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ヴァシュティ・バニヤン――倉敷の収穫その2 [ブリティッシュ・フォーク]

ヴァシュティ・バニヤン。
その出自を測りかねるような不思議な響きをもったシンガー・ソング・ライターの名前を知ったのは、例によって『レココレ』だった。
そこにはヴァシュティのただ1枚のアルバム『ジャスト・アナザー・ダイアモンド・デイ』が紹介されていて「線香花火のように儚い傑作」(藤崎登)と書いてあった。

   

紙ジャケは前回紹介した『トゥィン・サンズ』と奇しくも同じ2005年11月のリリースなのだが、ストレンジ・デイズ・レコードからの発売であり、どこにも初回限定生産の文字はない。
ところがあちこち探してみてもなかなか店頭で実物を見ることができないのだ。
Amazon で検索しても紙ジャケの新品はなし。
倉敷のタワレコで「もしや」と思って「V」のコーナーを探してみたら、なんと…
あった!
…ので即購入となった(笑。

紙ジャケはコーティングのないE 式のゲイトフォールド・スリーヴで、ジョン・ジェイムズによって描かれたイラストが不思議な温かみを感じさせる。

   

オリジナル・アルバムに収められた14の楽曲はヴァシュティのギターの弾き語りがベースで、そこに曲によってリコーダ・アンサンブルや弦楽四重奏、バンジョーやマンドリン、フィドルなどが加わるという形をとっている。
ヴァシュティのヴォーカルはほんとうに儚げで、ドラムレスということもありアルバムは穏やかな美しさで展開してゆく。

プロデュースはジョー・ボイド。
フェアポート・コンヴェンションのデイヴ・スウォーブリックとサイモン・ニコルがフィドル、マンドリン、バンジョーで、インクレディブル・ストリング・バンドのロビン・ウィリアムスンがフィドル、マンドリン、アイリッシュ・ハープで参加している。

日本語解説の内田哲雄によると、ヴァシュティ自身の1年半に及ぶ馬車による旅の記憶がもとになってこれらの楽曲ができたらしく、ゲイトフォールドの内側の写真もそれらしい。

   

でも歌詞が聞き取れないせいもあるのだろう、聴いているとぼくはいつのまにか小舟かなにかに揺られているような気分になってくるのだ。

英国の深い森のなかに、そこだけ開かれた絵本のようなの草原があり小さな小川には小舟が浮かべられている。
あたりはモネかルノワールの絵のように光が柔らかに降り注ぎ、風の音も聞えてくるのだが不思議と肌寒くはない。
ぼくはそのなかでパンとワインのささやかな食事をしながら光と風の歌を聴き、草の匂いや小動物の密やかな姿を見つけたりする。
まさに夢のような40分だ。

   

レーベルは「British Rock Masterpiece」シリーズのもので、インナーバッグもついていないし、歌詞の対訳もない。
それで価格は2,940円とSony Music のシリーズより1,000円も高い。
しかしオリジナルの英国盤は日本円で6桁のプライスというから、これは我慢するしかないのかも^^;

ジャケットの表に奇跡的にPHILIPS のマークが復刻されている。


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MORE

彼女は35年前に第二のマリアンヌ・フェイスフルというふれ込みでデッカから
レコードを出したんですが、あまり売れなかったのですよね。
(しかもジャガー・リチャーズの曲で!)
2年ほど前に(35年ぶり!)第二作を発表、最近では若手の女性フォーク
シンガー(最近多いですよね、特にイギリス)の間ではカルト・ヒーローの
ような存在だそうです。
ほんわかとした心温まる歌声の持主ですよね。

あ、遅ればせながら今年もよろしく!
by MORE (2008-01-11 09:17) 

parlophone

さすがMOREさん、何でもご存知ですね~。
アンドリュー・ルーグ・オールダムのプロデュースで、ジャガー・リチャーズの曲でデビューした、と解説書にも書いてありました。

そういわれてみれば、たしかにマリアンヌも儚げな歌声が売りでしたからね~。
ひょっとしたらヴァシュティも彼女ぐらい美しい人だったんでしょうかね(笑。

こちらこそ今年もよろしくお願いいたします^^
by parlophone (2008-01-11 22:22) 

へどろん

去年の感動の初来日公演を思い出したへどろんです。遼さん、今年もよろしゅうです。
ヴァシュティ様のこれをお気に召されたなら、ぜひ!35年のブランクを全然感じさせない奇跡のセカンド「Lookaftering」、そして未発表曲集「Some Things Just〜」なんかもお勧めっす。
再発のアナログが出たのに、いやそれらやCDとか出たせいで人気が出てきたんですかね?eBayに先日オリジナルアナログが出ていましたが、驚愕の千ポンド越えを軽〜くしておりました。すげーです。
では〜
by へどろん (2008-01-11 22:55) 

parlophone

へどろんさん、どうもです。
そうですか、へどろんさんは来日公演をご覧になったのですか!
さすが、というか、来日していたなんて!!
びっくりの連続です^^;

>35年のブランクを全然感じさせない奇跡のセカンド「Lookaftering」

う~ん、MOREさんのご紹介もありましたが気になりますね~。
ふつう35年も経つと声質が変わってしまうものですが、それもないんでしょうねえ。

>驚愕の千ポンド越え

ひえ~、やっぱりすごいです…。
紙ジャケで満足できてよかった~^^
by parlophone (2008-01-12 14:28) 

chitlin

値が張りますが、納得の紙ジャケットCDですよね。
そして、奇蹟のような1枚。
こういう作品と出逢えて、私はもうそれだけで幸せを感じてしまいます。

旧ブログからトラックバックさせていただきますね。
あ、新ブログへのリンク変更についてありがとうございました!
by chitlin (2008-01-12 20:25) 

parlophone

お~、chitlinさんは2006年にすでに記事を書かれていらっしゃったんですね!

ヴァシュティがこんなに人気のある人だとは知りませんでした…(恥っ!)

>こういう作品と出逢えて、私はもうそれだけで幸せを感じてしまいます

いや~、世の中にはこんな素晴らしい作品がいっぱい埋もれてるんですね!
あ、ぼくが知らないだけ??

トラバ&コメントありがとうございました!
by parlophone (2008-01-12 21:40) 

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