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追悼―ジャッキー・マクリーン [追悼]

3月18日のブログで彼の初リーダー・アルバムを紹介したばかりだったのに、マクリーンが3月31日に亡くなってしまった。

ぼくはこのことをRefugeeさんのブログで知ったのだが、そこに書き込んでくれたbassclefさんはShaolinさんのブログをご覧になったということだった。
Shaolinさん、bassclefさん、Refugeeさん、ありがとうございました。

さて、夕方マクリーンの追悼に何を聴こうかと思い巡らして選んだのはこのアルバム。

  

チャールズ・ミンガスの『ブルーズ・アンド・ルーツ』だ。

ぼくは『ニュー・ソイル』で始まるブルー・ノート時代のマクリーンが大好きなのだが、今日はもうちょっとにぎやかに彼のことを送りたいと思ったのだ。
マクリーンの参加したミンガスのアルバムでは『直立猿人』も有名だが、にぎやかで陽気となるとやっぱりこっちのアルバムのほうが上だよね。

ご存知のようにこのアルバムは「Wednesday Night Prayer Meeting 水曜の夜の祈りの集い」で始まる。
この曲はミンガスが子どものころから慣れ親しんだ教会音楽がテーマだ。
いつものように粘っこいミンガスのベースから、ピアノ、テナー…と絡んでいき、アンサンブルをバックにテーマが提示されるが、その最初からミンガスが大きな声でメンバーを挑発し、異様な熱気の中で曲が進行していく。
アーシーなホレス・パーランのピアノ、手拍子だけをバックにしたブッカー・アーヴィンのテナーなど、じつにスリリングだ。

この曲にはマクリーンのソロはないが、それが却ってメンバーのそれぞれが彼の追悼のために楽器をプレイしているようでふさわしい気がした。

さて、このアルバムのなかでは「Moanin'」と「My Jelly Roll Soul」のマクリーンのソロが好きだ。

Moanin'」(有名なボビー・ティモンズのオリジナルとは同名異曲)はとても複雑な構成を持つ曲だ。

まずペッパー・アダムスがバリトン・サックスのソロで、ユーモラスで印象的なAABC形式16小節のテーマを示す。
次の16小節はドラムに管のアンサンブルが加わるが、ここでトロンボーンがバリトンと並行に別のメロディーを示す。
次の16小節はベースが加わって、今度はテナー・サキソフォンがバリトンと並行に別のフレーズを奏で、さらに次の16小節ではアルト・サックスが新しいメロディーをバリトンのテーマの上に載せていくのだ。
そして曲がミンガス・ワークショップではおなじみの一種の混沌を迎えると、一旦アンサンブルが統一されて曲の区切りを示し、バリトンがもとのテーマに戻ると、それにつづいて最初にソロで出るのがマクリーンのアルトなのだ。

いつもの乾いたやや歪んだようなトーンでブルージーなフレーズを重ねていき、そのなかに時おり愁いを帯びたようなメロディーを織り交ぜてゆく。

My Jelly Roll Soul」はタイトルが示すとおりニュー・オリンズの名ピアニスト、ジェリー・ロール・モートンに触発されてできたミンガスのオリジナルで、ディキシーランド風の愛らしいテーマを持った曲だ。
ジミー・ネッパー(tb)の長閑なソロ、ラグタイム風というのではないが、いかにもそれっぽいホレス・パーランのピアノにつづいて出るジャッキーのソロがまたすばらしい。
バップ特有の短いパッセージを積み重ねていくソロとは違って、音を長く伸ばしながらわずかながらヴィブラートも感じられるような、とてもユーモラスで愉しいソロだ。

ちなみにマクリーンがマルのアルバムで「レフト・アローン」を吹き込むのは、このレコーディングの20日後のことである。

最後にぼくの好きなマクリーンのアルバムを少し紹介しておこう。
まずリーダー・アルバム。
jackie mclean 猫のマクリーン(1955.10 ad-lib)
4,5&6』(1958.7 PRESTIGE)
NEW SOIL』(1959.5 BLUE NOTE)
SWING SWANG SWINGIN'』(1959.10 BLUE NOTE)

そしてサイド・マンとして参加した数え切れないぐらいのアルバムのなかから。
DIGMILES DAVIS (1951.10 PRESTIGE)
PITHECANTHROPUS ERECTUS  直立猿人 』 CHARLES MINGUS (1956.1 ATLANTIC)
COOL STRUTIN'SONNY CLARK (1958.1 BLUE NOTE)
LEFT ALONEMAL WALDRON (1959.2 BETHLEHEM)
FUEGODONALD BYRD (1959.10 BLUE NOTE)

あー、こうやって書きながらやっぱり我慢できなくなって『直立猿人』も聴いてしまった。
心からご冥福をお祈りします。


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コメント 16

Refugee

さすが遼さん、渋いところを選ばれましたね。
私、ミンガスはそのうち集めようと思ったままの状態なので数枚しかなく、これは未聴です。
また、早急に入手しないといけないものが増えてしまいました(笑)
他にあげられたアルバムは、全部持ってるんだけどな~(もちろんCDですよ。オリジナルは一枚もありません 笑)
私は、今、Miles and Milt Jacksonを聴いております。

ところで、遼さんの真似っこをして、マジに2周年企画やろうと思います。
で、まじに、歪むHELP!を進呈しようかと(歪まないHELP!のCD-R付で)
何気に、うちのHPっぽいかと(笑)
by Refugee (2006-04-03 00:31) 

parlophone

>もちろんCDですよ。オリジナルは一枚もありません 笑

安心しました(笑。
ぼくの『ブルーズ・アンド・ルーツ』は画像でお分かりかもしれませんが、
アトランティックの創立50周年を記念してRHINOとのコラボで出た紙ジャケです。
例によってジャケのできはイマイチですが、もともと音のあまりよくないアトランティックとしてはかなりまともな音になってます。

>マジに2周年企画やろうと思います。
>で、まじに、歪むHELP!を進呈しようかと(歪まないHELP!のCD-R付で)

太っ腹~!!
マジにほしいっす(笑。
by parlophone (2006-04-03 01:22) 

MASA

えっ、亡くなったんですか。それは残念です。ジャズ界の巨人がまたひとり逝ってしまいましたね。合掌。
ミンガスも好きで「BLUES AND ROOTS」は私も大好きなアルバムです。ちなみにオリジナル盤で持っております。マクリーンは「ONE STEP BEYOND」とかもいいアルバムですよね。

札幌にはこの春、ヘレン・メリルやオーネット・コールマン+山下洋輔などがやって来ます。多分行けません(苦笑)。
by MASA (2006-04-03 10:38) 

bassclef

遼さん、こんにちわ。bassclefです。マクリーンのこと・・・わざわざのお礼コメント恐縮です。僕もshaolinさんのブログ貼り付けのBoston.comというHPでの訃報記事を見たのですが、その時点ではグーグルでも他の米大手新聞のHPにはマクリーン訃報記事が見当たりませんでした。少ししてから、米ヤフーのmusic news というHPでもマクリーン記事を見つけたような次第です。
マクリーン・・・特に彼のマニアというわけではないのですが、ああいう風に「ひと吹き」聴いただけで「おっ、マクリーンだ」と判るような真の個性を持ったミュージシャンというのは、やっぱり素晴らしいですよね。
by bassclef (2006-04-03 16:29) 

domiz

おじゃまします。
ジャッキー・マクリーン関連の記事を検索していたらたどりつきました。
トラックバックさせていただきました。
チャールズ・ミンガスの『ブルーズ・アンド・ルーツ』は今度聴いてみます。
by domiz (2006-04-03 18:32) 

Shaolin

すんません、link 先は http://microgroove.jp/ の方に変更しておいて頂けると助かります。

McLean、とにもかくにも

> 「ひと吹き」聴いただけで「おっ、マクリーンだ」と判るような

という点に尽きると思います。一時期は全録音追っかけたりしてハマってました。改めて合掌。
by Shaolin (2006-04-03 20:53) 

parlophone

MASAさん、どうもです。
ほんとうにまた一人「ジャズの巨星墜つ」って感じですね。

『BLUES AND ROOTS』のオリジナル盤、うらやましい~^^
音はどんな感じですか?

>「ONE STEP BEYOND」とかもいいアルバム

あ゛ー、忘れてました!!
by parlophone (2006-04-04 00:23) 

parlophone

bassclefさん、どうもありがとうございました。
やっと国内のニュースにも載りました。

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/fu/news/20060402ddm041060064000c.html

>「ひと吹き」聴いただけで「おっ、マクリーンだ」と判るような
>真の個性を持ったミュージシャン

ほんとですよね。
ぼくは上の記事に出てくる『JACKIE'S BAG』とか
名盤の誉れ高い『LET FREEDOM RING』とかはあまり好きじゃないんですが、
PEPPERと並んで好きなプレイヤーでしたね…。
by parlophone (2006-04-04 00:33) 

parlophone

domizさん、初めまして。
nice!&トラバ&コメント、ありがとうございました。
ほんとうに残念ですね。

domizさんのブログにもあとで遊びに伺いま~す。
by parlophone (2006-04-04 00:35) 

parlophone

Shaolinさん、すみません!
申し訳ないっす。
さっそく訂正いたしました。

>一時期は全録音追っかけたりしてハマってました。

おお、すごい!!
Shaolinさん的にベストのアルバム、または演奏を教えていただけるとうれしいです^^
by parlophone (2006-04-04 00:39) 

Refugee

遼さん、どうも。

ONE STEP BEYONDがありましたねぇ。
私、唯一オリジナルでもってます。ステレオですが。

(ひそひそ Shaolinさんは、以前、Swing Swang Swingin’をオリジナル、日本盤各種、オーディオファイル盤など多数集めて比較試聴をされてたことがあります。(笑) ひそひそ)
by Refugee (2006-04-04 02:46) 

Shaolin

最近 so-net blog 落ちまくりですね...
さっきコメント書き終わって送信しようとしたらまた緊急メンテナンスでアウト。で、今もう一回書き直しています。


> 以前、Swing Swang Swingin’を

いや、あれは Midnight Blue です。
実は正直言って、どうも RVG 録音って個人的にはあんまり好みじゃないんですよね (近日このネタでなんか書く予定ですが)。Midnight Blue は幸いピアノレスなのでまだ許せるのですが。


> Shaolinさん的にベストのアルバム、または演奏を教えていただけるとうれしいです^^

いっときは One Step Beyond〜Destination Out〜Evolution の時代、スリリングなアンサンブルと背伸びして張り切りまくりの McLean が最高と思っていましたが、最後にはやはり 1957年 2月15日録音の 11曲 (McLean's Scene、Makin' The Changes、A Long Drink Of The Blues、Strange Blues に分散収録) に戻ってしまいます。ストレートアヘッドにのびのびと吹きまくる McLean と、見事なバッキングを聴かせる Waldron が余りにも素晴らしく、Complete Feb. 15, 1957 McLean-Waldron Sessions の CD 出せ! と思う程。

お恥ずかしいことに、これらの盤は全部 OJC や日本盤でしか聴いていません (OJC はもう全部手放してしまいましたが)。大学生の頃にアドリブを口ずさめる程聴きまくってました。懐かしい想い出です。
by Shaolin (2006-04-04 19:34) 

parlophone

Refugeeさん、ひそひそ話よく聞こえましたよ(笑。

このころのJAZZのアルバムって、人気盤だからといって市場にたくさん出回ってるとは限らないので、オリジナルは入手困難なものが多いでしょう。

RefugeeさんにしてもShaolinさんにしても、いやはやスゴイです・・・。
by parlophone (2006-04-04 19:50) 

parlophone

Shaolinさん、どうもです。
申し訳ない…。
ぼくももう一度同じコメント書いてます(爆。

>実は正直言って、どうも RVG 録音って個人的にはあんまり好みじゃないんですよね

ぼくもときどき感じることがあります。
まあ、オリジナルを聴いたことがないので、偉そうなことはいえませんが…^^;

>1957年 2月15日録音の 11曲

おお~、そうなんですか!
この辺は聴いたことがないので、今度聴いてみたいと思います!!
ありがとうございました^^
by parlophone (2006-04-04 19:54) 

Refugee

Shaolinさん

あっ、Midnight Blueでしたっけ?勘違いしてました。すみません。

Shaolinさんと遼さん

RVG録音があまり好みでないとは・・・
まあ、確かに作った音ではありますよね。

>1957年 2月15日録音の 11曲

私も、このあたりはまったく未聴です。ボチボチ聴いてみますね。
by Refugee (2006-04-04 21:32) 

parlophone

>RVG録音があまり好みでないとは・・・

あ~、いやいや「ときどき感じる」というだけです。
(すっごい弱気…笑)。
by parlophone (2006-04-04 22:05) 

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