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カレイドスコープ 8月の紙ジャケ―part 2 [紙ジャケ]

路傍の石さんの帝都熱烈音盤解放戦線TETSU+ PC2さんのMUSIC FOR LIFE、そしてprodigalさんの放蕩研究所でも紹介された、カレイドスコープの紙ジャケのうち1st2ndの2枚をやっと手にすることができた。
カレイドスコープは60年代末の英国のサイケデリック・ロックの代表的なグループらしいが、例によってぼくはまったく知らなかった。
今回はとくにTETSU+ PC2さんの強いお薦めもあって俄然興味が沸き、prodigalさんともクロスレヴューのお約束をしたので、さっそく1stアルバム『TANGERINE DREAM』のファースト・インプレッションを書き留めておきたいと思う。

  

ジャケットはオレンジ色を基調としたもので、prodigalさんがお書きになっていたようにたしかにビートルズの『ラバー・ソウル』との類似性を感じさせる。
このアルバムがリリースされた67年11月という時期は、アメリカのフラワー・ムーヴメントと重なっていて、ジャケットのタイトル・ロゴもそれらしい雰囲気をもっている。

オリジナル・ジャケットの写真は路傍さんのブログで見ることができるが、右上のfontanaのレーベル・ロゴが注意深く消されているのは残念だ。
バック・カヴァーは上下に折り返しのあるフリップ・バックを再現しているが、フロント・カヴァーにコーティングがないのはどうなんだろう?
時期的にいうとヴィニール・コーティングがあってよいと思うのだが、フォンタナ・レーベルはコーティングがなかったのだろうか。
CDのレーベル面も、エアー・メイル・レコーディングスの紙ジャケの通例としてオリジナル・レーベルの復刻はなされなかった。
仕方のないこととはいえ惜しまれる。

さて内容は典型的なサイケデリック・ポップというもので、音楽的にはトラフィックやジミー・ペイジのヤードバーズ、さらにはザ・バーズの『FIFTH DIMENSION(霧の五次元)』あたりとの親和性を感じた。

個人的にいちばんおもしろかったのはオリジナル盤ではラストの曲にあたる「The Sky Children」だ。
60年代のロックを聞くときに、ぼくたちはなんとなくパターン意識のようなものをもって聞くのではないだろうか。
ごくふつうならばエイト・ビートで、AABA形式16小節の楽曲……、というような。
ところが、この曲は5小節からなるAメロを延々と繰り返すという変わった曲なのだ。
この5小節というのが曲者で、たとえばAメロを4回繰り返すと20小節で、ふつうなら1コーラス終わって2コーラスめに入っている小節数だ。
ところがまだAメロを繰り返している。
それでもこのあとサビがたとえば8小節続けば、通常の形式に収まっていくので気分は落ち着くのだが、そうはならない(笑)。
けっきょく6回(30小節)繰り返して、同じメロの間奏5小節に入り、その最後の2小節に「AhAh」というBメロ(けっしてサビではない)が入ってまたAメロにもどる。
この繰り返しが8分ほどつづくのである。

ぼくは聴きながらエッシャー(M.C.ESCHER 1898~1972)のだまし絵を思い出していた。
エッシャーに有名な「滝」という絵がある。
高い塔の上から流れ落ちた水は、水車を回しながら緩やかに下っていき、その水路をたどっていくといつの間にか水はまた塔の上にたどり着いて、そこから流れ落ちているという絵だ。

形式的な完成を心のどこかで期待しながら繰り返されるメロディーを聞いていると、果てしない繰り返しのうちに気がつけばまた曲の冒頭に立ち戻っている……。
ふつうサイケデリックというと、使われる楽器やアレンジの手法などをさすことが多いと思うが、この曲ではこの「繰り返しの繰り返し」が不思議な酩酊感のようなものを生み出し、ドラッグ的な効果を挙げているように思う。

5小節のメロディーというのがジョン・レノンの曲のようにメロディー上の必然から生まれたものなのか、意識的に作られたものなのかはわからないが、このアルバムではけっこう使われていて、たとえばオープニングの「Kaleidoscorpe」(この曲はサビから始まる)のサビの後のAメロもそうだ。
ほかにもかなり多様なリズムが大胆に使われており、楽曲の構成上からそれまでの価値観にとらわれない試みがなされていて、そういう面からも評価されていいアルバムだと思った。


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コメント 8

へどろん

こんばんは〜。
私も現在紙ジャケ購入後のレポートをHPの記事の続編として製作中なんですけど、同じようにコーティングの件が気になりました。セカンド紙ジャケはコーティングありなのに・・・ちなみに翌年同レーベルからのマンフレッズのモノ盤(折り返しは無し)にもコーティングはあるのに・・・?でも個人的に、そして勝手に再現はされていると決めました!いや、たいした理由じゃないんですけどね・・・答えはレポートにて。笑
by へどろん (2005-08-31 21:49) 

parlophone

へどろんさん、どうもです。
レアな再発盤をおもちだったんですね!スゴイ!!
続編、楽しみにしてま~す。
by parlophone (2005-08-31 22:13) 

夜明けのティーンエイジャー

さすが遼さん、素晴らしいレビューです!
エッシャーの騙し絵に例えるなんて参りました(ペコリ)。

そういや、昔は好きだった美術館通いもあまりしなくなって、
この数年間音楽にのめり込むばかりで少しばかり自分の世界が小さくなってきました。
もっと幅広く感性を磨かなければなりませんねぇ。
by 夜明けのティーンエイジャー (2005-09-02 02:04) 

parlophone

夜明けさん、どうも恐縮です。
みなさんがすでに素晴らしいレビューをされてるんで、なにか独自性を出さなくちゃと思って、1曲に絞ってみました(笑)。
最近映画を見に行く時間さえなかなか取れなくて、美術館なんかもめったに行けませんが、高校時代は学校帰りによく大原美術館(実家が倉敷にあるので)に寄って、モネをはじめとする印象派の絵画や棟方志功の版画を見てぼんやり時間を過ごしたものでした。
あー、なんか美術館行きたくなってきたぞ~(笑)。
by parlophone (2005-09-02 20:18) 

TETSU+ PC2

parlophone(遼)さん遅くなりすみません・・・
カレイドGET!おめでとうございます!いゃ~parlophone(遼)さんも気に入って頂いてお勧めした甲斐があります。
しかも、曲の分析が凄いですね!さすがはギターリスト!私にはそこまではとても分析出来ません。。。私の場合はただ単に自分の耳で聴いて楽しめたかまたは好きか嫌いかの偏見独断で書いていますのでどうも片寄りがあるので反省しなければなりません・・・勉強不足ですね。今後も参考にさせて頂きまーす!!さっそくトラバさせて頂きますね。
by TETSU+ PC2 (2005-09-02 22:12) 

parlophone

TETSU+ PC2さん、コメント&トラバありがとうございます。
長々とした文章を読んでいただき恐縮です。
TETSU+ PC2さんや夜明けさん、prodigalさんのレビューがあるので、苦しまぎれにひねり出したというところが本音です(笑)。
これからも素晴らしい音楽をいろいろ教えてください!
by parlophone (2005-09-02 22:50) 

prodigal

トラバ遅くなりました~。すいません!これでクロスレヴュー完成ということで(←苦し紛れ・笑)

「The Sky Children」はおもしろい曲だな~と、お気に入りなんですが、遼さんに解説してもらって、ますます好きになりそうです。
ワタシを含めて皆さんのレヴューのあとに、こんなに凄いレヴューが書けるなんて、やっぱり遼さんはすごい!
by prodigal (2005-09-05 14:32) 

parlophone

prodigalさん、トラバありがとうございました。

>こんなに凄いレヴューが書けるなんて、やっぱり遼さんはすごい!
ぐぅっ!褒めすぎです…。
これからがプレッシャーで…(汗。
by parlophone (2005-09-05 22:04) 

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