『コバルト・アワー』――ユーミンのアルバム(by 3 songs) [ユーミン]
1975年6月リリースの3rd アルバム『COBALT HOUR』。
なんといっても初めて買ったユーミンのアルバムである。
当時は聴きまくった。
今回この記事を書くために久しぶりに真剣に聴き直したがやはり文句なしの名盤である。
このなかから3曲選ぶなんてムリ。
とかいって今回だけ例外にするわけにもいかないので(そんなことしたら次回から例外だらけになるのは目に見えている)、泣く泣く切り捨てて選んだのが次の3曲だ。
がその前に(笑。
冒頭のA-1「COBALT HOUR」はセスナ機のエンジン音から始まるが、これは『ホワイト・アルバム』の冒頭「Back in the USSR」のオマージュだと断言しておこう。
根拠は…ない(笑。
そんな気がするだけである。
でもいいんです、気ままなブログだから好き勝手に断定しておく。
それにしてもこの曲を筆頭にハリー細野のベースは絶好調ですね。
ジャケットはそれまでの派手さを抑えたシックなものから一転、ペーター佐藤を起用して思いっきりポップになった。
どちらかというと純東洋系のユーミンの容貌をうまくソフィストケイトしたドリーミーなジャケットだ。
(コーティングのないシングル・ジャケ。左下にはおなじみALFAのロゴがある)
参加ミュージシャンは前回同様キャラメル・ママ(もうこのころはティン・パン・アレーと呼んだほうがいいかもしれない)、パーカッションに斉藤ノブオ、コーラスに吉田美奈子、大貫妙子、山下達郎のほか、今回はハイ・ファイ・セット、伊集加代子が加わり、B-2「CHINESE SOUP」ではバリトン・サックスの原田忠幸らが参加している。
A-4 何もきかないで
ベースがじつにメロディアスで、ほとんど楽曲を引っぱっているといっても過言ではない。
ストリングスと口笛で始まるイントロもノスタルジックで、この曲のイメージをうまく形づくっている。
こういう曲を聴くと、ユーミンってほんとうに稀代のメロディ・メイカーだなあと思う。
グレン・ミラーの「ムーンライト・セレナーデ」のつぎにこの曲が流れ出してもまったく遜色はないだろう。
それほど美しく夢見心地なメロディとは裏腹に、歌詞のほうは
「あなたはあなたの 私は私の淋しさ
心の隙間を埋め合えれば それでいいのよ」
と刹那的な恋を歌う。
だからいっそう美しいのだ、という言い方もできるかもしれないが…。
B-1 航海日誌
ほとんどイントロなしで始まるスロー・バラード。
ブラスやリード、ストリングス、さらには女声コーラスも入った大変豪華なオーケストレイションで、これがじつに美しい(とくにコーラス)。
milk_tea さんがご自身のブログで
「あのころの私は こわれたグランド・ピアノ
かなでる曲はただ せつないノクターン」
のところを
「過去の自分の心境をピアノのノクターンの調べになぞらえているところなど何とも優雅で秀逸」
と書いていらっしゃったが、ほんとうにそのとおりだ。
ファースト・アルバム所収の「きっと言える」でも「南に向かう船」が出てきたが、だいたい20歳前後のころに船旅なんてほとんど経験がなかったから(いや、今でもたいして変わりません^^;)、「船が夜をすべり 港へ向かうころ」という出だしからして、すでに映画かなんかのようで別世界の趣きだ。
「星くずと私の 静かなランデブー」とか「長い人生さえ 宇宙のかけら」とか、遥かな船旅をしていれば星空を見上げてそんな達観(諦観?)にも達しそうで、終わったはずの恋に区切りをつけようとする切ない女ごころがたくみに描かれている。
海と空という違いはあるが、なんとなくFM 東京の「ジェット・ストリーム」の出だしの名文句を思わせる詞で、むかしから好きな1曲だ。
ユーミンはフル・オーケストラをバックに朗々と歌うのではなく、情感を抑えた楚々とした歌いっぷりで、このころの歌唱は初々しくてほんとうに好きだった(…過去形 笑)。
B-2 CHINESE SOUP
この曲の要はすぐれたアレンジである。
サビの「煮込んでしまえば 形もなくなる/もうすぐ出来上がり」という部分の起伏に富んだメロディからのアイディアだと思うが、バリトン・サックスをリード楽器に、フィドルやアコースティック・ギターを配し、ピアノはブギウギっぽい奏法で古きよき時代のジャズの香りをうまく出している。
75年といえばすでにウーマン・リヴの最盛期は過ぎていたが、歌謡曲の世界ではやはり「♪あなたの~けしてお邪魔はしないから、お側に~置いてほしいのよ」的な歌詞が大勢を占めていた時代に
「莢がわたしの心なら
豆はわかれたおとこたち
みんなこぼれて鍋の底
煮込んでしまえば 形もなくなる
もうすぐ出来上がり」
という歌詞はじつに斬新で、男性のぼくが聞いても爽快であった。
ただ発想としては石垣りんの詩「シジミ」あたりが典拠としてあるのかもしれない。
ワルツ・タイムで美しい桜の世界が描かれるA-3「花紀行」とか、達郎&美奈子のコーラスも楽しいポップなB-3「少しだけ片想い」、名曲として万人が認めるB-4「雨のステイション」など、書きたいことはたくさんあるのだが、機会があればまたということで。
レーベルはおなじみ、ブルーのEXPRESSレーベルだ。
なんといっても初めて買ったユーミンのアルバムである。
当時は聴きまくった。
今回この記事を書くために久しぶりに真剣に聴き直したがやはり文句なしの名盤である。
このなかから3曲選ぶなんてムリ。
とかいって今回だけ例外にするわけにもいかないので(そんなことしたら次回から例外だらけになるのは目に見えている)、泣く泣く切り捨てて選んだのが次の3曲だ。
がその前に(笑。
冒頭のA-1「COBALT HOUR」はセスナ機のエンジン音から始まるが、これは『ホワイト・アルバム』の冒頭「Back in the USSR」のオマージュだと断言しておこう。
根拠は…ない(笑。
そんな気がするだけである。
でもいいんです、気ままなブログだから好き勝手に断定しておく。
それにしてもこの曲を筆頭にハリー細野のベースは絶好調ですね。
ジャケットはそれまでの派手さを抑えたシックなものから一転、ペーター佐藤を起用して思いっきりポップになった。
どちらかというと純東洋系のユーミンの容貌をうまくソフィストケイトしたドリーミーなジャケットだ。
(コーティングのないシングル・ジャケ。左下にはおなじみALFAのロゴがある)
参加ミュージシャンは前回同様キャラメル・ママ(もうこのころはティン・パン・アレーと呼んだほうがいいかもしれない)、パーカッションに斉藤ノブオ、コーラスに吉田美奈子、大貫妙子、山下達郎のほか、今回はハイ・ファイ・セット、伊集加代子が加わり、B-2「CHINESE SOUP」ではバリトン・サックスの原田忠幸らが参加している。
A-4 何もきかないで
ベースがじつにメロディアスで、ほとんど楽曲を引っぱっているといっても過言ではない。
ストリングスと口笛で始まるイントロもノスタルジックで、この曲のイメージをうまく形づくっている。
こういう曲を聴くと、ユーミンってほんとうに稀代のメロディ・メイカーだなあと思う。
グレン・ミラーの「ムーンライト・セレナーデ」のつぎにこの曲が流れ出してもまったく遜色はないだろう。
それほど美しく夢見心地なメロディとは裏腹に、歌詞のほうは
「あなたはあなたの 私は私の淋しさ
心の隙間を埋め合えれば それでいいのよ」
と刹那的な恋を歌う。
だからいっそう美しいのだ、という言い方もできるかもしれないが…。
B-1 航海日誌
ほとんどイントロなしで始まるスロー・バラード。
ブラスやリード、ストリングス、さらには女声コーラスも入った大変豪華なオーケストレイションで、これがじつに美しい(とくにコーラス)。
milk_tea さんがご自身のブログで
「あのころの私は こわれたグランド・ピアノ
かなでる曲はただ せつないノクターン」
のところを
「過去の自分の心境をピアノのノクターンの調べになぞらえているところなど何とも優雅で秀逸」
と書いていらっしゃったが、ほんとうにそのとおりだ。
ファースト・アルバム所収の「きっと言える」でも「南に向かう船」が出てきたが、だいたい20歳前後のころに船旅なんてほとんど経験がなかったから(いや、今でもたいして変わりません^^;)、「船が夜をすべり 港へ向かうころ」という出だしからして、すでに映画かなんかのようで別世界の趣きだ。
「星くずと私の 静かなランデブー」とか「長い人生さえ 宇宙のかけら」とか、遥かな船旅をしていれば星空を見上げてそんな達観(諦観?)にも達しそうで、終わったはずの恋に区切りをつけようとする切ない女ごころがたくみに描かれている。
海と空という違いはあるが、なんとなくFM 東京の「ジェット・ストリーム」の出だしの名文句を思わせる詞で、むかしから好きな1曲だ。
ユーミンはフル・オーケストラをバックに朗々と歌うのではなく、情感を抑えた楚々とした歌いっぷりで、このころの歌唱は初々しくてほんとうに好きだった(…過去形 笑)。
B-2 CHINESE SOUP
この曲の要はすぐれたアレンジである。
サビの「煮込んでしまえば 形もなくなる/もうすぐ出来上がり」という部分の起伏に富んだメロディからのアイディアだと思うが、バリトン・サックスをリード楽器に、フィドルやアコースティック・ギターを配し、ピアノはブギウギっぽい奏法で古きよき時代のジャズの香りをうまく出している。
75年といえばすでにウーマン・リヴの最盛期は過ぎていたが、歌謡曲の世界ではやはり「♪あなたの~けしてお邪魔はしないから、お側に~置いてほしいのよ」的な歌詞が大勢を占めていた時代に
「莢がわたしの心なら
豆はわかれたおとこたち
みんなこぼれて鍋の底
煮込んでしまえば 形もなくなる
もうすぐ出来上がり」
という歌詞はじつに斬新で、男性のぼくが聞いても爽快であった。
ただ発想としては石垣りんの詩「シジミ」あたりが典拠としてあるのかもしれない。
ワルツ・タイムで美しい桜の世界が描かれるA-3「花紀行」とか、達郎&美奈子のコーラスも楽しいポップなB-3「少しだけ片想い」、名曲として万人が認めるB-4「雨のステイション」など、書きたいことはたくさんあるのだが、機会があればまたということで。
レーベルはおなじみ、ブルーのEXPRESSレーベルだ。
こんにちは。
これのタイトル曲の演奏は、彼らのベストではないか、と
30年ほど思ってます。とにかくスゴイです、キャラメル・ママ。
一部、ダディー・オーがバックなんですね。
確か当時、パパレモンだったと思いますが、そんなバンドを付けて
全国キャンペーンしてましたね。京都の駅前にあった百貨店屋上
でも公開録音のラジオ番組に出てました。
ひょっとしたら、本作より以前だったかも知れませんが。
by Sken (2008-03-06 08:29)
このアルバムはこれ以前の2枚にあったやや内省的な感じに加え、これ以降顕著になっていくユーミン流のハジけたポップ感覚が前面に出て来た最初のアルバムですね。
アルバム・タイトル曲の冒頭は私も明らかに「Back In The USSR」を意識してると思いますよ。
私が3曲選ぶとすれば、シングル盤まで買った「ルージュの伝言」、屈指の名曲「卒業写真」、「航海日誌」の3曲かなあ。コテコテな曲が2曲も入っちゃう(笑)。
私は遼さんやmilkさんみたいな文学青年ではなかったので、歌詞の中身よりもどうしても曲の良さ自体で選んでしまいます^^。
でも実は「卒業写真」はハイ・ファイ・セットのヴァージョンの方が好きで、「チャイニーズ・スープ」も吉田美奈子のヴァージョンがテンポの速いチャールストン風の軽快なアレンジで、あっちも捨て難いですねえ。
by MASA (2008-03-06 14:54)
Skenさん、どうもです。
めずらしく体調を崩してしまってパソコンの前に座れず、レスが遅くなってしまいました。
>これのタイトル曲の演奏は、彼らのベストではないか
なるほど~。
細野さんのベースはすごいと思ってましたが、4人のベストですか!
こんど彼らの演奏に注意して聴いてみます^^
>ダディー・オーがバックなんですね
ああ、そういえばパーソネルにダディー・オーというのがありましたね。
ぼくはかれらについては何も知りません。
>パパレモンだったと思いますが、そんなバンドを付けて
>全国キャンペーンしてましたね
よかったらこんどかれらについて教えてくださいね♪
by parlophone (2008-03-07 23:08)
MASAさん、どうもです。
>これ以前の2枚にあったやや内省的な感じに加え、これ以降顕著になっていく
>ユーミン流のハジけたポップ感覚が前面に出て来た最初のアルバム
そうそう!
まず最初にそのことに触れなければなりませんでしたね。
フォローありがとうございます。
>私も明らかに「Back In The USSR」を意識してると思いますよ
そうですか~、MASAさんにそういっていただけると独りよがりでないってわかって勇気百倍です^^
ぼくも「卒業写真」はハイ・ファイ・ヴァージョンのほうが好きですね。
まず歌のうまさが全然違う(爆。
「チャイニーズ・スープ」の吉田美奈子ヴァージョンは聴いたことはあるんですが、ぜんぜん記憶に残ってません。
久しぶりに聴いてみたいなあ。
by parlophone (2008-03-07 23:14)
ペーター佐藤のエアブラッシュが時代を感じさせてくれますね。
このアルバム、皆さんと同意見でSSWのアルバムというよりも
ポップ・シンガーという趣がしますね。
私の3曲は…
「花紀行」・「チャイニーズ・スープ」・「雨のステイション」です。
チャイニーズ・スープは学生時代の独り暮らし、狭い台所で料理
していた頃を思い出させてくれます。(苦笑)
良く、聴きながら料理していました。
「卒業写真」も好きなんですが、「青春のー」というフレーズが私にとっては
ダメダメなんですよ。
背中が疼いてくるというか、その言葉はソングライターとしてはタブーなん
じゃあないのか、と突っ込んでみたくなります。
by MORE (2008-03-08 10:22)
おお~!
わたしが唯一持っているユーミンのアルバムじゃないですか^^;
最近聴いてませんけど...(沈)
なのでほとんどの曲の記憶がありません^^;;;
'86年頃だったと思いますが、
突然「ルージュの伝言」が聴きたくなって購入しました。
http://jp.youtube.com/watch?v=Pr4QJEN8Qs4
↑ すでに観ている方がいると思いますが
めっちゃ若い頃のユーミンの映像を見つけました。
by 黒ちゃん (2008-03-08 21:09)
MOREさん、どうもです。
>ペーター佐藤のエアブラッシュが時代を感じさせてくれますね
かれの絵はエア・ブラッシュもパステル画もやわらかくてじつに素敵ですね。
ミスドのスケジュール・ノートがかれのイラストだったときはムリしてドーナッツを食べてゲットしてものです(笑。
>SSWのアルバムというよりもポップ・シンガーという趣がしますね
SSWというとローラにしてもジョニにしても、そしてキャロル・キングもやっぱり内省的という感じがありますよね。
ちょっとポップになりすぎた(笑。
>「花紀行」・「チャイニーズ・スープ」・「雨のステイション」
もちろんこれでもなんの異論もありません。
>その言葉はソングライターとしてはタブーなんじゃあないのか
わはは。
おっしゃる意味はよくわかります^^
by parlophone (2008-03-09 00:41)
黒ちゃんさん、どうもです。
>最近聴いてませんけど...(沈)
>なのでほとんどの曲の記憶がありません^^;;;
ぼくもずいぶん久しぶりに聴いたんですけど、あらためて名曲ぞろいですごいと思いました。
どちらかを選べといわれれば、僅差で前作の『MISSLIM』だと思うんですが、ポップな分だけこっちのほうが聴きやすいかもしれませんね。
ぜひまた聴いてください^^
ようつべのリンクありがとうございます。
ムッシュが邪魔をするやつですね♪
何度見ても笑ってしまいますよね。
どうしてこんな演出にしたのか、いまいち意図がつかめませんが…^^;
by parlophone (2008-03-09 01:46)