SSブログ

『宇宙戦争』 スペシャル・コレクターズ・エディション [ぼくのシネマノート]

最近はいろいろな事情からなかなか映画を見れる環境ではなかったのだが、やっと落ち着いてきたので、これからは以前のように映画もどんどん紹介していきたいと思う。
今日はスティーヴン・スピルバーグの『宇宙戦争』だ。
(ネタバレはありません^^)

  

ヒット・メイカーとして近年のハリウッドを牽引してきたジョージ・ルーカスとスティーヴン・スピルバーグのSF大作がほぼ同時に公開されたのは、1977年の『スター・ウォーズ』、『未知との遭遇』以来だと思う。
そういう意味でほんとうならばぜひ劇場で見たかったのだが、それができなかったのでDVDで見ることになった。
あちこちのサイトを見てみると評価は二分しているようで、まったくくだらなかったという人もたくさんいるのでそうなのだろう。
ただぼくの意見としては、この映画は19世紀末に書かれたH.G.ウエルズの『宇宙戦争』の忠実な映画化であり、1953年版『宇宙戦争』へのオマージュにあふれたリメイクなので、人類が異なる惑星の知的生命体から侵略を受けたときの恐怖を描いた映画として、じゅうぶん楽しめたのである。

オープニングは同工異曲の『インディペンデンス・デイ(ID4)』とよく似ている。

   

しかし、あちらは主人公が軍人であるのに対し、こちらは平凡な市民なので恐怖の質はまったく違う。
とつぜん現れた謎の物体によって自分の住む街が破壊され、人間が次々に灰にされていくなかで体験する未曾有の恐怖。
できることはただひたすら逃げることでしかない。

それにしてもスピルバーグの映画ではどうしてこうも父性の欠落が描かれるのだろう。
『未知との遭遇』にしても『E.T.』にしても父親は不在か、家族から見放されている。
『宇宙戦争』のレイも、妻からも息子からも信頼を失っている。
その別れた妻の元からふたりの子どもが戻ってきたとたんに始まる破壊と殺戮のなかで、レイは子どもたちをなんとか守ろうと必死で逃げるしかないのだ。
ID4』がユーモラスな描写を散りばめながらある程度お気楽に進んでいくのと対照的に、『宇宙戦争』ではユーモアのかけらもなく、極限状態における人間のエゴなどもきっちりと描かれている。
「ラストのオチで萎えた」などという意見も多いが、H.G.ウエルズの先見性をきちんと捉えたエンディングだとぼくは思う。

最初のレイがクレーンを操縦するシーンでマンハッタン島らしき景色が映るし、携帯電話の形からも現代の話であるというのはわかるのだが、奇妙にに現実離れした映像は、『シンドラーのリスト』以来スピルバーグと数々の映画を撮ってきたヤヌス・カミンスキーによるもので、『A.I.』や『マイノリティー・リポート』でも見られた、極端にコントラストを上げた独特の映像を駆使して、時代と場所の曖昧化に成功していると思う。

ヴィジュアル・エフェクツ・スーパヴァイザーは大御所デニス・ミューレン。
巨匠ジョン・ウイリアムズの音楽はほとんど効果音だけでスリルを盛り上げる。
恐怖に震えるダコタ・ファニングを眠らせようと、必死になってレイが唄うのがビーチ・ボーイズの「Little Deuce Coupe」というのがおかしかった(笑)。

特典映像を収めたDisc-2は「再び、宇宙人襲来」、「H・G・ウェルズの遺産」、「スティーヴン・スピルバーグと最初の『宇宙戦争』」といったメイキング、東海岸と西海岸にわけられた4種類のメイキング・ドキュメンタリー、「プレヴィジュアライゼーション」、「外敵をデザインする:トライポッドとエイリアン」といった視覚効果の解説など、トータル165分というヴォリューム。

1953年版の主人公ふたりがカメオ出演したエピソードや、ロケーションの選定、最新技術を駆使した撮影とヴィジュアル・エフェクトなど、大いに楽しめる。
ルーカスのアドヴァイスによって取り入れたというプレヴィジュアライゼーションは、従来の絵コンテを3Dアニメーション化したもので、技術の進歩にびっくりさせられた。

  
  (プレヴィズの画像)

  
  (実際の画面)

1953年版の有名な円盤は新たな造形を与えられているのだが、未見の方の楽しみのためにあまり正体がわからないような画像をご紹介しておこう(笑)。

  
  (53年版)

  
  (05年版)

2005年 パラマウント 116分
DVD ヴィスタ・サイズ(スクィーズ)
画質=★★★★☆(最高は★5つ、☆はおまけ)
字幕の大きさ=大


nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(2) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 4

bassclef

なんというか、すごい偶然なのですが、ちょうど今日、子供がこの映画「宇宙戦争」のビデオをレンタルしてきたのですよ(笑) で、今、見終えたところなんです。なかなか楽しめました。ラストのオチ・・・何かの古い映画で、同じようなオチがあったような気がします。あれは昔のオリジナルヴァージョンと同じネタですかね? 地下室でクネクネ?の場面、イヤでしたね(笑)地下室でのあの歌・・・ビーチ・ボーイズだったんですか(笑) 何の唄かなあ、と思いましたよ。
最後、助かった子供を抱いて母親の家(なぜかこの地区はノー被害:笑)に向うところの画(え)は・・・なにやらボブ・デュランのレコードのジャケに似ているような・・・てこともないか(笑) 僕のコメントも・・・>ネタバレはありません~でしょうか(笑)
by bassclef (2005-11-15 00:13) 

parlophone

bassclefさん、どうもです。

なかなかおもしろかったですよね。
こういう娯楽作品をとりあげてリアリティうんぬん…という人とはお友だちにはなれないかも…^^

>ラストのオチ・・・あれは昔のオリジナルヴァージョンと同じネタですかね?

ええ、原作に忠実ですね。
同じようなオチの映画は他にもあるみたいですが、それを書くとほとんどネタバレですので^^
by parlophone (2005-11-15 00:36) 

MASA

あ、購入されましたか。いいなー。私は出張中ゆえまだ買ってないんですが、そのうちこの辺のTUTAYAにでも行って買って来ようと思います。

確かに賛否両論あるようですが、この映画、H.G.ウェルズの原作や1953年の映画を観たことがない若い世代の中に派手なSFアクションを期待して不満を漏らす人がいるようですね。まあ、「宇宙戦争」なんていうタイトルがいけませんわね。「火星人襲来」かなんかの方がしっくり来ます(笑)。

いよいよ来週は「エピソード3」ですね!
by MASA (2005-11-16 01:02) 

parlophone

>「火星人襲来」かなんかの方がしっくり来ます(笑)。

たしかにね~(笑)。
この映画評の多くに「なんで『宇宙戦争』なんだよっ!」っていうのがけっこうありましたからね。

オーソン・ウエルズの伝説的なラジオ・ドラマのタイトルの方がぴったりなんでしょうけど、21世紀じゃ「火星人」というと占いになっちゃうしなあ(笑)。

>いよいよ来週は「エピソード3」ですね!

ですね~。
Amazonに頼んだので1日ぐらいは遅れるかもしれませんが、楽しみです!!
by parlophone (2005-11-16 01:31) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。