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チャールズ・ロイド 『フォレスト・フラワー』 [JAZZの愛聴盤]

このアルバムが録音された1966年前後のことをちょっと振り返ってみよう。

   

まずマイルズのコンボは1964年秋にウエイン・ショーター(ts)が加入したことによって鉄壁の布陣となり、65年には『E.S.P.』、66年には『マイルズ・スマイルズ』を吹き込んでいる。

コルトレーンは65年に『至上の愛』をリリースして神の世界に近づき、同年6月にはもっともフリーに傾斜した問題作『アセンション』を録音している。

伝統的な調性の世界に身を置きながらフリーの世界との橋渡し的な役割を演じたエリック・ドルフィー(as,fl,bcl)は64年6月に道半ばにしてベルリンで客死してしまった。

66年になるとブルーノートがオーネット・コールマン(as)やセシル・テイラー(p)、ドン・チェリー(tp)といったフリー・ジャズの旗手たちと契約し、彼らの新録音が続々とリリースされるようになる。
そうしたムーヴメントの中で中心的存在となったアルバート・アイラー(ts)は64年に『スピリチュアル・ユニティ』、『ゴースト』という2つの傑作を残している。

ポップスの世界ではビートルズが66年に『リヴォルヴァー』をリリースし、そのサイケデリックで先進的な音世界は翌年の『サージェント・ペパーズ』に受け継がれていくが、それをいち早くカヴァーしたジミ・ヘンドリクスやクリームのクラプトンによってロック・ギターの世界もまた大きく変わろうとしていた…。

チャールズ・ロイド(ts)がキース・ジャレット(p)、セシル・マクビー(b)、ジャック・ディジョネット(ds)という、今から見れば目も眩むようなリズム・セクションを率いてモンタレー・ジャズ・フェスティヴァルに登場したのは1966年9月のことで、すばらしい演奏によって聴衆から熱狂的に受け入れられるようすがこのアルバムには見事にとらえられている。

アルバムの中心はもちろん「フォレスト・フラワー、日の出」、「フォレスト・フラワー、日没」という組曲だ。
オリジナルのアナログ盤ではA面全部を占めるこの曲は、ラテン・リズムとフォー・ビートが交錯するテーマに拠ってロイドのテナーとリズム隊がトラディショナルからフリー・フォーマットまで変幻自在のアドリブを繰り広げる。
ロイドがフルートに持ち替える「ソーサリー」はエイト・ビートのジャレットらしいオリジナル、マクビーが書いたバラード「ソング・オヴ・ハー」はロイド版「ナイーマ」(コルトレーンのオリジナルで従来の表記は「ネイマ」)といった趣きで、ジャレットの美しいソロも必聴だ。

ロイドの演奏は当時のロック・ファンにも人気となり、フィルモア・ウエストにも出演するほどだったという。
ライヴの割には音質も良好で文句なしの傑作だ。


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コメント 7

Sugar

いいですよねぇ、この盤は。今回アトランティック買いの1枚目となりました。アトランティックのロイドは、ベースがマクルーアのものがありますが、全ていいです。早くちゃんと出して欲しいと思う今日この頃。
さて、このモンタレー、やはり飛行場が近いのでこの盤でも会場の上を飛行機が飛びます。この時期のモンタレー・ジャズ祭のライブ盤は飛行機が飛ぶものが多いです。確かミンガスのも飛んでいたはず。
というわけで、懐かしいプロペラ機の音が聴けたので思わず書き込みました。
by Sugar (2007-01-19 08:22) 

MORE

私も実は最近友人からCD-Rを頂いたのでした…(^^ゞ
C.ロイドはビーチ・ボーイズとも関係が深かったりしてますし、ロックとの
交流は盛んな頭の柔らかいジャズマンですよね。
で、久しぶりに聴いての感想は、「結構まっとうなジャズだったのねー」
でした。(苦笑)
随分昔に聴いたので、もっとロックよりだったっけなーと思っていたのでしたが
改めて聴くとそれほど「やんちゃ」じゃなくってちゃあんとしたジャズでした。
でも、これがもう40年も前の演奏だなんて…
では私も今日は通勤で聴こうかな?(爆)
by MORE (2007-01-19 09:11) 

MORE

というわけでPartⅡです…
お約束どおり通勤の車中で聴きました。
ちょっと真剣に聴いたのですが(苦笑)、スムース・ジャズっぽい曲も
ありますが(最初と最後)、なかなかどうして特にロイドがフルートを
演奏している曲などは「熱い」ですね。
そしてやはり特筆すべきはキース・ジャレットです。
この頃のキースはVortexのSomewhere Beforeで知ったのですが、
このForest Flowerでの演奏は鬼気迫るもんがありますね。
ロイドのフルートとのバトル、そこに絡むデジョネットの正確無比な
バチさばき…
うーむ、さすがフィルモアに出演した最初のジャズ・コンボのことだけ
ありました。
by MORE (2007-01-19 23:23) 

parlophone

Sugarさん、どうもです。

>このモンタレー、やはり飛行場が近いのでこの盤でも会場の上を飛行機が飛びます

えー!そうでしたっけ?
クルマのCDチェンジャーの中に放り込んで聴いていたので、ちっとも気づきませんでした~。
昔アナログ盤を聴いていたころも、気がつかなかったなあ(笑。

…ということで先ほどちょっと聴きなおしてみました。
「日没」のロイドのソロの後、キースのピアノ・ソロに入った直後にブ~ンと聞こえるヤツですかね^^

それにしてもおもしろいですね!
ありがとうございました!
by parlophone (2007-01-20 14:40) 

parlophone

MOREさん、どうもです!
最近はチャールズ・ロイドの名前もほとんど聴きませんが、元気にしているのでしょうかねえ。

>改めて聴くとそれほど「やんちゃ」じゃなくってちゃあんとしたジャズでした

改めて聴きなおしてみると、けっこうコルトレーンに近いところにいますよね。
あのころはアーチー・シェップとか、ファラオ・サンダースとか、そのあたりが後継者と目されていましたが、ロイドもモノマネではなくきちんとしたアイデンティティーを持ちながらも、コルトレーンの理論を受け継いでいる。
なかなかスゴイと思います。

>この頃のキースはVortexのSomewhere Beforeで知ったのですが

ぼくも『Somewhere Before』はよく聴きました。
ジャケットも素敵だったし…^^

>ロイドのフルートとのバトル、そこに絡むデジョネット

おっしゃるとおり「ソーサリー」における3者の絡みは交流というよりバトルですね(笑。
凄まじいものがあります^^
by parlophone (2007-01-20 14:47) 

MORE

>最近はチャールズ・ロイドの名前もほとんど聴きませんが、
>元気にしているのでしょうかねえ。

70年代以降はぱっとしなかったロイドですが、ここんとこはECMから11枚(!)もアルバムを出しています。
Forest Flowerの頃とは随分違ったジャズをやっていますが、コルトレーンの後継者、というレッテルを貼られるのがイヤだったんではないでしょうか?

http://www.amazon.com/Sangam-Charles-Lloyd/dp/B000EGCE9U/sr=8-1/qid=1169300913/ref=pd_bbs_sr_1/002-2036655-1474451?ie=UTF8&s=music

↑これが最新アルバムでライヴです。
タブラ奏者とドラムスとのトリオという変わった編成です。
「進化した」チャールズ・ロイドが聴けます。
by MORE (2007-01-20 23:03) 

parlophone

MOREさん、どうもです。

>ECMから11枚(!)も

すごいですね~。
ロイドは1938年生まれだからもうすぐ70歳。
それでこの旺盛な創作意欲は敬服に値しますね。

>「進化した」チャールズ・ロイド
聴いてみたいです^^
by parlophone (2007-01-21 20:41) 

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