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ジミ・ヘンドリックス 『ファースト・レイズ・オヴ・ザ・ニュー・ライジング・サン』 [アメリカン・ロック]

トム・ウェイツの紙ジャケとおなじ日に、レーベルの移籍によってジミの作品がソニー・ミュージックからどっさりと出た。
ジミの生前のオフィシャル作品はいままで繰り返し出ているし、悪名高き?アラン・ダグラスから遺族の経営するエクスペリエンス・ヘンドリックス社へ権利が移った1997年以降も、紙ジャケに限っても2度もリリースされている。
今回はエディ・クレイマーによる最新リマスターとDVDつきのスペシャル・パッケージだといわれても、そうそう食指が動くわけがない。
Valleys of Neptune (Dig)

Valleys of Neptune (Dig)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony Legacy
  • 発売日: 2010/03/09
  • メディア: CD

そんななかでの今回の目玉は、オフィシャルとしては完全未発表の新作『ヴァリーズ・オヴ・ネプチューン』というわけだが、それについては雑誌やブログでもあちこちで取り上げられていると思うので(最近みなさんのブログさえ覗く暇がないのですTT)、ぼくは『ファースト・レイズ・オヴ・ザ・ニュー・ライジング・サン』を取り上げてみようと思う。

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全17曲が収められた『ライジング・サン』は『エレクトリック・レディランド』のあとにジミが構想していたアルバムといわれ、そのうち10曲はジミの死後の1971年に『クライ・オヴ・ラヴ』のタイトルでリリースされ、それ以外の曲も『レインボウ・ブリッジ』『ウォー・ヒーローズ』というアルバムにバラバラに収められてリリースされていた。

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1 Freedom
2 Izabella
3 Night Bird Flying
4 Angel
5 Room Full Of Mirrors
6 Dolly Dagger
7 Ezy Ryder
8 Drifting
9 Beginnings
10 Stepping Stone
11 My Friend
12 Straight Ahead
13 Hey Baby (New Rising Sun)
14 Earth Blues
15 Astro Man
16 In From The Storm
17 Belly Button Window

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もっとも古い⑪が68年3月の録音、さらに68年から69年にかけてレコーディングされた⑤⑦⑭の計4曲を除けば、あとはすべて1970年の6~7月に完成したばかりのエレクトリック・レディ・スタジオで録音されている。
そのうち、①②⑥の3曲は完成していたといわれ、 残りの13曲は未完成テイクにジミの遺志を尊重しながらレコーディング・エンジニアのエディ・クレイマーらが手を加え、1997年に初めて「もっとも理想的な形で」リリースされた。

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(エディ・クレイマー)

メンバーは基本的にジミ(vo,g)、ビリー・コックス(b)、ミッチ・ミッチェル(ds)の3ピース・バンド(ただし68~9年に録音された⑤⑦⑭はドラムスがバディ・マイルス)で、曲によってはパーカッションやヴァイブが加わるものもある。
⑦にはスティーヴィー・ウィンウッドとクリス・ウッドがバッキング・ヴォーカルで参加している。
⑪にはスティーヴン・スティルスのクレジットもあるが、これは曲の始まる前に遠くで聞こえるピアノを弾いているというもの。
スティルスのファースト・ソロの共演あたりを想像していると肩透かしを食らってしまう。

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有名な④や②⑦など、いままで聴いたことのある曲もあるが、基本的にはぼくが聴くのは初めて。
97年の初出時にはあまり評価は芳しくなかったと思うが、今回聴いてみると、なかなかどうしていい出来ではありませんか。
①②でへヴィにスタートし、なんとなく浮遊感あふれるサイケな③を挟んで④に行く展開なぞグッと来てしまうし、何かに憑かれたようにギターを弾きまくる⑩や、チェンジ・オヴ・ペース的な⑪もなかなかいい感じだ。

Disc-2のDVDに収められているのは、ビートルズの『アンソロジー』シリーズで有名なボブ・スミートンが撮ったドキュメンタリーで16分38秒のショート・フィルム。

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エディ・クレイマーがマスター・テープを操作しながら当時の回想をするというおなじみの設定で始まり、ビリー・コックスやミッチ・ミッチェルのコメントも聞ける。

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(ビリー・コックス)

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(ミッチ・ミッチェル)

ちなみにぼくが購入したのは1,680円の輸入盤。
字幕は英語やスペイン語など6か国で日本語字幕はついていないが、英語の字幕があればなんとなくはわかる(笑。
さすがに日本語解説と字幕のために2,000円以上も高い国内盤を買う気にはなれなかった。
紙ジャケでは良心価格で人気の高いソニー・ミュージックだが、レガシー・エディションやこうしたパッケージでは意外に高い価格設定なのはどうしてなんだろう。

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MORE

このジミヘンの「幻のアルバム」については、ルイス・シャイナーの小説「グリンプス」にも出てきますね。
(残念なふがら、この本、もう絶版みたいです)

ジミは若くして死んでしまったので、「もし生きていたら?」という憶測でしか語られないのですが、彼はギタリストとしての才能ももちろんですが、コンポーザーとしての実力も素晴らしかったと思います。

今回のリマスターで、若い人にも彼の存在の大きさを実感してもらいたいものです。
by MORE (2010-03-24 11:50) 

ryo

俺も輸入盤で買いました。
お恥ずかしながら、ジミのアルバムはほとんど聴いたことがなくて、新しい世界を知ってしまった感じでヤバいです。
1stの1、2曲目の初期衝動な感じとか、スゴイですよね。
勿論このアルバムも買いました。新作(!)も。

ただ英語がチンプンカンプン(←馬鹿元受験生)なので、DVDは放置してます(笑)。
by ryo (2010-03-24 23:02) 

parlophone

MOREさん、こんばんはー。

>ルイス・シャイナーの小説「グリンプス」

へえー、そんな小説があるんですか!
そういえばぼくはロック関連の小説ってほとんど読んだことないですね…。
「グリンプス」というのは邦訳が出てたんでしょうか。

>彼はギタリストとしての才能ももちろんですが、コンポーザーとしての実力も
>素晴らしかったと思います

いや~、これはぼくも感じますねー。
若いころはジミのギターばかりに関心を持ってましたが、いやはやどうしてコンポーザーとしてもすごい才能の持ち主だったんですよね。
それはこうした死後にリリースされたアルバムを聴くと、なおさら感じられますね。

>今回のリマスターで、若い人にも彼の存在の大きさを実感してもらいたいものです

おっしゃるとおりです!

by parlophone (2010-03-25 22:53) 

parlophone

ryoさん、こんばんはー。

>お恥ずかしながら、ジミのアルバムはほとんど聴いたことがなくて、
>新しい世界を知ってしまった感じでヤバいです

ryoさんの年代なら聴いたことがないのが当たり前だと思います。
うちの息子もおそらくジミはほとんど聴いたことないでしょう。

ぼくがかれを知ったのは中学のときでしたが、それはラジオから流れてきた「紫のけむり」や「フォクシー・レディ」というシングル・ヒットを通してでした。
その自由奔放なギターにはほんとうにびっくりしましたね。
しかも当時のロック・ギタリストはほとんどが白人でしたから、そのソウルフルなヴォーカルにもずいぶんびっくりしたものです。
(フレディ・キングなどのエレクトリック・ブルーズのギタリストが日本でメジャーになるのはもう少しあとのことです…)

いずれにしてもこのヤバイ世界をぜひ堪能してください(笑。

>ただ英語がチンプンカンプン…なので

慣れだと思いますよー。
英語の字幕を読みなれてくれば、けっこうわかるもんだと思います^^

by parlophone (2010-03-25 23:00) 

MORE

Glimpsesはハヤカワだったかから翻訳が出ていたようです。
私はオリジナルのハードカヴァーで読みました。
Smileもストーリーの中に出てくるのというので知ったのでした。
(最近のスマイル・ブームになるちょっと前のことです)
タイムスリップで幻のレコードが作られる瞬間を垣間見る(glimpse)というストーリーです。
ロックファンは必読ですね。(キッパリ)
ブックオフとかで見つかるかもしれません。
英語版はペーパーバックでならまだあるようです。

by MORE (2010-03-26 00:24) 

シャム猫

翻訳はハヤカワじゃなくて創元SF文庫から出てました。
絶版のようですが、中古はアマゾンあたりでけっこう安く買えますよ。
by シャム猫 (2010-03-26 02:00) 

MASA

あー、お金がなくてジミヘン買ってません。
「グリンプス」、当時一部の音楽ファンの間で話題になったので私も買ったのですが、途中までしか読んでません(汗)。
私の想像力が乏しいせいか、どうも文字から音が聴こえて来なかったんです(苦笑)。
今度再挑戦してみます^^;
by MASA (2010-03-26 23:58) 

parlophone

>私はオリジナルのハードカヴァーで読みました

やっぱりねー。
そうじゃないかなという気はしていたのです(笑。
ぼくも20年ぐらい前に『マディソン郡の橋』がペイパーバックで出たとき原書にチャレンジしたんですが、あえなく挫折しました。

>タイムスリップで幻のレコードが作られる瞬間を垣間見る(glimpse)

なるほどー、これは興味津々ですね^^

by parlophone (2010-03-28 00:01) 

parlophone

シャム猫さん、はじめまして。
創元SF文庫ですね、ありがとうございます。
今度探してみま~す^^

by parlophone (2010-03-28 00:03) 

parlophone

MASAさん、こんばんはー。
ご無沙汰してます。

>「グリンプス」、当時一部の音楽ファンの間で話題になった

そうだったんですか。
まったく知りませんでした。

>文字から音が聴こえて来なかったんです

おお、それで読むのを止めるなんて文学的であり音楽的ー♪
ぼくも探して読んでみますね^^

by parlophone (2010-03-28 00:10) 

tetsupc2

遼さんこんばんは・・・
私も今回は 『ファースト・レイズ・オヴ・ザ・ニュー・ライジング・サン』と『ヴァレーズ・オブ・ネプチューン』の2枚のみ買いました。
私は今回は特に『ヴァレーズ・オブ・ネプチューン』は気に入りました。
ジミの音源でまだこんな素晴らしく音の良い音源が残っていたのか?とExperienceでもったいぶっていたのでしょうかね・・・
まだ他にも素晴らしい音源がありそうな気がします。小出しで儲けようとしているのですかね、、、それでもやはり期待しています。
今更ではありますが記事アップしてみました。宜しければ見てやってください(^o^)v
by tetsupc2 (2010-03-29 21:16) 

parlophone

tetsupc2さん、こんばんは~。

ぼくはまだ 『ファースト・レイズ・オヴ・ザ・ニュー・ライジング・サン』を聴いたことがなかったので、ますそちらからということで、今回は『ヴァレーズ・オブ・ネプチューン』は未聴です。
でも評判はいいみたいですね。

>まだ他にも素晴らしい音源がありそうな気がします

そうなんですかー。
Sony Musicもだいぶ力が入ってるみたいなので、これからも期待できるかもしれませんねー^^

by parlophone (2010-03-31 22:10) 

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