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トム・ウェイツのアルバム―Part2 [紙ジャケ]

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ぼくはあまりTVを見るほうではないけれど、この冬のシーズンにずっと見続けたゆいいつのドラマが山崎豊子原作の『不毛地帯』だった。
主人公壹岐正を演じる唐沢寿明を初めとして、原田芳雄、中村敦夫、橋爪功、伊東四朗、石橋蓮司、江守徹、清水紘治といったベテラン陣、ぼくの大好きな(笑)エンケン(遠藤憲一)から、柳葉敏郎、岸部一徳、段田安則、松重豊、阿部サダヲといった個性派、佐々木蔵之介、竹野内豊あたりの中堅どころ、そして和久井映見、天海祐希、小雪といった華やかな女優陣…。
ちょっとご都合主義のところもあるけれど、なかなか重厚なストーリー展開で、だからこそエンディングでトム・ウェイツの「トムズ・トラバーツ・ブルーズ」が流れてきたときはほんとうにびっくりした…@o@
どんなときでも背中に物差しが入っていそうな壹岐正と、飲んだくれ酔いどれのトム・ウェイツとの共通点ってあんまり思いつかないが、やっぱりプロデューサーあたりがトムの大ファンなんでしょうか(笑。

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さて、その「トムズ・トラバーツ・ブルーズ」がアルバムのトップを飾る『スモール・チェンジ』は1976年リリースの4thアルバムだ。

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しゃがれた声は酒焼けのためかますますつぶれて、まるで浪曲師のよう(笑。
このあくの強い声でもうダメ!という方もいらっしゃるだろう。
内容は2作めよりもさらにブルージーでジャジーになっていて、けっこうストリングスなども入っているのだがちょっととっつきにくい作品かもしれない。
競演陣はすごく豪華で、ルー・タバキンのサックス、ジム・ハガートのベース、シェリー・マンのドラムスに、トムのヴォーカルとピアノという構成だ。
あまりジャズに詳しくない方のためにちょっと補足しておくと、シェリー・マンは50年代の西海岸を代表するドラマー。
長いあいだ自己のコンボを率いて、数多くのリーダー・アルバムをコンテンポラリーを初めとするレーベルに残した。
代表作はアンドレ・プレヴィンがピアノを弾いた『プレイズ・マイ・フェア・レディ』(1956)だろう。
また彼が経営するシェリーズ・マンホールも西海岸を代表するジャズ・クラブだった。
サックスのルー・タバキンもやはりウエスト・コーストを中心に活躍したプレイヤーで、日本では特にジャズ・ピアニストの秋吉敏子と組んだ双頭ビッグ・バンド、"トシコ・タバキン・ビッグ・バンド"でも有名だ。

アルバムの白眉はM-2「Step Right Up」だろう。
ベースが4小節を1コーラスとするフレーズを繰り返すなかで、トムのヴォーカル、シェリー・マンのドラムス、タバキンのテナーが丁々発止のアドリヴを繰り広げる。
じつにスリリングな5分40秒だ。

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紙ジャケはE式のシングル・スリーヴ。
歌詞の印刷されたカスタム・インナーがミニチュアで復刻されている。
レーベルはこちらも雲の写真が全面に広がったクラウズ・レーベルだ。
音源は最新の2010年デジタル・リマスターとなっている。

最後にご紹介するのはアイランド・レーベル移籍後第2弾になる『レイン・ドッグス』(1985)だ。

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ネットなどを見ていると、キース・リチャーズがギタリストとして参加していることでこのアルバムと出会った人もけっこういるようだけれど、ずいぶんびっくりしたでしょうね(笑。
しかし、いったんこの世界に足を踏み入れると抜け出せなくなるかもしれない。
それくらい強烈な磁場を持った作品だ。
やや短めの曲が19曲収められているが、M-1の「Singapore」が、タイトル、曲ともに象徴するように、アジアの片隅に迷い込んでしまった異邦人が体験するような、不思議で強烈な目くるめく音の世界が広がる。
雷に雨風の音、素朴な響きのパーカッションに調律の狂ったピアノ、どこか音階がずれたようなマリンバやチューバ、そしてウッドベースとアコースティック・ギターの隙間を、エレクトリック・ギターが捻じれた悲鳴のように埋めていく。
合間にはM-9「タイム」とか、ロッドのカヴァーでヒットしたM-17「ダウンタウン・トレイン」のような優しくてメロディアスな曲も忍び込んでいるから油断できない。
ラウンジ・リザースのマーク・リボーを筆頭に、キース・リチャーズ、クリス・スペディング、G.E.スミスといったギタリストの豪華な共演も魅力のひとつだ。

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一昨年の10月にユニバーサルからリリースされた紙ジャケはやはりE式のシングル・スリーヴ。
歌詞を印刷したカスタム・インナーがミニチュアで復刻されているほか、例によってシリアル・ナンバーの刻印されたレーベル・カードがついている。
音源は2008年のデジタル・リマスタリング、SHM-CD仕様である。

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DEBDYLAN

遼さん、こんばんは♪

てなわけで(笑)、遊びにきました。

『SMALL CHANGE』
最初に聴いたときは声の変わりようにビックリしましたが、
拒絶反応は起こらなかったですね。
すぐに好きになりました。
メロディが美しい曲も多かったしよく聴いてました。
大学になってからは友人たちと酒飲むときは、
このアルバムがBGMの確立がかなり高かったです^^。

バラードばかりに耳がいきそうですが、
仰る通り「STEP RIGHT UP」はカッコいいですね!!

こういうジャジーな曲もTOMならではで好きです。
1stでも「ICE CREAM MAN」がお気に入りだったりします。


アイランド時代の作品が紙ジャケ化されたとき、
すっかり忘れててて買いそびれました^^;
LPとプラケCDは持ってますけど。
強烈なアルバムでしたね(笑)
コレも大好きなアルバムです。

TOMの声。
あんな濁声だけど僕は優しい声って感じちゃうんです。
だから大好きだし、何度も聴きたくなるんです。

紙ジャケCD。
今日『娼婦たちの晩餐』を買いました。
予算の都合で今は音源を持ってないコレのみで我慢です。
それにしても凄い邦題ですね^^;

by DEBDYLAN (2010-03-14 00:28) 

MORE

All star castのドラマってどうも見る気のしない私です。
顔見せ興行って感じがして、どうしても中味が薄くなります・・・

>やっぱりプロデューサーあたりがトムの大ファンなんでしょうか(笑)

多分そんなとこでしょう。
山崎豊子とトム・ウェイツに何か隠されたリンクでも???

Rain Dogsの’Time’は大好きな曲です。
Tori Amosのカヴァーがイカしています。
なぜか彼の曲は女性がカヴァーする方がぴったりハマる気がするのは私だけでしょうか?
男が歌っても、トムを越えることはできませんが、女性だと全く違ったアングルになるせいか、新鮮で味わい深くもなるんですよね。
実は同じことがRandy Newmanにも言えるのですよ。
これがなぜかディランとかティム・ハーディンだとそうでもなくって、男性のカヴァーもそれなりに良いのですけどね。

ついでに、LAのシェリーズ・マン・ホールには行ったことがあります。
ハリウッド通りをちょっと横道に入ったところにあって、こじんまりとしたジャズクラブでした。
ケニー・バレルのトリオを聴いて、終わってから写真を撮らせてもらいました。
72年のことですが、その後何年かでたたんでしまったんですよね、残念です。

by MORE (2010-03-14 19:37) 

parlophone

DEBDYLANさん、こんばんは!
いつも遊びに来てくれてnice!&comment、ありがとうございます。

>大学になってからは友人たちと酒飲むときは、
>このアルバムがBGMの確立がかなり高かったです^^

おお、素晴らしき哉、カッレッジ・デイズ!
ぼくらのころはほとんどがジャズかビートルズでしたね~。

>1stでも「ICE CREAM MAN」がお気に入りだったりします

そうそう、1stのなかでは「ICE CREAM MAN」はけっこう尖ンがってますね。

>アイランド時代の作品が紙ジャケ化されたとき、すっかり忘れててて買いそびれました^^;

どうしても紙ジャケがよければ4月2日にアンコール・プレスされますが、ユニバでSHM-CDですから2,800円ですよね…。
そこまでこだわる必要があるかどうか…^^;
ただし音はいいですよ~。

>今日『娼婦たちの晩餐』を買いました

ライヴ、聴いたことないんですよね。
ぜひリポートのほう、よろしくお願いしま~す♪

by parlophone (2010-03-15 20:15) 

parlophone

MOREさん、こんばんはー。

>All star castのドラマってどうも見る気のしない私です。顔見せ興行って感じがして…

そこが山崎豊子原作のすごいところなんでしょうか、顔見世的な雰囲気はまったくありませんでしたねー。
ただ2クールとはいえ、原作の長大なストーリーを完全にドラマ化することはムリだったみたいですね。
(とはいえ、原作はまだ読んでないので、そのうちガッツリ読んでみたいとは思っていますが)

>Rain Dogsの'Time'は大好きな曲です。Tori Amosのカヴァーがイカしています

お~、それはぜひ聴いてみたいです。
なんというアルバムに入っているか教えていただけますか(←自分で調べなさいッ!)

>なぜか彼の曲は女性がカヴァーする方がぴったりハマる気がするのは
>私だけでしょうか?
>男が歌っても、トムを越えることはできませんが、女性だと全く違ったアングルに
>なるせいか、新鮮で味わい深くもなるんですよね

なるほど~、それはなんとなくわかるような気がしますね…^^

>ついでに、LAのシェリーズ・マン・ホールには行ったことがあります

わお!! やっぱりMOREさんはすごいワー^^;

by parlophone (2010-03-15 20:28) 

MORE

Toriが'Time'をカヴァーしているのはStrange Little Girlsです。
これ、全曲カヴァーのアルバムです。
(個人的にはVUのNew Ageがフェイヴァリットです)

今回のリマスターって日本だけなんですよね。
何を元にしてリマスターしたのか気になります。
アメリカではコンピのUsed Songsだけがリマスター音源ですからね。
そろそろボックスでも出るのでしょうか・・・
未発表音源が満載だった3枚組Orphansは必聴です。
あー、彼のライヴは初来日しか行ったことないです。
白衣のポケットから缶ビールを出して飲んでたのが印象的でした。(笑)

by MORE (2010-03-16 21:27) 

parlophone

MOREさん、こんばんはー。
レスがたいへん遅くなり申し訳ありません。
アルバム情報、ありがとうございました。
今月の『レココレ』にカヴァー30選なるページがあったので期待して見たのですが、残念ながらトリ・エイモスは載ってませんでしたねー。

>あー、彼のライヴは初来日しか行ったことないです
>白衣のポケットから缶ビールを出して飲んでたのが印象的でした(笑)

行ってるところがさすがMOREさんです。
レココレでも初来日の記事ありましたね!!

by parlophone (2010-03-23 23:50) 

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