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『a.t.'s delight』 [JAZZの愛聴盤]

スタンリー・タレンタインとコルトレーン。
ぼくのなかでこのふたりのテナー奏者が結びつくことはほとんどない。

タレンタインといえば、アーシーなフレーズとやや時代がかったヴィブラートで60年代ブルーノートの"ソウル・サイド"を代表するサックス奏者だが、求道的ともいえるストイックな姿勢でフリー・ジャズや神の世界への接近を図ったコルトレーンとは対極にいるミュージシャンのような気がする。

だから、アート・テイラーの代表作であるこのアルバムを初めて聴いたとき、A面1曲目のタイトルがわからなかった。
「! ? !? ……なんだっけ、この曲? チョー有名だぞ !」
パーソネルはトランペットにデイヴ・バーンズ、タレンタインのテナー・サックス、ピアノがウィントン・ケリーで、ポール・チェンバーズのベースに、アート・テイラーのドラムスという顔ぶれだ。


堪らずアルバムのライナーを見て自らの不明に呆れ返りましたね。
Syeeda's Song Flute」!
コルトレーンの飛躍をまざまざと見せつけた1959年のアトランティックへのアルバム『ジャイアント・ステップス』に収められたコルトレーンのオリジナルである。
まさかタレンタインがコルトレーンをやるなんて……という思い込みから、タイトルが思い出せなかったのだ。
ああ、恥ずかしい。

ところで、コルトレーンのオリジナル・セッションでもドラムを叩いているのはアート・テイラーである。
ということはつまり、テイラーがコルトレーンの役をタレンタインにやらせているのだ。
う~む、これはプロデューサーの素質があるぞ。

そのほかにもこのアルバムに収められているのはデンジル・ベスト(バップ時代の名ドラマー!)の「Move」や、セロニアス・モンクの「Epistrophy」など、ジャズメンのオリジナルばかりだ。
そしてケリーのピアノもバーンズのトランペットも、タレンタインのテナーもじつにいい味を出している。

ハードバップ時代の名脇役が1960年にブルーノートに残した名盤である。

なお、原田和典氏によると「シーダズ・ソング・フルート」という従来の表記より、
「サイーダ」というのが発音に近いそうだ。

Art Taylor "a.t.'s delight"
BLUE NOTE BST 84047


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コメント 7

bassclef

こんにちわ。初めてオジャマします。parlophoneさんの「ジャズ愛聴盤」、楽しみにしております。ドラムのアート・テイラーって、けっこう渋いけどいいリーダーアルバムがprestigeにも何枚かありますね。かなりのモンク好きらしく、よくモンクの曲が入ってます。
それと、僕もブログ<夢見るレコード>というのを始めたんですが、parlophoneさんの「フィル・ウッズ」の項に、たまたま僕のブログの内容がリンク(笑)~というより「答え」が載ってるのを発見したので、その箇所からのリンクを貼らせていただきました。あのウッズのソロ!ほんとにいいですよね(笑)
拙ブログ<夢見るレコード> http://bassclef.air-nifty.com/monk/
はジャズ中心ですが、レコード探索話題のような内容です。ひまつぶしにでも覗いてみてください。
by bassclef (2005-07-13 09:03) 

parlophone

bassclefさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
ブログとりあえず最新の「相対性レコード」(笑)と、「旅レコ」香港編を読ませていただきました。
いや~、おもしろいですね。
ぼくもビル・エヴァンスやアート・ペッパーは大好きなので、これからじっくり読ませていただきます。
とりあえず疑問が解けてよかったです。
今後ともご贔屓に、どうぞよろしく。
by parlophone (2005-07-13 21:01) 

夜明けのティーンエイジャー

『A.T.'S DELIGHT』って、どんなアルバムだったかなぁ?と思い、
久しぶりに引っ張り出してかけてみました
購入したのは10年くらい前でしょうか。東芝のアナログ盤です。
あの頃はブルー・ノートをはじめ夢中でモダン・ジャズのレコードを買い捲ってました。
アート・テイラーが節度をわきまえながらも気持ちのいい暴れっぷりをしてますねぇ。
スタンリー・タレンタインも好きで、『LOOK OUT!』あたりは随分と愛聴しましたよ。
豪放磊落でいながらダンディな渋さが好きでしたね。

実はコルトレーンも結構好きなんですが話が長くなるのでまたいずれ(笑)。
by 夜明けのティーンエイジャー (2005-07-13 22:54) 

parlophone

夜明けさん、どうもです。
ぼくの方はいつもROMばっかりなのに、さっそく書き込んでいただき恐縮です。
個人的には「Swingin' London」のシリーズ、期待してます。
寡聞なものでコメントはできませんけど…(笑)。

>スタンリー・タレンタインも好きで、『LOOK OUT!』あたりは随分と愛聴しましたよ。
>豪放磊落でいながらダンディな渋さが好きでしたね。

おー、村上春樹と趣味が合いそうですね(笑)。
ぼくは『BLUE HOUR』しか持ってませんが、これはタレンタインもさることながら、スリー・サウンズを聞いたことがなかったので、一挙両得と思って買ったのですが、
スリー・サウンズの方は評判どおり思いっきりカクテル・ピアノでがっくり来ました(笑)。
タレンタインは夜明けさんおっしゃるとおり豪放磊落ですね~。
by parlophone (2005-07-13 23:31) 

bassclef

parlophoneさん、わざわざ、拙ブログ<夢レコ>への感想までも含めての、レスポンス、ありがとうございます。parlophoneさんの「JAZZの愛聴盤」ジョージ・ウオリントンの項も読みましたら・・・1100円盤の話題が出てまして、ちょっと驚きました。僕もあの1100円盤発売の1972年には、高1でした。parlophoneさんは、何故だかもう少し若い世代の方だと、勝手に思い込んで降りました(笑)申し訳ないです・・・。でも同じ世代のようで親近感が湧きます。
それから、夜明けのティーンエイジャーさん、こんにちわ。bassclefといいます。夜明けさんは・・・「熱烈音盤」の路傍の石さんでもあるのですね。いつも見ております。そういえば「拙ブログ」という言い方、使わせていただきました(笑)
それにしても、みなさん、英ロックが専門なだけでなく、ジャズや昭和歌謡にも守備範囲が広いですね。音楽への、深いのめり込みを感じます(笑)
とにもかくにも・・・音楽っていいですね。
by bassclef (2005-07-14 00:02) 

parlophone

bassclefさん、どうもです。
ぼくの方はぼくの方で、bassclefさんってもう少しお若い方かと想像しておりました(笑)。ぼくは72年に高3でした…。

ところでブログにも書いたんですが、今までの「JAZZの愛聴盤」をアーカイヴスとして、メイン・サイトの方にまとめてみました。
ちょっと頑張ってスタイル・シートにも挑戦してみました(笑)。
お暇なときにまた覗いてみてください。
ご感想など、こちらでも掲示板の方へでも書いていただけるとすご~く嬉しいです!
by parlophone (2005-07-14 00:38) 

夜明けのティーンエイジャー

parlophoneさん、bassclefさん、レスありがとうございます。
ちなみに拙は72年に小5です。
一番の若輩者で恐縮です。

bassclefさんのブログも拝読させていただいております。
猟盤での行動パターン及び精神構造が拙に近くてつい親近感を持ってしまいます(笑)。
海外での猟盤は経験がないのですが、面白そうですね。
ところで、アート・パッパーとスコット・ラファロは拙も大好きです。
拙もジャズについて書きたくなってきました~。
って、もう今はいっぱいいっぱいです(汗)。
by 夜明けのティーンエイジャー (2005-07-14 01:07) 

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