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ティム・ハーディンのアルバム [紙ジャケ]

昨年の12月9日の記事「あるミュージシャンの死」でも取り上げたアメリカのシンガー・ソングライター、ティム・ハーディンの初期のアルバムがUNIVERSAL から紙ジャケでリリースされた。

   

こうやって紙ジャケやDVD で60年代のアメリカン・ミュージックを聴いたり見たりしていると、いままで気づかなかったミュージシャン同士の不思議な繋がり(ご当人たちにとっては不思議でもなんでもないのかもしれないが)がわかってきておもしろい。

先月DVD でも紹介したけれど、ボブ・ディランはニューポート・フォーク・フェスティヴァルに1963、64、65と3年連続で出場している。
そのディランと入れ替わるようにして66年のニューポートに出場して脚光を浴びたのが、きょうご紹介するティム・ハーディンだ。
当時ディランはハーディンのことを「もっとも偉大なソングライター」と評していたらしい。

そういった評価を受けてハーディンがデビューしたのはVerve のフォーク・ミュージック専門レーベルとして設立されたばかりの「Verve FOLKWAYS」。
あのローラ・ニーロのデビュー・アルバムも同じ時期に同レーベルからリリースされているので、ふたりはレーベル・メイトというわけだ。

いずれも自身の大ヒットには恵まれず、当時はシンガーとしてよりソングライターとしての評価のほうが高かったふたりは、けっきょくVerve を離れてメジャー・レーベルであるUS COLUMBIA に移籍してしまう。

ハーディンは1969年の有名なウッドストックのフェスティヴァルにも出場している。
しかし世界中を興奮の渦に巻き込んだ記録映画『ウッドストック』ではティムの演奏シーンはカットされていた。

当初は出演予定がなく、そのハーディンのアコースティック・ギターを借りて飛び入りしたのが、ラヴィン・スプーンフルを解散させたばかりのジョン・セバスチャンだった。
かれの演奏シーンは映画にもばっちり映っていて、そのほのぼのとしたキャラクターが世界中に紹介されることになった。

わずか2か月のあいだにDVDや紙ジャケがリリースされたディラン、ローラ、ジョン、ハーディンはこんなふうに繋がっていたのだ。
おもしろいものである。

閑話休題。
きょうご紹介する最初の1枚は『ティム・ハーディン 2』(1967)。
例の「the Lady Came from Baltimore」や「イフ・アイ・ワー・ア・カーペンター」、「ブラック・シープ・ボーイ」などを含む2nd アルバムだ。

   

ギターの弾き語りを基本に、ピアノ、ベース、ドラムス、ときにはストリングスも加わって、きわめてシンプルなアレンジでティムの飾らない素朴な歌が紡がれてゆく。

紙ジャケは厚紙でコーティングのないA 式のシングル・スリーヴ。
大きなお腹を抱えたスーザン・ムーアの姿がほんとうにいとおしく感じられる印象的なジャケットだ。

レーベルは名称変更後のVerve FORECAST レーベルになっている。

   

2nd アルバムは最初からこのレーベルだったのか、Verve FOLKWAYS から名称を改めたレイト・プレスのレーベルを復刻したのかは、ぼくにはわからない。

28ページにおよぶ日本語解説、歌詞、対訳の載ったブックレットだけで、インナーなどの付属品はない。
『ティム・ハーディン 1』にはカスタムのインナーバッグがついているから、『2』以降はホワイト・インナーということで省略されたのかもしれない。
紙ジャケの造形を見ても、BMG ほどのこだわりが感じられないのは残念だ。
ただフロント・スリーヴ左上のカタログ・ナンバーはオリジナルのものがプリントされている。

   

こちらは1968年リリースの3rd アルバム。
マイク・マイニエリやエディ・ゴメスといった腕利きのジャズ・ミュージシャンをバックに、ティムのスモーキー・ヴォイスが真髄を発揮するライヴ・アルバムだ。

やはりティムの弾き語りをベースにしながら、「イフ・アイ・ワー・ア・カーペンター」、「リーズン・トゥ・ビリーヴ」、「ミスティ・ローゼズ」、「Red Balloon」などの代表曲がジャズ・テイストたっぷりに、しっとりとあるいはスウィンギーに、そしてときにはじつにドラマティックに歌われる。
これはほんとうにすばらしいアルバムだ。

正確なパーソネルとロケーションはティム・ハーディン(vo,g,p)、ウォーレン・バーンハート(p)、マイク・マイニエリ(vib)、ダニエル・ハンキン(g)、エディ・ゴメス(b)、ドン・マクドナルド(ds)、1968年4月10日、ニューヨークのタウン・ホールにおけるライヴ・レコーディングとなっている。

こちらはコーティングのない厚紙のA 式ゲイトフォールド・スリーヴ。
黒い闇に沈むティムの横顔とオレンジ色の強烈なロゴは、ローラ・ニーロのアルバムと同じテイストが感じられる。

   

内側にはステージの全容も写っている。

   

音のほうはこれもあまり改善されているとは言いがたい。
ややざらついた歪み感も感じられるもので、ちょっと残念だ。


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コメント 10

bob

こんばんは

かなり興味ありですね♪
私事ですが、ティム・ハーディンの「the Lady Came from Baltimore」は、
スコット・ウォーカー絡みで知っていました。
いい曲ですよねぇ~。

ジャズ・ミュージシャンとの付き合いが麻薬に手を染めるきっかけとなり、
その後の悲劇の結末に…。やるせない思いです。

2ndのジャケが素敵で、ジャズ・テイストが見逃せない3rd…。
情報ありがとうございました♪
CDプレーヤーが欲しくなってきました(笑)。
by bob (2008-01-30 00:37) 

parlophone

bobさん、どうもです。

>「the Lady Came from Baltimore」は、スコット・ウォーカー絡みで
>知っていました

ええ! そうだったんですか!
じつはぼくの人生で初めて手に入れたLPがスコット・ウォーカー(当時はすでにスコット・エンゲル名義でした)だったんです。
買ったんじゃなくて、ラジオの視聴者プレゼントで当たったんですけどね^^
でも「the Lady Came from Baltimore」はまったく覚えてません。
すみません…。

>情報ありがとうございました♪

いえいえとんでもないです。
いまはDVDやSACDが再生できるマルチ・プレイヤーも15,000円ぐらいで手に入る時代ですから、ぜひ1台買ってみてください(←無責任やなあ~)
by parlophone (2008-01-30 01:39) 

bob

遼さん、こんにちは
>じつはぼくの人生で初めて手に入れたLPがスコット・ウォーカー
>(当時はすでにスコット・エンゲル名義でした)だったんです。

ということは、後期のソロアルバムだったんでしょうかね。
僕は中学の頃、ウォーカー・ブラザースが気に入っていて、
その流れで彼の1stソロを買ったのです。

お読みになったかどうかわかりませんが、最近エントリーしましたので、
よろしかったらどうぞ…。

http://bob.mo-blog.jp/blog/2008/01/post_2b84.html
by bob (2008-01-30 11:34) 

tetsupc2

遼さんこんにちは!
最近仕事が忙しくて帰りが遅いので帰宅後はバタン!と寝てしまうので
今日のお昼休み職場のPCでカキコしています。
ざっと読ませて頂きました・・・本当に勉強になります。ウッドストックでギターをジョン・セバスチャンに貸していたとは・・・知らなかった。それでギターを貸した当の本人は映画化の時カットされたとは・・・悲し過ぎですね・・・
当時はティム・ハーディンは評価が低かったのか?人気がなかったのか?いずれにせよ本人はいい気分ではなかったでしょうね。ティム・ハーディン3は今回のユニバのCDでしょうか?それとも前回ソニーミュージックから出たCDなのでしょうか・・・聴いてみようかな・・・なんて思っております。
by tetsupc2 (2008-01-30 12:44) 

parlophone

bobさん、どうもです。

>ということは、後期のソロアルバムだったんでしょうかね

たぶん1966年ごろのことだと思います。
ウォーカー・ブラザーズを解散しても最初のソロ・アルバムだったと思うのですが…。

bobさんの記事、読んだ記憶がありますが、コメントしてなかったですか?
夜中に朦朧としてコメント忘れたかもしれません…(爆。
あとでまた伺いますね♪
by parlophone (2008-01-31 01:06) 

parlophone

tetsuさん、 nice!&comment ありがとうございます^^

>ウッドストックでギターをジョン・セバスチャンに貸していたとは・・・

ぼくはどこかの記事かブログで読んだ記憶がありますが、今回の紙ジャケの解説にもたしか書いてあったような気がします。

>評価が低かったのか?人気がなかったのか?

評価も高かったし、人気もあったと思うのですが、映画『ウッドストック』には嵌りづらかったのかも知れませんね。
ジャニスもカットされてますからね~。
今からすると考えられません…^^;

『ティム・ハーディン3』は今回のユニヴァの紙ジャケです。
『1』『2』よりもぼくは好きかもしれません♪
by parlophone (2008-01-31 01:11) 

MORE

Tim Hardin 3は最初に買ったティムのアルバムでした。
なぜかその時レコード屋ではジャズのコーナーに置いてありました。
今回の紙ジャケは新リマスターでしょうか?
私は数年前に出たCDは持っているのですが…
(ボートラはついていました。)
ところで、このアルバムはライヴと謳っていますが、何曲かは
本当のライヴではないそうですね。
Verve-Forcastはこの頃何枚もそうやってライヴ盤を出したそうです。
ま、だからといってこの素晴らしいレコーディングの価値が下がるわけでも
ありませんけどね。
by MORE (2008-01-31 22:53) 

parlophone

MOREさん、どうもです。

>ジャズのコーナーに置いてありました

エディ・ゴメス、マイク・マイニエリでVerveだったらふつうにジャズでしょうね、よっぽど店員が気をつけてないと^^;

>今回の紙ジャケは新リマスターでしょうか?

帯には「2007年リマスター採用」と書いてあります。
ただ、英文ブックレットなどはついていないので、国内のマスターのリマスタリングかもしれないですね。

>何曲かは本当のライヴではないそうですね

え、そうなんですか!
レア情報ありがとうございます。
ちょっと気をつけて聴いてみよう^^
by parlophone (2008-02-01 00:19) 

kura_mo

はじめまして。chitlinさんの所から辿ってまいりました。
私もティム・ハーディン大好きです。今回の再発は待ったかいのある素晴らしいものだったと思います。年末のソニー編といい、ハーディン再評価の波が来ているのか?と嬉しく思います。

紙ジャケの詳細なデータや音質に関してのコメント、非常に興味深く拝見させていただいております。私なんか「リマスター」って書かれてるだけで良く聴こえちゃうくらいで。。

私のブログからTBさせていただきました。これからも更新楽しみにしています。
by kura_mo (2008-02-03 03:32) 

parlophone

kura_moさん、初めまして。
ようこそいらっしゃいました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

ブログをちょっと拝見させていただきましたが、すごく奥行きのある記事の内容で勉強になりました。

ぼくはSony から数年前に『電線の鳥』が出るまでティムのことは知らなかったんですが、聴けば聴くほど味わいのある人のような気がして、今回のユニヴァーサルの紙ジャケで、彼の再評価の動きが起きるといいなと思ってます。

またあとでゆっくり拝見させていただきますね。
by parlophone (2008-02-03 20:21) 

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