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モット・ザ・フープルの世界-part 1 [ブリティッシュ・ロック]

「ブリティッシュ・フォークのミューズたち」はちょっとお休みさせていただいて、今日と次回でモット・ザ・フープルを紹介させていただく。
じつはぼくはモットをまったく聴いたことがなかった。
きっかけは『レコード・コレクターズ』誌の1996年9月号である。
特集「ザ・フーと『トミー』」を読んで、次のページをめくると第2特集がモットだったのだ。

その最初の記事「パンクの源流となった悩める"若き野郎ども"」の冒頭で三宅はるおはこう書いている。
60年代末から70年代半ばのブリティッシュ・ロック・シーンでも異彩を放ちながら、彼らには絶えず悲運のバンドというイメージがつきまとった。しかし"ディランとストーンズの出逢い"と呼ばれた、そのラフなロックンロールは、まさしくのちのパンクへの源流であった。そしてその歴史は、ロックンローラーの業とでも言うべき悲しみを秘めたものとして完結している」(48ページ)
これはどうしても聴いてみたくなりますよね。

   

それから10年!
今回の紙ジャケ化(7月5日リリース)を機に前半のアイランド時代から2枚、後半のコロンビア時代から3枚、計5枚を買ってみた。
今日はアイランド期のなかからデビュー作の『モット・ザ・フープル』と『ブレイン・ケイパーズ』を聴いてみようと思う。

M.C.エッシャーの「Reptiles」というエッチングを使用した、トカゲの絵が印象的なデビュー・アルバムは1969年11月にリリースされた。
プロデュースはガイ・スティーヴンス。

   

アルバムはキンクスの「YOU REALLY GOT ME」のインストから始まる。
ミック・ラルフスのギターがラウドに鳴るストレイトなカヴァーだ。
2曲めから4曲めにかけてはダグ・サーム、ソニー・ボノ、そしてイアン・ハンターと作者は違うが、いずれもボブ・ディランの影響を強く受けたハンターのヴォーカルが印象に残る。
とくに自作のM-4BACKSLIDING FEARLESSLY」はもろディランである(笑。
しかし楽曲のクオリティはどれもけっして低くなく、ピアノの静かなイントロからオルガンが入って盛り上がる「LAUGH AT ME」など、じゅうぶん傑作だ。
オリジナル・アナログ盤ではB面のトップだったミックのシンプルな「ロックンロール・クイーン」は個人的には本作のベスト。
ミックの渋いながら魅力的なリフに導かれてハンターのヴォーカルもじつに渋い。
短いインスト「RABBIT FOOT AND TOBY TIME」をはさんで10分を越す大作「HALF MOON BAY」がくる。
スライド・ギターのイントロからワルツ・タイムにテンポ・ダウンしてオルガンが入ってくる重厚な構成で曲が始まる。
歌が入ってくるまで約1分半(笑。
間奏でピアノのアルペジオになり、そこにオルガンが重なってノイジーなSEが入り、またピアノから始まるあたりも荘厳な感じでかっこいい。

ボーナス・トラックはクロスビー・スティルズ・ナッシュ&ヤングの「オハイオ」のカヴァー(!)、「ロックンロール・クイーン」のシングル・ヴァージョンなど3曲が収められている。

紙ジャケはコーティングのないE式のゲイトフォールド・カヴァーで、内側にはメンバーのちょっとコミカルな写真がモノクロで載せられている。
レーベルはピンクiを復刻している。

   

アイランド・レーベル最後のアルバムとなった『ブレイン・ケイパーズ BRAIN CAPERS』は1972年のリリースで4枚めにあたる。
ジャケットだけだったらぜったいに買わない作品だ(笑。
こういうデザインでOKを出すA・ディレクターってどんなやつなんだ?
しかし中味はすばらしい。
こちらもプロデュースはガイ・スティーヴンス。

最初の曲はストーンズっぽいラフでかっこいいロックンロールだ。
生ギターの静かなイントロで始まるM-2YOUR OWN BACKYARD」はディオンのカヴァーでオルガンもソウルフルでかっこいい。
ハンターのヴォーカルからはもうディランのまねらしい感じはほとんどない。
3曲めは個人的には大好きなヤング・ブラッズのカヴァーでミックがヴォーカルをとる。
ドラムスとギターのからみがなかなかスリリングだ。
そして本作のハイライトは、9分を超える大作M-4THE JOURNEY」。
ディランからの影響よりもむしろブルーズ・スプリングスティーンに与えた影響のほうを感じてしまうドラマティックないい曲だ。
アナログではB面トップだった「SWEET ANGELINE」はディランっぽさが戻ってちょっと微笑ましい。
ハンターとミックの共作になるM-7THE MOON UPSTAIRS」はヴァーデン・アレンのオルガンがもろジョン・ロード。
あまりにもあけすけなパープルへの傾斜で思わず笑ってしまう。
ハンターのヴォーカルもどことなくイアン・ギラン風^^;
あの~、パープルあんまり好きじゃないんですけど(笑。

ボートラは「THE JOURNEY」のオルタネイト・ヴァージョン(こちらのほうがさらに長い!)など2曲。

紙ジャケはコーティングのないE式のシングル・スリーヴで、オリジナル・インナー・バッグが復刻され、さらに英オリジナルにはついていたというマスクも復刻されている。
レーベルは島レーベルだ。

   

さてこの2枚を聴いてみて、モットというのはオリジナリティという点でやや疑問符がつくものの、音楽的にはとても充実したいいバンドだったということだ。
これがコロンビアに移籍するとグラム・ロックになるんだからすごいよね~。


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へどろん

こんばんは〜。
ブレイン〜とその次の2作は買おうかな〜なんて考えていたところに、ナイスな記事です。
遼さんの記事読むとファーストも気になってきました。
なんか我が国じゃ評価が低いのか盛り上がらないのかわかりませんが、グラム?ボウイ?ディラン?なんてキーワードくらいしか思い浮かばなかったんで、ナイス紙ジャケ化です。値段も。笑
by へどろん (2006-07-22 21:31) 

parlophone

へどろんさん、どうもです。
ファースト、なかなかいいですよ!
ハンターのヴォーカルはもろディランですが、楽曲のクオリティは高いです
(なんか本文と同じこと言ってるな^^;)
イアン・ハンターって人はヴォーカリストだけでなく、ライターとしてもすごい才能を持ってますね。
オススメです^^
by parlophone (2006-07-22 22:05) 

nowatts

モット、CBS時代は大好きなんですが初期はなかなか聞く機会がなくて・・・参考になりました。実は今回もALL YOUNG~とMOTTだけ買って安心してました(笑)。店頭で見つけたら即ゲットですね。
by nowatts (2006-07-23 16:47) 

parlophone

nowattsさん、こんにちは~。
なぜかCBS時代に比べると極端に人気がないようですね。
CBSのほうは『すべての若き~』、『革命』、『ロックンロール~』の3枚を買いました。
nowattsさんの感想も聞かせてくださいね!
by parlophone (2006-07-23 17:05) 

V.J.

僕は、ISLAND時代のDYLAN meets STONESぽさ。
自身が何処へ行ったら良いのかを手探りで歩きながらも、R&R QUEENの呪縛に囚われ続け、もがき続けて来た初期が実は大好きだったりします。

すべての若き野郎どもが1ミクロンも良い曲だと思えないので、CBS時代はなんとなくタンテに乗る回数も少なかったりします。

今回の紙ジャケは、ほぼ全てVINYLで持っていたりするので、解散間際のLIVEだけ購入しましたが、怒涛のボートラ付でしたよね…
DU特典のハコもほぼ全てハケタみたいですし、完全に買い逃しました。

遼さんのその1、その2を拝見してちょっと後悔…
でも、UK 超一流のB級BANDとして、MOTTはやっぱ、避けて通れないっすよね♪
by V.J. (2006-07-25 00:35) 

parlophone

V.J.さん、どもどもです^^
ディランの曲だけじゃなく、歌い方まで影響を受けたミュージシャンというと、たとえばキース・リチャーズ、トム・ペティ、マーク・ノップラーetc...
そのなかでイアン・ハンターはそのソング・ライティングの才能から考えてももっとも過小評価されてるミュージシャン(日本だけ?)だと思いました。

>今回の紙ジャケは、ほぼ全てVINYLで持っていたりするので

きゃあ~、V.J.さ~~ん!!(ほぼ意味不明^^)

>UK 超一流のB級BAND

いいですね~、この表現!
V.J.さんに50ポイント!
by parlophone (2006-07-25 00:59) 

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