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『リトル・ジョニー・C』 [JAZZの愛聴盤]

ギル・エヴァンスは自分のオーケストラのトランペットにマイルズが欲しいとき、よく代役としてジョニー・コールズに吹かせたらしい。
御大マイルズはスケジュールやギャラの関係でなかなか使えないが、コールズなら暇だしマイルズそっくりの音を出してくれたからだ。
「マイルズ・デイヴィスの影武者」と呼んだのは評論家の油井正一だったかしら。

しかし「きみのトランペット、マイルズにそっくりだね」と言われて喜んでいいのはアマチュアだけで、プロのミュージシャンにとっては「お前の演奏はモノマネだ」と言われているに等しい。
けっきょくジョニー・コールズは一流のトランペッターにはなれなかった。
前述のギル・エヴァンス・オーケストラやチャールズ・ミンガスのグループで、いくつかの印象的なソロを残しているが、リーダー・アルバムとなると本作を入れてわずかに4枚である。

  

さて、ブルーノートに残されたこのアルバムは、レオ・ライト(as, fl)、ジョー・ヘンダースン(ts)、デューク・ピアスン(p)、ボブ・クランショウ(b)、ウォルター・パーキンス(ds、A面)、ピート・ラロカ(B面)というセクステットによる1963年の録音だ。
速いパッセージを吹くでもなく、ハイノートをヒットするわけでもない、そしてとくにメロディアスともいえないジョニー・Cのソロは、それでも静かで落ち着いたたたずまいを示し、一部のファンには根強い人気があるのだろう。

たとえば冒頭のタイトル曲はピアスンのペンになるミディアムのブルーズで、先発のレオ・ライトは張り切ってじつにエモーショナルなソロを展開するのだが、つづくジョニー・Cのソロは2年ぶりのリーダー・セッションとは思えない落ち着きぶりで、サウンドはウォームだが構成としてはじつにクールなものだ。

そういう彼のスタンスがほかのメンバーにも伝わるのか、2曲めの「Hobo Jo」はジョー・ヘンが書いた、ちょっとリー・モーガンの「サイドワインダー」風のジャズ・ロックなのだが、最初に出るジョニー・Cのソロはもちろん、フロント3人のソロはじつにおとなしい控えめなソロになっている(笑)。

そういう彼の美点が遺憾なく発揮されるのは、B面ラストの「So Sweet My Little Girl」というバラードで、ほかの楽器のアンサンブルに載って静謐なテーマを吹くジョニーのトランペットはじつに美しい。

しょっちゅう聴きたいというわけではないが、ちょっと疲れた体を心を癒したいときになんとなくターンテーブルに載せてみる、そんな1枚だ。

JOHNNY COLES "little johnny c"
BLUE NOTE BST-84144

本編のサイトMUSIC & MOVIESの「JAZZの愛聴盤」のコーナーはこちらから。

 


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コメント 6

bassclef

しばらくぶりです。bassclefです。ううう・・・この[little Johnny C]、未聴なんです。コールズの4枚のリーダー作のうち、the warm sound(epic) は愛聴しております。the warm sound]では、ランディ・ウエストンの曲を何曲かやってますが、これがまた・・・濃くていい味わいの素晴らしさんですよ。コールズのペットというのは・・・ちょっとこもったような、でも温かい音色ですね。
遼さん、コメントの>B面ラストの「So Sweet My Little Girl」というバラード~ジョニーのトランペットはじつに美しい~
・・・うーん、これは良さそうですね。聴きたくなってしまいます(笑)
by bassclef (2006-02-11 09:57) 

parlophone

bassclefさん、どうもです。

>the warm sound(epic) は愛聴しております。

やっぱりそうですか!
CBS SONY/EPIC SONYから1300円の廉価盤シリーズが出たときからず~っと気になっていながら、未だに聴いたことがないんです(笑)。
こちらの方はSONYで出るまで幻の名盤扱いでしたよね…。
いやあ、聴きたいっす!

>ちょっとこもったような、でも温かい音色ですね。

ほんとそうですね。
まさに「the warm sound」!
by parlophone (2006-02-11 23:59) 

milk_tea

>疲れた体を心を癒したいときになんとなくターンテーブルに載せてみる

"ターンテーブルに載せてみる"、って懐かしくも美しい表現ですよねぇ・・。
もう1部の人にしか出来ない行為です。
私に出来るのはもう、カラスも遠ざかるギラギラした小さな丸いディスクを
味気なくトレイに横たえる事だけです。(- -、)
ところで、ジョニー・コールズは実はあまり(いえ、全然)知らないのですが、
中にジョー・ヘンの名前があったので反応しました。
たまたま Page One を買って聴いたらば、Blue Bossa のトランペットのソロが
妙に心に沁みたので調べてみると Kenny Dorham と、あったので、試しに
1枚、ケニーの代表作を買ってみたら("Quiet Kenny")これがまたとっても
良くて!次にまた別のアルバムも買ったりしました。
で、トランペットいいよなぁ~と思って、マイルス・デイビスも2枚くらい聴いて
みたのですが、意外や意外ケニーよりは心に響きませんでした。
ケニーは今でもしょっちゅう聴いています。なんか地味でくすんだ感じが
味わいがあって個人的にはクルんですよね・・・。
人により、音色の好みって色々なんでしょうかね。でも、その warm sound
も出来れば聴いてみたい気がします。
トーシローが長々と失礼いたしました。しかも別の人の話を・・・。(笑)
(しかも仕事中に^^;)
by milk_tea (2006-02-13 10:23) 

parlophone

milkちゃん、どうもです。

>"ターンテーブルに載せてみる"、って懐かしくも美しい表現ですよねぇ・・。

おお、言われてみればそうですね。
ぼくも何が怖いってアナログ・プレイヤーが壊れるのがいちばん怖いです。

>トーシローが長々と失礼いたしました。

わはは、何をおっしゃいますか。
音楽の送り手にはプロ・アマいるかもしれませんが、受け手にはプロもアマもいませんよ^^

>ケニーの代表作を買ってみたら("Quiet Kenny")これがまたとっても良くて!

うん、うん、ケニー・ドーハムはなんとなく一流半みたいな評価のされ方をしますが、チャーリー・パーカーのフロントを務めた才能あるトランペッターです。
"Quiet Kenny"、いいですね。名盤です。
その名のとおり静かで「地味でくすんだ感じが味わい」の人ですね。
でも「熱血!」みたいなプレイもあるんですよ!
聴いてみたい?うひひ^^

ぼくは彼のリーダー・アルバムだけで7枚、サイドマンとして吹いたのを含めると数え切れないくらい持ってます。
そのうち「JAZZの愛聴盤」でも取り上げますね~。

>マイルス・デイビスも…意外や意外…心に響きませんでした。

マイ・パートナーなんかもマイルズはダメですね。
とくにあのミュートが冷たく感じられて、アメリカでは「卵の殻の上を歩く」みたいに繊細だと評されますが、「知覚過敏」みたいに痛い…(笑)そうです。

そのうちマイ・フェイヴァリットのクリフォード・ブラウンも聴いてみてくださいね~。
by parlophone (2006-02-13 20:33) 

milk_tea

>ケニー・ドーハムはなんとなく一流半みたいな評価のされ方をしますが

へ~っ そうなんですか。
でもそういう人を追いかけるのってツウっぽくて良いかも・・・。
「クワイエット・ケニー」というだけあって静かで目立たない人だったんでしょう
かね。いいな。

>でも「熱血!」みたいなプレイもあるんですよ!
>聴いてみたい?うひひ^^

普段地味な男がたまにエキサイトしてる時って強力なもんですよねっ(笑)
それは興味ありますね。

>ぼくは彼のリーダー・アルバムだけで7枚、サイドマンとして吹いたのを
>含めると数え切れないくらい持ってます。
>そのうち「JAZZの愛聴盤」でも取り上げますね~。

うぇ~。スゴイ!パロさんはトランペットが一番好きなんでしょうか?
またはサックスもトロンボーンも全ておしなべて聴くのかな。
本当にキャパが広くて驚くばかりです。

>マイ・フェイヴァリットのクリフォード・ブラウンも聴いてみてくださいね~。

そうやって皆んなで色々買わせる・・・・。(笑)
貪欲に音楽を聴こうとすると、やはりお金も時間も必要になりますね~。
どちらももっと欲しい!
by milk_tea (2006-02-14 23:03) 

parlophone

>パロさんはトランペットが一番好きなんでしょうか?
>またはサックスもトロンボーンも全ておしなべて聴くのかな。

管ではトランペットがいちばん好きなようですね(笑。
jこれはサイトで「JAZZの愛聴盤」やってて気がつきました。

ボントロはヴォーカルのバックなんかでオブリで出てくると
すごくいいと思うのですが、フロントとしてはどうなのかな~。
名手はたくさんいますけどね…。
by parlophone (2006-02-15 21:24) 

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