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大西順子 『WOW』 [JAZZの愛聴盤]

JAZZの愛聴盤というこのコーナー、前回のレイ・ブライアント・トリオ 『CON ALMA』を紹介してから丸々2か月が経ってしまった。
こんなに間が空いたのも初めてだが、この数か月のリリース・ラッシュがいかにすさまじいものであったかを表しているわけでそれはそれなりにすごいことだ。
さて、前回に続いて今回もピアノ・トリオをご紹介しよう。
大西順子のデビュー作『WOW』だ。

今から10年ぐらい前から、国内では女性のジャズ・ミュージシャンがもてはやされる風潮が続いていて、そのころ木住野桂子、綾戸智絵、ジャズ・ヴァイオリニストの寺井尚子などが続々とCDデビューを飾った。
当時のジャズ・ジャーナリズムもそういう風潮を後押ししていて、当時大西順子も『スウィング・ジャーナル』誌などで大きく取り上げられ話題にもなったりしていた。

  

女性ミュージシャンのばあい、まず間違いなくジャケ写の出来不出来が売り上げに大きく関わっていて(すけべなオジサンが買ってくれるものね^^)、この『WOW』のジャケットは(長い髪といいもの憂げな表情といい、あまりにスタンダードすぎるものの)すごく気になるものであった。
思いっきり個人的な話で恐縮なのだが、このジャケットの写真、ぼくの妻の友だちの一人にすごくよく似ていたのである。
その彼女はあることがあってぼくらの前から姿を消してしまった(もとアイドル歌手のS.J.と同じ理由です)のだが、大西順子もこのアルバムから6年ぐらいして突然われわれファンの前から姿を消してしまうのである。
大西順子がJAZZの世界から消えてしまった理由は知らないが、なんとなく因縁めいたものを感じてしまうのだ。

さてさて、全然関係のない話になってしまった。

このアルバムを初めて聴いたときの衝撃は今でも忘れられない。
1曲めの「THE JUNGULAR」はその名のとおり、彼女が敬愛するデューク・エリントンのジャングル・サウンドに対するリスペクトを表したオリジナルなのだが、イントロからしてすさまじい直球勝負だ。
リチャード・デイヴィスを思わせるヘヴィな嶋友行のベースとともに順子のピアノが重低音を響かせる。
エリントンの「スウィングしなけりゃ意味がない」のフレーズもちらりと顔を出すテーマから、全体のちょうど半分の3分30秒過ぎまで、ピアノは低域だけを使ったパーカッシヴなソロを貫き通す。
こりゃあぶったまげましたね。

つづいて本家エリントンの「ROCKIN' IN RHYTHM」を経て、彼女のオリジナル「B-RUSH」、「PROSPECT PARK WEST」とつづいていくが、2曲ともスタンダードになりうるメロディーの美しさが際立つバラードだ。
とくに後者は今ごろの秋の季節にはぴったりの曲調で
はてしなき並樹のかげをそうそうと風のふくなり……
(コロスケじゃありませんよ、三好達治です^^)という感じ。

そして本アルバムのハイライトともいえるセロニアス・モンクの「BRILLIANT CORNERS」を迎える。
やはり低域に重心を置きながらアブストラクトなモンクの曲調をみごとな構成力で再構築した名演だと思う。

スタンダードの「NATURE BOY」をはさんで、ラストはオーネット・コールマンの「BROADWAY BLUES」でしめくくる。
新人のデビュー作というエクスキューズ抜きで堂々たる傑作と呼べるだろう。

さてもうすぐ40歳を迎えようというわれらが順子、彼女は今どこで何をしているのだろうか。


junko onishi trio "WOW"
somethin'else 5547



本編のサイトMUSIC & MOVIESの「JAZZの愛聴盤」のコーナーはこちらから。




タグ:大西順子
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コメント 8

3-savile-row

恥ずかしながら、わたくし大西順子・木住野桂子をジャケ買いしてしまったスケベなおじさんです。すみません。
昔、阿川泰子のコンサートにも行ったという恥ずかしい過去も持っております。(決して阿川泰子をけなしているのではありません。私のスケベ心が恥ずかしいだけですので、誤解無いよう。。。)
しかし、大西順子は惜しいですね。本当にもったいない。ビレッジバンガードのLIVEやジャッキー・マクリーンとの競演盤なんか一時期よく聞いてました。

そういえば、リニー・ロスネスもジャケ買いしてしまい、あげくの果てにはPIT INNまで観に行ってしまいました。恥ずかしい。
by 3-savile-row (2005-10-11 23:33) 

parlophone

あらあら、けっしてmarthaさんのことを言ってる訳じゃなくて、そういうおじさんが多いんじゃないかという推測です^^;

そういえば阿川泰子、一時売れましたね~。
声はヘレン・メリルっぽいところもありましたが、どう贔屓目に見ても歌唱力は平凡で、そういう彼女が売れたのもやはりルックスでしょうねえ。

リニー・ロスネス?
知りません。さっそくチェックしなくちゃ (←って、ヲイヲイ)。

それにしてもわれらが順子、どこに行っちゃったんでしょうねえ。
心配です。
by parlophone (2005-10-11 23:43) 

MASA

私がちょうどジャズに目覚めて聴きだした頃、NHKかなんかのテレビに出て演奏してるのを観てそのプレイのスゴさと美貌とのキャップに圧倒され、このデビュー盤買いました。
それ以後も何枚か買いましたが、いつの間にか名前を聞かないなあと思ったら、引退同然の状態だったんですか。初めて知りました。
そうかあ、そいつは残念ですねえ。音楽に行き詰まったんですかねえ。
それとも男か?(笑)
by MASA (2005-10-12 00:46) 

parlophone

ぼくは動く大西順子を見たことがないんですよね~。
NHK TVかあ。日ごろTV見ないしなあ(笑)。

じつは7~8年前にうちのすぐ近くのJAZZ喫茶のイヴェントで、福岡在住のギタリストと共演するために来福したことがあるんですよね。
そのときはブルーノート・フクオカにも出演したと思うんですが、残念ながら見てません。

今から思えばちょっとムリしても見ておくんだった…。
by parlophone (2005-10-12 00:59) 

夜明けのティーンエイジャー

大西順子、ハァ~お懐かしゅうございます。
みなさんおっしゃるようにTVにもよく出ておりましたね(特にNHK)。

アメリカの大富豪と結婚して引退しちゃったとかなんとか、
本当かな?あくまでいくつかあった噂のひとつです。
by 夜明けのティーンエイジャー (2005-10-12 03:29) 

海童

http://notrunks.jp/cdreview/onishijunko/onishi_junko.htm
ここも遼さんのサイトですか?
by 海童 (2005-10-12 08:00) 

parlophone

夜明けさんどうもです。
>アメリカの大富豪と結婚して引退しちゃったとかなんとか、
そんな噂があったんですか?
お姫様やなあ~。
by parlophone (2005-10-12 19:23) 

parlophone

海童さん、初めまして。

うわあ~、ありがとうございます!
大西順子、ついに帰ってきたんですね。
う~ん、今までどこで何をしていたのだろう?
本人に直接インタヴューしたことのある人が、
東芝EMIとの確執を云々してるぐらいだから、
なにかあったんでしょうねえ。

いずれにしてもまたJAZZ界に戻って、
アグレッシヴでアトラクティヴでパーカッシヴで激シブで…
(すんまへん、興奮のあまり駄洒落てしまひました^^;)
順子のピアノを聞かせてほしいナーン
by parlophone (2005-10-12 19:30) 

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