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村上春樹 『意味がなければスイングはない』 [雑誌・書籍・コミック]

今日から少しずつ年末年始に読んだ本を紹介していきたい。
まずはほかのブログでも以前から話題になっていた村上春樹の『意味がなければスイングはない』 (文藝春秋)。
Stereo Sound』誌に連載されていたものの単行本化らしい。

タイトルいうまでもなくデューク・エリントンの有名な『スイングしなければ意味はない』をもじったもの。
(ちなみにぼくの「JAZZの愛聴盤」のコーナーもこれが副題になっている。気がつかなかったでしょ?
インデックス・ページをご覧ください^^)

  

意味がなければスイングはない?
なに言ってやがんでぇ、べらぼうめぇ、こちとら江戸っ子よ!
憚りながら申し上げますがね、スイングってぇのは体で感じるもんなんだよ!
頭で分析してなにがスイングだってんだぁ。
バカも休みやすみにしな!

とタイトルに引っかかった時点でもう村上春樹の「技あり!」である(笑)。

目次を開いてみると、

シダー・ウォルトン  強靭な文体を持ったマイナー・ポエト
ブライアン・ウィルソン  南カリフォルニア神話の喪失と再生
スタン・ゲッツの闇の時代 1953-54
ブルース・スプリングスティーンと彼のアメリカ
ゼルキンとルービンシュタイン  二人のピアニスト
ウィントン・マルサリスの音楽はなぜ(どのように)退屈なのか?
スガシカオの柔らかなカオス

といった魅力的なタイトルが並んでいる。

のっけからシダー・ウォルトン!
じつに「そうそう!」という感じである。
ここで著者が取り上げている『PIT INN』というアルバムはEAST WINDという国産のレーベルが立ち上がった初期のころに話題になったアルバムで、FMなんかでもけっこう紹介されていた。
でも、やっぱりシダー・ウォルトンっていい意味でマイナーであり続けている人だよね~と納得してしまう。

個人的にいちばんおもしろかったのはマルサリスの章だ(笑)。
ジャズ・メッセンジャーズで驚異の新人と騒がれたころから知っているし、当時はレーザー・ディスクまで買ってそのテクニックに唖然としたものだが、たしかにそのあと1枚のCDも買ってないなあ(笑)。

ゼルキンとルービンシュタインもとても興味深かった。
ぼくが真剣にクラシックを聴きはじめたころにはもうルービンシュタインはじゅうぶんおじいちゃんだったのだが、バレンボイム&ロンドン・フィルと共演した『皇帝』はすごく話題になってぼくもレコードを買ったものだ。
いまでも『皇帝』というとこの演奏を思い浮かべてしまう。
本書を読むとゼルキンとルービンシュタインが対極にあるピアニストだということがわかって実におもしろい。
ただ個人的には、ホロヴィッツとルービンシュタインを比較してほしかったなあ。

スガシカオはぼくも好きなミュージシャンだが、村上春樹が好きだというのは意外だったし、なにしろこういう文章が『Stereo Sound』誌に載ったということじたいが楽しいではないか。

ブライアンやボスを扱った章は、まあそんなに目新しいことが書いてあるわけではないけれど、やはりじゅうぶん説得力のある魅力的なエッセイになっている。

ということで、出たのは知ってるけどまだ読んでないという方やちょっと興味がある方にはお勧めです。


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コメント 4

milk_tea

村上春樹は、実はあの猫も杓子もが読んだ「ノルウェイの森」しか読んだこと
がないので、彼がどういう音楽観を持っているか、ちょっと想像もつきません
でしたが、その目次を見るにかなり造詣が深そうですね。私ごときが読んでも
もしかしたらわからないかもしれないな。スタンゲッツくらいだな、
そこそこわかるのは・・・。
でもホント、私もスガシカオの大ファンなので(4Flushersの次あたりまでの
アルバム、全部持ってます)、このラインナップの中にスガシカオが入って
いることに意外性を感じつつ、かなり読みたくなりました。
文庫本なら買うんだけどな。(ガクッ・・・笑)
(私は「本は文庫本で」派なんです。なのでトレンドからはついつい遅れる。
ただのケチか?)
by milk_tea (2006-01-09 23:51) 

parlophone

milkちゃんもきっとあんまり村上春樹には関心ないだろうっていう気がしてました(笑。
ぼくの周りの女性にはどういうわけかあんまり評判がよくないんだよなあ。
でも、このエッセイはそこそこいけます(笑。
スガシカオの章だけでも立ち読みしてください。
きっと面白いから・・・。

>私は「本は文庫本で」派なんです

おお、ということは『東京タワー』はスゴイ例外なんですか?
by parlophone (2006-01-10 01:11) 

milk_tea

>milkちゃんもきっとあんまり村上春樹には関心ないだろうっていう気が

いえいえ、説明足らずでしたが、私は「ノルウェイの森」は相当好きで
上下巻とも10回くらい読んだくらいで、彼の表現する世界は大好きです。
ただ、ねじまき鳥のクロニクル?(忘れた)など、かなり難解なのが多い
ですよね。でもあのスーパーデリケートな感性は、敬愛に値します。
(他をほとんど読んでなくて説得力ないけど、彼の文章はちょくちょく
色々なところで見ますからね)
今週中にも是非とも本屋でチェックしてみます。
by milk_tea (2006-01-10 13:14) 

parlophone

>彼の表現する世界は大好きです。

あ~、またぼくの早とちりでしたね(笑。

>ねじまき鳥のクロニクル?(忘れた)など、かなり難解なのが多い

途中で延々とノモンハンのこととか出てくると、
ヲイヲイこの話はいったいどこさいくべ?
みたいな気になっちゃいますよね…^^

>今週中にも是非とも本屋でチェックしてみます。

ええ、まずは立ち読みでどうぞ(笑。
以前書いたんですが、和田誠と二人でやった『ポートレイト・イン・ジャズ』というエッセイ、ぼくは感心しない部分が多かったんですよ。
でも今回はかなりストレートにおもしろく読めました。
by parlophone (2006-01-11 00:04) 

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