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「MASTER TAPE ― "ひこうき雲"の秘密」 [ユーミン]

先日、NHK-BS2で『MASTER TAPE ~荒井由実「ひこうき雲」の秘密を探る~」という番組が放送された。

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その名のとおり、マスターテープを聴きながら、レコーディングに携わった人々に当時の思い出なんかを話してもらうという、要するに企画としては英BBCで十数年前から放映されている『Classic Albums』のパクリなのだが、アルバムが『ひこうき雲』というのだから、これは見逃すわけにはいかない。
HDDに録画しておいたものを先ほどやっと見ることができた。

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(アルバム『ひこうき雲』のころ。うしろは鈴木茂と細野晴臣)


まずユーミンが厳重に保管されていた16トラックのマスター・テープを持ってスタジオに現れる。
待っていたのは『ひこうき雲』のレコーディング・ディレクター有賀恒夫とレコーディング・エンジニアの吉沢典夫。

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(マスター・テープの重さに驚く、左が有賀、右が吉沢)

30年ぶりの再会を喜んでいるところに松任谷正隆と細野晴臣がやってきて、みんなでマスター・テープを聴いていく。
演出としてはもうすごくベタなんだけれど、この5人が顔を揃えるということじたいが奇跡みたいな感じで、見ているほうとしては興奮を抑えきれない。

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(これが16トラックのマスター。画面の下にときどきトラック・シートが出てくるのもマニアックだ)

途中でドラムスの林立夫も入って、4人で「うわぁ、オレ一小節に一回はシンバル叩いてるよ~」とか、「(ユーミンってピアノ)こんなに弾けたんだ」とか、「細野さんがここでガット・ギター弾くことになったのはどうしてだっけ?」とか、「おれ、この曲でなにやったのかずっと疑問だったんだよね。キーボードもうちょっと上げてもらっていいですか?」とか、「ねえねえ、この曲の男性ヴォーカルだけ聴いてみたくない?」とか、楽しい同窓会みたいで、なにしろ30数年も前のことで記憶の薄れてることもあって、そのたびに特定のトラックだけを再生したり強調したりして楽曲を聴き直すことになる。
つまり番組の最初から最後まで『ひこうき雲』の別ミックスを聴いてるわけで、これはファンとしてはほんとうにタマラん。
至福のときでした^^

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(左から林・松任谷・ユーミン・ハリー細野)

鈴木茂が大麻取締法違反で有罪判決を受けたため番組に出てこないのがほんとうに淋しかったけれど、ハリーが「雨の街を」を「いいな、これ。切ないね」と評したり、「ベルベット・イースター」は英国の音だとか、ユーミンにノン・ヴィヴラート唱法をマスターさせたのは、有賀恒夫がユーミンの縮緬ヴィヴラートがキライだったからだとか、キャラメル・ママの演奏はだいたい1テイクか2テイクで終わったのに、そのあと延々とヴォーカルを入れ直さなきゃいけないので、ユーミンはスタジオの隅で泣いてたとか、まったく知らなかったエピソードもいろいろ聞けて、ほんとうにおもしろい番組だった。

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(当時のアルファ・スタジオの様子を再現して即興で演奏する場面)

再放送は2月19日(金)の午後11:00から。
見逃した方は必見ですぞ!
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コメント 22

MASA

え〜、こんな番組やってたの知りませんでした〜。
ユーミン・ファンにとっては実に興味深そうな内容ですね。
2月の再放送は忘れずに録画します^^。
by MASA (2010-01-22 00:26) 

想也

遼さん、ご無沙汰してます。元Refugeeです(ってコレクターHNとしてはRefugeeも棄てたわけではないんですが 笑)。

こんな番組まったく気づきませんでした(^^;
再放送の時間、しっかり手帳に記入したので、忘れずに録画します。
貴重な情報ありがとうございました。

by 想也 (2010-01-22 09:52) 

Sken

確かに面白い番組でした。興味深いものでした。
ずっと以前に出ていた『クラシック・アルバム』シリーズの
スティーリー・ダン『Aja』を思い出しました。
by Sken (2010-01-22 10:18) 

Naru

おお、私もスルーしてしまいました。
再放送とっても楽しみにしています。
素晴らしい情報、ありがとうございます。

「ひこうき雲」はいわゆるファーストプレスで銀帯があって、その前にジャケットに大きくALFAの刻印があるものが少数あります。
銀帯とALFAではちょっとでも先のプレスということで音の鮮度感は違いますが、まあ、同じ音です。

ところが発売日前にALFA刻印の見本盤というのがありまして、マトリクスは同じ2Sなのですが、その他のコードナンバーが一切ありません。
その見本盤が音が全く違うのです。
あきらかにミックス違い!?
鮮度がどうこうではなく、ほとんど加工をしていない音。
キャラメルママが主体のバンドサウンドであり、ユーミンの声は素の感じに聞こえます。

その辺りが謎だったのですが、この番組を見ればなんとなく紐解けますかねえ??



by Naru (2010-01-22 13:17) 

not a second time

遼さん、こんにちは。僕にとってユーミンは荒井由美なので、この番組を教えてくださって、ありがとうございます。2月にきちんと見て見たいと思います。
ひこうき雲が出た時、泉谷しげるが「すごい○○が出てきた。」と、言ってましたね。僕もベルベット イースターを聴いたときはぶっ飛びました。
1975年だったか、ベスト電器本店に彼女はプロモートにやってきました。ピアノ弾き語りで4曲ほど歌っていきました。その時その場にいれてよかったです。どなたか、覚えていますか?
by not a second time (2010-01-22 21:31) 

DEBDYLAN

遼さん、こんばんは^^。

ユーミンってあんまり積極的に聴かないんですが、
この番組は楽しく観れそうです^^。
再放送、録画しなきゃ!!

blog、新調してみました。
これからはコッチに駄文綴ってきます^^;
よかったら、また覗きにきてください^^。

by DEBDYLAN (2010-01-22 22:21) 

parlophone

MASAさん、どうもです。

>え〜、こんな番組やってたの知りませんでした〜。

ぼくは毎週1回、HDDレコーダの番組表をチェックしてBSの音楽番組を録画予約するようにしてるんですよ。
ほとんどがクラシックの番組ですが、ブライアン・ウィルソンのスタジオ・ライヴとかも見ることができました^^
この番組はほんとうにチェックしててよかったです。
お楽しみにーー♪

by parlophone (2010-01-22 23:12) 

parlophone

おおおお!想也さん、てかRefugeeさん、こんばんはー!
じつは「読んでるブログ」に「レコードにまつわる日常 01/15」て出てるのに気がついて、ちょっとお邪魔だけしたんですよ。
コメントしなくちゃと思ってたら、先にコメントいただいて恐縮です^^;

>コレクターHNとしてはRefugeeも棄てたわけではないんですが

そうなんですか。
元気でいらしたみたいでうれしいです^^
この番組は見て損はありませんので、ぜひお楽しみに^^

by parlophone (2010-01-22 23:17) 

parlophone

Skenさん、こんばんは~。

>ずっと以前に出ていた『クラシック・アルバム』シリーズ

ですよねー。
日本のTV局はよく海外ドラマのプロットをなぞったような番組を作るなーと思っていたらこんなものまでパクっちゃって(笑。
でもこれはおもしろかったから許しちゃいましょう(笑。

by parlophone (2010-01-22 23:21) 

parlophone

Naruさん、こんばんはー。

>「ひこうき雲」はいわゆるファーストプレスで銀帯があって、
>その前にジャケットに大きくALFAの刻印があるものが少数あります
>ところが発売日前にALFA刻印の見本盤というのがありまして

ファースト・プレスが銀帯というのは以前「ひこうき雲のアナログ盤」という記事を書いたときにMASAさんから教えてもらったのですが、そのあと手に入れました。
ALFAの刻印のあるものはネットでは見たことがありますが、実物はありません。
でもさらにその前に見本盤が出ていたんですね。
いわゆるDJコピーでしょうね。

>あきらかにミックス違い!?
>鮮度がどうこうではなく、ほとんど加工をしていない音
>キャラメルママが主体のバンドサウンドであり、ユーミンの声は素の感じに聞こえます

番組のなかで吉沢さんが
「16チャンネルはだいたい楽器で使っちゃうから、ヴォーカル・トラック空けるのが大変だった。ピンポンして楽器をドンドンひとつのチャンネルにまとめちゃってヴォーカル・トラックを4チャンか5チャン作った」
というようなことをおっしゃってました。
そうすると見本盤の「あきらかにミックス違い」「ほとんど加工をしていない音」「ユーミンの声は素の感じ」というのは完成版ではなくラフ・ミックスじゃあないでしょうか。
それはぜひ聴いてみたいですねー。
TVの音でもさすがデジタル放送というようなリアルな音でしたから…。

by parlophone (2010-01-22 23:49) 

parlophone

not a second timeさん、こんばんは。

>僕にとってユーミンは荒井由美なので

そういう方、案外多いですよね。
たしかに『ひこうき雲』、『MISSILIM』、『Cobult Hour』、『14番目の月』、どれもほんとうに傑作ですからね。
お気持ちはよくわかります^^

>ひこうき雲が出た時、泉谷しげるが「すごい○○が出てきた」と、言ってましたね

そうなんですか。
○○が気になりますが…(笑。

>1975年だったか、ベスト電器本店に彼女はプロモートにやってきました

え゛ーーーーーーーーーっ!!知らなかった!!
見たかった~~~TT

by parlophone (2010-01-23 00:05) 

parlophone

DEBDYLANさん、こんばんは!
いつもnice!&comment、ありがとうございます。

>ユーミンってあんまり積極的に聴かないんですが

結婚するまえの20代の初々しいユーミンはなかなか素敵ですよー。
今度ちょっと聴いてみてください。
レンタル・ショップにもあると思うので^^

>blog、新調してみました

そうなんですね!
あとで遊びに行きま~す^^

by parlophone (2010-01-23 00:08) 

not a second time

遼さんへ・・・
えーっと、ラジオで確かに泉谷氏は
○=ブ   ○=ス   と、言ってました。
愛情表現だったと、思いますが(笑)
凄いと、僕も思いました。さすが、呉服店の娘でとってもブルジョアな詩を書いてましたもの。
「あの人のママに会うために・・・」なんてね。
荒井由美が最高ですが その後の「守ってあげたい」「春よ来い」は、調子が戻ってくれて とてもうれしかった事をおぼえています。
by not a second time (2010-01-23 06:58) 

Naru

遼さん、おはようございます。

>そうすると見本盤の「あきらかにミックス違い」「ほとんど加工
>をしていない音」「ユーミンの声は素の感じ」というのは完成版
>ではなくラフ・ミックスじゃあないでしょうか。

そうなんでしょうね。
正隆さんがこれだっ!!・・・と作ったのを後日、村井さんがダメ出しして・・・な〜んて想像しましたが、日程間が間に合わずラフのまま配っちゃったってのが実際なんでしょうねえ。
何故なら、音楽としては明らかに製品版の方がキますもの。(笑)
ちなみにコバルトアワーの1S見本盤も同じ感じ・・・

>それはぜひ聴いてみたいですねー。

私、東京ですが、こちらにいらっしゃる時は是非!!
by Naru (2010-01-23 10:47) 

路傍の石

こんにちは。拙はこの番組がることを知っていたので放送時間にしっかり見ました。改めて感じたのは、当時ユーミンがブリティッシュ・ロック派、キャラメル・ママがアメリカン・ロック派で、その2つの音楽性の衝突によってウェットで憂いがあるけど不思議な軽みを持った独特のシティ・ポップを生み出したという点です。

最終的に出来上がったのは単なる英国流でも米国流でもない融通無碍な発想に裏付けられたオリジナルなユーミン・サウンドとしかいえないものであったことが何よりも素晴らしいですね。70年代半ばの日本の音楽シーンにおいてかくも素晴らしいミクスチャーのマジックが発生していたと。そしてそんな音楽の素晴らしさが若い人に聴き継がれていくといいなと思った次第です。

番組が終わったあとは深夜遅くまでひたすらユーミン三昧だったのは言うまでもありません(と言っても拙が持っているのは荒井由実時代のものだけですけど)。
by 路傍の石 (2010-01-23 15:17) 

parlophone

not a second timeさん、こんばんはー。

>○=ブ   ○=ス   と、言ってました

ワォ、キョーレツー!
いまの泉谷の傍若無人ぶりはまあキャラクターでしょうけれど、若いころの泉谷はほんとうに傍若無人でしたからね^^;
まあ、でもたしかにブルジョワですよね。
この番組のなかではコマコ(駒沢裕城)さんが「後ろ向きの歌が多かったなかで、ユーミンの詞はポジティヴでリラックスできた」みたいなことを言ってましたね。

>「守ってあげたい」「春よ来い」は、調子が戻ってくれて

なるほど、なるほど。
ぼくなんかは『リインカーネーション』から『ヴォイジャー』あたりが好きなんですけどね~♪

by parlophone (2010-01-23 23:14) 

parlophone

Naruさん、こんばんは~。

>正隆さんがこれだっ!!・・・と作ったのを後日、村井さんがダメ出しして・・・

番組を見た感じでは、このころの正隆さんは「二人ピアニストがいて、ぼくは何をすればいいの?」とか「ぼくはもやもや担当」とか言ってて、アレンジなんかは、完全にスタジオでキャラメル・ママ(+ユーミン)で仕上げていったみたいでしたね。
それとけっこうディレクターの有賀さんの発言力が大きかったみたいでしたよ。
いずれにしても再放送でNaruさんがご覧になられたあとの感想が楽しみです^^

>私、東京ですが、こちらにいらっしゃる時は是非!!

従兄が世田谷なんですけど、なかなかそちらに行く機会がないんですよねー。
ジェイムズ・テイラーとキャロル・キングのライヴも行きたいんですけどね^^;

by parlophone (2010-01-23 23:22) 

parlophone

路傍の石さん、こんばんはー。

>ユーミンがブリティッシュ・ロック派、キャラメル・ママがアメリカン・ロック派で、
>その2つの音楽性の衝突によってウェットで憂いがあるけど不思議な軽みを持った独特の
>シティ・ポップを生み出した

たしかにおっしゃるとおりですね。
はっぴいはバッファロー、ニール・ヤングあたりが原点にあって、ユーミンはキンクスやヤードバーズって言ってましたね。
まったかさんのアレンジにはバカラックやモータウンの影響が感じられて、あまりブリティッシュの香りはしませんが、それでも「イギリスのロックが嫌いだった。あの音が許せなかった」というのにはちょっと驚きました…(笑。

なによりもそんな音楽性をもった2つの個性を見抜いてぶつけた村井邦彦の慧眼に驚嘆するばかりですよね~。

>そしてそんな音楽の素晴らしさが若い人に聴き継がれていくといいなと

ほんとですねー。
ぼくは20年ぐらい前からまったくユーミンを聴かなくなってしまいましたが、70~80年代のユーミンが日本の音楽シーンに与えた影響は計り知れないと思うので、これからも聴き継がれていくといいですね。

by parlophone (2010-01-23 23:35) 

想也

遼さん、こちらこそ、長らくご無沙汰してすみませんでした。
たまにこちらにはお邪魔してたんですけどね。
音楽(ロックやジャズも含めて)はずっと聴いてたんですが、アナログ収集熱がずっと冷めてまして、ブログ再開のエネルギーもわかなかったんで、いつも読み逃げさせていただいてました(^^;

ユーミンの番組はホントおもしろそうですね。
最近、フジTVのNEXTでChar meets~って、毎回違うゲストを呼んでのギター談義+ジャムって1時間半の番組の再放送をまとめてやってて、いくつかおもしろそうなゲストのときのは録画して観たんですが、いろいろ裏話が出てきて、とてもおもしろかったです。アーティストの裏話、たまりません(笑)
by 想也 (2010-01-24 23:05) 

parlophone

想也さん、こんばんはー。

>ブログ再開のエネルギーもわかなかったんで

ときどきぼくも覗いてはいたんですよ。
ぼくの周りでもブログを閉鎖したり長いあいだ更新が止まったままの方がけっこういらっしゃるので、心配は心配なんですよね…。
でもお元気そうで何よりです。

>最近、フジTVのNEXTでChar meets~って、毎回違うゲストを呼んでの
>ギター談義+ジャムって1時間半の番組

想也さんはミスチルのためにいくつか契約なさったんでしたっけ。
しかしこの番組はおもしろそうですね~。
milkちゃんが聞いたらめっちゃ悔しがりそう…。
(もう見てるかな?)

by parlophone (2010-01-25 00:17) 

想也

遼さん、こんばんは~

そうなんです。ミスチルのためにWOWOWとNEXTを契約しちゃったんです。
どちらも、映画や音楽番組(ライブ放送を含む)が多いんで、HDDがすぐいっぱいになります。観る時間が・・・・

Char Meets・・・は全部で22回あるんですが、1/3くらいしか録画しなかったんですよ。で、観たのはあとからなんで、今は、全部録画しておけばよかったと後悔してます。

そういえば、milkさん、Charのこと好きでしたねぇ。
今は眠れる森にいるんでしょうか?
by 想也 (2010-01-28 22:27) 

parlophone

想也さん、どうもです。

>映画や音楽番組(ライブ放送を含む)が多いんで、HDDがすぐいっぱいになります

でしょうねー。
うちもぼくの見たい音楽番組に妻と娘のバレエが加わって、もうとにかくDVDに焼かないと、すぐにHDDが不足して赤いランプが点滅し始めます^^;

>Char Meets・・・は全部で22回あるんですが…

すごい番組ですねー。
歳を重ねるとそれなりに弾けなくなるギタリストも多いのに、Charはいつまで経っても衰えませんね。
ぼくも機会があったら見てみたいです。

>今は眠れる森にいるんでしょうか?

Sleeping Beautyということですか?(笑
仕事は忙しそうですが元気でがんばっていらっしゃるみたいでしたよ~^^

by parlophone (2010-01-29 23:58) 

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