ジミ・ヘンドリックスのDVD 『ライヴ・アット・モンタレー』 [Blu-ray & DVDコレクション]
ジミ・ヘンドリクスのライヴ・フィルムを見ていると、どうしても彼がまだ生きていたころのことを思い出してしまう。
ぼくが初めてジミのレコードを買ったのは1969年の3月3日。
いまから38年も前のことだ。
そのわずか10日後には、初めてのクラプトンのレコード、(クリームの)「ホワイト・ルーム」を買っている。
当時ラジオからはアート・ロックとかニュー・ロックとか呼ばれる音楽がさかんに流れていて、ジミとクラプトンという2人のギタリストの音楽は文字どおり衝撃となってぼくのからだとこころを貫いたのだった。
ただ、当時中学生だったぼくには、ジミのギターの"凄さ"よりクラプトンのギターの"凄さ"のほうがわかりやすかったので、ぼくはもっぱらクラプトンを追いかけることになる。
そうこうしているうちにジミはオーヴァードーズのためにあっけなくこの世を去ってしまい、ぼくの手元には、大晦日から元旦にかけてフィルモア・イーストで収録された『バンド・オヴ・ジプシーズ』のアルバムだけが遺されたのだった。
67年6月にシュートされた25歳のジミを見ながら、「もしジミが死んでいなかったらどんな音楽を残してくれていただろう」と考える。
40年後の現在から見ると、クラプトンは大きくそのポジションを変えてしまっているので、当時のミュージシャンでジミと比肩できるギタリストといえばジェフ・ベックだろう。
ベックが創り上げてきた驚くほど豊穣な音楽的成果を考えると、ジミの夭折はほんとうに残念だけれど、その閃光のように鋭く輝かしい音楽はドラッグに溺れるような過激な生き方からしか生み出しえなかったのだ、という気もする(不謹慎ではあるが)。
今度リリースされたこのDVD にはチャス・チャンドラーをはじめとする多くの関係者の証言が収められている。
しかしジミの演奏するシーンを見ていると、そんなものはどうでもよくなってしまう。
渡英して成功を収めていたとはいえアメリカではほとんど無名の新人に近かったジミが、モンタレー・インターナショナル・ポップ・フェスティヴァルという大舞台に立てたのは、ポール・マッカートニーの強い推奨があったからだという。
たしかにブライアン・ジョーンズのイントロデュースによってステージに現れたジミは、M-1「Killing Floor」では聴衆の反応を見ながら手探りの状態で演奏をしていて、その緊張感はぼくらにも伝わってくる。
ところがM-2「フォクシー・レディ」を経てM-3「ライク・ア・ローリング・ストーン」あたりになると、その圧倒的なパフォーマンスに聴衆が飲み込まれていくさまをはっきりと見ることができる。
そして最後にはぼくたち自身が、あの音楽史上有名な"事件"を目の当たりにしているという感慨にとらわれてしまうのだ。
ザ・フーのピート・タウンゼントがギターをぶっ壊したので、ジミとしてはギターに火を点けるしかなかったというような話もあって、たしかにライター・オイルがそう都合よくステージの袖にあったとも思えないのだが、たとえそうだったとしてもここにあるのはプリミティヴな衝動であり、愛憎であり、そして官能である。
ジミはあきらかにギターを愛し、それゆえにギターを憎み、そしてついには火を点けて燃やしてしまう。
そういういわば「衝動殺人」としてのジミのパフォーマンスがこのドキュメンタリー・フィルムのなかに存在しているのである。
この日フェスティヴァルの会場にいた人々は、ただただジミのトリオが繰り出す歌と演奏にこころとからだを奪われていただけだろう。
わずか2年後にはジミが亡くなってしまい、もう二度と彼の演奏に触れることができなくなるとは思ってもいなかったし、ましてやこの"音楽史上もっとも有名な事件"の生きた証人になるとはこれっぽっちも考えていなかった。
それだけに彼らは今でもこの日の衝撃と感動を生々しく覚えているだろう。
その衝撃と感動がいま、ここに、ある。
こんばんは
ジミ・ヘン、ジョプリン、ジム・モリソン…
そうそう69年頃はアート・ロック、ニュー・ロックなんて呼ばれていましたね。
思い出します、ジミ・ヘンのモノクロポスターを部屋に飾っていた高校生の頃を♪
モンタレーでブライアンがイントロデュースしたことは知っていましたが、
コレで観ることが出来るのですか…。
それだけでも価値ありでしょうか、僕としては。
いつもながら、ありがたき情報で感謝です♪
by bob (2007-12-08 01:28)
このDVDは私も買おうかなと思っていたところでした。やっぱりよさそうですね。
ジミヘンの死は当時ラジオで知りましたが、ちゃんと聴いたことがなかったので「ふ〜ん」くらいの感じでした^^。
私の場合ジミヘンをちゃんと聴き始めたのが80年代になってからなので、すんごく遅れてます(笑)。
by MASA (2007-12-08 01:32)
中学生・・・多分中2くらいの頃だと思いますが、NHKでヤングミュージックショーとして「モンタレー」放送したのを見ました。
74年くらいだと思います。ジミヘンもジャニスも中坊には衝撃的な映像でした。
by hamakaze_ataru (2007-12-08 10:12)
ジミヘンは通過してこなかった道ですね。
でもこの事件は知ってますよ~。
今回、遼さんの記事であらためて衝撃を受けた次第です。
最後の放心の女性の横顔アップ写真が衝撃を物語ってますね。
ロック史のドキュメントを堪能しました。
by ouichi (2007-12-08 15:41)
bobさん、こんばんは~。
寒くなりましたね。
>69年頃はアート・ロック、ニュー・ロックなんて呼ばれていましたね
アトランティック、ポリドールなどの日本グラモフォン系はアート・ロック、EMI などの東芝音工系はニュー・ロックと読んでましたね。
いつのまにかニュー・ロックで統一されましたけど^^
>思い出します、ジミ・ヘンのモノクロポスターを部屋に飾っていた高校生の頃を♪
おお、そうでしたか。
ぼくはポスターはビートルズだったような気がします(笑。
>モンタレーでブライアンがイントロデュースしたことは知っていましたが、
>…それだけでも価値ありでしょうか、僕としては
ただしブライアンが画面に現れるのは10秒ぐらいです^^;
しかしジミの全米デビューはやっぱり強烈ですね。
あらためて衝撃の凄さを体験できるすごいヴィデオです!
by parlophone (2007-12-08 18:08)
MASAさん、こんばんは~。
大洲もやっぱり寒いでしょうね。
>このDVDは…やっぱりよさそうですね
やっぱりいいですよ。
本文中には書きませんでしたが、「Killing Floor」など5曲がまるち・アングルで見れるのも素晴らしいです。
せっかくのDVDのこの機能をいかしたディスクってあんまりないので残念ですが、モンタレーのジミの映像やワイト島のフリーの映像で見られるのはうれしいですね~。
by parlophone (2007-12-08 18:13)
大安さん、どうもです。
新潟はさぞ寒いでしょう。
風邪、気をつけてくださいね。
>NHKでヤングミュージックショーとして「モンタレー」放送したのを見ました。
70年代ってみんなヤング・ミュージック・ショーのお世話になってますよね。
ただぼくは大学に入ってしばらくはTVのない生活だったので(笑)、あんまり見た記憶がないんですよね~。
向かいの部屋の経済学部の学生の部屋でパープルを見てたのを思い出しますが…^^
>ジミヘンもジャニスも中坊には衝撃的な映像でした
モンタレーのジャニスもすごいですよね。
ママ・キャスもお口をあんぐり…の衝撃(笑。
by parlophone (2007-12-08 18:19)
ouichiさん、どうもです。
東京はいかがですか。
やっぱり寒いでしょうね~。
>今回、遼さんの記事であらためて衝撃を受けた次第です
>ロック史のドキュメントを堪能しました
ありがとうございます。
本文中には書きませんでしたが、ひと言でいうとエロスとタナトスということなのかな?
とにかくエロティックで衝動的で、やっぱり観衆は呆然としたのではないでしょうか。
機会があればぜひご覧になってください。
by parlophone (2007-12-08 18:42)
遼さん、こんばんは
>ジミが、モンタレー・インターナショナル・ポップ・フェスティヴァルという
>大舞台に立てたのは、ポール・マッカートニーの強い推奨があったから
>だという。
そうでしたか。全然知りませんでした。ポールは当時、ジミに相当入れ
込んでたみたいですね。「ジミのフィード・バック奏法に誘発されて夜なの
に、カジノを買いに行った」というインタヴューを読んだ覚えがあります。
『Sgt.Pepper's』が発売されて間もない頃、ジミがライヴで「Sgt.Pepper's」
をやってくれたって感激してましたものね。
>ぼくはポスターはビートルズだったような気がします(笑。
因みに私は「川島なお美」のポスターでした^^;
by y.z. (2007-12-09 00:26)
おはようございます。
モンタレーのJIMI。
僕はOTISのライブとカップリングされたビデオを持ってます。
ビデオデッキ壊れちゃった(涙)し、これは手に入れないとダメですかね。
短い演奏時間ながら、中身はかなり濃いですよね。
何度観ても厭きることのない映像です。
ギターもそうですが、ヴォーカルのカッコ良さにやられました^^
by DEBDYLAN (2007-12-09 08:31)
y.z.さん、どうもです。
>「ジミのフィード・バック奏法に誘発されて夜なのに、カジノを買いに行った」
>というインタヴュー
おお、それは知りませんでした。
ギター好きのポールらしいコメントですね^^
>因みに私は「川島なお美」のポスターでした^^;
わはは、いいですね~。
そのころから彼女は活躍してたんですね!
by parlophone (2007-12-09 18:27)
DEBDYLANさん、どうもです。
>僕はOTISのライブとカップリングされたビデオを持ってます
むかしはモンタレーの映像というとそれしかありませんでしたね~。
レーザー・ディスクもパイオニアからリリースされてました。
>短い演奏時間ながら、中身はかなり濃いですよね
今回は完全版なのでたぶん45分ぐらいはあると思います。
>ギターもそうですが、ヴォーカルのカッコ良さにやられました^^
ジミの太い声も独特の素晴らしいものですよね~♪
by parlophone (2007-12-09 18:30)
遼さん、こんばんは!
ようやく我が家にもモンタレーのDVDが届いたので、早速観てみました。
LDの時代からこれまで何度も観てるはずなのに、今でもジミのパフォーマンスには魅了されてしまいますね。
微妙にアングルが違っていたり、ボーナス映像も貴重だったりと、新たな楽しみもかなり多いです。
正直なところ、単に画質のクオリティを向上させたくらいかと思っていただけに、ここまでやってくれたのは嬉しい誤算でした。
by lonehawk (2007-12-13 00:14)
lonehawkさん、コメント&トラバありがとうございました。
>単に画質のクオリティを向上させたくらいかと思っていただけに、
>ここまでやってくれたのは嬉しい誤算でした
ですよね~。
ぼくも見ているうちにのめり込んじゃって、わけもなく興奮しました(笑。
>新たな楽しみもかなり多いです
しばらくはこれとディランの『ニューポート』で楽しめそうです^^
by parlophone (2007-12-13 01:13)
ご無沙汰してすみません・・・
日に日にデカくなる腹で怪獣連れて毎日散歩してたら、
寒さに負けてまた体調崩してました。(汗)
JIMIの生きた時代に生まれてたら、間違いなくアメリカまで
観に行ってたと思います。
DVDもなんか色々出てて、他のCDやら何やら買っているといつも
買いそびれてしまい、結局WOODSTOCKのLIVE盤くらいしか
観たことがないような・・・
予告していたJAZZのレコード、〝秋の夜長に・・〟なーんて
タイトルで書こうと目論んでいたら、あっという間に師走になっていました。
あーぁ・・・・・
by (2007-12-18 18:23)
あるじさん、こちらこそご無沙汰です。
なかなか体調むずかしそうですね。
ご自愛ください。
>JIMIの生きた時代に生まれてたら、間違いなくアメリカまで
>観に行ってたと思います
うんうん、わかるわかる。
きっとあるじさんの好みにぴったりだと思いますよ。
あとね、映像が残っているものでは『アトランタ・ポップ・フェスティヴァル』、そして『ワイト島』のライヴもなかなかいいですよ!
>予告していたJAZZのレコード
じゃあ新春特別企画かなんかで(笑。
期待してま~す^^
by parlophone (2007-12-18 23:15)