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『モンク・ウィズ・コルトレーン・アット・カーネギー・ホール』 [モダン・ジャズ・ジャイアンツ]

ついに来ましたよ!
待望の『モンク・ウィズ・コルトレーン』USCD
いろいろ福岡のCDショップを探したけれど、どこもCCCDしかないのであきらめてアマゾンに注文したのが水曜日にやっと届いて、きのうから何回も繰り返し聞いている。
でも遅くなったぶん値段は下がって、送料・税込で1,890円はなんだか得した気分だ。

  
ブックレットの裏に載っている当日のコンサートのポスター。
ビリー・ホリデイから始まって、ディジー・ガレスピーにチェットとズートのクァルテット、そしてレイ・チャールズ、モンクとトレーンはトリじゃなくて、さらにそのあとにロリンズ、もう想像を絶するような凄いメンバーだ。
8時半からはわかるとしても深夜から…って、終わるのはいったい何時だったんだろう。

それでは早速インプレッションを書いておこう。
曲は「Monk's Mood」から始まって「Epistrophy(reprise)」まで全9曲、1~5がEARLY SHOW(つまり8時半開始の分なんだろう)、残りがLATE SHOW(深夜開始の分?)と分けて表記してあるから、演奏した順番に並んでいるのかもしれない。
だとしたら、バラードの「Monk's Mood」から入るのには何か意味があるのだろうか、と考えてみたら、コルトレーンが最初にモンクと録音したのがこの曲だった。
リヴァーサイドの『セロニアス・ヒムセルフ』のセッションで57年4月13日のことだ。
その直前にトレーンはマイルズの元を離れ、前から憧れていたモンクを訪れている。
カーネギー・ホールという晴れの舞台でオープニングにこの曲を…という考えがあったのかもしれない。
それにしてもいい音で録音されているなあ。
曲の終わりの拍手で「あ、ライヴだったんだ」と気がつくといってもオーヴァーではない。
ブックレットの最後を見ると「15 ips mono analog tape」から24 bit でデジタル変換したと書いてある。
いいテープ使ってたんだなあ(ちなみに15 ips というのは1秒間に15インチ、つまりわが国でいうサンパチですね)。

さて2曲めの「Evidence」でまず最初のハイライトが訪れる。
ミディアム・ファーストのこの曲を、トレーンはダブル・テンポどころか4倍速の急テンポで、いわゆるシーツ・オヴ・サウンドに突入する。
カーネギー・ホールだから聴衆のなかにはタキシードの紳士なんかもいたんじゃないかと思うが、あっけにとられてぽかんと口を開けている姿が目に浮かぶようだ(笑)。

EARLY SHOWのなかでは「Nutty」がゆいいつ、ハードバップの香りを残している演奏だ。
ブルー・ノートの名盤『BLUE TRAIN』が9月15日だから、このカーネギー・ホールは2か月半後の演奏ということになる。

前半ラストの「Epistrophy」は、テーマの提示部におけるシャドウ・ウィルスンのちゃんちき・ドラムがうるさいが、トレーンのソロはプレスティッジの最終期かアトランティックの初期を思わせるようなハード・ドライヴィングなソロで、驚くべき構成力でコードを解体し再構築していく。

後半のハイライトはおそらく「Sweet and Lovely」だろう。
テーマの後のモンクのソロも美しいものだが、トレーンはダブル、トリプル、4倍のタイムを駆使してソロを積み重ねていく。
そして4分57秒あたりでモンクがいったんバッキングをやめると、ドラムとベースがダブル・テンポを刻み始め、トレーンのソロはそこから明らかにもうひとつギアをチェンジ・アップしてもの凄いソロの世界に突入していくのだ。
これはもう、一種のドラッグです!
トレーンはモンクに出会うことによって麻薬の悪癖を断ち切ることができたが、ひょっとしたらモンクとの演奏で脳内麻薬の分泌のさせ方を学んだのかも(笑)。

ひとつだけ残念なのはリヴァーサイドの『セロニアス・モンク・ウィズ・ジョン・コルトレーン』のセッションにおけるハイライトの1曲だった「Trinkle,Tinkle」が演奏されていないことだ。
93年に出た『ファイヴ・スポットの伝説』では、上記スタジオ録音を上回るすさまじいアドリヴが聴けたのだが、いかんせん私家録音なので音がひどかった。
今回のいい音の録音でぜひ聴きたかったなあ。

トレーンのソロを中心に書いてきたが、モンクもすごく調子がよかったみたいで、唸ってる声がしばしば聞こえる。
まだこういう音源があるのなら、出し惜しみしないでどんどんリリースしてほしいものだ。

 


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コメント 10

3-savile-row

おはようございます。
『モンク・ウィズ・コルトレーン』素晴らしいみたいですね!!!
遼さんの紹介で知ったこのCDまだ手に入れてません。
もう既に聞き込んでおられる様でとても羨ましいです。
しかも、演奏の質・音とも非常に好評価の感想!!!
早く聞いてみたいです。

最近はブルーノート期のモンクにはまっていましたが、この頃(成熟期と勝手に思っています)のモンクを聞いてみたくなってます。
そして、久しく遠ざかっていたコルトレーンさん!(ここ数年、聞くのに疲れているだけですが。エルビンとの組合せ好きなんです。興奮してしまうんです。勿論マイルス組での演奏は聞いてますが)これだけの評価なら聞いてみたいです。

そして、遼さん!!いつもいつも、いいきっかけを作ってくださってありがとうございます。感謝です。

但し、最近僕は1ヶ月間で趣味(音楽・映画・ゴルフ)に使うお金に勝手に縛りをかけておりまして、今月はバングラデシュのDVDとCDのみの予算枠となっています。
なんとか年内中に買いたいものです。(多分ボーナス特別枠で・・・・)
by 3-savile-row (2005-11-06 08:45) 

幻燈遮断機

おお、遼さん、遂に念願だった「カーネギーホール」を手に入れて狂ったように聴き込んでいるみたいですね。
でもこれ、本当に音良いんですよね。
なんでもマスターテープはどこかの州立図書館に大事に保管されていたみたいで、ほとんどテープに痛みは無かったそうです。
件の図書館には、まだ貴重なテープが眠っているらしく今後もジャズ・ファンが驚くような音源が出てくるかもしれません。
でも何故図書館・・・?
by 幻燈遮断機 (2005-11-06 10:06) 

parlophone

marthaさん、どうもです。

>最近僕は1ヶ月間で趣味(音楽・映画・ゴルフ)に使うお金に勝手に縛りをかけておりまして

えらい!
それでこそりっぱな家庭人です!
なんでもかんでも買えばいいってもんじゃありません(←だれに言ってるんだろう?^^;)

ぼくはバングラデシュのDVDが12月枠に入ってしまい、まだ注文できません。
キビシイ~
でもこのCDは1890円ですから、ちょっとラウンドの合間に飲むビール(飲みませんか?笑)を我慢すれば買えますよ!
いい時代になったもんだ^^
by parlophone (2005-11-06 15:23) 

parlophone

幻燈さん、どうもです。
別に狂ったようには聴いちゃいません(笑)。
昨日もニッティ・グリッティやバッファロー、シカゴ(!)やモンキーズも合間に聴きました^^

>なんでもマスターテープはどこかの州立図書館に大事に保管されていたみたい

そうだったんですか。
じゃあもっといろんな音源が出てくれればいいですねえ。
by parlophone (2005-11-06 15:26) 

bassclef

こんばんわ。遼さん、モンク&トレーンのこのCD、「熱く」聴かれたようですね。こちらも刺激を受け、さっそくまた聴きかえしております。遼さんと同じく僕もこの「sweet & lovely」~この曲、モンクはうんと前の52年のprestige盤で演ってます。出足の弾きかたやテンポはその52年テイクと同じふうなんですが~の途中からの「倍テン」にはびっくり!でした。でもこの曲での「倍テン」は、コルトレーンの当時の奏法(音をいっぱい詰め込む:シーツオブサウンドと呼ばれたようです)にピッタリで、いい意味でのメカニカルな質感がモンクのハードさと絶妙な組み合わせになってるみたいに感じます。それから<blue monk>も、コルトレーンが3度下の音でメロディ吹いてるみたいで、はっ!と新鮮でした。モンクも多分・・・カーネギーホールでのコンサート(他の出演者も凄い!ロリンズはサックストリオだったらしいですね。これもムチャクチャ聴いてみたいですよね・・・)なんで、いつもの曲に「いろんな工夫」を凝らしてきたんじゃないでしょうか。う~ん、それにしても・・・このCDは、ホントにいいですね。こうなりゃあ、ファイブ・スポットでのライブのも、もっといい音の音源でも出てきませんかねえ(笑)
by bassclef (2005-11-06 20:11) 

parlophone

bassclefさん、さっそくのコメントありがとうございます。
ぼくもさっそく確認してみましたが、52年のセッションでは「Bye-Ya」 や「Trinkle,Tinkle」なんかもトリオでやってますね。
あんまり人気のある盤じゃありませんがぼくは大好きです^^

>いい意味でのメカニカルな質感がモンクのハードさと絶妙な組み合わせになってるみたいに感じます。

なるほど、言い得て妙ですね!
6月の『MONK'S MUSIC』のセッションでは、まだシーツ・オヴ・サウンドが出てないので、夏以降にトレーンはこの奏法を見出したと思うんですが、このカーネギーのライヴでは、ひたすらメカニカルにその効果を確認してるような感じがありますよね。
モンクもこのトレーンの急成長には目を細めてるような感じがするんですが、いかがでしょうか。
by parlophone (2005-11-06 20:52) 

lonehawk

遼さん、こんばんは~。
TB&コメントありがとうございました。
コチラの記事にもTBさせて頂きましたので、宜しくお願い致します。
そういえば詳しいことは良く分かりませんが、最近またコルトレーンの未発表音源が発売されたようですね。
確かハーフ・ノートでのライヴだったような・・・。
こちらは国内盤も無事に通常のCDで発売されたようです(ユニバーサルだから当然ですが)ので、機会を見て聴いてみたいと思っていますが、一体いつになることやら・・・。
by lonehawk (2005-11-07 01:02) 

parlophone

lonehawkさん、わざわざトラバ&コメント感謝です!

>最近またコルトレーンの未発表音源が発売されたようですね。
>確かハーフ・ノートでのライヴだったような・・・。

今AmazonとHMVで確認してきましたが、国内盤が3,900円、US盤なら2,280円って、どうしてこんなに価格が違うんでしょう…。
しかし65年のオリジナル・クァルテット、やっぱり必聴でしょうね~。
どうも情報ありがとうございました!!
by parlophone (2005-11-07 01:34) 

bassclef

再びおじゃまします。
>モンクもこのトレーンの急成長には目を細めてるような感じがするんですが、いかがでしょうか~
そんな感じありますね(笑)「ヒムセルフ」に入っている[monk's mood]・・・あの独特なメロディを出すキッカケを、コルトレーンはサックスを咥えながら・・・何かこう・・・モンクがコードを押さえるタイミングを、じ~っと、上目使いに(多分:笑)窺っているような気配があります(思い込み強くてすみません:笑)
モンクとコルトレーン・・・本当に心の通い合った「師と弟子」という感じします。人間の相性というものもよかったんでしょうね。マイルスには、「師」というよりも、もっと・・・「音楽的な実利」だけを重んじる、ある意味、冷徹な感じを受けます。もちろん嫌いじゃないんですけど(笑)
by bassclef (2005-11-08 11:44) 

parlophone

bassclefさん、どうもです。

>そんな感じありますね(笑)

やっぱり? bassclefさんも感じてましたか(笑)。
どこかでコルトレーンも、
「マイルズはもちろん尊敬してたけど、いつもどこか不機嫌だった。それに対してモンクはほんとうに人間的にも温かくていろんなことを教えてくれた」
みたいなことを言ってましたね。

自分にも他人にも厳しい人だったんでしょうね。
コルトレーンとフィリーをバッサリ斬るとかね…。
by parlophone (2005-11-08 20:28) 

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