クリフォード・ジョーダン 『イン・ザ・ワールド』 [JAZZの愛聴盤]
クリフォード・ジョーダンのテナー・サックスをどう表現したらいいだろう。
ソニー・ロリンズ流の、豪放にバリバリと鳴るサックスではない。
スタン・ゲッツのような柔らかでふくよかな音でもない。
コルトレーンが体得した、細かな音をなめらかに敷きつめたサウンドでもない。
解説の原田和典は「くすんだトーン」と書いているが、たしかにそういう表現がいちばん近いのだろう。
CDをプレイヤーにセットして最初にジョーダンのテナーが聞こえてきたとき、なんだか懐かしい風景を想い出させるような、まばゆい原色がちょっと色褪せたような、鮮やかではないがどこか安心させる音。
そんなサウンドでクリフ・ジョーダンは「Vienna」「Doug's Prelude」「Ouagoudougou」「872」という4曲のオリジナルを、ひたすら吹ききる。
今まで表現する機会がもてずに、あふれるような想いのたけをやっとのことで吐き出すように、やや性急なトーンでひたすらに音を紡いでゆくジョーダン。
そんな彼のテナーに、胸を衝かれたように共演陣がアンサンブルを奏で、ソロを分け合ってゆく。
ピアノのウイントン・ケリー、ベースのリチャード・デイヴィス、ウィルバー・ウェア、ドラムスのアルバート・ヒース、エディ・ブラックウェル、ロイ・ヘインズ。
そしてトロンボーンのジュリアン・プリースター、トランペットのドン・チェリーとケニー・ドーハム。
これは1969年の春に、ジョーダンが自ら起こしたレーベル、フロンティア・レコードに吹き込み、1972年にN.Y.のマイナー・レーベル、ストラタ・イーストからリリースされたアルバムだそうだ。
この作品を知ったのは、サイト「紙ジャケ探検隊」の新着情報を読んだからだが、そこに探検隊の方がこう書いている。
「かけた瞬間、ブワーっと霞が吹きのぼるように哀愁がひろがっていく…素晴らしい演奏」
まさにこのとおりなのだ。
およそモダン・ジャズに興味のある人なら、ぜひこのCDを聴いてほしい。
感傷的で悲しげで、でも甘すぎないし感情に溺れて流されることもない、厳しく屹立する孤高の音楽がここにはある。
CLIFFORD JORDAN "IN THE WORLD"
STRATA-EAST SES1972-1
昔からジャズ喫茶の名盤と言われてましたね。拙もクリフォード・ジョーダンは大好きなテナー・プレーヤーのひとりです。リーダー・アルバムは寡作ながらもどのプレイも最高の寛ぎをもたらしてくれますね。無骨なんですが、フレーズのひとつひとつに温かく人懐っこい魅力を感じます。ブルーノートの『CLIFF CRAFT』、リバーサイドの『SPELLBOUND』は何度繰り返し聴いたことか。
ところが、『IN THE WORLD』は昔通っていたジャズバーで聴いたきりで未所有。友人がオリジナル盤を持っていて格安で譲ってくれるとのこと。ただし、部屋のどこにあるのか行方不明とのことなのでジッと辛抱強く待っているところです。以前も同じ手で5年待たされたことがあるので、今度も2012年まで待つことになるかもしれません(笑)。
by 路傍の石 (2007-05-31 12:33)
>昔からジャズ喫茶の名盤と言われてましたね
そうなんですか。
ぼくは73年ごろからジャズを聴きだし、ジャズ喫茶にもよく通うようになりましたが、このアルバムのことはまったく知りませんでした。
今回紙ジャケにならなかったら、今も知らなかったかもしれません。
>友人がオリジナル盤を持っていて格安で譲ってくれるとのこと
いい友人をお持ちですね~^^
この紙ジャケは音もかなりいいので、とりあえずこれを持っておけば2012年まで待たされても、我慢できるんじゃないでしょうか(笑。
by parlophone (2007-05-31 21:31)
あれ、ジャズが出たぞ・・・しかもクリフォード・ジョーダンとは!
遼さん、路傍の石さん、ちょっとゴブサタしておりました。bassclefです。
このレコード、僕も入手したのは、リアル・タイムではなく、たぶん20年くらい前に「トリオ」の中古盤」を買いました。(このストラタ・イーストもそうですが、トリオ(オーディオメーカーの)が、storyvilleなどのLPも出していたんですね。
ウイルバー・ウエアが入ってたので、どうしても聴きたかったLPです。ウエアとしては、最晩年らしくちょっと精彩を欠いた感じもありますが・・・それでもこのセッションは、全員の気合みたいなものが色濃く出ていて、1969年としても、そうとうに「暑苦しい」ジャズだったように思います。いいレコードです(笑)
by bassclef (2007-05-31 21:44)
bassclefさん、こちらこそご無沙汰しております。
>たぶん20年くらい前に「トリオ」の中古盤」を買いました
おお、みなさん、ちゃんとお持ちなんですねえ。
bassclefさんはウィルバー・ウエアがお好きだから、お持ちかもしれないなとは思っていましたが(笑。
トリオがレコードを出していたのは知っているのですが、1枚も所有したことはありませんでした。
リチャード・デイヴィスとウィルバー・ウェアの2ベースというのも非常に贅沢ですが、エディ・ブラックウェルとロイ・ヘインズの2ドラムスというのもすごいですね。
>全員の気合みたいなものが色濃く出ていて、1969年としても、
>そうとうに「暑苦しい」ジャズだった
ジョーダンの執念のようなものを感じるレコーディングですね。
また1枚、素晴らしいアルバムにめぐり合うことができました^^
by parlophone (2007-06-01 00:09)
本当に懐かしいアルバムなんです。
吉祥寺のジャズ喫茶に入り浸っていた頃、この盤はよくお店でかかりましたから。
ストラタ・イーストは硬派なジャズ専門かと思われますが、実はハロルド・ビックなどというサックス奏者の盤は、ほとんどフュージョン風味の盤もあったりします。この盤、金色盤ジャケで、なぜか、我が家にこの盤があります。
取り敢えずチャールス・トリバーなんかの盤を、いまの技術で、どうにかいい音で再発して欲しいと思うのは僕だけではないはずなのですが。
by Sugar (2007-06-04 21:34)
Sugarさん、どうもです。
そうなんですか!
ではSugarさんもCD化をさぞや待ち望んでいらっしゃったでしょうね。
たしかに50年代~60年代のモダン・ジャズに比べると、70~80年代の音源はなかなかCDにならないような気がします
(最近のジャズの動向には疎いので、単に「気がするだけ」ですが)。
>チャールス・トリバー
いいですね~。
ぼくも再発希望です!
by parlophone (2007-06-04 22:33)