出来たので、トラックバックまでさせていただきました。

何だか歴史の重みを感じさせるような音楽ですね!
素晴らしい、のひと言に尽きます。
by chitlin (2006-10-10 00:30) 

parlophone

chitlinさん、こんばんは。
コメント&トラバ、ありがとうございます。

>何だか歴史の重みを感じさせるような音楽ですね!

ぼくはですね、ときどき思うことがあるんです。
(ここだけの話だけど…爆)
1958年にジャズはここまで到達してたわけですよ。
いや、マイルズやコルトレーンやエヴァンスが、と言ったほうがいいかもしれないけど…。

それに比べると(比べちゃいけないのかもしれないけど)ロックはね~。
58年というとまだロケンロールですよ。
深みも何にもないただのダンス・ミュージック。
別にダンス・ミュージックが悪いわけではないけれど、くり返し鑑賞には堪えませんよね。

奇しくもchitlinさんがこの前レヴューされた『リヴォルヴァー』あたりから、やっとロックにも音楽性が出てきたって感じしませんか?
66年ですよ~。
そう考えるとロックって歴史の浅い音楽だなあ~と思って愕然とします。
by parlophone (2006-10-10 20:57) 

chitlin

遼さん、どうもです。
とても興味深いご発言ですね、得した気分です!

>1958年にジャズはここまで到達してたわけですよ
>58年というとまだロケンロールですよ
>『リヴォルヴァー』あたりから、やっとロックにも音楽性が出てきたって感じしませんか?66年ですよ~
え〜と、ジャズを聴き始めまして、ハードバップを好きになりました。
当方もその時ふと思ったんですよ、ジャズの方が10年も早い!結構、差があるな〜と。
それに守備範囲も広げてしまったし、年代もまた遡ってしまった〜(実は戦前ブルースも聴き始めてはいたんですが)と。

ジャズは自分にとってはまだまだこれからですので、岸辺でピチャピチャ程度です。先は長いですが、楽しみです。
ロックの場合はブログを始めてから再びお熱状態です。紙ジャケットCDも山ほど発売され続けるようですし、Freeの良さも知りましたし!

それから、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』を取り上げるのはもう少し先になりそうです。期待させてしまって、すみませんでした。
1967年は豊作でしたから、40周年記念に便乗する気満々です!
by chitlin (2006-10-10 23:52) 

parlophone

>当方もその時ふと思ったんですよ、ジャズの方が10年も早い!結構、差があるな〜と

ああ、やっぱりそうお感じになりましたか。
なかなか発言する勇気がなかったんですが…(笑。

>ジャズは自分にとってはまだまだ…先は長いですが、楽しみです

ジャズはほんと奥が深いですからね。
ぼくも聴き始めて30年以上になりますが、けっきょく同じ海岸の水しか飲んでいないような気もします…(笑。
たまにはもっと沖のほうまで泳いでいって、見たこともない景色を見るのもいいと思うんですが、なかなか億劫になってしまって。
ジャズは聴くのにもある程度体力が要りますからね~。

>1967年は豊作でしたから、40周年記念に便乗する気満々です!

おお~!、これは楽しみだ~~^^
by parlophone (2006-10-11 00:22) 

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