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『ジャッキー・マクリーン・クインテット』 [JAZZの愛聴盤]

まず最初にお詫びから。
前回のブログで予告をしておりました、「紙ジャケCDの誘惑」ローリング・ストーンズ篇、きょう天候不良のためジャケット撮影を断念しました。
明日の夕方以降のUPになると思います。
ご了承ください。

さて、それではJAZZの愛聴盤です。---------------------------------------------------------------------

このアルバムは、まだジャズを聴きはじめたばかりのころたまたま入ったレコード・ショップで手に入れた。
決め手になったのは「スイング・ジャーナル・ゴールド・ディスク」のシール。
今のようにいろんな情報が溢れている時代ではなかった。
「ゴールド・ディスク」というのは安心のマークだったなあ。

メンバーも魅力的だった。
ジャッキー・マクリーンのアルト・サックス、ドナルド・バードのトランペット、ピアノはマル・ウォルドロン、ベースがダグ・ワトキンズ。
ドラムスはロナルド・タッカーという、この人はまあいいや(笑)。

  

録音は1955年の10月21日。
この55年という年はハード・バップがのろしを上げた年である。
前年の54年にはマイルズがソニー・ロリンズと「エアジン」などを録音し、西海岸ではクリフォード・ブラウンがマックス・ローチとレギュラー・クインテットを結成して活動を始めた。
55年に入るとアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズやジョージ・ウォーリントン・クインテットが相次いで結成され、9月にはコルトレーンを含むマイルズのオリジナル・クインテットが活動を開始する。
そんななかで録音されたジャッキー・マクリーンにとっては初リーダー・セッションである。
ドナルド・バードとはジョージ・ウォーリントン・クインテットで一緒にフロント・ラインを務めた仲で、気ごころの知れたコラボレーションを聞かせる。

聴きどころはなんといってもA面の3曲である。
アルバムは40年代の映画音楽である「It's You or No One」で始まる。
アップ・テンポながらロマンティックなマルのイントロにつづいて、マクリーンとバードが交互にメロディを吹いていく。
ソロはマクリーン~バード~マルの順だが、朗々と鳴らしながらもフレーズの端々にわずかな陰りのようなものを見せる緩急をつけたマクリーン、メロディアスなバード、愛らしいマルのソロ、そしてフォー・バースに入るその最初のマクリーンがまたすばらしい。

2曲目の「Blue Doll」は妻のドールをテーマにしたマクリーン自作のブルーズ。
マクリーンは堂々たるソロで、バップ・イデオムが新しいジャズの領域を広げていったその成果を見せてくれるし、バードのソロはとくに前半部がマイルズを髣髴とさせて興味深い。
マルのソロは陰影のあるじつにすばらしいものだが、後ろのタッカーのシンバルやリム・ショットがうるさいのが玉に瑕だ。
ドラムを勉強してる諸君、マネしないでね(笑)。

そしてこのアルバムの白眉はこれ以降マクリーンの代表作にもなる「Little Melonae」。
愛娘メロネーに捧げた曲だ。
屈折したメロディーを持つ大変に印象的なAABA形式の曲で、Bのパートはベースのソロになっている。
先発のマクリーンのソロは聞き手の予想を裏切るような想像力に満ちたものだし、バードもこの難しい曲想を見事に展開してみせる。
そしてマクリーンのソロの一フレーズを最後に引用すると、つづくマルもそのフレーズからソロを始めるといった具合で、じつに見事なアンサンブルになっている。

じつはこの録音の5日後にマイルズのクインテットもこの曲を録音していて、そこでのマイルズやコルトレーンのソロはまあ平均点ぐらいの出来だと思うが、オリジナルにはなかったピアノのイントロがすばらしいし、ガーランドのソロは中低域を主にしたふだんとはまったく趣きの異なるものなので、未聴の方は機会があれば聴いていただきたいと思う。

さてもうひとつのハイライトがラストに収められた「Lover Man」だ。
アルバムを買ったときのお目当てはじつはこの「Lover Man」だった。
レコーディングの半年前に当たる1955年の3月にチャーリー・パーカーは亡くなっていて、当時マクリーンはひどく落胆したらしいが、この曲を初リーダー・セッションで取り上げるというのは、パーカーに対するトリビュート的な気持ちもあったのかもしれない。
ダグ・ワトキンズのアルコとマルの見事なイントロからマクリーンのいささかも間然するところのないすばらしい演奏が始まる。
これで23歳というのだから、このころのジャズメンはみんなすごかったなあ。

買ってしばらくしてから、このアルバムがファンの間では「ネコのマクリーン」と呼ばれて人気があると知った。
ネコ? ……どうみてもこれはフクロウじゃないのか、と長いあいだ疑問だったのだが、4年前に紙ジャケ化されたときにやっと謎が解けた。
このアルバムの原盤は「アド・リブ」という超マイナーなレーベルで、ぼくが買ったアナログ盤はジュビリー・レーベルから再発されたものの国内盤だったのだが、紙ジャケになるときオリジナル・ジャケットで復刻されたのだ。

  

たしかに「ネコ」でありました。

"jackie mclean"
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本編のサイトMUSIC & MOVIESの「JAZZの愛聴盤」のコーナーはこちらから。


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コメント 10

bassclef

おおっ、遼さん。このマクリーン盤・・・僕もわりと好きな盤で、なぜか2枚(ともに国内盤ですよ:笑)持ってるんです。it's you or no one、この曲、Kenny DrewのThis Is New(riverside)でも、ドナルド・バードが吹いてますね。バードのお気に入りだったかもしれませんね(笑)
このマクリーン盤は、何度も再発されたと思いますが、遼さんアップの盤は、ジャケの色合いや右上の字からすると・・・日本コロムビアの1500円盤みたいですね。僕の手持ちは、この日本コロムビア盤(1977年らしい)とテイチク盤(UPS~発売年不明)ですが、テイチク盤のジャケは、絵柄は同じで、なぜか色合いが「青~濃い緑」なんですよ。なんで色合いが違うのかは判りません(笑)
by bassclef (2006-03-19 01:12) 

parlophone

bassclefさん、どうもです。
ぼくが学生時代にシコシコ集めたレコードは、結婚するときに全部売ってしまったんですよ。
(700枚ぐらいあってほとんどが国内盤でしたが、それでも30万円以上になりました^^)
ここにUPしたのは10年ぐらい前に中古ショップで買ったもので、日本コロンビアの1800円盤ですね。
(参考のために掲示板に画像UPしておきます)

ぼくが最初に買ったのは、おそらくテイチク盤だったと思います。
「青~濃い緑」で、ジャケットに直接「ゴールド・ディスク」のシールが貼ってあったような気がします^^
by parlophone (2006-03-19 01:35) 

bassclef

遼さん、わざわざ画像アップをありがとうございます。1800円盤の方でしたか。そういえば、日本コロムビアは、1100円~1500円~1800円と何度も再発してましたね。
>最初に買ったのは、おそらくテイチク盤~「青~濃い緑」で、ジャケットに直接「ゴールド・ディスク」のシールが貼ってあったような~
ということは・・・テイチク盤のジュビリー再発シリーズの方が、コロンビアより先だったみたいですね。それにしても・・・遼さん、集めたレコード700枚を手放す時は・・・なかなかの決断だったんでしょうね・・・。まあ、結婚する時って、いろいろな「踏み絵」がありますからね(笑) 
by bassclef (2006-03-19 10:39) 

parlophone

>テイチク盤のジュビリー再発シリーズの方が、コロンビアより先だったみたいですね。

だと思いますね。
よくわかりませんが、テイチク盤は国内初盤かもしれません。

>まあ、結婚する時って、いろいろな「踏み絵」がありますからね(笑) 

くう~、まさにそのとおりですね~^^
この30万は生活費であっという間になくなりました(笑。
by parlophone (2006-03-19 12:37) 

Refugee

お~ネコのマクリーンですか~
私、これ、ずっと聴こうと思いつつ今まで聴かずにいたものでした。
遼さんの解説で、これは早急に聴かなければ・・・という気になってきました。
しか~し、紙ジャケはおろかプラケCDですら、HMVやアマゾンでは買えない状態でございました(^^;
まあ、アナログの中古はけっこう転がってるのでレコ屋にいけば、それは手に入りそうですが。

ちなみに、再発のジャケも、あの尻尾と足は、やっぱりネコでしょう(笑)
by Refugee (2006-03-20 20:31) 

parlophone

Refugeeさん、どうもです。
たしかにbassclefもおっしゃっていたように、国内盤は何度も再発されてどこにでもありますよね。
意外に人気盤だったんでしょうか。

>あの尻尾と足は、やっぱりネコでしょう(笑)

え~、やっぱそうですか?
ということはあのフクロウみたいなヤツは??
イラスト描いた本人はあれネコのつもりなんでしょうかね(笑。
by parlophone (2006-03-20 23:26) 

わたくしめも、このLP所有させて頂いております。
驚くべきは、ジャッキー・マクリーンさん亡き後、その未亡人とフィル・ウッズさんが一緒になったと言うことですね !
フィル・ウッズさんのヨーロピアンリズムマシーンの白いジャケット(ピエール・カルダンレーベル)の奴のA面最後に聞こえるフランス語をしゃべる子供の声は、そのお二人のお嬢さんなのでしょうか・・・。
by (2006-03-21 02:01) 

parlophone

うろちいさん、おはようございます。
nice! &コメント、ありがとうございました。

>その未亡人とフィル・ウッズさんが一緒になったと言うことですね !
これはチャーリー・パーカーの奥さまのチャーリー・チャンさんのことですね。
マクリーンはまだ生きています(もう70歳を超えてますが、まだまだ現役です^^)
by parlophone (2006-03-21 10:51) 

あは、すみません。
巨匠マクリーンさんを殺してしまいました・・・。とほほ。
by (2006-03-21 12:38) 

parlophone

いえいえ、とんでもないです。

それにしてもパーカーを敬愛する気持ちは、マクリーンもフィル・ウッズに負けなかったでしょうが、そのあまり奥さんと結婚してしまうというのは、やはりすごいですね^^。
by parlophone (2006-03-21 21:38) 

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