SSブログ

検証 ゼップ・ボックス――Part 2 [ZEPPELIN]

ボックスの検証シリーズ、きょうは『』と『』をご紹介しよう。

   78.jpg

1st アルバムの全米10位、全英6位という好セールスを背景に、アトランティック・レコードは2nd アルバムの早い時期でのリリースを求めた。

ゼップは68年の暮から69年1月31日にかけての『』と連動した第1回全米ツアー以来、4月25日~5月31日、7月~8月31日と3度も全米ツアーを行っており、そのあいだには3月から4月にかけてスウェーデン~デンマークでのギグ、6月には初の全英ツアーなど、多忙を極めていた。

その合間をぬうように69年2月から『』のレコーディングは始まり、おもにロンドンのオリンピック・スタジオでリズム・トラックの大部分を収録、全米ツアー中にL.A.のミラー・サウンド、NYA&R スタジオ、ジャギー・サウンド・スタジオ、そしてアトランティック・スタジオでレコーディングとオーヴァーダビング、ミキシングがなされた。
そのうちの数曲(B-5Bring It on Home」やB-1「ハートブレイカー」など)はベーシック・トラックも含めてツアー中にアメリカで録音されている。

プロデュースは前作と同じくジミー・ペイジ、エンジニアにはストーンズのレコーディングにも関わっていたアンディ・ジョーンズ(グリンの弟)、ジョージ・チキャン、そしてジミ・ヘンドリクスで有名なエディ・クレイマーが当たっている。
とくにエディはチーフ・エンジニアとしてミキシングも担当しており、A-1「胸いっぱいの愛を」の中間部で聴けるようなめくるめく幻想的なサウンドをテープに収める役割を果たした。

フィルモア・イースト出演中(5月30日か31日?)にジョー・ウォルシュから500ドルで譲り受けた58年製のレスポール・スタンダードをレコーディングでも使い始め、「ハートブレイカー」のソロを録音するころに購入した100W のマーシャルと組み合わせた黄金伝説が幕を開けることになる。
なお一部ではヴォックスのトランジスタ・アンプも使ったらしい。

リリースは69年10月22日にアメリカ、わずかに遅れて10月31日にイギリス、日本では12月に発売されている。

当時クリームのエリック・クラプトンやジミ・ヘンドリクスに夢中だったぼくは、ある日ラジオから流れてきた「胸いっぱいの愛を」を聴いて椅子から転げ落ちそうになるほど衝撃を受けた。
お小遣いが貯まるのを待ちかねるようにして、行きつけだった「熊本コロンビア 熊本駅前店」に行き、仲良くなっていたお姉さんとおしゃべりしながらA 面を試聴させてもらい、そのまま袋に入れてもらって帰った。
1970年2月10日のことだ。
それ以来何百回このレコードを聴いただろう。
なのにいまでもプラントの咳払いが聞こえてくると胸がときめく。

紙ジャケは旧盤はUS 盤、新盤はUK 盤に基づいているので、細かなちがいがあちこちに見られる。

いずれもコーティングのないゲイトフォールド・カヴァーだが、旧盤は厚紙のA 式、新盤は紙質の薄いE 式になっている。
紙質自体もちがっていて、US 盤はざらりとした手触りだ。
色味もけっこうちがう。

   79.jpg

メンバーの部分のアップ。
まず旧盤。

   80.jpg

こちらは新盤だ。
当時日本グラモフォンから出ていた国内盤はA 式だったが、紙質も色調も新盤に近いものだった。

   81.jpg

フロントからスパインにかけて。

   82.jpg

旧盤(US 盤準拠)にはSTEREO のロゴがある。
スパインの表記は「LED ZEPPELIN Ⅱ」。

新盤(UK 盤準拠)にはSTEREO のロゴはない。
スパインの表記は「LED ZEPPELIN 2」になっている。

   83.jpg

内側も色調がかなりちがう。

   84.jpg

曲目とクレジット関係の部分。

   86.jpg

』でもそうだったが、新盤ではUK のカタログ・ナンバーはそのまま残されている。

バック・スリーヴ。
旧盤にあった「ATLANTIC RECORDING CORPORATION」などのクレジットがなくなっている。

   87.jpg

『レッド・ゼッペリン』がリリースされたのは2nd アルバムからちょうど1年後の70年10月である。

   88.jpg

ロバートが気に入っていたウェールズ地方南スノウドニアにある「ブロン・イ・アー」と呼ばれる電気も通っていないコテージで合宿をした4人は、その穏やかなすばらしい自然環境のなかで曲を作り、イングランド南西部のハンプシャーにあるヘッドリー・グランジという古い建物で、ローリング・ストーンズのモービル・スタジオ・システムを活用しながらレコーディングを行った。

といっても、カーネギー・ホールから始まった4回めの全米ツアーを69年11月に終えたゼップは、70年に入ると1月に2回めのUK ツアー、2~3月は初の本格的ユーロ・ツアー、3月21日から4月18日まで5回めの全米ツアー、6~7月にはイギリスを含むヨーロッパ・ツアー、8月5日から9月19日にかけてなんと6回めのUS ツアー!…といったぐあいで、プロン・イ・アーでのんびりできたのが不思議なくらいの強行スケジュールだったのである。

そのためA-4Since I've Been Loving You」など数曲のレコーディングとオーヴァーダブはロンドンのアイランド・スタジオやオリンピック・スタジオで行われ、ミキシングもエディ・クレイマーのエレクトリック・レディを使用した「Gallows Pole」以外はすべてロンドンで行われている。
アコースティックな曲で使用したギターはほとんどがハーモニーで、マーティンを購入するのはこの後だという。
プロデュースはジミー・ペイジ、エンジニアはアンディ・ジョーンズ。

フロント・カヴァーに開けられた小さな窓に、くるくる廻る円盤の絵が次々に現れるファンタスティックなジャケットは、どうやらソフト・マシーンの1st アルバムあたりにヒントがあるようだが、ペイジのアイディアとしてはブロン・イ・アーで体験した田園の豊かな自然の営みを再現しようとしたものだった。
デザインはリチャード・ドリュー、ジャケット制作はZacron が担当した。

2nd アルバムが全米だけでも300万枚を超えるヒットを記録したため、世界中のファンが待ち望んだ3rd アルバムだったが、そのあまりにもフォーキッシュな内容に評論家からもファンからも失望の声が上がったのはどなたもご存知だろう。

ぼくも国内盤の発売日当日に倉敷ダイエーのなかにあった行きつけのレコード・ショップに2,000円を握りしめて行ったのだが、試聴させてもらって『』とのあまりの落差に愕然としてしまい、けっきょく買わなかった。
仲良くなっていた店長さんも「どうしてこんなアルバムを作ったんでしょうねえ」と不思議そうだった。
ピンク色の帯を見ていると、あの日のことをまざまざと思い出してしまう。

   102.jpg

しかしこうしたケルトやブリティッシュ・トラッドへの傾斜、『』あたりからしだいに顕著になっていくインド音楽への傾倒などが、それ以外のHR HMバンドとゼップとを分ける分水嶺なのだ。

紙ジャケはやはり旧盤がUS 盤準拠、新盤がUK 盤準拠で、さらに旧紙ジャケは11ある大小の窓をきちんと再現できなかった(5つしか開いていない)のでけっこう細かなちがいが多い。

どちらもE 式なので紙の厚さにはあまりちがいがないが、UK 盤にはヴィニールがラミネート・コーティングされていたので、新盤もコーティング・スリーヴになっている。

ではまず、アトランティックのマークの部分を見ていただこう。

   89.jpg

旧盤はSTEREO 表記とカタログ・ナンバーSD 19128 がある。
(ただしこれは再発盤の番号で、オリジナルのカタログ・ナンバーはSD 7201 だ)

新盤はどちらもなく、その代わりに「DELUXE」表記がある。

   90.jpg

マークのすぐ上の穴は旧盤ではダミーだったので、新盤とはまったくちがった絵が見えている。

止め金の部分。
旧盤は真鍮の止め金が露出している。

   91.jpg

新盤はきれいに隠されている。

   92.jpg

止め金のすぐ下の絵の色も黄色(旧盤)と緑色(新盤)だ。

ちなみに新盤の紙ジャケを作るにあたってワーナーの担当者さんはUK オリジナル盤をばらして内部構造を確かめている(笑。
貴重な画像満載なので、興味のない方も!ぜひこちらをご覧いただきたい。

バック・カヴァーも色がちがっている。

   93.jpg

つづいて内側。
よく見るとクレジット関係はまったく場所がちがっている。

   94.jpg

US 盤準拠の旧盤はゲイトフォールド左側に楽曲名などの記載がある。

   95.jpg
   (左下に見えているのは止め金)

UK 盤準拠の新盤は右側中央に楽曲名等のクレジットとブロン・イ・アーにかんする献辞などが記載されている。

   96.jpg

Credit must be given to BRON-Y-AUR a small derelict cottage in
South Snowdonia for painting a somewhat forgotten picture of
true completeness which acted as an incentive to some of these
musical statements ―August.1970


この部分が旧盤(US 盤)では右上隅の部分に筆記体で書かれていた。
紙ジャケでは印刷がボケボケで読みづらいので、所有の国内盤の画像を載せておく。

   104.jpg

さらにUS 盤とUK 盤ではゲイトフォールド・スリーヴの構造がちがうため、新紙ジャケはUK 盤の構造を再現している。

   97.jpg

これがあたらしい紙ジャケ。
右側の部分は袋のように内側に折り返されている。

   98.jpg

ちなみに手持ちのUK オリジナル盤もこうなっている。

   99.jpg

オリジナル盤と紙ジャケでおなじ窓におなじ絵をひとつ揃えると、すべての窓がぴたりと揃う!
さすがである。

   100.jpg

レーベルの再現度はこんなぐあいだ。

   101.jpg

インナー・バッグは、ぼくがもっているものには危険性を述べた注意書きのうえに、大きく「Important Notice」と書かれた別のクレジットが記載されている。

   105.jpg
nice!(0)  コメント(12)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 12

music70s

情けないことに経済的事情からゼップ・ボックスの購入は
断念してしまったので、遼さんの詳細なレポート楽しみに拝見してます。

"なのにいまでもプラントの咳払いが聞こえてくると胸がときめく。"
→僕もこの曲にはどえらい衝撃を受けたので、非常に良く分かります。
もっとも感受性豊かな時期に聴いた曲は、いつまでも心に残りますね。
by music70s (2008-09-15 17:08) 

parlophone

music70sさん、こんばんはー。

>遼さんの詳細なレポート楽しみに拝見してます

ありがとうござます!

>→僕もこの曲にはどえらい衝撃を受けたので、非常に良く分かります

うれしいですね~。
あのころゼップの「渾身の一撃」(笑)にやられた中高生はいっぱいいたと思います。

まさかあのころの音楽を50過ぎた今でも聴いていようとは思いもしなかったような気もするし、一生聴くぞ~と思ってたような気もします(笑。

>もっとも感受性豊かな時期に聴いた曲は、いつまでも心に残りますね

ですね^^
by parlophone (2008-09-15 19:37) 

bob

ジャケの写真の美しさ! 目を奪われますよ♪
とくに3rdはカラフルで楽しいです。
比較写真ですが、どうしてもアナログ盤に目が行ってしまいます。

ここ数日の盛り上がりでUKアナログ盤が強烈に欲しくなってしまいました(笑)。
紙ジャケ検証なのにスミマセン。

>まさかあのころの音楽を50過ぎた今でも聴いていようとは思いもしなかったような気もするし、

30過ぎたら絶対に聴かないだろうって確信していたんですがねぇ(笑)。
by bob (2008-09-15 20:22) 

KJ

これはホントにありがたいです。
つくりはホントにバッチリですねぇ。

ボクは残念ながらインスルーのみがリアルタイム。
ロック雑誌を買い始めた頃にネブワースの特集があり、
すごいバンドなんだと思って初めて買ったのがⅡ、
やはりものすごい衝撃を受けたものでした。

しかし、いまだに飽きないっていうのも、
不思議なもんですね(^^)
by KJ (2008-09-15 22:22) 

parlophone

bobさん、こんばんは~。

>ジャケの写真の美しさ! 目を奪われますよ♪
>とくに3rdはカラフルで楽しいです

ありがとうございます。
これはいちおう、ジャケットの美しさへのコメントじゃなく、ジャケットの写真を褒めてくださった…といいほうに解釈しておきます^^

>UKアナログ盤が強烈に欲しくなってしまいました(笑)
>紙ジャケ検証なのにスミマセン

いえいえ、UKオジナル盤、国内盤、旧紙ジャケ、新紙ジャケと比較試聴しているうちに、ぼくもまたぞろオリジナルがほしくなってきました。

とりあえず1st と2nd がほしいなあ~(笑。
by parlophone (2008-09-15 22:58) 

parlophone

KJさん、どうもです。

>つくりはホントにバッチリですねぇ

なんですよ~。
イーグルス以来、ワーナーの担当者は気合が入ってると思います。
そう思うとかえすがえすターコイズ・ブルーは残念ですね。

>すごいバンドなんだと思って初めて買ったのがⅡ

お!そうですか。

俗にⅢから入ったヤツにほんとうのゼップ・ファンはいない、といいますが、Ⅱでよかったですね。
そのわりにはⅢが好きなゼップ・ファンは多いんですが^^
by parlophone (2008-09-15 23:05) 

路傍の石

IIIはいいですよね。拙が最もよく聴いたのがこのIIIのような気がします。といっても、拙が本格的にZEP収集を始めたのは映画『狂熱のライヴ』がわが国公開されてから以降のことですから、その頃から少しずつZEPに対する評価も広がりを見せ始めたと思います。

CSN&Yの対する英国からの回答。拙は勝手にそんな妄想を抱きながらIIIを聴いていたんですけど、特にB面の流れは斬新かつ秀逸だったと今でも思いますね。あー。こんなこと書いていたら拙も欲しくなってきたな。どうかBOXが大量に売れ残って1年後にワゴンセールで半額で並びますように・・・(爆)。
by 路傍の石 (2008-09-16 00:16) 

pinkisland

遼さん、相変わらず素早い更新をされてますね。さすがです。

Ⅲのバックカヴァのプラントの髪とⅢの色ですが、英盤2401002が銀色ですが、後は米盤、英再発と金色なんですね。Ⅲの記事、私もブログに書きたいと思います。ちょっと時間を下さい。
by pinkisland (2008-09-16 06:40) 

parlophone

路傍さん、こんばんは~。

>IIIはいいですよね。拙が最もよく聴いたのがこのIIIのような気がします

なんだかんだいって、やっぱりゼップがスゴイなって思うのは『Ⅲ』だったりします。

>CSN&Yの対する英国からの回答。拙は勝手にそんな妄想を抱きながら
>IIIを聴いていたんですけど

なるほど、そんな捉えかたもあったんですね。
ぼくは『Ⅱ』と『デジャ・ヴ』とをほぼ同時に聴いていたので、ゼップにはゼップの道がある!というのが当時の思いでしたね^^;

>どうかBOXが大量に売れ残って1年後にワゴンセールで半額で並びますように・・・

こらこら、縁起でもない(笑。
by parlophone (2008-09-16 21:22) 

parlophone

pinkislandさん、こんばんは~。

>相変わらず素早い更新をされてますね。さすがです

いや~、じつはこの記事を書くのに丸一日つぶしてしまいました。
たぶん9時間ぐらいかかったと思いますTT

>Ⅲのバックカヴァのプラントの髪とⅢの色ですが、英盤2401002が銀色ですが、
>後は米盤、英再発と金色なんですね

そうだったんですか。
載せませんでしたが写真はいちおう撮ったんです。
ぼくのは旧紙と新紙の中間みたいな色でした…。

pinkislandさんの記事、楽しみにしてます♪
by parlophone (2008-09-16 21:43) 

冬芽

お久しぶりです。

遼さんならこれ、買うてはる思いましたわ。(笑)

これからもちょくちょく覗くやさかいまた仲良うしてや。

あいかわらず、読み応えあるブログやなぁ。
by 冬芽 (2008-09-17 21:17) 

parlophone

おや~、冬芽さん、お久しぶりじゃないですか!
お元気でしたか?

>あいかわらず、読み応えあるブログやなぁ

ありがとうございます。
最近ちょっと忙しくて以前ほど頻繁には更新できなくなちゃったんですが、
暇を作りながらボチボチやって行きたいと思ってます。
またひとつご贔屓に^^

by parlophone (2008-09-19 00:30) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。