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ビートルズ『THE U.S.BOX』の不可解 [BEATLES]

「長らく待たれていた、ビートルズのUSアルバム・ヴァージョンを集めた13枚組CDボックス・セットがリリースされる」
というのがAmazonのProduct Description(原文は英語)だが、タイミング的にはビートルズのアメリカ上陸50周年記念ということなのだろう。

USBOX.jpg
(画像はsuperdeluxeedition.comから)

長らく待たれていたかどうかは別として、US盤に慣れ親しんでいた人々にとって、1987年に全世界統一様式でCD化されたオリジナル・アルバムは違和感を覚えるものであったにちがいない。
それは国内盤の『ビートルズ!』を最初のアルバムとして聴いてきたわたしたちの世代が、70年代の旗帯シリーズに初めて接したときの体験からも容易に想像できる。
ジャケットはほぼ同じなのに「抱きしめたい」も「シー・ラヴズ・ユー」も「フロム・ミー・トゥ・ユー」も入ってないUK盤が、しかもセカンド・アルバムで、ファーストはジャケも収録曲もさらに地味!…というのが、そのときのぼくの正直な感想だった。

けれどもCDという新しい時代の幕開けに際して、当時のEMI(とジョージ・マーティン?)によって、『マジカル・ミステリー・ツアー』を除く各国盤と、そこに収録されたミックス違いなどはすべて"非公式盤"の地位に格下げになってしまった。

したがって2004年に『THE CAPITOL ALBUMS Vol.1('64 BOX)』、2006年に『Vol.2('65 BOX)』というかたちで、キャピトル盤がCD化されたときの驚きは大変なものだった。
それがどれほどの"大事件"であったかというと、中山康樹と小川隆夫という2人の著名な音楽評論家による『ビートルズ アメリカ盤のすべて』という本が、雑誌の特集とかではなく新書版として出版されるほどの騒ぎだったのだ。

01.jpg

紙ジャケというのも驚きだったし、キャピトル音源がCD用にリマスタリングされてリリースされたということは、それ以外のレア音源(まあ、いちばん分かりやすい例でいうと、ハイハットのカウント付きの「オール・マイ・ラヴィング」とか)がリリースされる可能性が開かれたというのもうれしい驚きだった。

しかし今回の『U.S.BOX』はなんだろう。
「ディテールまで再現された紙ジャケとインナー・スリーヴ」とか「ブッチャー・カヴァー」に「トランク・カヴァー」のステッカー付きとか、いろいろと謳ってあるけれど、肝心の音については、『ザ・ビートルズ・ストーリー』など一部の音源を除くと、ほとんどはUKヴァージョンだという。

これが「長らく待たれていたビートルズのUSアルバム・ヴァージョン」なのだろうか。
キメの細やかなUK盤とはちがって、どこかザラリとしたUS盤の味わいは独特のものだったのに…。
個人的にいちばん残念だったのは『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』収録の「アイム・オンリー・スリーピング」だ。
ご存知のように、この曲はUK版ステレオ・ヴァージョン、モノ・ヴァージョン、US版ステレオ・ヴァージョン、モノ・ヴァージョンの4通りのミックス違いが存在する。
せっかくこのディスクをトレーに載せても、流れてくるのが耳慣れたUKヴァージョンだったら、はっきりいって魅力は半減である。

せっかく『THE CAPITOL ALBUMS』でUS音源を採用したのに、今回UK音源に"逆戻り"してしまった背景にどんな理由があるのだろう。
中途半端で不可解な『U.S.BOX』である。

もちろん、日本製の紙ジャケを採用した国内版ボックスも、バラ売りのあるインターナショナル盤も未購入で、今後も買う予定はない。

参考までに、ちょっと古い記事ですが、『THE CAPITOL ALBUMS』についてはこちらを、

英米のオリジナル盤いついてはこちらをご覧ください。

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コメント 12

Dr.T

まあ、こいつを買う人は正にジャケ買いか、Beatlesだったらなんでも買う人種に限られるのではないでしょうか?ぶっちゃけ、UKヴァージョンの並び替え音源な訳ですからね。こんなものに散財するくらいなら、オリジナルUS LPに投資しますね、私なら。
by Dr.T (2014-02-06 21:26) 

parlophone

Dr.Tさん、こんばんはー。

>こいつを買う人は正にジャケ買いか、Beatlesだったらなんでも買う人種

まあ、じつをいうとぼくもこれまではそういった人種の一人だった訳で、もし国内盤の紙ジャケがバラ売りされてたら少なくともブッチャー・カヴァーは買ってましたね(笑。
しかしさすがに今回はパスです。

>ぶっちゃけ、UKヴァージョンの並び替え音源な訳ですからね

もうおっしゃるとおりで、不可解なのは、なぜ一度はキャピトル音源のCD化に積極的だったEMIが、UKヴァージョンにもどってしまったか、なんですよね…。
by parlophone (2014-02-06 21:41) 

路傍の石

遼さん、どうもです。

遼さんが不可解だとおっしゃる疑問については、拙ブログ「帝都熱烈音盤解放戦線」にいただいたコメント欄のレスで、拙の見解を書いてみました(↓のby 路傍の石リンク参照)。

今回のことは、アビーロード・チームのある種官僚主義的なやり方には限界があるということをはからずも示してしまったという感じですね。そこで憂慮するのが、今年のリリースがアナウンスされた2009リマスター・モノ・ミックスのアナログLPです。カッティング作業はすでに一昨年リリースされたリマスター・ステレオLPと同時に終わっていることがシーン・マギー本人の口から公表されていたので、もしそれがそのままリリースされるのだとしたら、拙はまたも完全にスルーすることになるかもしれません。そこにはマニアが本当に望んでいる60年代当時のオリ盤にあった質感を考慮に入れない、シーン・マギーのエンジニアとしてのエゴ優先(高域の歪みを低減させるための操作がオリ盤で感じさせた勢いやナマナマしさを殺いでしまうこともある)に疑問を感じるからです。

いっそのこと、ストーンズみたいに外部のリマスタリング・エンジニアに丸投げするなど思い切ったことも試してほしいんですけど、アビーロード・チームのメンツからそれはできない相談なのかもしれませんねぇ(笑)。
by 路傍の石 (2014-02-08 14:22) 

parlophone

路傍さん、こんにちは。

貴ブログのほうにもコメントしてきました。
納得です!

>アビーロード・チームのある種官僚主義的なやり方には限界があるということを
>はからずも示してしまったという感じ

ほんとですねー。

でもよく考えたら、
「アーティストの立場からすれば、自分たちの意思とはまったく無関係に編集され、ミックスまでいじられた海外盤は我慢できないという気持ちは当然だ」
というのが、これまでの自分の立場だったはずなのに、ついついUSミックスのCD化を望んでいるぼくっていったい?(笑

>いっそのこと、ストーンズみたいに外部のリマスタリング・エンジニアに丸投げする

それ、大賛成ですね。
いま高音質LPの世界では、バーニー・グランドマンやケヴィン・グレイ、スティーヴ・ホフマンといった名だたるマスタリング・エンジニアがほんと、いい仕事してますからね。
そういった人たちの手で復刻されたモノラル盤を聴いてみたい!!
by parlophone (2014-02-08 14:51) 

pink island

 遼さん、こんにちは。

キャピトルのビートルズボックスですが、音楽業界不景気の中、ビートルズなら売れるだろという、もう見え見えの展開でなんか白けてしまってます。ジャケだけ米盤にしておいて、音源はこの前の英リマスターでごまかしておけといったことろでしょうか。

まあ、あんまり甘くみないほうがいいよと、警告したいですね。
by pink island (2014-02-09 07:14) 

parlophone

pink islandさん、こんにちはー。

>音楽業界不景気の中、ビートルズなら売れるだろという、
>もう見え見えの展開でなんか白けてしまってます

ええええ、そういう方も多いでしょうねえ。
たしかにビートルズなら売れるかもしれませんが、こういう中途半端な企画を続けていればそのうちだれも興味を示さなくなるでしょうに、売れるうちに売っとけってつもりでしょうかね。
by parlophone (2014-02-09 13:39) 

MASA

ワタシもUS BOXをやっと記事にしました。
'09年の優れたリマスターがある以上、今回はUSヴァージョンよりもUKリマスターを使えよ、という圧力がUS側にあったかも知れませんね。
まあアビーロード・チームからしてみればUSヴァージョンなんか邪道なわけで、そのままでの再発は市場に混乱も来すし止めてよね、ということなんじゃないかなあ、と単純に思います。


by MASA (2014-02-11 00:28) 

parlophone

MASAさん、どうもです。

>まあアビーロード・チームからしてみればUSヴァージョンなんか邪道なわけで

それはそうですよね。
ぼくらもUS盤のヘンテコな選曲やヘンテコなミックスを「なんじゃこりゃ?!」と思ってきたわけですからね。
でも、だったら出すな!っていうのがやっぱり正解なはずで…(笑。
かといって、ビートルズの新譜が出る!ということになると、やっぱりこころは騒ぐわけですよね…。
MASAさんの記事読んだら『ア・ハード・デイズ・ナイト』だけは買おうかな?
なんて思ってます(^^;

by parlophone (2014-02-11 16:33) 

やまちゃん

私はすでに64BOX(capitol albums vol.1)と65BOX四角サイズ(vol.2)を所有してるので最初っから高いBOX買いは重複するので避けて
海外でのバラ売り数枚を買いました
評価できるのはa hard day's nightのみでyesterday and todayには幻滅しましたし、hey judeも10曲中8曲がpast mastersで聞けることを考えると10曲だけはボリューム不足だと思いました

というよりもcapitol第3弾が出なくなって数年、US盤にかんしては もう興味が薄れてましたし、ましてや2009年リマスターが出ればよけいに
by やまちゃん (2014-03-05 19:43) 

parlophone

やまちゃんさん、こんばんは!
「はじめまして」でよろしかったでしょうか。

>評価できるのはa hard day's nightのみでyesterday and todayには幻滅しましたし、
>hey judeも10曲中8曲がpast mastersで聞けることを考えると10曲だけはボリューム不足

なるほど、おっしゃるとおりですねー。
ぼくはいまだに1枚も買っていませんが、上記3枚は購入するつもりでした。
たしかに『HEY JUDE』も中途半端なアルバムになってしまいましたね。
それでもジャケ買いということでけっきょくは買ってしまいそうですが(笑。
by parlophone (2014-03-16 19:07) 

やまちゃん

parlophoneさん、はじめまして
私のamazonのレビューにも書いてますが、学生時代にyesterday and todayとhey judeのカセットを購入したことがあります
yesterday and todayは東芝EMIからのカセットなので、まんまUK音源です
US編集盤は何枚かはすでにLPで所有しており、今回のUS ALBUMSからはa hard day's night、yesterday and today、hey judeの3枚のみ買いました
yesterday and todayはappleレーベルのステレオLP持ってるので、I'm only sleepingのヴァージョン違いになんかなあと
hey judeLPもballad of john and yokoの最後のドラムカットもCDではそのままに
でも・・結局は私も買ってしまうんですね
2009リマスターはとくにMONO BOXの神音源が頭に焼き付いており
もしこの2009がなかったらUS BOXの評価も違ったものになったかもしれません
by やまちゃん (2014-03-20 09:41) 

parlophone

やまちゃんさん、こんばんはー。

amazonのレヴューも拝見させていただきました。
上にも書きましたが、ぼくも購入するとすれば『a hard days night』『Yesterday and Today』『HEY JUDE』の3枚です。
ただ2009年のリマスター音源なので、やはり『hard days』以外は魅力がほとんどありませんね。
いちおうジャケのために手元に置いておく、ということですね。

>MONO BOXの神音源

たしかにMONO BOXはUKオリジナル盤を髣髴させる仕上がりで、いい仕事をしていると思います。
あとはハイレゾでモノラル音源を聴いてみたいですね^^
by parlophone (2014-03-21 00:38) 

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