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ストーンズの20曲 part1 [STONES]

むかしよく聴いていた音楽を久しぶりに耳にしたときに味わうあの感じ。
「懐かしい」とか、そんな生やさしい感覚ではない。
「あのころの時間」「あのときの場所」へ魂ごともっていかれるような、一種暴力的ともいえる酩酊にも似た感覚。
そんな強烈な魔力があるから、ひとは音楽を聴くことをやめられないのかもしれない。

ただ残念なことにぼくのばあい、もうビートルズの曲ではそんなマジックは起きなくなってしまった。
今でもそんな力をもっているのは、たとえばモンキーズ、たとえばCSNY、そしてたとえばストーンズの曲である。
ipodでシャッフルしていてストーンズの曲が出てくると、未だに中学生だった、あるいは高校生だった「あの日」に一瞬だがもどっていくのだ。

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 中高生のころ聴いていたレコードの一部

『レココレ』の8月号が「ストーンズ ベスト・ソングズ100」という特集を組んでいるので、ぼくも自分なりのBest20を作ってみた。
ただお断りしておかなければならないのは、ぼくがリアルタイムで聴いていたのは72年の『スティッキー・フィンガーズ』までで、それ以降のアルバムについては思い出したように購入して、思い出したようにしか聴いてこなかった。
したがって『メイン・ストリートのならず者』以降のアルバムがお好きな方には「なんじゃこりゃ?!」のベスト20になっている。
そういう方は、けっして「続きを読む」をクリックしないでください(笑。


では、第20位から、短いコメントとともに。

20 この世界に愛を

ぼくはよくわからないんだけれど、今回の投票でこの曲に入れてる人は一人もいなかった。
事情は欧米でも似たようなものらしく、『スルー・ザ・パスト・ダークリー』のUK盤には収められたもののUS盤では外されてしまい、米盤がスタンダード・モデルになった現在ではなかなか収録盤が見つからないという状態だ。
ビートルズが世界初の衛星中継で、全世界に「All You Need is Love」というメッセージを送ってから2か月後、ストーンズはそれに呼応するように「We Love You」というメッセージを発信した。
ニッキー・ホプキンズの重厚なピアノのイントロに先立つSEが、牢獄の扉の閉まる音や看守の足音だと知ったのはずいぶんあとで、よく読んでみると歌詞もけっこう辛辣なところがあったり、さすがストーンズ、洒落がきついと笑ったのだが、メッセージを抜きにしてもすごく魅力的な楽曲に仕上がっていると思う。
UKチャート最高8位、USチャートでは50位と振るわず。

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 廃盤になってしまったUK盤『スルー・ザ・パスト・ダークリー』のCD

19 黒くぬれ!

60年代半ばの中高生がだれでも知ってるストーンズの曲といえば、「サティスファクション」と「テル・ミー」、そしてこの「黒くぬれ!」だった。
ファズがジッジーとうなる「サティスファクション」よりも、ヴォーカルとユニゾンで鳴りつづけるシタールが妙にエキゾチックな「黒くぬれ!」のほうがぼくは好きだったのだが、当時ラジオから流れてくるのは「サティスファクション」のほうが圧倒的に多く、たまに「黒くぬれ!」がかかるとドキドキしたものだ。
掃除なんかの時間に覚えたての英語で「♪アイ・シー・ア・レッドア・アンダイ・ウォンティ・ペンイティ・ブラック~」と歌ってると同級生から「おまえの英語わかりやすいわ~」と妙な褒められ?かたをしたのを懐かしく思い出す。


18 デット・フラワーズ

『スティッキー・フィンガーズ』には当時交流の深かったグラム・パーソンズやライ・クーダーらにインスパイアを受けたとされる曲が何曲か収められているが、ぼくにはこの曲や「ワイルド・ホース」がCSNYの影響を受けているように感じられてとてもうれしかったものだ。
ミックのパフォーマンスには、ステージ上のダンスも含めて演劇の要素が感じられるが、ヴォーカルにもそういうものが重要だということをこの曲で教えられた。
低域を強調した独特のねばっこさで歌うミックの歌唱は初めて聴いたときにちょっとびっくりしたものだ。
こういうカントリーっぽい曲でもミック・テイラーのギターは実にいい味を出していて感心する。
ピアノはイアン・ステュアート。


17 シッティン・オン・ア・フェンス

ビートルズの「イエスタデイ」や「ミッシェル」、「ガール」などに触発されてミックとキースが書いた60年代のバラッドは、マリアンヌ・フェイスフルのために書かれUSではシングルも切られた「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」(UKでは「19回目の神経衰弱」のカップリング)をはじめとして、『アフターマス』収録の「レディ・ジェーン」、「夜をぶっとばせ」のカップリング「ルビー・チューズデイ」などがあるけれど、ここではそれらを代表してUK盤『スルー・ザ・パスト・ダークリー』に収められた「シッティン・オン・ア・フェンス」を選んだ(US盤は『フラワーズ』に収録)。
キースの弾くアコースティック・ギターが魅力的で、イントロのメロディがヴァースのバックでも鳴っているという対位法的な構成も楽曲の美しさを引き立てている。

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 中学生のころ聴いていた「シッティン・オン・ア・フェンス」の入ったコンパクト盤

16 ダンデライオン

シングル「この世界に愛を」のB面に収められたこの曲もよく聴いたなあ。
イントロなしでいきなりミックが高音を活かしながら「♪ Prince or pauper,beggarman or theif」と歌いはじめ、きらびやかなハープシコードや全編に溢れるコーラスなど、カラフルでポップ、まさにサマー・オヴ・ラヴの真っ只中を想わせる名曲である。
今でもふとしたときに
「♪ティンカー、テイラー、ソルジャー、セイラーズ・ライフ~~~~
  リッチマン、プアマン、ビューティフォー・ドーターズ・ワイフ~」
とか口をついて出て、「ドーターズ・ワイフ? なんじゃそりゃ」なんて思ったりする。
と書いておいて、さっき歌詞カードで確認したら「ドーター」じゃなくて「ドクター」だった(笑。
USではこちらのほうがヒットして全米14位を記録している。


15 ムーンライト・マイル

アルバム『スティッキー・フィンガーズ』の最後にひっそりと収められたこんな曲がなぜ15位に入るのかというと、それはブラッド・シルバーリング監督(『シティ・オブ・エンジェルス』)の2002年の映画『ムーンライト・マイル』のテーマになった曲だからだ。
ダスティン・ホフマンとスーザン・サランドンという、実に濃い(失礼!)オスカー受賞の二人が夫婦役を演じ、娘の婚約者にジェイク・ギレンホールというこの映画で、ジェイクが郵便局に勤めるエレン・ポンピオ(「グレイズ・アナトミー」)とダンスを踊るシーンで流れるこの曲はほんと鳥肌ものだ。
2004年に日記版の「DAYS OF MUSIC & MOVIES」にこの映画のことを書いているので、興味のおありの方はそちらもご覧ください。
ハンマリング・オンとプリング・オフを多用した独特のイントロで始まるオリエンタル・ムードに溢れる曲で、しだいに盛り上がるストリング・アレンジはポール・バックマスター。


14 プレイ・ウィズ・ファイア

シングル「ラスト・タイム」のB面として65年にリリースされた曲で、US盤では『アウト・オヴ・アワー・ヘッズ』に収録されている。
初期のシンプルなロックンロール/R&Bから脱却して音楽的成長を遂げつつあることを伺わせる曲で、アコースティックで内省的な曲調はどことなく「ノルウェイの森」を想わせる。
クレジットはジャガー&リチャードではなくナンカー・フェルジ。


13 夜をぶっとばせ

65年の「サティスファクション」の大ヒット(全英1位/全米1位)で頂点に登りつめたストーンズは、以降「一人ぼっちの世界」(全英1位/全米1位)、「19回目の神経衰弱」(全英1位/全米2位)、「黒くぬれ!」(全英1位/全米1位)、「マザー・イン・ザ・シャドウ」(全英5位/全米9位)と強力なシングルを立てつづけにヒットチャートに送り込み、、67年にこの「夜をぶっとばせ」(全英1位/全米55位)をリリースする。
USでは「良識派」のラジオ局が自粛してカップリングの「ルビー・チューズデイ」のほうを中心にオンエアしたため、こちらのほうが大ヒットしてしまい(全米1位)、さらにエド・サリヴァン・ショウで歌詞を「Let's Spend Sometime Together」と変えて歌って、ファンの失笑を買うという事態を引き起こしてしまった。
しかしジャック・ニッチェのドライヴ感あふれるピアノと、「♪パパラッパ…」というコーラスで始まる楽曲は、テンポ・ダウンしてコーラスの美しさを見せつける中間部なども含め、文句のつけようのない完成度だ。
今だったら「お泊りしない?」なんて訳もありえそうなタイトルを、乱暴に「ぶっとばせ」ともっていった邦題もナイスで、友人たちにも胸を張って「この曲が好きだ!」と言えた(笑。


12 無情の世界

オリジナルはシングル「ホンキー・トンク・ウィメン」のカップリングとして69年7月にリリース。
初めて聴いたときは、アコースティック・ギターもアル・クーパーのオルガンもかっこいいし、女声コーラスもソウルフル(あとでドリス・トロイやナネット・ニューマンと知ってびっくり!)なのに、どうしてホルンが牧歌的なメロディを奏でたり最後が「第九」みたいな荘厳なコーラスになるんだろう、とちょっと違和感を感じた。
それはアルバム・ヴァージョンでイントロの前にさらにロンドン・バッハ合唱団のコーラスがつけ加えられたときますます強くなったのだが、今となってみるとそのへんも含めてかっこいいと感じてしまう(笑。
レコーディングにはなぜかチャーリーが参加しておらず、ドラムスをプロデューサーのジミー・ミラーが叩いている。

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 国内盤の解説書には大きく「ピアノおよびオルガン アル・クーパー」と書いてある


11 ミッドナイト・ランブラー

ぼくはジョンのハーモニカをかっこいいなあと思ったことはないけど(ファンのみなさん、ごめん)、ミックやロバート・プラントのいわゆるブルーズ・ハープにはぐっときてしまうのです。
ヴォーカルとバックのコール・アンド・レスポンスを基本に、ザックザクしたキースのリズム・ギター、ミックのブルーズ・ハープ、ミック・テイラーのスライドがからみ合い、しだいにテンポが速くなったかと思うと、呪術的な展開から、一転スローになったり、さらにそこからだんだんと盛り上がってゆくドラマチックな構成で、5分半をまったく長いと感じさせないアレンジが見事。
ミックのヴォーカルも囁いたり叫んだり変幻自在の表情を見せて、やはりこのころのストーンズがひとつの頂点を迎えていたことをはっきりと示す名曲です。

ちょっと長くなりすぎたのでつづきは次回ということでm(_ _)m
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路傍の石

久しぶりの復活、お待ちしておりました(笑)。

遼さんは、60年代のストーンズをリアルタイムで知っている世代なんですね。ストーンズのファンにはどの時代からファンになったかでいろいろなタイプがあると思いますが、拙は77年頃からファンになりました。それでも60年代のストーンズにも愛着が深く、あの時代がなければこれほど多くのファン層から支持されるバンドにならなかったような気がします。逆に言えば、70年代にデビューしたストーンズであったら、その人気のあり方はぜんぜん違ったものになったような気もするし、いい方向に想像するなら今も若いファン層を取り込んで、ファンの世代交代もスムーズに進んだかもしれません。

何となく・・・これは本当に何となくなんですが、例えば40年前に解散してしまったビートルズならまだしも、現役であるはずのストーンズが早くも博物館に収納されて往時の魅力を語られるバンドになりつつあるような気がします。これは歴史の長いバンドの宿命なんでしょうか?拙もそのことに加担しているひとりなので大きなことは言えませんが、今回のレココレの特集に見られる選評から、そんな危うさを感じました。
by 路傍の石 (2012-07-29 09:50) 

DEBDYLAN

こちらでもおはようございます。

僕は遼さんとは逆にストーンズ・レーベル以降の方が親近感あるんです。
リアルで聴きだしたのは'80年代からだし^^;
過去の作品も'70年代のモノから聴いていったんで。
あと個人的にキースの5弦オープンGが大好物ってのも理由ですね^^。

遼さんのチョイスを拝見していて、
『スルー・ザ・パスト・ダークリー』UK盤聴きたくなっちゃいました。
あの選曲けっこう好きなんですよ。
廃盤っすか。
余計手元に欲しくなったりして^^;

by DEBDYLAN (2012-07-29 10:24) 

MASA

遼さんより1コ下のワタシの場合は中3まで(1970年)レコード・プレーヤーが家になかったせいで、ビートルズもストーンズもラジオのヒットチャート番組などで聴くしかなかったのが残念です。

それでもストーンズにせよビートルズにせよそれらのヒット曲にまつわる時代背景や思い出が曲と共にブワーッと蘇るのはリアルタイムで聴いていた世代の特権ですね^^。
まあアルバムに関しては両方とも数年遅れで、リアルタイムじゃないんですけど(笑)。

遼さんが「スティッキー・フィンガーズ」までしか思い入れがないというのも、逆にリアルタイム世代ならではのこだわりという感じでいいと思います。

まだ「レココレ」を買ってないのですが、ワタシもストーンズのベスト20作ってみたいと思いました。

by MASA (2012-07-29 22:42) 

parlophone

路傍さん、こんばんは。
どうもほんとご無沙汰いたしまして申し訳ありません。
コメント、ありがとうございました。
路傍さんは77年ごろというと、『ラヴ・ユー・ライヴ』あたりからですか。
ぼくは一応『ブラック・アンド・ブルー』までは聴いたことがあって、『女たち』は去年のデラエディで初めて聴きました(恥。
それ以降はず~~~っと聴いたことがなくて、94年の『ヴードゥ』、95年の『ストリップト』、97年の『バビロン』はすべて中古で買って、『バビロン』はもうありません。
05年の『ビガー・バン』はブログでみなさんから薦められて新品を買いましたが(笑。

>60年代のストーンズにも愛着が深く、あの時代がなければこれほど多くのファン層から
>支持されるバンドにならなかったような気がします

同感です。
とくに初期のブルーズやR&Bの素朴なコピーから始まって、サイケデリック~サマー・オヴ・ラヴ期を経て、60年代末にもう一度ルーツ・ミュージックに戻るような形で、ロック・バンドとしてのアイデンティティを確立していく過程はほんとうに大事ですよね。

>現役であるはずのストーンズが早くも博物館に収納されて往時の魅力を語られるバンドに
>なりつつあるような気がします。これは歴史の長いバンドの宿命なんでしょうか?

路傍さんには申し訳ありませんが、ぼくはこれはある程度いたしかたないことだと思いますね。
バンドが人間の営みである以上、進化・成熟・衰退という過程を経るのは当然だと思うのです。
若いころにあった情熱や冒険心や好奇心は、穏やかな安らぎや諦念に変化していかざるを得ないのではないでしょうか。
『ビガー・バン』はそれなりにいいアルバムだと思いますがめったに聴くこともありません。

それになんていっても聴く側が(ぼくのことですが)郷愁とともに音楽を聴く年齢になってるんですね。
これはしようがない(笑。

しかし人さまの音楽で飯を食っている評論家先生がそれじゃよくないと思いますね。

by parlophone (2012-07-29 23:39) 

parlophone

DEBDYLANさん、こちらでも、そしていつも
nice!&comment、ありがとうございます。

>ストーンズ・レーベル以降の方が親近感あるんです

DEBさんはぼくよりずいぶんお若いから当然そうでしょうね。
それでも80年代以降ってことは、そろそろ30年近いファンということでしょう。
それがやっぱりストーンズのすごさですよね。

>個人的にキースの5弦オープンGが大好物

いやあ、これはぼくもそうですよ。
実際に自分で弾いてみるとほんと気分いいですよね^^
UK盤『スルー』は中古屋を探せばあるんじゃないでしょうか。
幸運を祈っております(笑。
by parlophone (2012-07-29 23:44) 

parlophone

MASAさん、こんばんは~。

>中3まで(1970年)レコード・プレーヤーが家になかったせいで

あってもレコードが高くてなかなか買えませんでしたよね。
中学のころいくらもらってたか記憶がないんですが、小学生のころは月300円の小遣いだったのでシングル盤1枚も買えない(笑。高校も最初のころは月1000円だったような気がします(笑。

>まだ「レココレ」を買ってないのですが、ワタシもストーンズのベスト20作ってみたいと思いました

ぼくもレココレ立ち読みしただけなんですよ(笑。
この記事を書くために買おうと思ったら、どっこも売り切れ。
Amazonでも手に入りません。
そのうち博多で探してみたいと思います。

でもMASAさんのBEST20はぜひ読みたいです^^
by parlophone (2012-07-30 00:04) 

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