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Beatles Mono LPを聴く―その1 『プリーズ・プリーズ・ミー』 [BEATLES]

前回『プリーズ・プリーズ・ミー』を取り上げたのは、Stereo版のリマスターCDが出たときで、そのときは
「あれこれ聴いているうちにだんだん比較なんてどうでもよくなってきた(笑」
なんて無責任なことを書いて、ぜんぜん違う方向の記事になってしまったが、今回はしっかり聴きました(笑。

結論からいうと、リマスターの難しさを考えさせられる比較試聴になってしまった。

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先日の紹介記事ではチョコレート色?と書いたレーベルだが、自然光のなかで見るとちょっとちがう。
でもやっぱりゴールドでもない(笑。

「いい音とは何か」な~んて大上段に構えるまでもなく、100人の音楽ファンがいれば100とおりのいい音があると思う。
以前にもちょっと書いたが、「雑音のない音」をいい音の最上位に考える人たちにとっては、CDを聴かずにチリプチ・ノイズから逃れられないアナログ盤を聴くという行為が信じられないだろう。
さまざまなメイカーからいろいろなスピーカーが出ていてそれぞれにファンがいるのは、繊細な美しい音を求める人と、迫力のある強靭な音を求める人ではおのずから「いい音=聴きたい音」の概念が異なるからだと思う。


以前『Stereo Sound』誌に「レコード演奏家」という連載があって(いまもあるかもしれない)、タイトルを初めて目にしたときには思わず苦笑いしてしまったが、レコーディングやミキシング、それに今回のようなリマスタリングを担当するエンジニアには、ほんとうに音楽の演奏家のような感性が求められるのではないか、そんなことを考えてしまった。

A面の1曲め、「I Saw Her Standing There」
低域も高域もスッと伸びていて「お、なかなかいいじゃないか」と思う。
2曲め、「Misery」
ヴォーカルの鮮度がぐっと落ちるが、これはオリジナル盤もそう。
ジョージ・マーティンがピアノをダビングしたせいなのかどうか、ピアノもギターもぼんやりとしていて、オリジナルの良し悪しがそのまま反映されている。
3曲め、「Anna」
ジョンのヴォーカルはけっこうリアルだが、やや元気がないというか、小ぢんまりというか...。

と、いうふうに聴いていくうちに少しずつ退屈になっていく。
A面最後の「Please Please Me」を聴いても、ジョージ・マーティンが「きみたちのナンバー・ワン・ヒットができたぞ」と叫んだという、そのよさが感じられない。
それがいちばん顕著なのがリンゴの歌う「Boys」で、バックではジョンもポールも終始叫びながらリンゴを煽っているのだが、その熱狂がちっとも伝わってこないのだ。
なんだか醒めた表情に聞こえる。

02.jpg
前回指摘した建物の影は付属のハードカヴァー本でも修正されている!
ここまでいけば歴史のねつ造ではないか(←ちがいます^^;

オリジナル盤のファースト・プレスと比較してはいけないのかもしれないが、ゴールド盤はやっぱり熱い。
4人の弾けるような若さがダイレクトに音に載っていて、それが聴いているぼくらのこころを熱くする。
B面になると、そのあたりリマスターMonoもけっこう健闘していて、とくにラストの「Twist and Shout」は、なかなかいいじゃないかと思うのだが…。

最近出たジャズの高音質リイシュー盤で、ほんとうに音のよさにびっくりしたレコードが2枚ある。
1つはAnalogue Productionから出た"PRESTIGE MONO 25"シリーズの1枚で、マイルス・デイヴィスの『BAG'S GROOVE』。
もう一枚は、このブログでもご紹介したMusic Matters社の"BLUE NOTE"の新しいシリーズから、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの『MOANIN'』。
どちらも33回転、180gの重量盤で、オリジナルのマスターテープからカッティング・マスターを作成するという条件は今回のリマスター・モノと同じである。
ただし録音はどちらも1950年代、『BAG'S GROOVE』のほうはビートルズよりも10年も古い1954年の録音だ。

いや、もちろんわかってますよ。
ジャズやクラシックというのは生音が主で、50年代にはすでに優れた録音のレコードがたくさんあった。
それに比べれば電気で増幅された音を扱うロックというのは、当時はまだ生まれたばかりの音楽で、レコーディング・エンジニアも手探りの状態だったのだろう。
ただ、音楽やレコーディングについての幅広い造詣と豊富な経験をもつジョージ・マーティンという優れた人物がプロデューサーに就いたことで、ビートルズは当時としては画期的な音のいいロックのレコードを作ることができたのだと思う。

そこでリマスタリング・エンジニアの感性ということになるのだが、上にあげた2枚のアナログ盤はいずれもルディ・ヴァン・ゲルダーが録音し、ケヴィン・グレイがリマスタリングを手がけている。
おなじヴァン・ゲルダーが録音したアルバムを、日本の有名なリマスタリング・エンジニアが復刻したLPももっているが、残念ながら比べものにはならない。
トランペットもサックスも、出てくる音のリアリティーに大きく隔たりがあるのだ。

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33回転でもここまでできる!というリイシューのお手本のような高音質LP

ビートルズのファーストやセカンドは、2トラックのレコーダーで楽器もシンプルな構成。
そのうえ「オリジナルの1/4インチテープの曲間の接合に使うテープの糊がテープヘッドに付着する問題があり曲ごとにカッティング用のテープにコピーして新たにマスターテープを作成」(Phasemationのブログから)するというアクシデントもあり、難しい部分もたくさんあったのだろう。

とりあえず次回は『with the Beatles』を聴いてみる。

ちなみに、前回の記事のときもっていた『PPM』は全部で17枚。
そのあとリマスターのStereo盤LP、Mono盤LP、プラス1枚で、現在はちょうど20枚もっていることになる。
われながらどんだけ好きなん?ってツッコミたくなるけど、そのプラス1枚がこちら。

04.jpg

そう、国内盤の初回CD。

なんでいまさら?って、マニアの方ならおわかりですよね。
はい、シリアルナンバー入り。

05.jpg

相変わらずおバカでしょ(笑。
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MASA

ワタシのところにもようやく到着したので記事にしましたが、悪くはないものの初期の4枚に関してはどうも今ひとつという印象が拭えませんねえ。初期のあのワイルドな感じが今回はやや不足気味だと思います。

反面「HELP!」「RUBBER SOUL」「SGT. PEPPERS」あたりは非常にオリジナルに近い印象を持ちました。
未聴でしたらご期待下さい(笑)。
by MASA (2014-09-14 22:34) 

路傍の石

マイルスの『BAG'S GROOVE』か、そんなにいい音で聴けるなんて・・・このアルバム、25年前、拙がジャズのレコードを集めるぞ!と決心した最初の頃に好きになった1枚でした。PRESTIGE期のマイルス好きでしたから、ING四部作とか。

それはともかく、確かに今回のMONO LPリマスターではPPMゴールドのあのソリッドで熱気で充満するような質感には及ばないですね。全体的にスマートになっていてやや物足りなく感じます。でも逆にその辺の暑苦しさが後退したこと、拙がこのアルバムで好きな別の一面、リヴァプールの街並が夕陽でたそがれているようなムードの曲、「アンナ」「ベイビー・イッツ・ユー」「蜜の味」あたりのヴォーカルのナマナマしさにドキリとしたりと、影の部分に際立ったところを感じさせてくれて新たな発見もありました。

もしかしたら、今回のリマスターは全般的にそんな傾向にあるかもしれません。そこはやっぱり賛否両論になるかもですね。
by 路傍の石 (2014-09-14 22:44) 

parlophone

MASAさん、どうもです。

じつは豪雨のニュースを見て心配してたんですよ。
何もなかったようで安心しました。

>悪くはないものの初期の4枚に関してはどうも今ひとつという印象が拭えませんねえ

ああ、よかった~。
最近自分の耳にどうも自信がもてなくて、MASAさんと評価が共通だと安心します^^

>未聴でしたらご期待下さい(笑)

いやあ、期待しちゃいます。
とくにぼくのもってる『HELP!』はどうもパッとしないので、すごく楽しみです^^
by parlophone (2014-09-14 22:58) 

parlophone

路傍さん、こんばんはー。

『BAG'S GROOVE』に反応していただいてありがとうございます!
"PRESTIGE MONO 25"シリーズはみんなけっこう音がいいんですが、このアルバムは特別だと思います。
それと、今までぼくが見てきたジャケットは、文字の色がもっと黄色に近かったんですが、この微妙な黄緑色はほんとうに美しくて、さすがReid Milesだと思いました(←そうですよね、リード・マイルスですよね?)
25枚しか出ないのが残念ですが、価格が3,500円とリーズナブルなのも魅力です。

>全体的にスマートになっていてやや物足りなく感じます

あ、やっぱりそうですか。
いやあ、ちょっぴり安心しました。
Stereo LP盤の評価で、ほんとぼくひとりが「悪くない」っていってるような感じでしたから、自信喪失状態だったんですよ。

>リヴァプールの街並が夕陽でたそがれているようなムードの曲、「アンナ」
>「ベイビー・イッツ・ユー」「蜜の味」あたりのヴォーカルのナマナマしさ

なるほどねー。
まったく今まで感じたことがありませんでしたが、おっしゃるとおりそんなしっとり感のある曲が並んでますね。

>影の部分に際立ったところを感じさせてくれて新たな発見もありました

さすがです。
勉強になりました!^^
by parlophone (2014-09-14 23:08) 

mash

こんばんは!!

"Analogue Productions 33"と"PRESTIGE MONO 25"ですね~。

実は今回のMono Boxを入手する前に個人的に願っていたのが、この2シリーズの質感に肉薄するような凄さだったんで、若干物足りなさを感じました(個人的にはPPM~AHDN)。

ただ、SGTとMMTに関しては良いんじゃないかと思ってます。
by mash (2014-09-15 01:07) 

may_r

おはようございます。

リマスターの初期作品はカッティングレベルを下げたため歪み(音割れ)は
なくなったが、迫力感まで削ぎ落してしまった感じでしょうか。
JAZZは10年くらい勉強中ですが奥が深いですね。
『モーニン』は日本盤(東芝)とClassic RecordsのMONO盤を所有してますが、後者の盤は良い音で鳴ります。A-1冒頭のリー・モガンの吹き出しは生々しい音がします。
by may_r (2014-09-15 06:15) 

parlophone

mashさん、こんにちはー。

>実は今回のMono Boxを入手する前に個人的に願っていたのが、この2シリーズの質感に肉薄する
ような凄さだったんで、

mashさんもそうだったんですね!
ぼくもジャズの高音質リイシュー盤を体験すればするほど、まだまだ可能性はあるんじゃないかと思っていましたので、期待してたんですけどね。

>若干物足りなさを感じました(個人的にはPPM~AHDN)

みなさん、そうおっしゃいますね。
やはり『PPM』はオリジナルには迫れませんでしたね。
残念!
by parlophone (2014-09-15 11:16) 

parlophone

may_rさん、こんにちはー。

>リマスターの初期作品はカッティングレベルを下げたため歪み(音割れ)は
>なくなったが、迫力感まで削ぎ落してしまった感じでしょうか

そう!カッティング・レベル!
大事なことを記事に書き忘れてました。
『PPM』もオリジナルはずいぶんカッティング・レベルが高いですよね。
比較してたら慌ててヴォリューム下げなきゃいけませんもんね。

>Classic RecordsのMONO盤

ぼくも数枚しか所有していませんが、クラレコといえばバーニー・グランドマン。
さすがに素晴らしい音、してますよね。
Music Mattersのケヴィン・グレイと聴き比べるのも楽しいと思いますよ^^

by parlophone (2014-09-15 11:20) 

mash

遼さん、こんにちは!!

>ぼくもジャズの高音質リイシュー盤を体験すればするほど、まだまだ可能性はあるんじゃないかと思っていましたので、期待してたんですけどね。

そうなんですよ~。

今年始まった"AP33シリーズ"なんて本当に"レコードでここまで出来るんだ!!"ってビットリしましたし、とにかく2009年のリマスターを破棄するのと同然の姿勢で新しく作り直すって感じの予告だったんで、正直もう少しだけでいいから丁寧さが欲しかった感じがします。090909という数字の事を踏まえて先に0909リリースって事を考えていたのなら、正直発売日なんてどうでもいいんで、2014年の現時点で残すことの出来る最良の形を目指して欲しかったって感じがするかなぁ~って感じです。
by mash (2014-09-15 15:20) 

やまちゃん

おー、遼さん、PPMの初回CD持ってましたかあ
私は2009リマスターは全部そろえてますが、それでも初回CDはいまだに所有してます
そもそも2009のは英国オリジナル音源を元にしたらしいですが、正直、最初はあまりしっくり来なかったので良かったと思ったのはRevolver、Sgt.Pepper's、White Albumだけであとはこれといって印象になかったです。それほど初回盤の音が耳に焼き付いてましたから
私がモノに拘るのはビートルズもありますが、Miles DavisのRound About Midnightがジャズのモノ作品でもっとも印象が深い作品で一番のお気に入りになってます。
実はこのRound About Midnightも3種類のCDとレコードがありまして私もバカですね(笑) でも・・やっぱ聞き比べってしたくなるんですよね

しっかし・・・・あのブレイキーの名作モーニンが出てくるとは!!!
あー、これから芸術の秋ですからよけいにジャズが聞きたくなる
by やまちゃん (2014-09-16 06:16) 

parlophone

mashさん、こんばんはー。

>今年始まった"AP33シリーズ"なんて本当に"レコードでここまで出来るんだ!!"ってビックリしました

今年始まったのはたぶんMM社の33シリーズだと思いますが、海外でも過去のAP社の45回転シリーズより音がいい、なんて評価もあったようですね。
いずれにしても、どれを聴いても出来不出来の差がない、非常に高いレベルのリマスターでびっくりしますね。

>2014年の現時点で残すことの出来る最良の形を目指して欲しかったって感じがするかなぁ~

いやあ、おっしゃるとおりですね。
ぼくはまだ最初の2枚しか(真剣には)聴いてませんが、オリジナル・マスターにトラブルのあった『PPM』は別にしても、『with』はもうちょっとなんとかなったんじゃないか、って気はしますね。
by parlophone (2014-09-17 01:20) 

parlophone

やまちゃんさん、どうもです。

>おー、遼さん、PPMの初回CD持ってましたかあ

たまたまBook Offで見つけて、値段も千円ちょっとだったので買ってしまいました^^

>それほど初回盤の音が耳に焼き付いてましたから

そうなんですか!
ぼくはやはり子どものころからアナログの音を聴いてきたので、あまりCDの音って印象にないんですが、世代によってそれぞれ「ビートルズの音」っていうのがあるんでしょうね。

以前「ビートルズのCD が売れている! 」(http://parlophone.blog.so-net.ne.jp/2009-05-24)という記事を書いたことがあるんですが、リマスターCDが発売される直前に、当時のCDの売り上げが伸びるという現象があったみたいで、初回のCDのファンもたくさんいらっしゃるんだと思います。

>Miles DavisのRound About Midnightがジャズのモノ作品でもっとも印象が深い作品で
>一番のお気に入りになってます

ぼくも大好きですねー。
最近はオランダのMusic on Vinylというところから出たモノラル盤をよく聴いてます^^
JAZZもやっぱりいいですねー。
by parlophone (2014-09-17 01:32) 

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