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『アート・ブレイキーズ・ビッグ・バンド』 [JAZZの愛聴盤]

モダン・ジャズを聴き始めてしばらくすると、ジャズの歴史を塗り替えるような働きをしたジャズ・ジャイアントどうしの競演というものに興味がわいてくる。

たとえば、ファッツ・ナヴァロとバド・パウエルの喧嘩セッションとかマイルズ・デイヴィスとセロニアス・モンクのクリスマス・イヴの喧嘩セッション、ソニー・ロリンズとジョン・コルトレーンのただ一度のテナー・バトルとか、コルトレーンとモンクの伝説のファイヴ・スポットのライヴ…。

そして今度はこんなのを聴いてみたかった…という夢想も出てくる(笑。
たとえばフォト・セッションでは残っているマイルズとクリフォード・ブラウンのトランペット・バトルとか。
評論家の悠雅彦はエリック・ドルフィーとモンクがもし共演をしていたらどんなに素晴らしい演奏を残していただろうと残念でならない…という意味のことをどこかで書いていた。

そこできょうの本題。
みなさんはコルトレーンがもしジャズ・メッセンジャーズに在籍していたら…と考えたことはありませんか?

豪放磊落でファンキーの塊りのようなブレイキーと神の国への接近を希求していたコルトレーンではまったく合わない、とも思う人もいるかもしれないが、じつはあるんですね、そういう音源が。

それがこれ。

      

1957年12月にベツレヘム・レーベルに録音された『アート・ブレイキーズ・ビッグ・バンド』は、ドナルド・バード(tp)、レイ・コープランド(tp)、ビル・ハードマン(tp)、アイドリース・シュリーマン(tp)、ジミー・クリーヴランド(tb)、メルバ・リストン(tb)、フランク・ハリク(tb)、ビル・グラハム(as)、サヒブ・シハブ(as)、ジョン・コルトレーン(ts)、アル・コーン(ts)、ビル・スラビン(bs)、ウォルター・ビショップJr.(p)、ウェンデル・マーシャル(b)、アート・ブレイキー(ds)という豪華なメンバーによるビッグ・バンド・ジャズだが、このなかに2曲だけクインテットによる演奏が収録されている。

 これがドナルド・バード(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、ウォルター・ビショップJr.(p)、ウェンデル・マーシャル(b)、アート・ブレイキー(ds)というメンバーでじつにいいのだ。
在籍というわけではないけれど、ブレイキーはこのメンバーで2~3枚アルバムを作りたかったのではないだろうか。

演奏されるのは「Tippin'」というバードのオリジナルと、「Pristine」というコルトレーンのオリジナルで、メンバー全員がノリにノった快演を聞かせる。
57年12月というとトレーンはすでにシーツ・オヴ・サウンドを完成させていて疾走感あふれるソロを展開するが、バードも快調らしくハイ・ノートをヒットする張り切ったソロを聞かせる。
とくにバードの「Tippin'」は「クール・ストラッティン」と「FUEGO」の「Low Life」を足して2で割ったようなマイナー調のファンキーなナンバーで、トレーンはめずらしくブロウから入るし、チャーリー・パーカーとの共演で知られるウォルター・ビショップJr.もハード・バピッシュで味わいのあるソロを聞かせてくれる。

残り6曲のビッグ・バンドの演奏はどうかというと、これも悪くない。
アレンジは主にアル・コーンが手がけているようだが、ビッグ・バンドらしい楽しさ溢れるオープニングから、アフロ・キューバン調の「El Toro Valiente」や、多彩なリズムの変化と抑揚のあるメロディをブラスとホーンで陰影感をもって描き分ける「Late Date」、美しいバラードの「The Kiss of No Retern」など、ビッグ・バンドのアレンジを知り抜いたコーンらしい都会的で洒落た味わいのあるアレンジに仕上げている。

コルトレーンは全編にわたって溌剌としたプレイを聞かせるが、バリトンで有名なサヒブ・シハブもパーカー直系のいいアルト・ソロを披露する。

先月出た紙ジャケはK2 HD マスタリングでステレオ初期の録音ながらなかなか瑞々しい音だ。

ART BLAKEY'S BIG BAND
BETHLEHEM BCP 6027


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コメント 4

tetsupc2

わぁ~これ私も買いましたよ~
特にjazzに詳しいワケでもないのですが会社の先輩に『これいいよ!買っておいて損はないよ!!』なんていわれてたまたまCDショップのポイントが溜まっていたのでプラス520円で買いました。。。スゴイ名盤なんですね。
何気に薦められて入手したとはいえ・・・恥ずかしながらコメントさせて頂きました。
by tetsupc2 (2008-01-19 23:07) 

parlophone

tetsupc2さん、すばやいレスありがとうございます。

>スゴイ名盤なんですね

じつは世間の評価はぜんぜん高くないんですよ。
このCDもけっこう長いあいだ廃盤になってて。
コルトレーンのソロが聴けるからとりあえずカタログには載るんですけどね~。
それにしても会社の先輩、かなりのツウですね!
by parlophone (2008-01-19 23:26) 

bob

こんばんは
マイナーレーベル盤にはハッとするようなモノがたまにありますよね。
しかし、これは残念ながら未聴です。
ビックバンドがどうもって感じでなかなか食指が動かなかった一枚です。
57年のトレーンとブレイキーの共演といえば、RIVERSIDEの「MONK'S MUSIC」が有名ですよね。
モンクが「コルトレーン!」と連呼して演奏がパニックに陥るところがスリリングで…。

このあたりも知らないうちに(自分だけか)、紙ジャケになっていたんですねぇ~♪
by bob (2008-01-19 23:47) 

parlophone

bobさん、どうもです。

>モンクが「コルトレーン!」と連呼して演奏がパニックに陥るところがスリリングで…

完璧な演奏じゃないのに、ゆるぎない名盤なのがすごいですね~。
ぼくも『MONK'S MUSIC』は大好きです。
もともとモンクもトレーンも大好きですし…。

トレーンとブレイキーってブルー・ノートやプレスティッジにもいくつかあるんですが、いかにもジャズ・メッセンジャーズっぽい、というのはこの2曲だけですね。

>ビックバンドがどうもって感じで

ぼくもエリントンやベイシーは大好きなんですが、サド=メルやトシコ=タバキンあたりになるとどうも食指が動かなくて、bobさんのおっしゃる気持ちはよくわかります^^
by parlophone (2008-01-20 00:08) 

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