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モット・ザ・フープルの世界-part 2 [ブリティッシュ・ロック]

モットのpart 2、今回はコロンビア編です。

   

コロンビア移籍第1作、デイヴィッド・ボウイによるプロデュースで知られる『すべての若き野郎ども All the Young Dudes』は1972年9月のリリース。

グラム・ロックの真っ只中にボウイの提供した同名シングルで全英3位に輝いたのだから、モットがグラム・ロックのバンドと思われるのは仕方ないのだが、現在の感覚で聴いていくと、このアルバムも前作『ブレイン・ケイパーズ』同様、モット以外の何者でもないブリティッシュ・ロックの傑作だ。
たしかに「すべての若き野郎ども」はボウイ色の強い、洗練されたアレンジの印象的な名作だが、アルバム1曲め、ルー・リードのカヴァー「SWEET JANE」の颯爽としたロック・バンドとしてのたたずまい、つづく「MOMMA'S LITTLE JEWEL」(ハンターとベーシスト、オヴァレンド・ワッツの共作)の、重厚なピアノのイントロをいったん止めて、ギターのリフでリスタートする曲のかっこよさなど、1作めからしだいに成長して完成の域に達したバンドとしての力量を見せつける内容になっている。
前作ではパープル真っ青の曲もあったが、M-5はイントロのリフがもろストーンズ風。
これはこれで笑っちゃいます。
しかしミックのギター・ソロは切れ味鋭くてかっこいい!
M-6ONE OF THE BOYS」(ハンターとミックの共作)のリフはのちにバッド・カンパニーの「キャント・ゲット・イナフ」で生かされ、ミック自作ナンバーのM-8READY FOR LOVE/ AFTER LIGHTS」もバドカンで再演されることになるんだそうだが、抒情性あふれるドラマチックな名曲だ。
(じつはバドカンもベスト盤しか聴いたことがなかったので、これを機にアルバムを聴いてみたくなった)
そしてオリジナル盤では最後の曲になる「SEA DIVER」はハンターのピアノの弾き語りにストリングを配したすばらしいバラードだ。

ボーナス・トラックは「ONE OF THE BOYS」のデモ・ヴァージョン、シングル・ヴァージョン、「SWEET JANE」のライヴ・ヴァージョン、そして「すべての若き野郎ども」のボウイのガイド・ヴォーカルが入ったヴァージョンなど7曲のてんこ盛り。

   

紙ジャケはコーティングのないE式のシングル・ジャケで、オリジナルのインナーバッグを復刻したものと、8ページの英文ブックレットが付属している。
レーベルはオレンジのコロンビアで、オリジナルどおりなのかもしれないがなんとも面白みのないレーベルだ。

一般的にもモットの代表作といわれている『革命 MOTT』(1973)だが、やはり聴いてみると傑作ぞろいのすばらしいアルバムだった。
オリジナルのメンバーだったヴァーデン・アレン(key)が脱退してしまったためにハンターがピアノを兼ね、予定していたロイ・ウッドのプロデュースもキャンセルされてしまったため、セルフ・プロデュースになったそうだが、そういったことをハンディと感じさせない完成度だ。

個人的にいちばんグッときたのは、オリジナル盤では最後に収められた「I Wish I Was Your Mother」。
マンドリンとアコースティック・ギターが印象的で、ハンターも久しぶりにディランの影を感じさせる枯れたヴォーカルを披露している。
シングル・カットされた2曲M-1「メンフィスからの道 All the Way from Memphis」とM-4「ホナルーチー・ブギ  Honaloochie Boggie」はいずれも軽快なロック・ナンバーで、ロキシー・ミュージックのアンディ・マッケイがサックスを吹いている。
ハンターのピアノもいい味が出ているし、ミック・ラルフスのギターがこれまで以上にじつにいい音を出している。
上の2曲以外でミックのギターが印象に残るのはM-5Violence」(この曲ではフィドルも活躍する)、これもストレートなロック・ナンバーM-6Drivin' Sister」、そしてミック自身がヴォーカルを取るM-8I'm a Cadillac/ El Camino Doloroso」(8分近い大作だがミックのナイーヴな感性が出ているし、エレキ、アコギ、スライドと弾きまくる!)あたりだ。
有名な「ロックンロールは敗者のゲーム…でも僕には消すことはできない 心に感じるロックンロールのフィーリングを」というフレーズを含むM-7Ballad of Mott The Hoople  26th, March 1972, Zurich」も文句なしの傑作だ。

ボーナス・トラックはシングルのB面「ローズ Rose」(これがまたすばらしいバラード!)、「ホナルーチー・ブギ」のデモ・ヴァージョン、「Drivin' Sister」のライヴ・ヴァージョンなど4曲だ。

   

紙ジャケは英国オリジナル盤を忠実に復刻していて、切抜きのあるゲイトフォールド・カヴァーにギリシア彫刻のような首をプリントした透明フィルムが貼りつけられている。
ディスクは内側から出し入れする形で、オリジナルのインナーバッグの復刻版がついている。
これだけ英文ブックレットがついていないのが残念だ。

  

1974年リリースの7作め『ロックン・ロール黄金時代 THE HOOPLE』はそのオリジナル・タイトルからわかるように前作『MOTT』の続編として作られたようだ。
イアン・ハンター、ベースのオヴァレンド・ワッツ、デイル・グリフィンによる共同プロデュース。
ミック・ラルフスが脱退したためにギターは元スプーキー・トゥースのルーサー・グローヴナーがエアリアル・ベンダーという名で参加、ヴァーデン・アレンに代わってモーガン・フィッシャーがキーボード奏者として加わっている。

アルバムは邦題のタイトルにもなった「ロックン・ロール黄金時代 THE GOLDEN AGE OF ROCK'N'ROLL」で幕を開ける。
美しい女声コーラスと分厚いブラス・セクションで彩られた狂騒のロックンロールだ。
モーガンの流麗なピアノはつづく「MARIONETTE」でも活躍するが、この曲ではサックスやフィドル、ストリングスなどが入ってクイーンのロック・オペラを思わせる作品になっている。
エアリアルのギターがとくにそうなのだが、前作までと違ってあまりブリティッシュ・ロックの香りがしないのが残念だ。
アルバム全体を眺めてみると、M-5BORN LATE '58」だけがワッツの作で、あとはすべてハンターが書いている。
その力量は驚くべきだが、どちらかというと華麗なナンバーが多く、美しいピアノとホルンののどかな響きに導かれて始まり、コーラスやオーケストレイションが壮大なM-8THROUGH THE LOOKING GLASS」や、M-4CLASH STREET KIDDS」のようなパンキッシュな作品もややオーヴァー・プロデュースに聞こえるのはぼくだけだろうか?
ワッツがヴォーカルを取る、そのM-5は比較的ストレートなロックンロールで、これはこれで悪くない。
イアンとリンジー・ディ・ポール(可愛い!)のチャットの入ったシングルM-9「土曜日の誘惑 ROLL AWAY THE STONE」は悪くないが、ギターがブライアン・メイを思わせる。
けっきょくこのアルバムでぼくがいちばん気に入ったのは、またもやディランの影響を感じさせるM-6TRUDI'S SONG」というシンプルなバラッドだった(笑。

ボートラは全7曲だが、ミック・ロンソンが加わった最後のシングル「モット・ザ・フープル物語 (DO YOU REMEMBER) THE SATURDAY GIGS」が収められているのがなんともうれしい。

   

紙ジャケはロクシー・ミュージックのファーストでも知られるカリ・アンをモデルにした有名なもので、コーティングのないE式のシングル・スリーヴ。
歌詞などが印刷されたオリジナルのインサート、インナー・バッグ、8ページの英文カラー・ブックレットがつく。
相変わらずこれで1,890円で元が取れるのか心配になるような充実振りである。


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nowatts

今回All the Young DudesとMottを購入しましたが、まず音が良いですねー。既発のCDはもちろん、30年くらい前に聴いた国内盤レコよりも全体的にパンチがあるし、前のめりのビート感がぐっと来る・・・気がします(目下レコ捜索中・・・)。わたしはバドカン聴いてモットに遡ったクチですので特にミック・ラルフスのギターがシャープな今回のリマスターはちょっと感動もんでした。これを聴くとハンターとラルフスという二人の才能のせめぎ合い、というか一触即発な緊張感が凄くわかります(特にAll the Young~)。ラルフスさんもバドカンに行くとヴォーカルはすっかりポール・ロジャースに任せて(実はバドカンは4人ともヴォーカリストですよね)どっちかというとプロデューサー的な位置に一歩下がっている感じがあって、モットとのバンド内位置関係の違いが面白いなあ、などと思いました。で、結論、UKオリジナルを聴いてみたくなった、といういつものオチですね(笑)。
蛇足ですがボーナス・トラックのボウイ版「すべての若き野郎ども」で一昨年のボウイat武道館の感動が甦りました。この一曲が聴けただけでも行ってよかったです。
by nowatts (2006-07-24 17:50) 

parlophone

nowattsさん、どうもです。

>ラルフスさんもバドカンに行くとヴォーカルはすっかりポールに任せて
>ハンターとラルフスという二人の才能のせめぎ合い、というか一触即発な緊張感

へえ~!!なるほどね~。
(繰り返しになりますが)バドカンはベスト盤だけ、モットは初聴きだったので、そんなことはちっとも感じませんでしたが、
>バンド内位置関係の違いが面白い
という視点、なかなか興味深いご指摘です!

>で、結論、UKオリジナルを聴いてみたくなった、といういつものオチですね(笑)。

わはは、けっきょくわれわれはそこですよね、行き着く先は(笑。
やれやれです^^

>一昨年のボウイat武道館の感動

お~、これ武道館はどんな反応だったんでしょうか!!??
想像できるようなできないような…気になります^^;
by parlophone (2006-07-24 21:06) 

NO NAME

>これ武道館はどんな反応だったんでしょうか
はい、しっかりシニア組(女性多数)には受けてましたよ。知らない若人には新曲に思えたんじゃ・・てことはないか。しかしV.J.さんのコメントを読んで気づいたんですが(V.J.さん、どうもです)、「すべての若き野郎ども」ってモットのイメージとはちょっとズレてたんですね。あたりまえだけど全然ボウイの曲だもの。このリマスター聴いて初めて認識しました。いやー25年かかった(笑)。やっぱり初期を聴かないといかんですね。・・・などと思って街に出たらふとありましたよ、ファースト。でもなんと米盤オリジナルでATLANTIC盤(笑)。ぼろかったので安かったですが、69年ごろのカンパニースリーブですから一応初期版かな。音はいかにもアメ盤ぽく分厚くてボワンとしてます。これはこれでありでしょうがピンクiの音に脳内イコライジング(?)してみると・・・いいですね、曲といい、演奏といい、まさにUK 超一流のB級BAND(無断借用すいません)。意地でも見つけなきゃ、紙ジャケ。オリジナルは・・・まあ、のんびりいきますか。
by NO NAME (2006-07-25 22:16) 

nowatts

↑またしても名無し。失礼おば。
by nowatts (2006-07-25 22:18) 

parlophone

>しっかりシニア組(女性多数)には受けてましたよ
>知らない若人には新曲に思えたんじゃ・・てことはないか

いや~、そいつは聞きたかったなあ~。
ボウイのコンサートで「すべての若き~」が流れてきたら、当時を知ってる人たちは鳥肌もんだったでしょうね~。

>街に出たらふとありましたよ、ファースト
>でもなんと米盤オリジナルでATLANTIC盤(笑)

すげえ~!!
アトランティックってなかなかいい音の盤、ないんじゃないですか?
(少なくともJAZZではそんな感じ)
ぜひ紙ジャケで、UKオリジナルの"雰囲気"を味わってください^^
by parlophone (2006-07-26 00:04) 

lonehawk

遼さん、こんばんは。
モット購入されましたか!
ワタシもモットの記事を書いてますので、TBさせて頂きました。
この中ではラルフス在籍時の『革命』が個人的にはベストですね。
どうもボウイ色の強い「~野郎ども」の印象が強いようですが、ボウイ色から脱却したロックが楽しめますし、凝ったジャケも再現しているので、大満足のリイシューですね。

ちなみにバッド・カンパニーのオススメは、1作目の『BAD COMPANY』と2作目の『STRAIGHT SHOOTER』ですね。
「READY FOR LOVE」は1作目に収録されています。
多分輸入盤でしたら二枚合わせて三千円もしないで買えると思いますよ。
by lonehawk (2006-07-26 01:40) 

parlophone

lonehawkさん、トラバ&コメントありがとうございました。
ぼくも個人的には『革命』がいちばん気に入りました。

バドカンのご紹介ありがとうございます。
さっそく聴いてみたいと思います^^

こちらからもトラバさせていただきますね。
by parlophone (2006-07-26 21:15) 

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