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『スティーヴン・スティルズ』 [CSNY]

先日のニッティ・グリッティの記事とコメント欄では、バッファロー・スプリングフィールドやポコという懐かしい名前が出てきたので、その流れできょうはスティーヴン・スティルズのファースト・アルバムをご紹介しよう。

  
  
R&Bやジャズのレーベルとして人気のあったアトランティックは1969年にレッド・ゼッペリン、クロスビー・スティルズ&ナッシュという2つのスーパー・グループと契約を結んで大きな話題を呼ぶ。
本編サイトのコンテンツである「紙ジャケCDの誘惑」の『デジャ・ヴ』のところでも書いたように、この2つのバンドのデビュー盤がレコード・ショップに華々しく飾られていたようすは今でも鮮明に覚えている。

元ザ・バーズのデイヴィッド・クロスビー、元バッファローのスティーヴン・スティルズ、元ホリーズのグレアム・ナッシュという3人で結成されたクロスビー・スティルズ&ナッシュはわが国でも大きな話題になったが、彼らがさらに注目を集めたのは、同じく元バッファロー・スプリングフィールドで活躍をしていたニール・ヤングが加入して、ウッドストック・フェスティヴァルに出演したことが契機だった。
ジョニ・ミッチェルが作り彼らがカヴァーした「ウッドストック」は、その印象的なギターのリフと美しいコーラス・ワークでぼくらの耳目を集めたし、翌年の映画の主題歌というだけでなく4人を同フェスティヴァルの象徴的存在にまで高めた。

朝学校に行く前にいつも見ていた「ヤング720(セブン・ツー・オー)」という番組では、さる高名な音楽評論家が『クロスビー・スティルズ&ナッシュ』のジャケットを手にして、
「じつはニール・ヤングはすでにファースト・アルバムの裏ジャケットに映ってたんですね」
とコメントして失笑を買うなんてこともあった。
裏ジャケに映っているのはドラムのダラス・テイラーだったのである。


ウエスト・コーストのロックに詳しい人たちから見れば、バッファローの主導権をめぐってギクシャクした関係をつづけていたスティーヴンとニールがまた同じグループに所属するなんて信じられないことだったんだろうが、そんなことを全然知らないぼくはファーストよりさらに音楽的な広がりを増した『デジャ・ヴ』が大好きだった。

クロスビー・スティルズ・ナッシュ&ヤングはウッドストックの余勢を買って全米ツアーに乗り出したものの、ふたりのライヴァル意識からグループ内では軋轢が高まり、そのライヴ・アルバムがリリースされるころにはグループの解散は決定的になってしまっていて、やっぱりね~なんて思われていた。

さて『デジャ・ヴ』がヒットしていた1970年に、ニール・ヤングは名作『アフター・ザ・ゴールドラッシュ』を創り上げ、そしてスティーヴンは待望のファースト・ソロ・アルバムをリリースした。
それがこの『スティーヴン・スティルズ』だ。
1曲目の「愛への賛歌」はシングル・カットされて大ヒットしたが、その曲を初めて聴いたときぼくは、「クロスビー・スティルズ・ナッシュ&ヤングが解散してもスティーヴンがいるかぎりこんな素敵な曲が聴けるんだ」と安心したのを覚えている(それは今になってみるとすごく甘かったのだが…)。

このアルバムはジミ・ヘンドリクス、エリック・クラプトンという2大ギタリストが参加していることでも大きな話題となった。
リリースは70年11月だからジミはすでに亡くなっていて、アルバムには「Dedicated to James Marshall Hendrix」というクレジットがある。
そのジミが参加した「Old Times Good Times」という曲ではスティルスはオルガンを弾いて、ジミにリード・ギターを任せている。
ぼくはこの曲の抑制の効いたジミのソロが大好きだ。
いっぽうクラプトンが参加したのは「Go Back Home」という曲で、ここではスティーヴンとエリックの2本のギターのからみを聞くことができるが、ジャケットのクレジットが「2nd Lead Guitar: Eric Clapton」となっているところにスティルスの矜持をみることができる。

きょうはUKオリジナル盤を見ていただこう。
(画像をクリックすると大きな画像が別ウィンドウで開きます。)

  
国内盤は(そしておそらくUSオリジナル盤も)やわらかな手触りのテクスチャー・カヴァーだったが、UK盤はヴィニール・コーティングの美しいジャケット。
雪のなかでスティルスが手にしているのは、マーティンの00-45で戦前のヴィンテージだ。
もちろん普通の人は見ることすらめったにできないだろう(笑)。

バック・カヴァーもコーティングされている。

   
ジャケットの製作はアーネスト J. デイ社。
アトランティックのロゴマークの上に先ほどのジミへの献辞がある。

  

レーベルはオレンジ・アンド・プラムで、マトリクスの枝番はSide-1A//2 //1Side-2B▽1だ。

  

 


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コメント 9

てらだ

720なんて懐かしいですね。私も学校へ行く前によく見ていました。
「♪ハ~ッ、ハ~ッ、ハ~ッ、♪ビュティフ~・サンデ~」

私はスティルスの音楽は全然聴いた事がなくて、ただリンゴが参加しているという
目的だけでいつかはCDを買おうと思っていたのですが、このアルバムのデジリマ盤は
すでにEUでは発売されていたのでデジリマ版の国内盤が出るまで我慢しようと
待っていたのですが一向に発売される気配がないので、しびれを切らして先週タワーで
買ってきたところでした。

個人的な好みの問題になってしまいますが、やはり10代の頃に聴いていない音楽は
たとえそれが素晴らしいものであっても、なかなか、ぐっと来るものがないですね。

何回か聴いているうちにその印象は変わってくるかもしれませんので、
時間をかけてじっくりと聴きこんでみようかなと思います。

でも、私にはリンゴの最初のソロ2枚とか「不思議の壁」の方が楽しめてしまうのも
若いときに聴いていたからでしょうね(♪わかい~って素晴らしい♪~)

ちなみにリンゴはリッチーという名前で2曲に参加しています。
(ベイビー・ユーアー・ア・リッチー・マン)

スティルスのソロ2枚目?の「スティルス」にもリンゴは1曲だけ参加していますが
日本盤CDの解説を読むと、この曲はすでに1枚目の録音の時にベーシック・トラックが
収録されていたからとの事。

こういう情報があるから日本盤が欲しいのですけどね。
by てらだ (2005-11-08 00:10) 

parlophone

てらださん、どうもです。
そうか、「ビューティフル・サンデー」って、ヤング720からヒットしたんでしたっけ?

ぼくはてらださんに言われるまで、このアルバムにリンゴが参加してるってまったく知りませんでした。
たしかに資料にはそう書いてありますね。
アルバムのクレジットを見ると2曲に「Richie」とありますね。

>個人的な好みの問題になってしまいますが、やはり10代の頃に
>聴いていない音楽はたとえそれが素晴らしいものであっても、
>なかなか、ぐっと来るものがないですね。

これはやはり無理からぬことでしょう。
スティルスはけっきょくこのファーストとマナサスのファーストを超えるものを作ることはできませんでしたが、このアルバムにしても、ジミ、クラプトン、リンゴというビッグ・ネームの力を借りたわけですからね~。
でもそれがウッドストック・ジェネレーションにあたるぼくなんかにとっては、忘れられぬものになっちゃうんですよね…^^
by parlophone (2005-11-08 01:00) 

bassclef

こんにちわ。スティーブン・スティルス~懐かしい人です。71年だか72年頃、兄貴がこの人のポスターをもらってきて(LPを買うとオマケしてくれたのだ)長いこと部屋に貼ってました。何やら淡い色調で「雨しづくのガラスごしに遠くを見ている」スティルスのポスターでした。この頃は・・・「ステファン・スティルス」と呼んでましたね。すぐに「スティーブン」の方に変わりましたが。音楽の中身と関係ないコメントですみませんです。
by bassclef (2005-11-08 09:57) 

parlophone

お兄さんがお好きだったんですね。

>何やら淡い色調で「雨しづくのガラスごしに遠くを見ている」スティルス

それはおそらく翌年出た『スティーヴン・スティルス2』のジャケ写でしょう。
コメント欄には画像貼れませんので掲示板のほうにあとで貼っておきます。
お暇なときにごらんくださいね。

>この頃は・・・「ステファン・スティルス」と呼んでましたね。

そうでした^^。
でも70年6月に買った『デジャ・ヴ』の国内盤(日本グラモフォン)も71年のファースト・ソロ(ワーナー・パイオニア)も表記は「スティヴン・スティルス」になってますから、そのあと72年ごろ「ステファン」になってすぐにまた戻ったんでしょうね。
by parlophone (2005-11-08 20:15) 

3-savile-row

いやーこのアルバムまで揃えられてるなんて凄すぎです。

私もbassclefさんと似てますが、兄とトレーシー・ハイドの影響でCSNYを聞き始めたんですが、「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」でニール派とでも言いましょうか彼のファンになり、スティーブン・スティルスはほとんど聞いたことがありません。
CSNYとマナサスとスーパー・セッション位です。。。
このアルバムもジャケットを知っているくらいです。

しらない尽くしでコメントしてしまってすみません。
by 3-savile-row (2005-11-08 21:43) 

parlophone

わはは。
このアルバムは好きだったんですね~。
でも同時にリリースされた『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』と比べると
やはりその差は大きいですよ。

スティーヴンの音楽はニールやデイヴィッドなんかがいて化学反応を起こして凄みを増す音楽なんじゃないでしょうか。
どうもちょっともの足りない感じはありますね。
by parlophone (2005-11-08 22:32) 

bassclef

遼さん、「スティルス2」のジャケ画像、ご親切にどうも。掲示板の方で拝見しました。いやあ・・・懐かしい。
marthaさん、こんばんわ。marthaさんのブログにも、ショーターからみ話題で再度、オジャマしてしまいました。遼さん、marthaさん、これからもよろしくお願いします。
by bassclef (2005-11-08 23:05) 

parlophone

楽しんでいただけたようでなによりです。
marthaさん、なかなか書き込みできずに申し訳ありません。
ぼくはウェイン・ショーター、BLUE NOTEの『スピーク・ノー・イーヴル』とか『ジュ・ジュ』とか大好きなんですが、ウェザー・リポートは『バードランド』しか持ってないんですよ…とほほ。
by parlophone (2005-11-09 00:10) 

3-savile-row

bassclefさん、こちらこそよろしくお願いします。

それから遼さん、気になさらずに。
十分遼さんに楽しませて頂いておりますので。
by 3-savile-row (2005-11-09 23:25) 

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