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愛するアニタ [追悼]

asahi.com から引用する。

米ジャズ歌手、アニタ・オデイさん
 アニタ・オデイさん(米ジャズ歌手)が23日、ロサンゼルスの病院で死去、87歳。

 40年代から50年代にかけ、「ハニーサックル・ローズ」「スイート・ジョージア・ブラウン」などのスタンダードナンバーを粋に表現してトップ歌手の座についた。

 シカゴで生まれ、10代から歌手として活躍。一方、麻薬や酒におぼれ、40年代後半にはヘロインの過剰注射で命を落としかけた。この経験から麻薬からは手を切ったが、アルコール依存は長く続き、96年には自宅で酔って階段から転落。大けがをして、約1年間歩けなかった。

 回復してからは再び舞台に立ち、今年にはCDをリリースするなど生涯歌い続けた。99年のAP通信とのインタビューで「歌っているとき、私は幸せだ。自分ができることをしている。それが人生への私の貢献」と語っている。(AP)

ビリー・ホリデイの壮絶な生涯についてはアウトラインだけは知ってたけど、アニタもけっこうすごい人生だったのね。
しかも、どこか某ECを髣髴させる部分もあるし…。
ECにもJJと一緒になって飲んだくれてると階段から落ちて大怪我するよ…って忠告しとこう(笑。
スミマセン、ちょっと不謹慎でした…。

8月の「JAZZの愛聴盤」で『真夏の夜のジャズ』を取り上げたときにアニタのことにもちょっと触れた。
そのときには

スキャットで伴奏陣とアドリブの応酬をするアニタの圧倒的な歌唱は、そのへんのジャズ・ヴォーカリスト(を名乗っている女性歌手)が単なるモノマネに過ぎないことを如実に見せつけてくれる。

と書いたのだが、そんなアニタの名唱の数々を堪能できるのが、彼女の代表作のひとつである『アニタ・シングス・ザ・モスト』だ。
今日は朝出かける前にこのアルバムを聴いて彼女を追悼した。

   

アルバムは「'S Wonderful」で始まる。
わが国のジャズ・ファンにはヘレン・メリルのものがよく知られていると思うが、アニタの歌唱は軽くてしなやかだ。
1番だけを歌ってすぐに「私からは奪えない They Can't Take That Away from Me」に繋がり、また最後は「'S Wonderful」にもどる。
つぎの「Tenderly」はしっとりとしたバラード。
小粋な「Old Devil Moon」、軽快にノリまくる「Love Me or Leave Me」とつづいて、彼女のスインギーな歌に気持ちよくなっていると突然、アニタの歌唱がじつはすごく計算された丁寧なものであることに気づかされて、思わず唸ってしまう。

『真夏の~』で聴衆を釘付けにした「二人でお茶を」のようなアドリブの応酬が楽しめるのは、急速調で展開される「Them There Eyes」だ。
そのほか「星影のステラ Stella by Starlight」「恋のチャンスを Takin' a Chance on Love」などスタンダードの名曲がずらりと並んだ選曲は、これからジャズを聴いてみようという人にもいいかもしれない。

バックはOscar Peterson(p)、Herb Ellis(g)、Ray Brown(b)、John Poole(ds)という名手たち。
ぼくは残念ながらピータースンのピアノをいいと思ったことはほとんどないが、3枚だけやっぱりすばらしいなと思うアルバムがある。
もちろんそのうちの1枚がこれだ。

レイのベースはもちろんだが、「I've Got the World on a String」など、ハーブ・エリスのギターもいぶし銀のような美しさだ。

スタン・ケントン楽団の歌姫としてジューン・クリスティ、クリス・コナーへとつづくハスキー・ヴォイスの流れをつくったアニタ。
こころからご冥福をお祈りいたします。


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コメント 2

bassclef

遼さん、こんにちわ。このアニタ・シングス・ザ・モスト。
ヴォーカルのレコードというものを買った最初の頃の盤です。その頃はあまりピンとこなくてあまり聞きませんでしたが、この5~6年、だいぶんヴォーカルも聴くようになってきて・・・それで改めてアニタの巧さ・味わい深さがわかってきたような次第です。遼さんの挙げた曲、どれもいいですね。I've Got A World・・・好きです。バラードではBewitchedもいい味わいだと思います。このレコードはほんとにさらっと聴けてしまう、そして「唄」というものの良さがわかってしまう、そんないいレコードですね。
by bassclef (2006-11-27 23:39) 

parlophone

>バラードではBewitchedもいい味わいだと思います

bassclefさん、さすがです!!
ぼくも長いあいだ国内盤のアナログしか持ってなくて、そうするとどうしてもA面を聴いちゃうじゃないですか(笑。
で、なかなかB面最後までいけないことが多かったんですが、数年前紙ジャケを安く手に入れて、あるとき「Bewitched~」だけ聴いたことがあったんです。
この曲、イントロなしでいきなりアニタのヴォーカルから始まりますよね。
その最初の声(笑。
それから間奏のあとのフェイクしたあたりの歌唱は最高だと思いますね~。

今回記事にするのにそのことを書こうかと思ったんですが、うまい表現が見つからずにボツにしたんですよ…(涙。

>そして「唄」というものの良さがわかってしまう、そんないいレコードですね

名言です。
この1行ですべてが表されてます。
by parlophone (2006-11-28 00:48) 

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